第二話 何でもない話
本当にオチなしヤマなしの何でもない話です。
「おー、こんちわ」
「あ、はい」
「まいったよなー、急に雨降りだすんだもんよ。ここに雨避け出来る軒下あってよかったー。なあそう思わん?」
「まあ、そーっすね」
「ところで、今日ちょー暑くね?」
「あー、そーっすね」
「だよなー。あ、今コンビニでアイス買ってきたんだけど食う?」
「いや、いいっす」
「そ? 俺は食お。はー、つめてー、うめー。……もう一本あるけどいらん?」
「あー、まじいいっす」
「そっか。じゃあそっこー食っちまお。融けちまうもんなあ。……げっ、手についた。べとべとじゃん。なあ、テッシュとか持ってねー?」
「あるっすよ」
「一枚くれる?」
「いーっすよ。そこの街頭で配ってたもんだし、これまるごと」
「まじ!? おま、ちょーいい奴。ありがたくもらうわ。サンキュー」
「いえ」
「なー、最近どーよ?」
「最近……すか?」
「そー。俺は駄目だなー。駄目駄目ループ入ってるわ、やってられん」
「そっすか」
「そーゆー時どーすればいーと思う?」
「……さあ」
「だよなー。わかってりゃ世話ねーわ」
「はあ」
「おまえ元気ねーな。もっとハキハキしねーと女にモテねーぞ?」
「……はあ」
「まあ、そーゆー俺もデリカシーねーってモテはしねーけどなあ! はっはっはっ!」
「はあ」
「あー、そーだ。ガムも買ってきてたんだった。食うかー?」
「いや、いいっす」
「ふーん、遠慮しいな奴だなー。俺寂しーじゃん」
「えーと」
「寂しーって言えば、兎は寂しーと死んじまうってあれマジかな?」
「さあ、知らねーっす」
「だよなー。あ、その腕時計かっけーな。高い?」
「いやそんなには」
「へー。俺も今欲しーのあんのよ。バイト代で買っちまうかなあ」
「はあ」
「お、雨止んできたな。これで帰れるわ。じゃあ、またな」
「……あ」
「ん?」
「あの、……あんた誰っすか?」
「あー? 通りすがりの者だけど」
「……そっすか」
「ああ。じゃあ今度こそじゃーな!」
「はあ」
「何だったんだいったい」
突然話かけてきた見知らぬ人懐っこいあんちゃんと、突然話しかけられて戸惑うにーちゃんのお話しでした。