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72話 採取旅8日目 前

移動開始です。

 意図せず長くなったので(いつものことですが)、前後に分けました。


もうちょっとで帰れる……といいなぁ。どうだろーなー……




 朝、起床した私は名残惜しさもあって周辺をうろついていた。



 片付けは先に起きていたリアンが済ませてたし、テントも皆が起きるまで片付けられないから時間があったんだよね。

出発が早まったから予定していたよりも食材が余っているのは、いいのか悪いのか。



(食材が余ったら普段のご飯に回せばいいだけだから、結果的に無駄にはならないんだけどね)



余り気味なのはお肉だ。


 何せベルを筆頭に全力で色々と狩ったらしいからね、仕方ないというか当然というか。

珍しい所で魔物のお肉もあった。

焼いて食べたら美味しかったから骨とかも取ってある。

スープの出汁にすればいい味が出る筈だし、毛皮は勿論討伐部位も確保済み。

 捨てる部分殆どなかったなぁ。



「あ、こんなところにカムル草生えてる。あそこにあるのってアオ草かな。ここにある薬草って普段結構使うものばかりだから見つけたら採取しておいた方がいいよね」



ポーチから25センチに切って束ねたヒモを取り出す。

 一回分ずつに軽く縛ってポーチの中に入れて置けば取り出しやすいし、バラバラにならなくて便利かなって思ったから急ごしらえで作ったんだけど、さっそく役に立ちそう!



「行商の人が葉物野菜とかこうやって束ねてたから試しにやってみたけど……乾燥させてもいいのはこうやって束ねておこうかな。腰からぶら下げても良さそうじゃない?」



ね!と振り返ると微妙に視線を外している奴隷の子が、数秒してから小さく首を縦に振る。


 彼の足には新しく巻いた布。


早く靴を買って渡さないとこっちが落ち着かないし、と観察していると黒く変色した方の足を隠すように少しだけ後ろに引いた。



「言おうと思ってたんだけどさ、別に気にしなくてもいいよ、変色それ。リアンに聞いたんだけど黒色なんとかっていうんだよね? 全身に広がってないなら特効薬があれば助かるみたいだし、ハクレイ茸は沢山採れたから何回失敗しても薬は作れる。いざとなれば買えばいいもん。お金は……条件付きで代わりに払ってもいいし」



それに薬作るのはリアンだけどね!と笑ってから採取に戻る。

この辺の薬草はかなり品質がいいんだよね。


 奴隷っていう制度をいまいち理解していないことは、自分でもわかってる。

リアンやディル、そしてベルやミントにも“奴隷”について色々聞いた。



(どれもしっくり来なかったんだよね、丁寧に説明してくれたのは十分わかってるし有難かったけど……どうみても私たちと変わらない人だし。奴隷は仕事ってことで納得はしたけど)



便利な一面があるのは私も認める。


 契約を結んでしまえば、雇用主の秘密や黙っていて欲しいことは口に出来ないし他者に漏らすこともできない。

それは商人や錬金術師、貴族といった秘密や機密がいっぱいある人たちにとっては重要なことだ。


 錬金術師が使用人の代わりに奴隷を使うことは割と多く知られている。

理由としては、知っているレシピを不用意にばらされないようにっていうのが一番大きいんだって。

おばーちゃんに奴隷はいなかったけどね。



「私のおばーちゃんも錬金術師だったんだ。でも、私の家に君みたいな奴隷の子っていなかったし、住んでいたところが田舎っていうか辺境の地って言われるような所だったから世間のことにも疎いみたい」



知らないことだらけで今もまだ戸惑うことが多い外の世界だけど、人と一緒に暮らして生活して勉強するのは楽しくて。


 多分綺麗な所とか浅い部分しか見えてないんだろうけど、それでもきちんと自分の中の想いだけは伝えておきたかった。



「君から見ても非常識なこと言ってるのかもしれない――…けど、その病気はちゃんと治したいんだよね。でも、治すことで私が想像もできない事が起こる可能性があるんだって。良く、わからないけど奴隷商の人が“治った”君をどう扱うのか私にはわからないし、ベルやリアンもわからないみたい。それに、私は主人じゃないから決めるのは君に任せようって思って」



