挿話2 ――きのあわないあいつからのふみか――
戦巫女が何をするかって? それは勿論、戦いだよ。銀、金、あるいは黒。それぞれの国の色を帯びた武器を、自分の意志で生み出して使うの。
アタシが愛用したのは、銀の斧。
物騒? あはは、確かにそうかもね。でも、戦巫女の特別な力で重さも感じないし、威力は竜の首をちょん切るくらいある。ぶん回すには最適だった。
そう、戦巫女には色々特典付きだったよ。人間離れした能力がもらえるんだ。そこのところは人によって違うらしいけど、アタシは、さっきも言った通り、武器をぶん回しても全然疲れないし、空中を身軽に蹴って動き回れる、超人的身体能力をもらえた。
その力で、国の兵隊さん達と一緒に、国内の魔物退治をするようになったんだ。
そう、魔物。その時世界には魔族の脅威があった。人間と魔族は戦い合って、どっちが滅びるかの瀬戸際。
でも、アタシは、戦巫女の超能力に調子に乗って、自分の思い通り以上に身体が軽く動くのが楽しくて楽しくてしょうがなくて、斧を振り回してはけらけら笑いながら魔物を倒してた。
まあ、そんな風に調子こいてたから、ある日失敗しちゃって。空中で体勢を崩して、あいつの上にドスンと落っこちたんだ。勿論あいつは「ふざけているからだ年増」ってカンカン。アタシはアタシで、いつもあいつと喧嘩ばっかりしてるから、素直に謝る気が起きなくて、あいつの腹にパンチ一発食らわせた訳。
乱暴? ……うん、返す言葉もございません。
だからアタシも反省したんだよ。後できちんと謝ったら、あいつは腕組みなんかしながらそっけなく「もういい」の一点張り。ちゃんと頭下げたのに何て態度だって、また腹立ったんだけど、今度はパンチを食らわせなかった。
ところが、それからしばらくしたらね、部屋に手紙が届いてたの。それがまた傑作でさ。詩みたいな文章が達筆で書いてあるの。まるで愛の告白だよ。
いまだに一字一句暗記してるから、たまにあいつの前でそらんじてやるのよ。その度に、あいつは顔真っ赤にして、やめろやめろって耳塞いで大騒ぎ。
だから父さんは母さんに勝てないのよ。ふふん。