63話 採取旅 五日目 『忘れられし砦』
お久しぶりの更新です。
うん、キノコだらけ。キノコを盛り込みました。
相変わらず採取してご飯食べてます。
オムレツおいしいですよね。
パチッと自然に目を覚ました私は簡単に身支度を済ませてそっとテントから出た。
薄暗い空と朝独特の爽やかで静かな空気を胸いっぱいに吸い込んで、大きく伸びをする。
顔を洗うために用意された水瓶から水を少し貰って顔を洗い、口をゆすぐ。
うがいを済ませたら今度はトランクから採取用に自作の背負いかごと腰につける腰かごを取り出す。
「キノコ採るって決めてたから、今回は採取できる人員が多いからいっぱい持ってきたんだよねー、かご!暇な時にいっぱい作っておいてよかったー」
柔らかい蔦で編んだから使わない時は畳んでしまっておけるのがこれまた便利。
実はこれ、自給自足生活で一番行商の人に喜ばれた売れ筋だったんだよね。
冬なんかこればっかり作ってたし。
どれだけ持っていくべきだろう、と考えていると背後から草を踏む足音が聞こえてきた。
「――…おはよう。これから行くのか?」
「おはよー、リアン。身支度も終わったし、早めに行こうかなと思って。収穫量によって朝ご飯は簡単なものになっちゃうけどうまくいけばキノコのポタージュとか作れるよ!リアンはどのかごにする?私は大きいの一つと小さいの二つ持っていくけど」
大きいのは背負って、小さいのは腰につけていくつもりだと見せるとリアンは物珍しそうに並んだかごを眺めている。
真剣な表情で一つ一つかごを手に取っているところを見るとどうやら鑑定しているらしい。
「これは君が作ったのか。錬金術で…?」
「いやいや、これは手編みだよ。秋の間に蔦とか大量に確保して下処理済ませて冬にひたすら編んでた。雪が解けると行商の人が来てくれるからその時に売ってお金貯めてたんだ。小さいので銅貨1枚だったけど、大きいのだと銅貨3枚になるんだよ」
「―――…この作りで買い取り価格がその値段だとすると色々とハネられてるな。いや、だが君が住んでいた場所が首都から遠いとなると妥当か…?しかし、もう少し払ってもよさそうなものだが…折りたためる編み籠なんて初めて見たぞ」
「評判良かったんだけど、数は作れなかったら広まってないのかも。で、どれにするの?大きいのに見つけたの片っ端から入れてくれれば後で仕分けるよ」
「…じゃあ僕も君と同じだけ持とう。小さい方には希少なものや高価なものを入れればいいんだな?」
「うん。あ、念のため採取用の袋も持っていった方がいいか。この辺何があるかわかんないもんねー……武器、じゃまだなぁ」
「武器は持て。何がいるのかわからないだろう――― 大概の相手なら僕がどうにかできるが、採取中は離れるなよ」
「はーい。でも、やっぱ邪魔だよ、杖。でも鞭はいいよね。くるくるーって巻いて持ち歩けるからあんまり場所とらないしさ」
かごを装着した私たちはちょっと間抜けかもしれないけど、これで準備は万全。
手袋は元々はめていたけど毒キノコも採取する予定なので採取用の手袋に替えた。
「そういえば見張りはいいの?」
「問題ない。何かあった時の為にディルが外で寝てるからな」
一番近い雑木林に向かって歩きながらリアンと他愛のない話をする。
今日はキノコの話だった。
「リアンはキノコ詳しい?」
