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おとぎ話シリーズ

チート桃太郎

作者: 青鬼

初投稿です。

むかしむかし、山の奥深くにある村にたくさんの鬼が住んでいました

鬼たちは畑を耕したり、山の動物たちと一緒に歌を歌ったり、宴をしたりと仲良く幸せに暮らしていました

しかしある日、鬼の村にたくさんの人間達がやってきて言いました


「鬼共よ、お前たちの持っている財宝を寄越せ、さもなくばこの村を焼き払うぞ」


鬼は人間に財宝をあげることにしました

彼らにとっては、財宝よりも村の平和のほうが大事なのでした

人間は村中の金銀財宝を奪っていきました

鬼は、再び平和が戻ってきたとホッとしました

しかし、人間たちはその後、来る日も来る日も鬼の村へやってきました

人間は言います


「山を寄越せ、狩りをする」

鬼は山をあげました

木は切り倒され、動物たちも狩られました

鬼は出来るだけの動物を逃がし、木を植えました

鬼は少し寂しくなりました


「畑を寄越せ、野菜をもらう」

畑の作物を根こそぎ奪われました

鬼は一生懸命に山で食べれるものを探しました

鬼は少しだけお腹を空かせなければなりませんでした


「村を寄越せ、われわれが住む」

鬼は村を追いだされました

鬼は山で暮らし始めました

鬼は冷たい地面の上で眠ることになりました

鬼は少しだけ凍えることになりました


ここまでされても鬼は何も仕返ししませんでした

なぜなら鬼は賢く、人間に逆らうと最後には負けるとわかっていたのです

調子に乗った人間たちは言いました


「子供を寄越せ、町で見世物にする」

鬼は断りました

それだけはできない、と

怒った人間は言いました


「この鬼風情が!我々に逆らっていいと思っているのか!殺してやるぞ!」


鬼は言いました


「やれるものならやってみろ!鬼の逆鱗に触れたことを後悔させてやる!」


鬼は人間たちを食い殺し、人間の村を襲い始めました


鬼は魔術を使えました

赤鬼は大火事を起こし

青鬼は川を氾濫させ

黄鬼は雷を落とし

緑鬼は台風を呼びました


鬼はたくさんの村や町を滅ぼし、多くの人間を殺しました

鬼はとても強いのでした

しかし、鬼にも唯一勝てないものがありました、

鉄砲です


鬼は逃げました、船を作り、人間のいない島へと逃げました

鬼はその島を「鬼ヶ島」と名付け、その後1年間、鬼は鬼ヶ島で暮らしました

島での生活は快適で、食料も多くありました

しかし、広々とした山での生活をしてきた鬼には、鬼ヶ島は狭く感じました


そんな中、島の奥深くに鬼の老夫婦が住んでいました

おじいさんは山へ狩りに、おばあさんは海へ魚釣りに行きました

おばあさんがカツオの一本釣りをしていると、

カツオではなくモモが釣れました


「これは大きなモモじゃ、一族皆で分けて食べよう」


おばあさんはモモを鬼の集落へ持っていきました


おじいさんが熊を一頭、鹿を二頭ほど狩って帰ってくると、家には誰もいませんでした

おじいさんはおばあさんの帰りを待つことにしました


おばあさんはモモを持って鬼の集落に着きました


「これはなんと大きなモモだ!きっと美味いに違いない!」


鬼はおばあさんを歓迎し、宴を開き、ごちそうを食べました

さて、宴も終わりにさしかかったころ、いよいよモモを食おうとした時、鬼たちは驚くことになりました

モモの中から人間の赤ん坊が出てきたからです


ある鬼はいいました

「人間の赤ん坊なんぞ殺して食ってしまえ!」


ある鬼はいいました

「いやいや、このままじゃうまくない、大きくなってから食おう」


ある鬼はいいました

「いやいや、人間とはいえこいつは何も知らない赤ん坊。われらの仲間として迎え入れようではないか」


鬼は三日三晩言い争った末、結局、仲間として迎え入れることにしました


その間、おじいさんはずっと家でおばあさんの帰りを待っていました


鬼はその赤ん坊に桃太郎と名付け、愛情をこめて育てました

また、色々なことも教えました

魔術の使い方

武器の使い方

自分が人間だという事も教わりました

そして、人間に奪われた故郷のことも・・・


桃太郎はすくすくと育ち、鬼族最強とまで言われるようになりました

桃太郎が16歳になったある日、桃太郎は鬼族たちの前で剣を掲げて言いました


「皆の衆!俺は人間共を駆逐するべく、この狭い島の中から出る!」


鬼は桃太郎を説得しようとしました、

いくらお前が強いとはいえ

一人では人間にはどうやっても勝てない

そんなことはやめて、島の中で安全に暮らした方がいい

鬼は争いを好まないのでした

しかし桃太郎はいうことを聞きません


「俺はこんなところで一生を過ごすなんて嫌だ!」


自分勝手な桃太郎は、鬼が船を作ってくれたにもかかわらず、魔術で海を割り、海底を人間たちの国を目指して歩き始めました


桃太郎が陸を目指して歩いてる途中、一匹の犬が倒れていました

桃太郎はいいました


「なんだこの犬?」


その犬はよろよろと起き上がり、名乗りました


「犬ではない、我が名はフェンリル」


近くで見ると、とても大きく、20メートルほどの巨大な犬でした

しかし、桃太郎は怯える様子も見せずに

「なぜこんなところで倒れていたのか?」と尋ねます

犬はいいました


「戦神オーディンの息子であるヴィーザルから逃げてきたのだ」


なんでも、そのオーディンとやらと戦い、勝ったものの、その息子であるヴィーザルに殺されそうになったため、一か八か海に飛び込んだ。しかし一週間ほど泳いだところで嵐によって海が荒れ、気が付いたらここに倒れていたといいます