立ったまま動かなくなった奴隷の子。


 見開かれた瞳がじわりと水気を帯びて、それが頬を伝う前に俯いてしまった。

ただ、俯くときに小さな声で



「よろしく、お願いします…ッ」



と聞こえてきたので言質は取った。


 よし、と拳を握り締めた所で私はポーチから乾燥果物を一つ取り出して、彼の手に乗せる。



「まずは体力を取り戻さないとね!すっごいガリガリなんだもん。なんかボキッて折れそうで仕事も頼みにくいし頑張って食べてねー……あ、魔力草もある!似たようなのあったら私と同じように採取しておいて」


「ッ……わかりました!!」


「いや、そんな気合入れなくっても……ま、いいか」



それからリアンに名前を呼ばれるまで周辺で採取を楽しんだ。


 朝ご飯はキノコの炊き込みご飯、ゴロ芋のサラダにスープといった内容だった。

炊き込みご飯自体は大量に炊いて、一人2~3個は食べられるようにオニギリっていう、ご飯を三角の形に手で形作ったものを腐りにくい防腐処理を施した乾燥した葉に包んである。


 オニギリの話をした瞬間にディルの目が輝いたのを私たちは確かに見た。

この中で一番食べるのはディルなんだよね。

あるだけ食べるし。


 皆朝から凄く食べてくれたので後片付けが非常に楽だった。


ディルなんか満足しきった表情かおのまま魔術で洗い物を一瞬で片付けてくれたっけ。

ミントが教会にライムとディルさんがいれば……なんて呟いていたけど、私もディルもシスターになる気はないので、聞かなかったことにした。


 最近、料理の前後ミントからの視線が物騒になっていく気がしてる。

大事な友達なのは変わらないんだけど、ミントってこんな感じだったかな……?




◇◆◇




 街道を私たちは歩いていた。



先頭はベル。

その後ろを私とミントが並んで歩いて、次にリアン。

最後尾がディルという順番。


 『忘れられし砦』から離れる際にひと悶着あったので精神的に疲れた。

はぁ、と思わず零した溜息は思ったよりも大きかったけど誰にも咎められなかったのはみんな同じ気持ちだからだろう。

苦肉の策でディルが沈黙の状態異常をかけてるくらいだし。


 風が絨毯のように広がる草の上を滑っていく。

さわさわと揺れる野花や少し背の高い草が揺れる様をぼんやりと見つめて、ふと思い出したこと。



「そういえば、ゴブリンいなかったね」



現在進行形で私の視界は良くない。

フード付きの外套がいとうを着て髪を隠してるから、地味に暑いし。

裾が短いタイプなので不審者っぷりはちょっと薄れてるけどね。


 後ろを振り返ることは“面倒”なのでしないけど、綺麗でちょっと怖い『忘れられし砦』の風景を思い出す。

また今度、というか一年後くらいには来たい採取地だ。

苔とか成長するのに時間かかるものなんだけども、あれだけ環境が整っていれば割と早く成長回復するはずだしね。



「ゴブリン?いましたわよ」



私の独り言に返事が返ってきた。

ベルは振り向くことなく足を動かしつつ、淡々と話す。



「ゴブリンの進化系のリーダーがいた程度だから大したことないわよ。武器持ちもいたけど、武器も錆びた武器ばかりだったし手ごたえがなさ過ぎて物足りなかったわ」


「代わりに魔石は結構集まりましたよ。金貨には届かないと思いますけど、私が倒した分は貰っていいと言われたので予定外の収入になりました。屋根や壁の修繕費に充てるつもりなんです」


「よかったね、ミント」


「はい!本当に……前よりもだいぶ生活は楽になってきてるんですけど、やることが沢山ありすぎて入った途端に出ていく感じなんですよね」


「教会って本当に大変なんだ……でもさ、リーダーって確かゴブリンいっぱいだと出てくるってやつじゃなかった? 大丈夫だったの」


「大体あってるけど、ライムが言うと気が抜けるわね」



呆れたようなベルの声に誤魔化すように笑えば、溜息と共に詳しいゴブリンの生態について説明してくれた。



「群れを作るから早くやっつけなきゃいけない、っていうのとリーダーがいるってことは移動中に聞いた覚えがあるけど、なんかモンスターや魔物にも色々あるんだね。数で呼び方変わるって面倒だけど。いちいち覚えてられないし」