「いや、特別詳しいわけではないな。ただ、薬になる材料くらいは知識として知っている。最悪判別つかない時は“鑑定”すればいいからな。そういう君はどうなんだ?」
「鑑定ってホント万能だ。私は結構詳しいと思うよ。家が森の中にあったからキノコ採れたし、時間だけはあったから食糧確保の意味も兼ねていつも図鑑もってキノコ採取してたから。見覚えのないやつは鑑定してもらわなきゃいけないけど、昔さんざん毒に当たったから流石に舌が肥えたよ」
「おい待て。今、舌が肥えたって」
「?うん。食べて覚えた。あ、流石に猛毒は食べなかったよ!……どんな味かと思って舐めたことはあるけど直ぐに万能薬飲んだし」
「なにをやってるんだ君は!馬鹿だろう!?」
「ち、小さい頃の話だってば。今はしないよ?ちゃんと覚えたし」
「…もういい。わかった、君が非常識なのはわかってるつもりだったが日常生活でもやらかしてたとは」
「いやいや、食べられるかどうかって大事だよ、最重要事項!だって非常食になるかどうかだけでも知っておかないといざってとき困るでしょ?毒キノコって言っても軽い毒ならちょっと具合悪くなるだけだし」
「君は殺しても死ななそうだな…ベルとは違った意味で」
そうかな?とちょっと嬉しくて返事を返したら何故か頭を叩かれた。
文句言ったら頬っぺたつままれたし、ちょっと納得いかない。
「そういえばこのあたりってどんなキノコがあるんだっけ?」
「僕もあまり詳しくはないが運がいいとオウサマタケとクイーンキノコが採れるそうだ。あとはバクダンキノコや黄金茸なんかが採れると聞いたな」
しばらく歩くと雑木林にたどり着いた。
雑多に生えた木に統一性はなく、下には枯れ葉が落ちて土になったような所や細くて尖った小さな葉っぱが固まって落ちている区域もあった。
背丈の小さな木や蔦上の植物、所々に生える雑草。
遠くの方には大きな岩や朽ちた倒木なんかもあって、キノコが生えるには程よい環境にしか見えなかった。
「湿度も結構あるな。数日前には雷を伴う雨も降っていたそうだし、意外と収穫は多いかもしれないな。今回は毒キノコも採取するんだったか」
「うん。だから見つけ次第片っ端からお願いします!あ、根は傷つけないようにナイフか短剣で切り取って、虫食いが酷いのはかごに入れちゃ嫌だからねー」
「わかった。じゃあ早速採取を始めようか。時々声をかけるが君も声をかけるようにしてくれ。姿が見えなければ採取をやめて落ち合うぞ。念のため…そうだな、あの大きな岩の横の樹があるだろう?あの場所にこの布を縛っておくから目印と合流場所にしよう。で、いよいよわからなくなったらコレに火をつけてくれ」
そういって掌に載せられたのは直径2センチくらいの灰色の球体。
軽くて灰を固めたようなそれを眺めているとリアンが使い方を教えてくれた。
「煙玉だな。火をつけると煙が出る。それを目印に集合したり、異常を知らせたりするんだ。持っていなさそうだとは思っていたが……次の採取には用意しておいた方がいいぞ」
うん、と頷いてありがたく煙玉を受け取る。
お金を渡そうとしたけど首を振られた。
「おばーちゃんの薬買ってくれたからちゃんとお金あるのに!」
「君から金を貰う気にはなれないだけだ」
しれっと私に背を向けたのでムッとしてポーチから乾燥果物を取り出し、リアンの口に押し込んだ。
「んぐっ!?」
「これでチャラってことで。あ、クイーンキノコかオウサマタケ見つけたら教えるね」
よっしゃ、いくぞー!
