表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/58

挿話1 ――むかしむかしのはなし――

 今夜は昔話をしようか?

 違う違う、いつもの御伽話じゃなくて、本当にあった話。

 父さんと母さんの、なれそめだよ。

 ……なにそんな嫌そうな顔してんの。あんた達が聞きたがってた事でしょ。そろそろ話してもいいかなあって歳に、あんた達がなったって事よ。光栄に思いなさい。


 父さんと母さんはね、遠い遠い国で出会ったんだ。父さんはその国の王子様だった。

 あれは母さんが……アタシが、当時の彼氏にフラれてやけっぱちになってた年末。一人でやけ酒飲んで、ぐでんぐでんに酔っぱらった帰り道。よったよった歩いてたら。マンホールの蓋が開いてて、そこに落っこちたんだ。

 さすがにそのまま死ぬかと思ったね! 下水道のコンクリートに頭ぶつけて。

 でもアタシは死ななかった。落ちて、落ちて、気づいたら、とても日本とは思えない場所に辿り着いてた。

 テレビで見た事あるでしょ? 外国のお城。あんなかんじの、すべすべの大理石で造られて、きらっきらのスレンドグラスが光る神殿に、アタシは背中から落ちて、「痛ーッ!!」って思いっきり悲鳴あげたよ。酔いもすっかり吹っ飛んだね。

 くらくらする頭をおさえながら起き上がったら、更にびっくりだよ。青い髪に金色の瞳をしたひらひらドレスの女の子が、心底嬉しそうな笑顔でこっちをのぞき込んで、開口一番言ったのよ。

「戦巫女様!」

 って。

 何だそりゃ、って呆気にとられてぽかーんとしてたら、もう一人入って来たの。やっぱり青髪に金色の瞳の、すごい整った顔をした男。そう、よくわかったじゃない。あんた達の父さんよ。若い頃はそりゃあもう、びっくりするくらいの美形だったんだから。

 だのにあいつったら、綺麗な顔していながら、アタシを一目見るなり何て言ったと思う?

 すんごい残念そうに顔背けて、ボソッとこぼした言葉。いまだに忘れてないわ。

「何だ、今度の戦巫女はこんなに年増だったのか」

 だよ! アタシはあの時まだ、二十八だったのに!


 ともかく、アタシとあいつが出会った、その国の名前が――

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