 ゴブリンの群れの規模によって、統率しているゴブリンの呼び方が分かるらしい。

リーダー、カリスマ、コントロウラー、キング、カエサルといった具合に。


 私の脳みそで記憶できたのはリーダーが五十以上百未満、カリスマが百~五百っていう規模の群れって位だった。

ふむふむ、と納得していつ倒したのか聞くとラダットやムル、チコを連れている時だという返答が返ってきた。



「そうだったの?ゴブリン出たなんて一言も聞かなかったから知らなか……た、って顔から血の気引いてるけど」



遠くの空を見るような表情を浮かべるラダットとムルに瞳をキラキラさせるチコ。

その反応で私とリアンとディルの三人は何となく察した。



「……お疲れ、ラダット。ムル」


「あの時初めて、疲れなかったのに消耗する戦いって本当にあるんだなって学んだよ」


「ゴブリンに産まれなくて良かったと俺は生まれて初めて思った」



はは、と力なく笑うラダットと悟ったような顔で遠くを見つめるムル。


 チコが隣で興奮したようにベルとミントを褒めちぎってるんだけど、内容が色々と酷かったので聞かなかったことにした。


 ただ、このやり取りを切っ掛けに会話が徐々に増え始めたので私としては助かったけどね。

黙々と歩き続けるのって割と疲れるんだよ。

景色も大して変わらないし、警戒はベルとかいるから私がすることといえば歩くことだけ。

 時々、アオ草とか見つけて採取するけど街道近くって踏まれたりして状態良くないの多いしさ。



(人があまり通らない所ならいい状態のもあるんだけど)



そんなことを考えつつ、前方の合流地点へ視線を向けた。


 遠目に見ても分かる人の多さ。

賑やかにも見えるその景色を眺めながら、初めて通った時の賑わいが特別じゃなかったんだなぁとしみじみ感じてしまう。

ついでに言えば早く引き上げる原因と遭遇した時のことも思い出して、複雑な気分になったけど。



「そういえばさ、後ろの縛ったままで平気なの?」



ふと思い出した割と見栄えの悪い例の二人の現状。


 奴隷の子が縄をいてるんだけど、その後ろには罪人のように縄でグルグル巻きにされた金髪剣士とピンク髪魔術師の二人。



「日常的にあることではないかもしれないが、全くない訳でもないからな」


「グルグル巻きで歩く人いるんだね。都会ってすごい」


「僕の言葉をどう解釈すればそうなるんだ、一体」



呆れたような視線と口調に後ろの二人を指さす。


 こちらを睨みつけながら歩く魔術師と物言いたげな視線を送ってくる剣士を視界に入れたリアンは明らかに嫌そうな顔をして、口を開いた。



「盗賊などを生け捕りにした場合は周囲に危害を加えない為にああして、手や足の拘束を行う。歩けないと足手まといになるから足は動かせるギリギリの幅に留めて、場合によっては弱めた毒をしみ込ませた猿轡を噛ませることもあるな。これは生きたまま捕らえた方がいい場合によく用いられる手法の一つだ。あとは馬車に括りつけて並走させる方法もある」



えぐい、と思わず呟いた私にリアンはしれっとした顔のまま



「犯罪者にならなければいいだけの話だ」


と言い切った。



「そうですよ、ライム。犯罪者などに甘くすると後でこちらが危険な目に遭っちゃいますからね! 危険だなと思ったらサクッとっちゃうべきです。此方に危害が及んではもう遅いですし、そういう時はお金より命。迷っちゃ駄目です。生け捕りの場合は報酬が高額であることが多いので勿体ないですけど」


「ハイ」


「そういえば、リアンさん。彼らはどうなるのですか?」



私、冒険者になったばかりで規定や基準が分からないのですけど、とミントが口にする。

リアンは少し考えるようなそぶりを見せた。



(私の質問には一言二言嫌味が付いてくるんだけど、他の人にはそれがないんだよね。ちょっと理不尽というか釈然としないというか)



