始まりの革命は静かに始まる
青い空、白い雲、大地に広がる草木、青年はそんな風景を味わいながら足を進めている。
青年の服装は全身黒ずくめでいかにも怪しい雰囲気を放っているが、青年の、寝癖の目立つ黒髪、きりっとした眉毛、眼鏡の奥に映る眠たそうな黒い目、やる気の無さそうな顔、というだらしない格好により不思議と警戒心を周りにもたせていなかった。
その視線の先には結構大きな村があり、青年がその村に行こうとしているのは何処からどう見ても明らかだった。
「お腹減ったなぁ〜・・・でもお金がないし・・・さてどうしよっか・・・」
・・・すみません、どうやらあんまり行く気はないようでした・・・。
とそこで青年は肩に掛けたバックの中から鍋を取り出し、水を入れ・・・そこら辺にある草を煮詰め出した。
「は、ははっ・・・草って食えるかも・・・。」
そんな早まった事をしている青年の口からは涎が光っていた。どうやら本当にお腹が減っているらしい・・・それも草さえも食えると思うほどだ。
そして青年がぐつぐつ煮え立った草をマグカップに移し、口をつけようとしたときに事件は起こった。
「キャァアアアア!!」
女の悲鳴が辺りに響いた、青年は悲鳴の聞こえた方を睨みつける。そして何か行動を起こす・・・・・・・・・と思ったらもう一度マグカップの中身を鍋に戻して
「少し煮込みが足りなかったかな?」
と言って鍋をかき混ぜ始める、とそこへ一人十五歳ほど女の子のが走ってきた・・・それも後ろに魔物を引き連れて
「た、助けてくださぁい」
そして肩で息しながら女の子が青年の後ろに隠れた。
「あのさぁ・・・俺って今お腹空いてるんだ・・・だ・か・ら・・・無理」
そう言って鍋の中身を青年が移そうとしたときだった。
ガシャンという音とともに迫っていた魔物の成人男性の胴回りほどある足が鍋を踏み潰した。
「お、俺の・・・朝飯が・・・。」
踏み潰した足の持ち主である魔物には目もくれず足元にある、朝飯|(?)の残骸を必死に集めている。
「グカァアアア」
雄たけびとともに魔物の爪が青年を襲う、がその腕は宙に舞った。
わけもわからず呆然としている魔物だったが自分の腕が回復しない事を知ると後方に飛び退いた。
「よくも私の妹を・・・許さんぞ魔物」
そう言って魔物と二人の間に立ちふさがったのは、紅い腰に掛かるほどの髪が印象的な女だった。
「アリシアお姉ちゃんっ!!」
そう言って抱きつこうとする女の子を青年は止める。
「君が言ってもお姉さんの邪魔になるだけだよ・・・それにしてもあの魔物の傷が治ってないところを見ると・・・革命者?」
青年が考えているとアリシアと呼ばれた女は高らかに叫んだ。
「魔物よ、良く聞くがいい。私の名前はアリシア、貴様等の天敵である革命者だ。そしてこれが私の能力『紅炎の剣』だ」
そう言ってアリシアの左手が紅炎に包まれ紅炎はその形を剣へと変えていく。
そしてアリシアは魔物に走り寄ると素早く剣を魔物の胴へと叩き込み、魔物の身体を焼き切っていった。そして真っ二つに魔物を切り裂くと魔物は激しい炎に包まれ灰となった。
「メア、遅れてすまない・・・。」
アリシアはそう言って女の子を撫で始めた。メアと呼ばれた女の子は目に涙を浮かべながらアリシアに抱きついていた。
「それで・・・お前は誰だ?」
急に目を細めて青年を睨みつけるアリシア、その目には軽く殺気が映っていたが・・・。
「俺の名前なんていい・・・それよりもそこをどけっ!!俺の・・・俺の飯がっ!!」
そう言って青年はアリシアの足元にあるグチャグチャの緑色のものを集めている・・・なんだかいろんな意味でやばい・・・。
そんな青年をアリシアは冷ややかな目で見て一言
「そんなものが飯なのか?というよりただの草ではないか・・・もしや金がないのか?もしお前が私の家で手伝いをすると言うなら・・・三食の飯と寝床、そして多少の賃金は用意してやるぞ?」
その言葉にピクリと青年は反応し頭を下げて一言
「どうかよろしくおねがいします」
「うむ」
満足げに頷いてからアリシアはメアの手を引いて村に向かっていく、そしてボーッとしている青年に
「ぐずぐずしていると置いていくぞ」
「あっ、了解」
そう言って青年はアリシアの下に走っていった。
「それで・・・お前の名前は?」
「俺?俺はサタン」
「サタン?変な名前だな」
アリシアは軽く笑みを浮かべると村に向かって歩いていった。




