幕間:幻影の君と最後の攻略対象
短いですね
シオン達が赴く決意をした別の場所。一つの出会いがあった。
「……誰だい?」
虚空にその姿はなく、しかしその気配は濃厚で、そして朧げだった。
「そろそろ会っても構わないと思ってね」
イリューシオン・ハイディアルケンドとは違う、紛れもない幻影の君を受け継ぐもう一人のファントムロード。それが、初めてエドヴァルド・W・サイファーの元に現れた。
「……なるほど。どうにも話が噛み合わんと思っていたけどもう一人いたんだね……ま、どうだっていいけどね」
「……そうだね。あなたにとって追いかけなければならない幻影の君は、彼一人だけだった。こちらもそう勘違いされては困るからね。あえて会わずにいたけれど……ま、ミスティには色々とちょっかいをかけてしまったんだけれど……ね」
振り下ろされた剣戟を、難なく躱したファントムロードに、一つだけ舌打ちをして、エドヴァルドは敵対を止めて、踵を返した。
「ねえ……分かっているんだろう?」
その言葉に踏み出そうとした足が止まる。
「シオンを殺したところで、何も変われはしないことくらい。あなたが、彼を追いかけていた本当の理由は」
「黙れ! お前に何が分かる」
「分かるさ! あなた以上に!」
激昂したのは同じ。ファントムロードは、感情の高ぶるままに、言葉を乗せる。
「分かるんだよ……あなたは、ずっと……ずっと後悔するんだ! 何で、守るべきだったものを殺してしまったのかを。そうして、あなたを裁いてくれる存在も無くて! 何もかもから逃げて! そうして……ただ、一人……」
「……お前さん……まさか」
エドヴァルドは、頭に過った何かの想像が身を結ぶ前に、頭を振って掻き消し、そしてその気配は消えていた。
「……悪いね……それでも、止まれやしないんだ」
エドヴァルドもまた、足を動かし、赴く。
――ああ、結局、止めようもなくこの時が訪れる。
けれど、希望はある。彼がこの世界で掴みとった確かな希望が。
祈ろう。この戦いの先に、彼と、彼の救いがあることを。