 当のリアンは“そうだな”と一呼吸おいてから



「一般的に言えば警告処分に該当するかもしれないが、今回は“相手”と“状況”が悪かったからな。厳重注意とペナルティ、ついでに僕らに対する迷惑料も発生するだろう。何せ僕らは“錬金術師”だ。特にベルは貴族で、護衛には“召喚師”のディルもいる。初めのここでのやり取りを聞いていた冒険者も多数いたことだし言質も容易く取れるから臨時収入は見込めるな」



 淡々と話すリアンの声にラダットやムル、チコは神妙な面持ちで耳を傾けている。

ミントは申し訳なさそうに三人を見ながらも臨時収入は嬉しいのか口元が緩んでいた。

で、後ろの二人は不貞腐れているような表情を浮かべているだけだ。



(そういう態度だから、リアンにグルグル巻きにされちゃうんだよ。わかってないみたいだけど)



やれやれ、と呆れつつ息を吐いた私は朝のことを思い出す。




―――……実は、なんだけど最初は普通に連れて歩くつもりだった。


 けれども、彼らは私たちの顔を見た瞬間に「私たちに食事を出しなさい」だの「冒険者ギルドや騎士に訴えてやる」だの「奴隷以下の扱いをするなんて」だのとまぁ、次々に不平不満をまくしたてたんだよね。


 自分の立場というかしたことを理解していないことだけは私にもわかった。

挙句に、仲間のラダット達にも「役立たずの癖に」だとか「仲間の事を考えて多めに食事を用意しておくのは君たちの役目だろう」とか喚き散らしていた。

散々罵倒した上に、自分たちに都合のいい事ばかり主張する姿を見たベルが無言で痺れ薬を放り投げたのは仕方のない事だったのかもしれない。


 その後は、動けなくなったところでリアンが冷めきった視線を向けながら、二人を縛り上げて今の状態に。

その時に麻痺を解除する薬をかけた所で、二人は再び文句を口にした。

薬をかけられた時点で普通なら口を噤むと思うんだけど、残念な二人は違ったらしい。




(まさかミントが笑顔で大剣を二人すれすれに振り下ろすとは思わなかったけど……あれ、ほんっとギリギリだったよね)



鈍く大きな音を立てて地面にめり込んだ大剣に私だけじゃなくその場にいた全員が思わず動きを止めた。


 あの時、一番敵に回しちゃいけないのが誰なのか分かったよね。

色々衝撃的だったな、と遠くを見つめている私の意識を現実に呼び戻したのはリアンの声だ。



「抗議文に関しては取り下げる気はない。特にその二人だな。止められなかったという点で同じパーティーの三人にも責がない訳ではないが、これまでの不遇具合や格差といった問題点を訴えればギルドも考慮するだろう―――……色々と話しはしたが、最終的に迷惑料の支払い、厳重注意処分後にギルドカードの使用制限、監視付きの更生訓練といった所か」



 更生訓練っていうのはトラブルや苦情の多い新人冒険者なんかに行われる、訓練らしい。


 座学から始まって実地という形で教官が四六時中付き添い指導をするんだって。

教官が許可を出すまで訓練を終えることができず、ギルドカードも使えなくなる。


 それだけならまだいいんだけど……金銭的な負担も生じるから新人冒険者にはかなりきついらしい。

訓練後に問題を起こすと登録抹消の後に借金などがあれば借金奴隷になることもあるとか。



「ギルドって怖い」


「厳しいのは見せしめの意味もあるのよ。倫理観のない冒険者はただの犯罪者と同等だからね。力のない一般市民からすると、頼りになる反面怖いと思うだろうし当然の処置よ」


「な、なるほど。っていうかそういう話ってどこで聞いたの?ベル」


「制度のことは知らなかったけれど少し考えればわかるわよ。騎士団にも暗黙の了解っていうのはあったし、規律や規定は何かを護るために張る予防線のようなものなの。貴族の世界でも色々細かく面倒なことが沢山決められてるけど、それにだって何かしらの理由がある。そうでなきゃ、あっという間に治安も法も安全だって成り立たなくなるわ」


