血の狩人
今年の二月頃に深夜のテンションで書いた小説の一部を短編にしました。
夏の蒸し暑いジャングルの夜。冒険者が張った天幕に、俺はゆっくりと忍び寄った。
見張り番の男が外で、歩き回っているが問題ない。俺に掛かれば簡単に天幕の中へ忍び込めるだろう。
俺は元々日本人で、ごく普通の生活を送っていたのだが、ある日、交通事故に遭い、死んでしまったのだ。
トラックに轢かれたのかどうかは正直覚えていないが、所謂テンプレの転生トラックという奴だろうか。
そして俺はファンタジーな世界に転生し、ここにいる。
まさか異世界で冒険者を相手取る事になるとは思ってもいなかったが、こうなっては仕方がないだろう。
俺は覚悟を決めて、行動を開始した。
自らにサイレントの魔法を掛け、見張りの男が欠伸をしている隙に、隠れていた木陰から飛び出し、天幕へと滑り込む。
中には剣士の男と魔法使いの少女が無防備に寝転んでいて、スヤスヤと寝息を立てている。
俺の目当てはこの魔法使いの少女だ。
少女は茶髪のショートヘアで、端正な顔立ちをしている。
(ひゅー、もう我慢できないぜー!)
少女を見た俺はもう本能に逆らえそうもない。
俺は手始めに少女の薄い唇へ口を押し付けた。
そして俺はそこに唾液を送り込む。
この変態的でディープな行動は絶対に外せない。
やらねば俺の命に関わる程だ。
少女は顔を顰めながら身動ぎするが、構わず俺は唾液を送り込む。
そろそろ次のステップに入ろうじゃないか。
今度は俺の唾液と混ざり合った少女の体液を吸い上げていく。
俺は吸い上げた体液をゴクゴクと豪快に、それでいて味わいながら飲み込んだ。
(ああ、何て幸せなんだ……。生きていて本当に良かった)
俺は満足いくまで少女の体液を飲み込んだ。
唾液を送り込んで、それと混じった体液を吸い上げる。その繰り返し。
しかし、突如その極上な時間は終わりを迎えることになった。
少女が今にも起き出しそうになったのだ。
(まずい!)
そう思い、俺は咄嗟に天幕の隅に逃げ込んでインビジブルの魔法を使う。
これで俺の姿は見えなくなった筈だ。
少女は起きてから、不機嫌そうに唇を掻いてから
「もう、最悪。蚊に刺された……」
と言った。
そう、俺は蚊だ。
本来蚊は雌しか血を吸わないが蚊だ。
このファンタジー世界の蚊は、人間や魔物の血液を通して、魔力を吸い上げ、魔法の技能や練度をコピーし、上げていく性質を持っているらしく、雄だろうが雌だろうが関係無く血を吸うのだ。
魔法使いの少女を狙ったのも俺の魔力量の上昇と技能の取得、序に腹を満たすのが目的だったからだ。
唾液を送り込んだのも勿論、性癖とかでは無く、吸い取った血液が体内で凝固してしまうのを防ぐため。
先ほど使ったサイレントやインビジブルの魔法も、人間やエルフの魔法使いからコピーしたもので、かなりの練度まで鍛え上げる事が出来ている。
どうやらこの少女、中々の手練れらしく、テレポートの魔法を持っているみたいだ。
え?何故分かるかって?
たった今コピーしたからさ。
魔力探知を使われる前に、早速手に入れたこのテレポートの魔法で逃げるとしよう。
アディオス魔法使いの少女よ。
君の血液美味しかったぜぇ!
無音で目視不可能。おまけに瞬時にその場から消える事が出来る蚊……考えたくねぇ




