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ロード・トゥ・ファントムロード

分かりにくい…主人公の能力にしても何故これにしたと

ゲーム脳的な視点から少し離れてくれるといいかも……?

 修行の日々は順調に進み、五年ほどの月日が経過した。


「親父ぃ! こいつはどの家に運べばいいんだ?」


「ぁん? あーこいつはあれだ。シルヴィの家の日用品だな。大丈夫か? それなりの量あるぞ」


 大歓迎だ。それ位じゃないと修行にならない。


 俺は肉体作りも兼ねて親父の商店の手伝いをしていた。もっとも、店頭に立つってんじゃあなく配達……新聞やら牛乳やら取り寄せ品やら色々だ。


「シオン! シオンが来たよパパー!」


 シルヴィというのはリリエットの友達である。中々に淑やかで可愛い。


「ねえシオン? たまには一緒に遊ばない?」


「悪いな。まだ配達があるんだ」


「むぅ……リリエットもシオンもお手伝いばかりでつまんないなぁ」


 苦笑しながら次の配達に向かう。


 まあ、実際そんな忙しいわけでもないんだけどな。


 リリエット達には配達に行って終わったら遊んでくると言って家を出て、村の友達には配達で忙しと言う。


 そして、誤魔化した時間で村外れの森に出向き、マリアと修行する。


「全力で来いよ」


「ふふ……負けませんよ」


 情けないところばかり見ているような気もするが実際、天界の尖兵である天使である。


 その槍捌きは俺の身体など簡単に弾き飛ばす。


 俺の付け入る隙はやはり搦め手でしかない。戦闘開始と同時に魔法の詠唱を開始し、無数の魔力玉を宙に浮遊させる。


 魔法というのは上位の魔法を習得する場合、レベルアップだけではなく詠唱の暗記などそれなりのリソースを割く必要がある。それを一々、複数の属性でやろうとするとどうしてもどれも中途半端になってしまう。


 ヒストリアスを受け継いだときにその他もろもろの上位魔法を受け継いだのではないのか? と思ったが受け継いだのはステータスにあたる部分のみで、知識は受け継がなかったらしい。ちなみにその辺りの『知識』を受け継ぐ二つ名も存在するらしい。らしい、というのは『幻影の君ファントムロードに愛の祝福を』で存在を匂わせたものの結局ゲーム中には現れなかったからだ。ボツになったのか続編でだすつもりだったのか……まあ脱線だな。


 どれかの属性に特化させて魔法を強化していくのがセオリーになるが、実はそれ以外にも戦い方がある。


 上位の魔法を覚えなくても、それよりも素早く下級の魔法をぶつけてしまえばいい。


 例えば、炎属性の中級呪文ファイヤーウェイブと炎属性の初級呪文ファイヤーボールを比較すると大体約三倍のダメージソースの違いがある。だが、詠唱時間はむしろファイヤーボール三発分を叩きこむよりも若干長いくらいなのだ。……まあその分魔力消費は激しいが。


 そしてスキル―詠唱短縮。これは覚えてさえしまえば習得した魔法全てに対して適用されるためさらに好都合なのである。


 まあちまちま削っていく戦いになるし、有体に言うとめんどくさい。けど、体の自由は本職の魔法使いより利くし、幻影魔法と組み合わせるのにも適している。


 マリアにも意見を聞いてみたがなるほど……とお墨付きを貰えた。というわけでまずは正面からマリアに対して剣を振るう。マリアはすかさず槍をかざし、受け止める。

ここまでは予想通り。問題はここからだ。魔力を操り、マリアを囲むように魔力玉を展開させる。炎、風、水の三種類。計七十八個の手のひら大の魔力の塊。


 これ以外の魔力玉もどうにかして使える様に出来ればと思うのだが、ただぶつけただけでどうにかなるような性質でもないからな。とにかく自らの持つ力で武器に出来るものは何か、考えながら、選別しながら戦い方を洗練させていく。


 隙を突いた、と思った魔力玉の攻撃だった。しかし、忘れてはならないのは、マリアが背中に翼をもつ天使である、ということである。


「ちっ……!」


 ファサリ、と風を孕んだ翼撃が、魔力を跳ね返す。傷一つないどころか体勢を崩すことすら叶わず、元から自力で劣る俺は、余計に集中力を欠き、追い詰められる。


 万事休すか、と思われたその時……その槍の動きはぴたりと止まる。


 否、止めた。不意に訪れた違和感に、その正体を探るように周囲に気を張り詰める。


 それで十分。俺は、何とかそれを好機、とがむしゃらに前進する。結果、マリアを押し倒す。


 混乱するマリアの顔の横に、俺は剣を突き立てた。




「お疲れ様ですイリューシオン様」


 模擬戦も終わり、息も絶え絶えに地面に横たわる俺を尻目に、水筒に水を汲んできたマリアは俺の口元にこくこくとそれを注いでくれた。


 冷たい水が心地いい……のと同時に微笑みかけるマリアに対し、複雑な心地である。


「お強くなられましたねイリューシオン様。私もうかうかしていられません」


 確かにマリアに少しずつ追い付いていけてる、とは思う。


 だが、だからこそまだまだだなとも思う。先程の戦い。俺は、マリアの背後に重力属性の魔力玉を忍ばせておいた。そして、他の全ての魔力玉の攻撃が無為に終わった瞬間を狙って、マリアの身体を引き寄せる様に発動させた。


