俺は異世界へ逝けない
前書きは何を書くところだろう、まぁ慣れていくまで適当な書き出しで慣れてこう。
俺は無価値な人間だ、勉強もできれば運動もない芸術的な感性も無く努力も特に何もしない。
人に優しくそして人助けを生き甲斐とし小さな頃から生きてきた、恐らく何も無い自分に満足感を得る為だったのか何か特別な人とは違うことができる物と理解していたからだろうか。
一つの価値になると頑張っていた気がした俺はある時に気が付いてしまった、或いは気が付かされた。
そんな物はこの世の中では受け入れられ難い存在だということに。
人を助ければ身代わりにと言わんばかりか自分に降りかかる不幸、人に優しくすれば大半の人間は見下して馬鹿にして利用して都合の良い物のように見られ扱われる。
俺は願うように言葉を呟いた。
「はあ、漫画やアニメの主人公みたいになりたかったな」
夏の陽射しの中で焦げながら街をふらついてる男が一人、亡者のように彷徨っている。
仕事や人間関係など上手く行かずに全てを投げ出して成人にもなりさらに数年、ひきこもりを続けて何もかも嫌になっていた。
家族間とも良い関係という訳でも無く今は死に場所を求めて家を出て歩いている。
「俺が主人公だったらここでどーんっと名場面が起きて異世界にでも行くんだろうな」
軽い口を叩く元気はまだあるみたいだと彼は自分で少し可笑しくなり笑顔になった。
「おにーちゃんのかお、きもいね!」
唐突と突きつけられる現実それは人それぞれだが、瞬間的に現実へ叩きつけられたのは初めてだろう。
それは小さい子の言葉であったからなのかもしれない、彼は驚きと同時に恐怖を覚えた。
衝撃を隠せない彼は逃げ出したくなるも、小さい女の子が言うことだと自身に暗示を掛けどうにか自分を保とうとしている。
「こ、こらこらいきなり失礼だぞ、世の中変な人がいるから気をつけたほうが良いよ」
できる限り冷静かつ紳士的な対応をしていると内心で自画自賛した、少女はこちらをしばらく見つめその後すぐに去って行った。
安堵と同時に少し落ち込んだ様子でまた彼は死に場所を探し歩き始めた。
そして、しばらく街を歩き景観を眺め信号待ちしてる中で彼は見つけた。
「うげっ、またあの娘だ」
思わず漏れた言葉の音が自分へ再確認させるよう危険信号を送った。
「はぁ、情けない小さな女の子にびびるなんて……」
また関わると酷いことを言われるかもしれない恐怖に、彼は見つからないように違う道へと進もうとした時だった。
「きゃあ!!」
モモンガが木から飛んできて小さな女の子の背中を押し出し、信号間の道路に突き出した。
信号は未だ赤信号のままだ、俺は人助けの癖で咄嗟に女の子を救おうと急ぎ駆け出した。
道路先を確認して見ると向かい側からトラックが走行して来るのがわかる、不幸というものはどうしてこう続いて来るのだろうと頭の中で思いつつも全力で走り駆け寄り助け出そうとする。
「間に合ってくれええええええええ」
何かに一生懸命になる時は人は周りなど気にせず、ただ一つに向かって全力をあげる。
そんな物を見つけたような気がした俺は女の子の盾になるようにトラックに撥ねられた。
「きゃああああああああ」--響き渡る人々の悲鳴や叫び
事故が起きたのだと、軋んだ身体と失いそうな意識の中ではっきりと俺に伝えてくれる。
(女の子、女の子は大丈夫なのかな)
言葉に出ないが自分の意味の一つであった物が護れていたのか最後に確認したいと思った。
「びぇえええええええええええええええええええええええええええええ」
小さい女の子の泣き声だ。
恐らく驚いて泣き出してしまったのだろう、だけどその泣き声は今の俺にとって最高の音の贈り物だ。本当に護れて良かった。
(神様が最後に俺の命に意味を与えてくれたのかな、ありがとう。もしも生まれ変われるなら....)
