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対峙する悪役

あれ?これ誰だっけというのは

第六部分「敗走」を参照ください


「デート中のところ悪いね。けど、そこにいるのは守らなきゃあならない娘さんなんだ。手ェ出さないで貰えるかね」


 この前は推奨するようなことを言っておいて随分と手のひら返すのが早いことだ。


 まあこっちの方が嬉しいけどな。初めて胸襟開いて話が出来るような気がする。


「待ってくださいお父さん」


 ミスティが俺の前に立ち、おっちゃんと対峙する。おっちゃんは、無表情にそれを見つめる。


「お父さんがシオンさんと戦う理由なんてないでしょう? お父さんが幻影の君を追っていたとしても、それは……」


「何を勘違いしているのか分からんけど、おっちゃんが探していたのは最初からイリューシオンだよ」


 おっちゃんは最初からイリューシオンを探していた? 何でだ。父さんなら俺の知らない間にミスティの親父さんかおっちゃんと因縁作ってたのかとも考えられたがそうじゃないのか。


「なあおっちゃん。話してくれないか。何で俺がおっちゃんと戦わなくちゃならないのかを。ミスティはさ。それが分からなくて、自分なりに探して……それで、自分が|幻影の君(俺)の隠し子なんじゃないかって疑ってたんだぞ」


「……ミスティが、幻影の君の隠し子? くっ……ハハハハハハハハ!!!」


 おっちゃんは狂ったように笑い転げた。あまりに滑稽だと言うように。


「違うんだよな」


「ああ違うさね。全く、どこからそんな勘違いしたのかってね」


「それはおっちゃんが話さないからだろ」


「……ああそうだね。確かにそうだ」


 おっちゃんは疲れたように溜息を吐いた。


「ミスティ、幻影の君はお前さんの父親なんかじゃないさ。寧ろ逆さ。その隣にいる男は、両親の仇と言える存在だよ」


「……ぇ」


 ミスティの消えるような呟きをよそに、続く。


「なあシオン……いや、イリューシオン、ユリウスって名前に聞き覚えあるかね?」


『……イリューシオン様。俺には娘がいるんですよ』


 待て。


『まあ、あれですよ。地下暮らしさせるわけにもいきやせんし、地上の友人に預けたんですがね。元気で暮らしてたらいいなぁ……』


 待ってくれ。


『……さよならです。イリューシオン様』


 まさか……ミスティは。


「そうだよ。お前を守って、そして……死んだ男のむすめさ」


 ミスティは俺の方を振り返る。


「シオンさん……私のパパを知ってるんですか? パパは……」


 無言のまま唇を噛みしめる俺を見て、そしてまたおっちゃんの方に振り向いた。


「けど、それでどうしてお父さんがシオンさんを追いかけなければならないんですか。だって、パパは……私の本当の両親は」


 ミスティ、お前……


「ああそうだね。確かに。仇ってわけじゃないさ。もしもユリウスが生きてたら、死んだって止めるだろうね」


「だったら……!」


「分かるんじゃないか? イリューシオン。お前さんならさ。その存在自体の罪深さってやつが」


 幻影の君という存在の罪深さ、か。


「ユリウスは……ミスティの親は、幻影の君のために死んだ。洗脳とは言わないさ。けどその出会いが生んだのは結局……死ぬはずの無かった一組の親子を死の淵に追いやった、ってだけの話だった。寂しがり屋の一人娘から、親を奪ったってだけだった」


 幻影の君はこの世界の悪役だ。触れ合う者全てを悪の道へと誘うことしかできないのであれば、争いに向かわせることしかできないのであれば、それは……


「なあシオン……何で、何でお前さんが幻影の君なんだ」


「……お、父さん」


 そして今も、一人の男を苦しめている。


「……シオンなら、きっと導けると思ってた。上手くは言えんけど、きっと、皆が正しいと思える道を進むのに、必要な存在だと思ってた。けどそうじゃないのか。お前さんの進もうとする道は険しくて、そして間違っているんじゃないのか……そうして、お前さんの愛した者たちに、どうしようもない悲しみを植え付けるんじゃないのか」


 おっちゃんは、溜息をついて、手に持っていた銃をアイテムボックスの中に仕舞い、背中を向けた。


「もし、もしもだ。シオンが幻影の君を捨てて、シオン・イディムとしてずっと生きるっていうんなら、おっちゃんはそれでもいいと思ってるんだ……ただし、もしも幻影の君それを捨てないっていうんなら、そん時は、まごうことなくおっちゃんの敵だ」


 答えを待つ。誤魔化しは許さない。その時はエドヴァルド・W・サイファーは全てを以て幻影の君を殺しに来る。


 そう告げる。


「待ってください。私は、そんなの」


「……ミスティ、今は分からんかもしれんけど、きっとおっちゃんに感謝する時が来る。来なくてもいいけど。それでも、おっちゃんはさ、お前さんのパパから預かったから。お前さんの幸せを誰よりも守らないといけないから。だから……」


 ミスティだけではない。


 アルトレイアを。リオンを。スレイを。フィオレティシアを。アイリシアを。アスタを。そして、リリエットも。


 エドヴァルド・W・サイファーもまた、攻略対象たちを守るために戦った。これが『幻影の君に愛の祝福を』に隠された真実だった。


 俺は、おっちゃんの決意に対してどう報いるのか。ただ、呆然とその背中を見送っていた。


おっちゃんに感情移入していっていけないまあ色々あれなんですけどね


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