1/58
プロローグ
女神の創世神話を描いたステンドグラスの窓から差し込む陽光は、決して強くはないのに、じりじりと身を焦がすようだ。まだら模様の大理石の床に両手をつき、荒い息を洩らす。力を込めて拳を握り締めると、爪が肌に食い込んで血がにじんだ。
やはり駄目なのか。自分では。女の身ではない、王家の者たる資格すら有さない自分では。
――いや。必ず果たしてみせる。
自分で自分を抱き締め、心を奮い立たせると、彼はこの静かな神殿中に反響する声を張り上げた。
「――戦巫女!」
まるで祈りとはかけ離れた、大音声を。
「俺の呼びかけに応えろ、戦巫女!」