--自分が最強主人公の物語で異世界に転生したいな--あとハーレム欲したい。
少し贅沢かなと考えつつ、そのまま眠るように意識が堕ちていく中でそれは突然現れた。
熊のような山男だった、そして轟き叫ぶ様な声を出した。
「兄ちゃん、大丈夫かあああああ!? おい、しっかりしろぉ!!」
思わず意識が少し戻った--が未だに死に絶えそうではある。
運転手のトラックの人だろうか、恐らく人を撥ねたのに気が付き急ぎ出て駆け寄ったのだろう。
「おっちゃんに任せろォ病院に連れて行く、絶対助けてやるからな!お嬢ちゃんも病院で診て貰うぞ!!!」
普通の人ならば事故を起こせば動揺しまるで責任から逃れる人が多々であるだろうに、その熊のように大きい男はとても人情味溢れていて色々な意味で大きい人間だった。
「びえええええええええええええええええええええええ」
泣き止まない女の子は微動だにせず、その場から動けないでいた。
「お嬢ちゃん車の助手席に飴ちゃんあるから、それ舐めてなぁ!!!俺は兄ちゃん運ぶから車まで!!」
いや、それは無理だろ、飴とかで混乱してる小学生ぐらいの女の子が冷静になる訳が無い。
「まじかよおやじ、飴貰うぜサンキュッFooooooooo!!!!」
驚愕だった死に逝く中で俺は世界の広さを再確認させられてた。
そして俺は熊男に運ばれ車の席に連れてかれた。
(もう駄目だ意識が消えそうだ、俺はこのままできることなら死んだ後は異世界で最強主人--)
「おい、兄ちゃん頑張れすぐ病院に着くからな!!死んで異世界とかで最強主人公とかさせねぇからな!」
まるで心を読んだかのように熊男は俺へ的確な言葉を投げかけて驚きの調味料を振りかけ意識を保たせた。
「おい旦那、この地図でナビしてやっからそのきもいおにーちゃんを病院に最速で連れてくぞ」
助手席に座る先程まで泣いていた小さい女の子、飴を舐め咥えて男らしくなってた。
車は人を変えるって言うし俺は何も考えないことにした。
「おう、お嬢ちゃん助かるぜ!!なんだもしかして、この兄ちゃんに惚れたか!!はーっはっはは!!!」
からかう様に熊男は小さい女の子に向かって豪快な笑い声をあげた。
「ば、ちげーし、きもいんだよそーゆーの、助けられたからな借りを作りたくねぇんだよ」
何だこの女の子もしかして子役か何かだろうか、テレビで以前よく目にしていたスーパー小学生などそういった類の子なのかもしれない。
俺は思い出した、あのテレビを見て酷く劣等感を覚えたのを。
自分は何もできないのに小さい子供達は凄い才能の片鱗を魅せつけてくる、すぐにチャンネルを変更した。
(走馬灯のようだ、昔のことを思い出すなんて、いよいよ俺も死ぬのかな異世界でハーレムに作りた--)
「きもいにーちゃん、おまえどーていだろ生まれ変わってハーレムとか作れねぇからこれで我慢しろ」
そう言って小さい女の子が舐めかけてた飴をぐったりしている俺の口の中へ突っ込んできた。
「わたしみたいなちいさい女の子の舐めてた飴だぞ間接キスだよ、どーていのにーちゃんには嬉しいだろ」
悔しいが確かに童貞である俺にとって、例え小さい女の子であっても異性である故に嬉しい。
やっぱり悔しい。ビクンビクン
こうして熊男と小さい女の子の的確な言葉の投げかけによって俺は死んで転生することなく異世界にも行くこともなく無事に病院で治療を受け入院したのだった。
あの2人は今でも見舞いに来てくれている、どうして俺を助けてくれたのか興味本位で聞いて見た。
熊男の人は俺にこう答えた。
「はっは!!人を助けるのに理由はいるか!?なんてかっこいいこと言うと思ったか?違う、俺はお前がこの世界で必要な人間だと思ったから全力で助けたかった。」
俺は疑問に思った、この男は優しさや人情で人を助けたのではなかったのかと。
「この腐った世の中だ、色々な悪い物がある。その中でお前は命投げ打ってでも義しいことをした俺はその力の分だけ全力でお前に答えた結果なだけだ。」
熊男のおっさんよくわからないけど凄いよ、でもわからない俺は。
小さい女の子はこう答えた。
「きもいおにーちゃん、おこらなかったでしょ?それとそのあとたすけてくれたから嬉しかった」
彼女は歳相応に答えてくれた、これは演技なのか俺にはわからない。
異世界には行けなかったけど俺はこれで良かったのかも知れない。
死ねるまで人助けや優しさを振りまいて、この世界を少しでも変えてから次の世界に逝こうかな。
とりあえず、今は暇なので勢いで適当な作品作って慣らしてのんびり自分の妄想を書き出したいかな。