気合を入れてリアンから少し離れた場所へ。
もちろん姿も声も届くし見える位置だ。
(このあたりにはクイーンキノコとかオウサマタケが生える木が多いんだよね)
高級キノコとして名高いらしいこの二種類のキノコは特定の木がある場所にしか生えない。
もちろんその場所に行くまでに見つけたバクダンキノコや食用の畑キノコは忘れずに採取し、目的の一帯へ。
「結構な大きさだからコツがわかればすぐ見つかるんだけど…積もった枯れ葉で隠れてることが多いからなぁ」
中腰でじぃっと地面を見る。
歩きながらでもいいんだけど動きながらだと見逃しちゃうこともあるし。
中腰の姿勢でジーッと満遍なく地面を眺めていると複数箇所に違和感を覚えた。
その場所を覚えてから一番近い不自然に土が盛り上がった場所へ行けば、微かに薄い黄色が見えた。
キノコを傷つけないようそっと枯れ葉を取り除いてみると、土から顔を出した高級品と目が合った。
周囲を傷つけないようゆっくり採取して腰につけた小さなかごへ入れつつ、次のポイントへ。
「リアンー!クイーンキノコ見つけたよー!」
「はァ?!」
立ち上がった所で報告することを思い出して声を出せば、少し遠くの方から驚いたような声が聞こえてきた。
驚いて立ち上がっている彼の手には緑色の何か。
キノコが生える場所にある薬草って言ったら魔力草かカムル草だとは思うけど。
「それ、カムル草?私も見つけたら採取するから、大きいかごに入れておいてねー!キノコと混じっても全然問題ないから!」
「なんでわかったんだ!?」
「いや、キノコが生える所の薬草の代表って魔力草かカムル草だし。珍しいのはこういう環境では生えないから違うよなーって思っただけだよ。あ!今度はオウサマタケだー!!美味しいご飯できるよー!炊き込みご飯!」
やったねー!と声を出したけど返事はなかった。
この時リアンが呆然とこっちを見て「採取の天才か何かか?」などとボヤいたのを私は知らない。
結局この場所ではオウサマタケ2本とクイーンキノコ1本、畑キノコが二株。
魔力草が少しあったからこれも摘んで、キノコとは別にしておいた。
集合場所に向かう途中も行きとは違う道を通ってキノコを採取。
この場所って雑木林っていうかキノコ林じゃない?とか考えつつ食用のキノコ数種類と魔力草少し、カムル草もちょっと採取した。
「ただいまー!いやー、ちょっとしか歩かなくってもたくさんあるね!まだ時間はあるし、あっちの方見にいこうよ!あの辺にも高級キノコありそうなんだよね。でもその前に倒木もチェックしないと……ああいう所にヌメタケとかカラカラ茸が生えて―――えっと、何かな」
集合場所で顔を合わせた私を見てリアンが呆れたような顔で私を眺めていた。
視線は私の背負ったかごと腰かご。
「あの短時間でいったい何をどうしたらそんな量が採れるんだ…?というか、キノコ以外に色々採取できてるとかどんな目をしてるんだ君は」
「慣れと運が必要なだけで視力関係ないけど。リアンだって結構な量採取してるし、単純にこの場所が当たりだったんじゃないかなぁ。わ、バクダンキノコたくさん見つけたねー!これはすごくうれしい。パン作るのにいるもん」
「…そういえば、つい忘れてしまうが君の採取能力は異常だった。他にいくつか毒キノコも採っておいたぞ」
おなじみの赤と黒だが、と見せられた腰かごには立派な二種類の毒キノコ。
反対の腰かごには魔力草が入っていた。
それから同じ要領で少し離れた所を地面を見ながら歩き、キノコや薬草、他に有用なものを採取しているとあっという間に朝日が昇ってきた。
身に着けたかごの中はある程度いっぱいになったので一度戻ることに。
あ、もちろん目印に結んだ布は回収したよ。
◇◆◇
まだ、三人が起きていなかったのでリアンに下処理を任せて私は採れたてのキノコでキノコのポタージュ、キノコのオムレツ、キノコと野菜のチーズ焼きを作った。
朝から重たいかな、とも思ったんだけど私とリアンは採取で動き回ったからお腹空いてるし、今は寝ている三人もなんだかんだで結構食べるから問題ないと思う。
「そういえば、昨日あの男の子起きた?」
黙々と結構な量のキノコを仕分けし、汚れを布や水で落としていたリアンが作業を続けている。
「いや、起きていない。まさかとは思うが、食事をわざわざ別に作るのか?」
「え、ダメだった?結構弱ってるみたいだしこのままだと食べにくいんじゃないかと思ったんだけど…キノコって消化悪いし。キノコ抜きのオムレツとマトマのパン粥とアリルのコンポートでいいかなーって。すぐできるし簡単だし」