「へー……?」


「ライム、貴女適当に返事してるでしょ。もうちょっと錬金術以外に興味持ちなさいよね。そんなんだからアホの子にみえるのよ」


「失礼な! 私だってきりっとしてることあるよ! そうだよね、ミント」


「わ、私ですか?! ええと、そう、ですね。食事を作っている時と採取をしている時はきりっとしていますよ、あと素材とか色々知っていますし常識の十や二十なくても全然大丈夫だと思いますっ」



「………ご飯と採取の時以外駄目なんだ、私」


「ミントも中々言いますのね」



妙な空気になったので、私たちはしばらく無言で踏み固められた道を歩く。

時々スライムが草むらにいるのを倒す以外これといった会話もなく、数キロ歩いた所で合流地点が見えてくる。

遠目からでも大きな荷馬車が二つ、小さな荷馬車が三つあることはわかった。


 動いている人らしき影は多くて、大小さまざまだけど性別やなんかは全く分からない。

まだ数キロ離れてるからね。



「なんか随分人が多い気がするんだけど、気のせい?」


「気のせいじゃないわよ。まぁ、商人に関しては噂を確かめに来ているといった所かしら」


「それもあるが行商の一環だな。大きい荷馬車の方は単に輸送用だろうが、小さい荷馬車の方は新人……若しくは中堅どころの商人といったところか」



恐らく薬や冒険に必要なものを多く扱っているはずだ、とリアンは言い切った。



「どうしてそんなことわかるの?もしかして鑑定とか」


「馬鹿だろう、君は。こんなことでいちいち鑑定を使うような真似をするものか。人が動けば金も物も動く……誰にでも容易にわかることだ。『討伐依頼が出たばかり』で、『行き交う人が多い街道』があり、その街道から『少し離れた場所に盗賊の拠点』があるとわかっていれば、自ずと人が欲しがるものは予測できる」



盗賊相手ならば回復薬や包帯といった手当てに必要なものを揃えることは勿論、武器の類も多少高くても買い替えようと思うものもいる筈だからな。


 眼鏡の位置を直して、目を細めた。



「ただ、似たような考えの競争相手がいることを踏まえて商品を吟味する必要があるんだ。商売に競争相手はつきものだし、早く着いて売り始めた者勝ちといった面も少なからずある。それならば、競争相手が揃えていないようなものを普段の商品に加えておく程度で留める方が賢明なんだが」


「私、その行商人が扱っている商品を少し見て回りたいですわ。今後、店を開く際に何か役に立つかもしれませんし」


「ベルそれいい! 私も賛成。冒険者の人とか騎士の人って欲しがるもの似てるって前にリアン言ってたよね」


「――……まぁ、見るだけなら。ただし、購入するかどうかは僕の判断に任せてくれ。品質もそうだが、行商人が扱うものは仕入れ先が不明瞭で時折“扱ってはいけないもの”が紛れていることもある」


「わかりましたわ。ただ、それが“どれ”で“何”なのかは教えて下さいますのよね?」



にっこりと上品な笑みを浮かべたベルにリアンが少し眉を顰めた。


 でも、結局疲れたような溜息と共に頷いたのでベルは機嫌よく歩く速度を速める。

ベルの口調は貴族が良く使う言葉に変化すると同時にリアンは口元を緩めて“商人”の顔つきになる。


ベルに関しては最初はどうして口調が突然変わったのかわからなかったけど、今では“あ、他の人がいるんだな”ってわかるから私としては少し助かるんだよね。

 うっかりレシピの事を話しかけてる時があるみたいで、何度か口を手で塞がれたし。



私たちは数キロ先の合流地点を目指して、歩く速度を速めた。



ここまで目を通してくださってありがとうございました!


誤字脱字変換ミス、怪文章などよくあることなので申し訳ないのですが、気づいたら教えて下さると本当にありがたいです…(遠い目

恥ずかしい上に申し訳ないです、はい。チェックしても、抜けちゃうんですよねー……なんでだろ



追伸:ブックマークや評価など相変わらずありがとうございます!

   わー……なんか、凄いことになってきてる。すごいわー…(語録の欠如


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 度々すみません。 今回は、忘れられし砦の盗賊依頼について気になっています。 50話にて、ベルが忘れられし砦についてライム達に話した際『討伐依頼が出ていますわ! なんでも砦に盗賊が住み着…
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