第六話 幼馴染の策略
これもぱっと思いついた話です。
私の幼馴染はとっても綺麗な女の子ととっても優しい男の子。
私、朱美と莉穂ちゃんと修斗君は同じ年のご近所さん。
そういうこともあって、保育園から高校の今までずっと仲良くしてきた。
ずっと、おんなじ学校で、ずっと一緒。
莉穂ちゃんは、とっても綺麗で明るくて、頭の良い女の子。
私の自慢の親友。
修斗君はスポーツが出来て、周りの人への気配りが出来る優しい男の子。
実は、ずっと好きだった。
だから、二人が付き合うことになったと聞いた時も、寂しくて少し哀しかったけど、当然だと思った。
莉穂ちゃんは誰よりも素敵な女の子で、修斗君は誰よりも素敵な男の子。
二人が惹かれあうのは当然で。
わたしは二人が何よりも誰よりも大好きだから、そばにいられるだけで嬉しいから、だからこの気持ちは内緒。
気持ちの切り替えなんてすぐには出来ないから、邪魔はしないから、だからまだもう少し、このままでいてもいいよね……?
大人になって、二人が結婚する頃には、きっと気持ちの整理がつくと思うから……。
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「今日の朱美も、とってもかわいかったー。調理実習でのエプロン姿、あんな似合う子は他にはいないわー。私は食べる専門だけど。クッキーもらったわよ、食べる?」
「俺ももらったからいらないよ。っていうか莉穂、お前も女なんだからスカート姿のまま胡坐で座るのやめろよ」
「うっさいわねー、スパッツ穿いてるからいいでしょ」
「そーゆー問題じゃねーよ」
「細かい男ねー。莉穂はこんな男のどこがいーのかしら?」
「それをお前が言うか! ってゆーか今頃はほんとなら朱美と彼女彼氏の間柄になってうふふあはは出来ていたはずなのに」
「何をうふふあははって。きもいわよ、あんた。それにあたしが言うまで朱美の気持ちに気がつかなかったくせに、そうなるはずがないでしょ。あの子は自分から言い出せるタイプじゃないし、あんたはビビリンで行動起こせたはずないし」
「……うっせーよ」
「もうちょっと待ってなさいよ。高校卒業するまでは。あたしアメリカへ留学して将来的には渉外弁護士になるから。その為にはやること多くて、余計な暇はないのよ。なのに、勘違い野郎どもがうるさいったら。寄ってくる男どもの虫よけにはあんたと付き合ってるってことにするとちょうどいいのよ」
「俺の人権は!」
「そんなものは知らんわ」
「うう……、こんなことしてる間に朱美がもし他の男と……」
「その可能性はほぼないって言ったでしょ。朱美は今時信じられないくらい純で一途だし。万が一万が一のことが起きたらあたしが潰してやるわよ」
「こ……怖え女」
「ざかあしいわ。それにあんたと朱美なら死ぬまで待ってたって進展しなかった関係を、高校卒業時には一足飛びに取りまとめてあげるってのと交換条件だったでしょ」
「べ、別にそこまで待たなくったって、朱美に俺が告白すれば」
「あの子に親友の彼氏を盗るなんて芸当できるはずないでしょ、約束破ったら朱美には勘違いさせたままにするわよ」
「ひ、ひでえ」
「ちゃんと待ってれば最後はこれまでの経緯も全部暴露して、朱美に罪悪感なんて抱かせないようにするから、おとなしくしててよね。もー、面倒ねー。もしあたしが男なら朱美はあたしがもらっちゃうのにー」
「……お前が女で本当に良かったよ。男だったら敵う気しねえ」
「ふふん、そうでしょう? あたしはね、海外を飛び回るやり手の弁護士になりたいけど、だけど、疲れた時帰る先も欲しいのよ。そこは、あんたと朱美のそばがいいわ。だから、協力は惜しまないわ。ああ、そうだ、結婚して新築の家建てる時は費用援助するからあたしの部屋も一室用意してよね」
「何年先の話だよ?」
「あら、朱美と結婚したくはないの?」
「それとは話が別だ!」
「ふふん、同じよ。きっとあっという間よ。……だから、ね、一生の内のあと少し、あと少しだけ、あたしに『三人』の時間をちょうだいよ」
「……莉穂」
「はい、この話はおしまい。じゃあまた明日ね、修斗」
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そこから先、高校卒業時朱美と修斗の仲を取り持ち莉穂がアメリカへ留学し弁護士になり、二人が結婚した後新築した家にはきちんと莉穂の部屋が用意されたことなど、莉穂が宣言した通りに運ぶ事に莉穂が満足し朱美が喜び修斗が戦々恐々としたことなどは、また、別のお話。
今回もお読み頂き、ありがとうございます。