「……マトマのパン粥?美味いのか?」
「見た目はあんまりよくないけど美味しいよ。味見してみるならちょっと多めに…」
「する。あとコンポートは多めに作って僕たちにも出してくれないか。君の作るやつは甘みが丁度いいんだ」
真顔で淡々とリクエストされ、ちょっと戸惑いながらも人数分のアリルをトランクから追加で取り出した。
男の子用のご飯を先に作っている最中、ずっと何か忘れている感じがしてたんだけどそれは割と早い段階で解消された。
「っ…ちょっと、そこの二人!のんびり料理なんかしてないで、早くこの縄をほどいてよ!!」
背後といってもテントから少し離れた場所から聞こえてきた声に手を止めた私の耳には、盛大なリアンの舌打ちが聞こえてきた。
聞き覚えのある声は、合流地点で話しかけてきた魔術師の女の子のものだ。
続いて呻くような声と寝ぼけたような声が複数聞こえてきたことから、彼らが起きたことを知る。
「えーっと……私すっかり忘れてたんだけど、どうするの?あの人たち」
なんか偉そうで嫌なんだけど、と思わず半目でリアンに目配せすると、何事もなかったようにキノコの下処理を再開していた。
何その鋼の精神。
「放っておけ、関わるだけ時間の無駄だ」
「なるほど。じゃあ、あの人たちのご飯は用意しなくてもいいんだよね」
「する必要がどこにもない。奴らに食わせるくらいなら僕たちが食べるか、そこで転がってる奴隷にやった方が有益だし無駄にならなくて済む」
何やら縛られた彼らが話し合っているのが聞こえるけれど関わりたくなかったのと面倒だったので放置した。
拾った男の子用のメニューが完成したのでいち早く食べさせようと食器とコップをもって近づく。
「気になっていたんだが、君は奴隷の病気が気にならないのか?」
「だってこれ感染るやつじゃないし、薬で治るやつだから大丈夫。昔、同じ症状の人がおばーちゃんの所に薬買いに来たことあるんだよね」
病気の名前までは覚えないけど、と言った所でリアンが思いがけない提案をしてきた。
「薬だが、買わなくてもいいぞ。特効薬は僕が作ろう」
「え、リアンがわざわざ作るの?助けるの反対してなかった?」
「薬を作る練習には丁度いいんだ。この辺りでハクレイ茸が生えているという噂もあることだし、探してみようとは思うんだが」
「ハクレイ茸?洞窟とかに時々生えてるやつだよね。乾燥じゃだめなの?」
「生の方が…―――ってちょっと待て。持っているのか」
「?うん。保存食で中くらいの採取袋にいっぱいあるよ。いい出汁が出るんだー」
「………見つからなかったら売ってくれ。あと、人には言うなよ。ハクレイ茸はいくつかの特効薬に使われているから国によってはオウサマタケやクイーンキノコより高い」
ガッと肩を掴まれ凄まれながら“あ、この感じは前にもあったぞ”なんて考えていると、気が済んだらしいリアンがキノコの下処理に戻っていく。
背中がなんか疲れてる気がするけど、リアンいっつも疲れてるから普段通りといえば普段通りだ。
再びキノコ処理を開始したリアンを見送って、私は転がったままの男の子の肩をトントンと指で叩く。
トレーに乗った食事からはまだ湯気が出ているので食べるなら今のうちに食べてほしい。
温かいものは温かいうちに食べるのが一番だもんねー。
「ねぇねぇ、ご飯できたよー。温かいうちに食べて欲しいんだけど」
薄く筋張った肩や汚れた服から延びる手足は骨と皮だけといっても過言ではないくらい細くて、頼りない。
いっぱい食べさせて元気にしないと!という謎の使命感を抱きつつ声をかけ続けていると小さなうめき声をあげてもぞり、と彼が動いた。
昨日ディルが綺麗にしてくれたからか濃い灰色の髪が動いて、ゆっくりと顔が上がっていく。
ぼさぼさで目は完全に隠れているけれど私を見て驚いていることだけは伝わってきた。
「おっはよー!朝ご飯持ってきたんだけど食べてくれる?ホントは椅子に座ってほしいんだけど疲れてるだろうし、そのまま食べていいから。あ、手拭きはこれ使ってね。食べ終わったら教えてくれれば食器取りに来るよ」
「え…?ぁ」
戸惑ったような掠れた低い声が聞こえてきたけれど聞こえなかったことにして、私はリアンの分のオムレツ作成に取り掛かった。
「ごめん、リアン。そろそろみんな起こしてもらっていい?みんな起きたら、オムレツにこのソースかけて、テーブルに並べて」
