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城でギルド革命?

目の前には古都フェブリスを治める王、フェブリス三世ことラース・フォン・フェブリスがにこやかな笑みを浮かべて金色のカードを差し出している。周りにいる護衛の兵士がその様子を直視し一切目を逸らそうとはしない。そんな状況の中、金色のカードを差し出されているサタンはあまり乗り気ではないようで金色のカードを受け取ろうとしない。この金色のカードの名称は『ギルドマスター証明書』といい、読んで字のごとくギルドマスターであることを証明するカードなのだ。そしてサタンは嫌々ながらも王の前ということもありそのカードを受け取る。この瞬間、傭兵系ギルド『銀の剣シルバーソード』が誕生した。

とここで何故サタンがギルドを作る事になってしまったを説明する為に時間を遡ろうと思う。

そうアリシアを教会で起こした時まで・・・。



二、三回ほど呼びかけるとアリシアはゆっくりと瞼を開き、辺りを確認し始めた。段々と意識が覚醒し自分の目的を思い出す。

「サタン・・・何故私はここにいるのだ?それに敵は何処だ?」

サタンはアリシアの様子に苦笑しながらも、人型魔物の存在は避けて、背後から盗賊系のギルドに襲われたと嘘の説明をした。「そこら辺の盗賊系ギルドの奴等に負けるはずが無い」と反論を漏らしていたアリシアだったが事実自分が気絶させられたということもあり渋々納得した。

そしてアリシアを起こしたサタンはアリシアと一緒に古都フェブリスに向かって歩き始めた。少し歩いたところでアリシアがサタンに話し掛け始めた。「これからどうするんだ?」とか「ギルドマスターのいないギルドは解散を余儀なくされてしまうんだぞ」とか「私の入っているギルドに入らないか?」とか、だがサタンはその全てに曖昧な返事をするだけだった。

とそこでサタンは重大な事に気付く。

「アレンとリリィにも連絡とらないと・・・。」

思わず声に出してしまっていた、が本来はたいした問題じゃなかった。何故なら殆ど一人でいることが多かったからだ。だが今は隣りに歩いているアリシアがいて・・・。

「アレン?リリィ?何処かで聞いた事があるのだが・・・知り合いか?」

と思ったとおり食いついてしまった。後悔しても始まらないので簡単に説明する事にする。

「俺とアレンとリリィとミランは三年ぐらい一緒にパーティー組んでいた仲なんだ。まぁ、ある任務が終わった後パーティーを解散して、みんなそれぞれのやりたい事を始めたから二年くらい会ってないけど」

とサタンはその頃を懐かしむように空を見ていた、その目は薄っすら涙で潤んでいるようにも見れた。

「そうなのか・・・ところでお前は今何歳だ?」

何故歳を聞く必要があるのか分からなかったが別に隠す事でもないのでサタンは教えた。

「十七だな、お前は?」

サタンがそう聞くとアリシアは急に不機嫌になりながら答える。

「お前と同じ十七だ、それよりも女性に対するエチケットがなってないな」

そう言って早歩きで進んで行くアリシアをサタンは同じ速さで追いかけていった。

少し経つ頃には古都フェブリスに二人は着いていた。

アリシアの「これから何処へ行くんだ?」という質問にサタンは「城」と簡潔に述べ城まで最短ルートを歩いていく。とそこでサタンは立ち止まってアリシアに振り向いた。

「ここからはついて来ないで良い・・・危険だしな」

そう言ってサタンは城に向かって人を縫うように走っていった。

「ついて来ないで良いか・・・でもついて来るなじゃないから別にどっちでもいいわけだな?」

アリシアはそう結論付けると城に向かって走っていった。

数分としないうちに城に着いたサタンはすぐさま兵士に王への謁見を求めた。兵士達は「馬鹿な事を言うな」と怒鳴ったがサタンが懐から何かを出そうとしていたので警戒心を強めた。ところが見事なまでにサタンは硬直し動かなくなった。そして首だけ下に下げると・・・。

「ギルド会員証がないっ!!」

と絶叫した、そこでサタンは思い出す・・・『黄昏の騎士』の本拠地でサタンがアリシアに渡してしまったことを、すぐさま取り返しに戻ろうとして・・・何故か後ろに立っていたアリシアと目が合う。

「ア、アリシア・・・ギルド会員証返して・・・。」

土下座するような感じで頭を下げるサタンにアリシアは呆然としつつポケットに先ほどまでしまっていた・・・はずのサタンのギルド会員証がない事に気が付いた。

「すまない、落としたようだ」

サーッと白くなっていくサタン、とそこでアリシアが驚くべきことを口にする。

「王に会いたいのなら会わせてやるぞ、無くしてしまったのは私の責任だしな・・・。」

無理だろうと思いつつサタンは兵士達に近づいていくアリシアを見ていた。するとどうだろう、アリシアが自分のギルド会員証を見せて数回言葉を発すると兵士達の顔が真っ青になり道を開けた。そして一人の兵士が王の所へ走っていく。

