等価交換堂へようこそ(後編)
老紳士の願いを受けて
どうやって妻の寿命を伸ばすのか?
等価交換堂店主は
店を閉めると
直ぐにその足で、
近くにある山の麓に向かった。
その、山の麓にある大きな壁の前で
印を結び九字を切る。
すると今まで壁だった。平面にポッカリと穴が空いた。
今までその穴は
結界により人目に付かない様に隠されていた。
店主は穴の中に入る。
穴の中は広大に広がり、無数の蝋燭が灯っていた。
長いもの…太いもの
短く今にも消えそうなもの…
色んな蝋燭が、
その広大な中を埋め尽くしていた。
店主は蝋燭の居並ぶ前にまでやって来ると…
懐から、先程の老紳士がサインをした契約書を取りだし…
『ああ…これですね』と呟いた。
店主の前には
仲睦まじく2本の蝋燭が並んでいた。
その内の一本は今にも消えそうに灯り…その横には…
然程…長くない蝋燭が寄り添っていた。
『この分じゃ…あと10日程しか持たないな…』と
隣の蝋燭の下を削り短い蝋燭へ継ぎ足した。
『これで良し…』
店主は…その場を後にし、
穴の前に立ち、印をむすんだ。…
すっかり、先程までポッカリと空いていた穴は、姿を消し…元の壁へと戻っていた。
『これであの夫婦はお盆の頃までは、
持つでしょう。』
と独り言を呟き、その場を後にした。
盆の頃を迎えると…ペルセウス流星群がやって来る。
しかも…今夜は極大日だ…
老紳士は辛うじて
意識のある妻と
東向きの窓から空を見上げていた。
夜中の2時過ぎ
次々と夜空に糸を引くように星が降って来る。
寄り添い…手を握る二人の側に…
いつの間にか、等価交換堂の店主が立っていた。
老紳士は驚いたが、店主に会釈し
『有り難う御座います。これで私達の願いは叶いました。どうも有り難う御座います。』『奥様の寿命を伸ばす為に…貴方の寿命を分けました。
それにより…
貴方の寿命ももうすぐ尽きます。』
『そうですか?…
既に思い残す事はありません。』
『では…そろそろ
魂を刈り取らせていただきます。』と
黒いフードを被り
大鎌を手にした。
『等価交換堂さん
貴方は死神だったのですね?』
『恐れる事はありません…
死神は、魂と言う収穫を神の下へ送り届ける農夫なのです。
死神に死を看取られる事は、神の下へ送られる事を約束された事であり…
幸せな事なのです。わたくしが責任を持ってお二人の魂を神の下へ送り届けます。』
『宜しくお願いします。』
『いよいよ奥様の寿命が尽きます。
何か言葉を掛けてあげて下さい。』
『もう十分掛けました。十分に時間を戴きましたから。』
夜が明ける頃
二つの魂が空へ昇っていった。
朝になると老夫婦の遺体が見つかったが手を握り合い
微笑みを湛えていたと言う。』
あなたの街にも
ヒッソリと営業をしているかも知れません。
巷に流通しそうに無いモノを取り扱う。
等価交換堂が…
この話はこれで完結です。
《その男には気をつけろ》で逢いましょう。