オムレツはタイミングが重要なので手は離せない。
オムレツを口に入れた時にトロっととろけるような食感になるよう気を付けながらオムレツを焼いていると、眠っていた三人が身支度を整えてテーブルについていく。
「おはようございます。わぁ、今日はオムレツなんですね!美味しそう」
「朝から茸づくしとは豪華だな。キノコのポタージュも美味そうだ。パンはおかわりしてもいいのか?」
「まぁ!アリルのコンポート!これ凄く美味しいのよ、ミント」
「味見をしたが全部美味かったぞ。そろそろ食べるか。ライムの分は?」
「私のも今焼けたよ……――― ってあれ?まだ食べてなかったの?食べていいのに…もしかして食べづらい?それならこっち来て座る?椅子はまだあるよ」
一気ににぎやかになった食卓に自分のオムレツを置いたところでじっと見られていることにようやく気付いた。
振り返るとご飯を前に呆然と私を見ているらしい奴隷の男の子。
何を驚いてるんだろう、と思いつつ近づけば慌てたように体を起こし、何故かその場にひれ伏した。
「え、なにごと!?どうしたの?!私武器とか持ってないんだけど、ほら!持ってるのただのパンだし!攻撃できないし攻撃しても美味しいだけだよ!?」
「ライムは本当に奴隷を見たことないんですのね。その姿勢、奴隷の“待機”の姿勢よ―――…アンタ、とりあえず食事を始めなさい」
掠れた返事が返ってきたものの顔を上げる気配がない。
え、これ大丈夫なの?と助けを求めてベルを見るとベルは既に自分の席に座っていた。
「ライムが見てるから食べられないのよ。ほら、いいからこっちに来て食べてしまいなさいな」
「え、あ、うん。と、とりあえずゆっくり自分のペースで食べてね。足りなかったらこれも食べて」
持っていたパンを一つ、彼のトレーに追加して自分の席に座る。
盛大にお腹が鳴る音が聞こえてきたからね……もしかしたら足りないかもしれないし。
ちらっと視線を向けるとゆっくり頭を上げる所だったので自分の食事に取り掛かることにした。
(奴隷って謎だ…変な挨拶の習慣があるんだなぁ。痛そうだし、別に私雇い主じゃないんだからしなくていいのに)
ちゃんと説明しなきゃ、と考えながら出来立てのオムレツにスプーンを入れた。
理想的なふわとろ感に満足しつつ食事をし始めた私に今まで黙ってご飯を食べていたディルが口を開いた。
「で、今日から三日間採取をするということで変更はないな?」
頷いた私たちを見てディルは面倒そうに今まで意図的に無視していた一角へ視線を向けた。
視線の先を辿ると賑やかに喚く例の新人冒険者が、食事をよこせだのなんだのと喚いている。
「―――…アレはどうするつもりだ」
気づかない、考えないようにしていた問題を突き付けられた私たちは思わず顔を見合わせる。
どう、って言われてもどうしようもないっていうのが今の状況だ。
「採取には連れて行けないよ?邪魔だもん」
「だな。価値のわからない人間を連れて行くと面倒しか起こらない。希少な素材をダメにされでもしたら困る」
「でもあのまま放置するのも煩いですし、かといって解放すると何をするかわかったものじゃありませんわよね。帰りは合流地点若しくは一日早めてケルトスの冒険者ギルドで引き渡す、しかなさそうですけれど……気が乗りませんわ」
かと言ってモルダスに連れて行って付きまとわれるのは避けたい、と苛立ちが混じった視線を冒険者たちに向ける。
「一つ提案があるんだが……簡易の牢屋を作ることもできる。目隠しと猿轡をしておけば多少静かだろうし、彼らの荷物に手は付けていないから荷物ごと放り込んでおけば死にはしないだろ。水は無さそうだから水桶だけ置いてやってもいい」
流石に牢屋にぶち込む前に、身体検査は必須だし武器の類はこちらで預かる必要はあるが。
ディルの提案に私たちは顔を見合わせて、結局首を縦に振った。
解決案があるならそれにありがたく乗らせて貰おうってことでその方向で話がまとまっていく。
武器は全部没収し、眠り薬か痺れ薬を与えてから土の魔術で作った簡易牢屋に放り込むという話にまとまった。
帰りに関しても一日早くここを発ち、ケルトスへ向かってからモルダスに戻ることに。
冒険者ギルドに寄って、薬の素材を探すのもいいよねーなんて話しているうちに朝ご飯を終え食後のティータイムへ突入。
男の子にもお茶を出したんだけどやっぱり、平伏されてしまった。
奴隷って大変……
ここまで目を通してくださってありがとうございます!