「よし、サタン行くぞ」

「お、おぅ・・・。」

アリシアのことが少し気になりつつもサタンはアリシアの後について行った。

「ひさしぶりだなぁ」

サタンは城の中を見ながらそんな言葉を漏らしていた。そして階段をかなり上がり中ほどにある謁見の間に着いた。外見の割りに質素な造りの扉を見て「変わってないなぁ」と言いつつサタンは扉に入って行った。

中に入ると威厳の溢れる王が左右に屈強な兵士に囲まれながら座っていた。王は二人が入るなり立ち上がると「おぉ」と感嘆のような声をだした。

「良く来たなアリシア、弟は・・・オーランドは元気にしているか?」

「はい、お爺様もお父様もお母様も元気です。」

その会話を聞いてサタンは固まる。

(今・・・王・・・アリシアの爺さんのこと・・・弟って言わなかったか!?)

ブツブツ考えているとサタンの方に王の視線が移る。

「それで・・・お前がワシに謁見を求めているという青年か?・・・して名前は?」

「お分かりになりませんか?王、では二年前の事件を思い出してください」

その言葉を聞いて王の顔は険しくなる、そして思い出したようにカッと目を見開く。

「大人っぽくなったから気付かなかったぞ、四英雄の一人サタン・エル・ガルシア。」

王の言葉を聞き周りにはざわめきが起こる。

四英雄、詳しい事も名前も性別も明かされていない四人組みであり、数々の魔物との紛争地域に出向き数々の武功を獲得し、魔物の王とまで呼ばれた魔王を倒した四人組のことを言う。だが真実を知る一握りの人間以外のにとって四英雄とは伝説的な存在であり、軍が作り出した最新鋭の魔王を倒した武器の呼び名とも誰かが魔王が死んだ事を喜び流した噂、とも言われ誰も本当にそのような人物がいるとは思っていなかった。

そんな生きた伝説が目の前にいる、兵士達は畏怖や歓喜の入り混じった思い出サタンを見ていた。

「大人っぽくなっただなんて・・・そんな老け顔に見えますか?」

と笑いながらいう様子は全くそんな感じを見せなかった。と次の瞬間、謁見の間の空気が変わる。

ゴクリの王もその他の兵士も生唾を飲む、アリシアは先ほどまでずっと一緒にいたサタンが急に別人になったような感覚を覚える。

「何があったのだサタン、お前は滅多に怒らないとよくミランから聞いていたが・・・。今のお前の心はまるで鬼神だぞ」

まるで子供を諭すように言葉で語りかける王、その言葉を聞いてから数秒後謁見の間の空気が元に戻る。

「これを見てください」

そう言ってしわくちゃになった、あの手紙をサタンは王に差し出した。

それを受け取って目を通す王の表情が段々と険しくなっていき・・・手紙を破り捨てた。

「そうか・・・四英雄の英雄王が・・・。」

無言で頷くサタン、周りの兵士達は何も分かっていなかったが、手紙を見たアリシアには理解で来ていた。

(ミランも四英雄だったんだ、じゃあアレンとリリィって人たちがもしかして・・・。)

「残りの二人が心配じゃな・・・見てきてもらえるか?」

「最初からそのつもりでした。ここへよったのはこの情報を他の都市にも伝達して欲しかったからです。」

そう言うとサタンは謁見の間を出ようとした・・・ところが、手を掴まれて立ち止まってしまう。

掴んでいたのは王だった。

「サタンよ・・・お前に頼みたいことがある。」

王が頼み事なんて珍しいと思いサタンは口走ってしまう。

「お世話になっていますし何でも聞きますよ」

と・・・。




そして時は戻り物語の初めに戻る。

頼みと言うのはミランが死んでしまったために『黄昏の騎士』が解散し一つギルドの枠があいたのでギルドを作って欲しいということだった。最初は反論していたサタンだったが、「他のギルドを作るのを申請している人間は弱い」や「王の一生の頼みだ」や止めの「先ほどなんでも聞くと言ったではないか」で引き受ける事になった。ギルド名の『銀の剣』はサタンが持っていた剣から名付けられた・・・。

そして現在作ったと同時にギルドを抜けこちらのギルドに入ってきたアリシアを旅の供にして英雄の一人であるアレンのいる都市、大都市パラガラへ向かって行ったのだった。


とここで補足だが王様はアリシアの同行を最後まで反対していた。

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