 マリアは、何が起こったのか、と状況判断に気を取られ、その隙を狙った。


 重力魔法、相手に当てたところで何のダメージもないが、掃除機の様にその場にモノを引き寄せる性質を持つ。だから当てるのではなく、他の使い道を色々と模索してみたその実験だ。


 とはいえ、本気でマリアの動きを止めるには至らなかったし、マリアが止まったのは俺の安全を確保するために、何が起こったのかを判断するためだ。その好意に甘えた形でしかないし、二度は使えないような奇策だ。


 地力が足りない。魔力なり筋力なり、もう少し地力があれば選択肢も増えるんだが。


「やはり職業クラスを取得された方がよろしいのでは?」


 職業クラス、か……。


 クラスというのは冒険者にとっての必須の身分証明だ。それだけではなく、取得することによってステータスやスキルも上乗せできる。クラスごとにもレベルが存在するので出来るのであれば早いうちに取得するのが好ましい。


 だが、引っかかるのは……


「ファントムロードになりたいんだ。俺は……」


 幻影の君ファントムロードそのクラスの取得条件が分からない。クラスというのは取得条件を満たせばどれを得ることが出来るのか分かるものなんだが。


名前:シオン・H・イディム

年齢:10歳

レベル15

成長傾向

STR:A VIT:A AGL:A DEX:A INT:A MEN:A LUC:A



ステータス

HP:4200

MP:6000

腕力:600

耐力:490

素早さ:800

器用さ:900

魔法威力:3200

魔法耐性:2000

幸運値:580


習得魔法

 炎属性E、風属性E、水属性E、重力属性E、聖属性E、光属性E,闇属性E、空間属性E、幻影属性―


習得スキル

幻影隠匿-、暗殺術B、戦況分析C、逃走の心得E、燃え盛る肉体B、魔力譲渡E、エナジードレインC、重力解放-、幸運の導き手E、アイテムボックスE、詠唱短縮B


取得可能クラス

魔法剣士、狂戦士、吟遊詩人、盗賊……


 うーん……例えばアイテムユーザーなんかは一定レベル以上のアイテムボックスと空間魔法の習得が必要だが、幻影魔法も幻影隠匿も習得レベルが存在しないし、一定以上の幻影魔法の習得、とかじゃないんだよな……


「そうですね……ファントムロードのクラス取得条件は気にはなりますが」


「分かってる。このままじゃ学園にも入学できねえしな」


 王立ディハルマ学園。俺が再び戻らなければならない故郷。


 ファントムロードでそのまま提出するつもりはなかったし、どっかででっちあげるつもりではあったんだが……まあ当てに出来ないものは仕方がない。


 とりあえず魔法剣士辺りでいいか。俺の戦い方としてもそこまで違和感はないし……『幻影の君ファントムロードに愛の祝福を』のシオン・イディムも使ってたしな。


 さて、残るは親父の説得、か……まあ魔法書は親父の持ち物の本の中にあったしそれを盗み見たってことでいいだろ。それで、クラスを取りたい、と。


 大体十二くらいの年でクラスを取得して早熟と言われるくらいで、今の年齢を考えると少々早いがまあ元々ガキっぽくないって言われてるくらいだしな。


 よし、だいたいこんな所か。後は親父に実際話してみてからだ。




「とりあえず殴るぞ」


 親父の拳骨はいくつになっても痛かった。


「……たく、何とかなってたからよかったものの、下手すりゃ大事故起こすとこだったんだぜ。分かってんのか?」


「……悪い」


 素直に謝る。……と見せかけて、何もかもを隠してるんだけどな。本当にすまないと思う。


「それでさ親父。俺、ディハルマ学園に行きたいと思ってるんだ」


「……何でそんな学園のこと知ってんだ?」


「……」


 黙る。仕方がない。言うことが出来ないんだから。やがて親父は根負けして、溜息を吐く。


「仕方ねえな。願書は俺が取り寄せてやる」


「……助かる」


「いいってことよこれも親のお節介だ……後は」


「ちょっと! それってどういうこと!?」


 バタン、と大きく扉が開かれて現れたのはリリエットだった。


「盗み聞きまではいいとして、そこで飛び出してくるような短期に育てた覚えはねえぞリリエット。商人たる者もうちっとしたたかにだなぁ」


 娘に対する物言いだろうか。


「そんなことはどうでもいい! シオン……あんた、この家、出てくつもりなの」


「……そうだ。それの何が悪い?」


 当たり前だ。俺は、元々あの場所の住人だった。それが戻るだけの話だ。


 なのに……何で俺はこんなに動揺しているんだろう? 何で余裕で受け答えできず、ぶっきらぼうになっちまうんだろう。


「……!」


 リリエットは俺の胸ぐらをつかんで必死の形相で睨みつけてきた。


「……っ!」


 そして、バッと手を放し、バタンと乱暴に部屋を出て行った。涙の跡を残して。



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