誤字脱字変換ミスに怪文章などがあればこっそり直しちゃいます、気づいたらですが。
教えて下さってもいいんですよ…?(チラッ
=本日の素材たち=
【赤きのこ/妖精の悪戯】
毒々しい赤い傘に黄色の斑点がある、猛毒のきのこ。
どんな土地でも生えてくるのでもっとも有名な毒キノコでもある。
黄色の斑点は夜になるとぼんやり発光するので、特殊な塗料に使われることもあるとか。
【黒きのこ/死神の落し物】
傘も軸も真っ黒なきのこ。裏返すと傘の裏側だけが白い、毒のきのこ。
どの土地にも生えるが、特に墓場で多くみられる。
弱毒性だが、赤きのこと合わせると赤きのこの毒を強める効果がある。
【バクダンキノコ】
白くまるい直径6~7センチのキノコ。
群生して生え、かつ様々な場所で育つ。踏むと白い胞子を辺りにまき散らすが無害。
調合しなければ食べられないので採取は殆どされない。
踏まれると白い胞子が周囲に飛び散る様が爆弾の様だったことからバクダンキノコと呼ばれる。
よく子供の遊び道具と化す。
【オウサマタケ(王様茸)】
単生で半球形、裏側はひだ状のキノコ。
小さくても傘が10cmほどあり、最大20cmにもなる。高さは15~25㎝。
美しく光り輝く黄金色。茎はどっしりと太い。
キノコの中でも最高級品で味も香りも一級品とされる。
どんな料理にもあう。
針葉樹の傍にしか生えない。
【クイーンキノコ】
単生で丸山型、裏はひだ状。
小さくても傘は10~15㎝で高さも15~20㎝。オウサマタケより一回り小さい。
上品な淡い黄色でオウサマタケと合わせると至高の味に。単品でもおいしい高級品。
どんな料理にも合う。
針葉樹の傍にしか生えない。
【畑キノコ】
そこらの畑にも生える一般的なきのこ。
現代で言うハタケシメジのイメージ。
どの料理にもおいしい。
【ヌメタケ】
倒木に生えるキノコ。
傘が完全に開いていなければヌルッとしている。
傘が開ききるとヌメリは消えシャクシャクした歯ごたえに。
【カラカラ茸】
乾燥させると強いうまみを呈するキノコ。
そのままだと無味だが、歯ごたえはよいので大量にとれると炒め物やソテーにされる。
シイタケ、みたいな見た目。
【カムル草】
アリルに似た甘く爽やかな香りがする白い花。花弁の外側は薄く黄色が買っている。
葉が羽に似た形で可愛らしいが、強い解毒作用と、安眠・鎮静効果がある。
生のままハーブティーにいれてもよし、乾燥させてもよし!と万能。
キノコが生えるような環境に良く生えていて、畑や草むらで採取するより良質。
キノコの設定ww