「そうか、それはともかく俺と一緒に人間を滅ぼしてみないか?」


「なんだと?悪いがそんなことはしてられん、助けてくれたことには礼を言う、ありがとう。しかしヴィーザルが追ってきているかもしれないのだ。一刻も早く逃げねば」


犬が身を翻して立ち去ろうとすると、

突然犬は火だるまになりました

火をつけたのは桃太郎でした

犬は慌てて水の壁に飛び込みます

桃太郎は犬を水の中から引っぱり出して冷たい声でいました


「逃がすつもりはない、貴様には俺の配下になってもらう。…それとも体の内側から焼け死んでホットドックになりたいか?」


「貴様、魔術師だったのか!?しかも強力な・・・。いや、魔術師なんて生温いものではない、人間の皮をかぶった悪魔だ!」


「残念、俺は鬼だ」


犬はしぶしぶ桃太郎の仲間になりました

桃太郎は犬に肉団子を一つ差し出しました


「ほらよ、腹減ってんだろ?」


先ほどとは全く変わって優しい声でした

犬は喜んでそれを食べました


桃太郎が犬にまたがって人間の国を目指していると、今度はキジが倒れていました


「キジではないわ、フェニックスよ」


良く見ればその体は炎に包まれており、羽を広げれば15メートルほどもある大きな珍しいキジでした


キジの言うことには、不老不死になろうとする人間に血を抜かれそうになったため、海を越えて逃げてきた。しかし一週間ほど飛んでいたところで嵐によって発生した竜巻に巻き込まれ気が付いたらここに倒れていたといいます


「ところでおれの配下に…」


「いやよ、そんなの」


キジは飛び去ろうとします、しかし突然落雷に会い、墜落しました

雷を落としたのは桃太郎でした


「なら仕方ない、ちょうど鳥の丸焼きが食いたいと思っていたところだ」


桃太郎と犬は舌なめずりをします

キジは背筋に悪寒を覚え、鳥肌になりました

キジはしぶしぶ桃太郎の配下になりました

桃太郎はキジにキビ団子をあげました

桃太郎の手作りキビ団子です

キジはキビ団子のお礼にと桃太郎と犬にそれぞれ一滴ずつ血を舐めさせました

桃太郎と犬は不老不死になりました


再び人間の国を目指して歩いていると、猿が倒れていました

いえ、それはサルではありませんでした

…ヴィーザルでした


「…なんだ、ヴィー猿か」


桃太郎達は猿の横にバナナだけ置いて人間の国へと歩いていきました


ついに人間の国へとたどり着いた桃太郎たちは

早速人間たちを襲うことにしました


桃太郎達は次々と村を襲っていきました

キジは体の炎を使って人々を燃やし尽くしました

犬はその大きな口で人々を飲み込んでいきました

桃太郎はあらゆる災害を引き起こし、人々を殺しました

彼らには剣も槍も鉄砲も効きませんでした

不老不死となった桃太郎たちにもはや敵はいませんでした

人々は逃げ惑い、人間の国は恐怖に包まれました

しかし桃太郎は納得いきません


「まるで俺たちが悪者みたいじゃないか」


桃太郎達はとうとう人間のお城につきました

お城の中から将軍様が出てきて言いました


「あなたがたの欲しいものをなんでも差し上げます、どうか許してください」


桃太郎は悩みました、そもそもここへ来たのは鬼族のためだったからです

桃太郎は鬼族が人間に奪われたものを取り返しに来たのでした


桃太郎は考えた末、将軍の提案を受け入れることにしました


キジはいいました


「誰も私の血を狙わないように、私を神様として崇めなさい」


将軍様はキジを朱雀と名づけ、神として崇めるように人々にいいました

キジは安心して眠りにつきました


犬はいいました


「腹いっぱい肉を食わせろ」


将軍様は何百頭も鹿や猪や熊を用意しました

犬はそれをペロリと平らげ、満腹になりました


そして、いよいよ桃太郎の番になりました

将軍様はどんなお願いをされるのか?と恐る恐る尋ねました


桃太郎はいいました


「山を返してくれ、あとは何もいらない」


将軍様はすぐに山を返しました


桃太郎は鬼ヶ島の鬼を呼び、山へと帰っていきましたとさ


めでたしめでたし

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― 新着の感想 ―
[良い点] 数年ごとに感想が書かれて掘り起こされる、かっこいい黒歴史。だが、それがいい! ていうか、一部が豪華キャストでワクワクした。 最後が地味だと思ったけど、ささやかな幸せっていう深〜い深〜い…
[良い点] 桃太郎がイケメン! ヴィー猿のインパクト。 [気になる点] 初めてフェンリルに会った時の台詞のところ。 しかし、桃太郎は怯える様子も見せずに 「なぜこんなで倒れていたのか?」と尋ねます。 …
[一言] ハチャメチャな世界観で、とても面白かったです。 特に、フェンリルが出てきたときは吹きました。
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