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1話 プロローグ

 超能力が社会に認知されるようになってからおよそ三十年がたった。超能力についてはいまだ謎が多く研究途上の存在だが、一つだけ断言できることがあった。

 ――超能力は男性にしか発現しない。

 事実この三十年間、いや最初に超能力が確認されてから半世紀、超能力を持つ者は全員が男性だった。膨大な研究資料、データによってもそれは証明されている。研究者いわく、遺伝子だの染色体だのが関係しているとのことだ。ほかにもいろいろ細かいことを説明されたが、よくわからなかった。

 話は変わるが、超能力者の学校というものがある。特殊能力者学校――通称〈超能力学園〉あるいは〈学園〉、小・中・高一貫の全寮制国立学校だ。「正しく能力をコントロールできるように」という理由で学生の超能力者は〈学園〉に入ることを義務付けられている。一部で人権侵害だという声が上がっているが、一方で力をコントロールできない未熟な超能力者による事件、事故も起こっており(なお政府が超能力者の〈学園〉入学を義務付けてからこれらは大幅に減った)、大多数の人達からは〈学園〉は概ね支持されている。そして〈学園〉の大半の生徒達も自身の境遇に大きな不満を持っていなかった。


 ――テレビをつけるとわたしのニュースばかりやっていた。

 何となく逃亡犯になった気分だった。いや、別に悪いことをして報道されているわけじゃない。わたしが〈学園〉に入学することがニュースになっているのだ。プライバシーや身の安全を考慮してか、わたしの個人情報は一切出ていないが(国が規制しているのか、マスコミの取材も一切来ていない)、それでもこうも自分ことを延々と取り上げられるのは、気が休まるものではなかった。

 なぜそうなったかというと、ことの始まりは夏休み。わたしは超能力者による、とあるテロ事件に巻き込まれた。そしてテロリストに人質にされ、あげく殺されそうになった。その時だった、超能力が発現したのは。わたしは目覚めた能力によって、難を逃れることができた。

 だが一難去ってまた一難、新たなる面倒事が起こった。世界で初めて超能力を使える女性として、大きなニュースになってしまったのだ。いやま、テロ事件に巻き込まれて超能力が発現、しかもそれが女性。ニュースにならない方がおかしいのだけれども、当人であるわたしにとっては面倒以外のなにものでもなかった。

 さらに政府の偉い人がやって来て、超能力者は〈学園〉に入学しなければならないという説明を受けたり、わたしが中学三年ということもあり、じゃあ中学校を卒業したらにしましょうとなったり(能力や年齢にもよるらしいが、こちらの事情にも配慮してくれるらしい)で忙しかった。そして二週間前――年明け早々わたしは〈学園〉高等部に入学する事が正式に決まり、三日前に政府がそのことを発表して今に至るというわけだ。

 国が保護してくれているおかげか、超能力発現以降わたしの身の回りで大きな事件などは起こらなかったが、それでも先程のように報道されたり政府の偉い人がやってきたりするのは気疲れした。

 ほかにもわたしの気をすり減らすことがある。〈学園〉は超能力者の学校である。そして超能力者は男性しかいない。つまり〈学園〉は、必然的に男子校ということになる。わたし、一条唯は世界初にして世界でただ一人の女性超能力者として、男子校である〈学園〉に通わなければならないのだ。テロ事件のあと、〈学園〉についての説明は受けていたが、改めて言われると不安でいっぱいだった。というより、不安しかなかった。ああ、わたしの高校生活はどうなるのだろうか。




 やがてわたしは世界を左右する出来事に巻き込まれるようになる。あるいはわたしの存在自体がその原因とも言えた。この時のわたしは自分の運命について、まだ何も知らなかった。


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