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【書籍化中!】アルケミスト・アカデミー(旧:双色の錬金術師)  作者: ちゅるぎ
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60話 採取旅 四日目 『忘れられし砦」 前

 いろいろ詰め込まれた回。

とりあえず、到着しました!

次回は残虐表現注意、適菜の入るかもしれません。たぶん。



 合流地点を出発してから暫く歩き続けていた。




 いつもならとっくに休憩をとっている時間になっても休憩しよう、とは誰も言い出さなかったからだ。


 流石に無休で歩き続ければ疲れるだろうし後に響いてもいけないと思ったから、休憩時間に食べる予定だった乾燥果物を皆に渡した。

でも、その後は会話も無くて只ひたすら、足を動かしている。

 お水はそれぞれ持ち歩いているから用意する必要はなかった。

個人的には座ってお茶でも飲みたかったんだけど……言える雰囲気じゃないんだよね。

暫く歩いて、気まずさに耐えかねた私は隣を歩いていたベルに気になっていたことを聞いてみる。



「休憩しなくてリアンは大丈夫なのかな?多分一番体力ないよね?」


「放っておきなさいな。どっちにしても今日中に忘れられし砦近くに着いちゃいたいのよね。合流地点で集めた情報だと、盗賊の討伐依頼が冒険者ギルドから出されたそうよ。ただ報酬自体はあまりよくないから中堅冒険者は受けないみたい。受けるのは新人ばかり……たぶん、さっき絡んできた連中は討伐依頼を受けてるわ」


歩きながらも小声で答えてくれたベルは少し呆れたような顔で肩をすくめる。

 でもベルもミントもディルも皆時々こっそりリアンの様子を窺っているのはわかっていたから、本当に無理そうなら止めるか、と納得した。



「なるほどねー……だからリアンは休憩しようって言わなかったのか」


「見た目通りプライド高いあの眼鏡が気に食わない相手に先を越されるような真似、許すと思う?私だって嫌よ、あんな非常識な奴に獲物横取りされるの」


「横取りって、私たちは依頼受けてないんだから横取りされる感じになるのは他の人たちなんじゃない…?それに、冒険者ギルドに依頼が出てるってことはもう討伐されちゃってたりして」


「あら、横取りされるほうが悪いのよ。賞金首の盗賊は倒したもの勝ちだもの。首や身分を証明するようなものを持って帰るだけで依頼を受けていなくても賞金は受け取れるし、貢献度もおまけに貰えるから狙い目なのよね。殺しちゃっても問題ないわけだし、全力で戦闘できるっていうのが一番のうま味だと思うの」


「狙い目なんだ、盗賊」


「そうよ、当たり前じゃない。強さにはバラツキがあるし危険度はかなり高いけど、装備なんかは倒した人の物になるし実入りはいいのよ?勿論“ハズレ”もあるけど、大きな盗賊団専門の冒険者なんかもいるって聞くわね。あと、討伐に関してだけど魔物やモンスターならまだしも、盗賊みたいな対人戦って避けたがる傾向にあるわ。新人なら尚の事、ギルドの受付で絶対一度は止められるから“まとも”な冒険者ならそれでやめるのよ。止められるってことは実力が足りない、もしくは危険すぎるって客観的に判断できる場合だけなのにねぇ?」



馬鹿にするように鼻で笑ったベルはゆるゆる首を振っている。

うーん、こういう動作はちょっと貴族っぽい。



「そういえば家に薬を買いに色んな人が来たっけ。その時は不思議だったんだけど、おばーちゃんが笑顔で追い出して相手にしなかったお客さんも結構いたなぁ」


「オランジェ様は広く親しまれているから、そういう連中も沸くでしょうね。リアンの場合も実家が商家だから余計頭にきたのかもしれないわ。私の知ったことじゃないけど、ああいうのと関わり合いになりたくないことだけは確かね」



私はあの横にいた女の姿勢が気に食わないのよね、と吐き捨てるベルは前方を歩くリアンの背中を見ながら息を吐いた。



「流石に休憩なしっていうのは疲れるでしょうし、リアンは今夜の見張りから外すつもり。私とミント、ディルの三交代制ですることを提案するけど二人は護衛だから反論もしないでしょ。その分、夜食宜しくね……甘い物がつくと嬉しいわ」


「じゃあ、クッキーとホットドリンク作るからそれでいい?」


「十分よ。それとライム、あなたは食事の準備以外はテントにいなさい。その髪は目立ちすぎるし、一番覚えやすいもの。外に出てる時は必ずフードを被っておいて……盗賊だけじゃなくてモンスターが出てきてもおかしくないし、未然にトラブルを防げるならそれに越したことはないわ」


「はーい……」



 確かに目立つもんね、この髪。


くいっと自分の髪を見てみるけどやっぱり色は変わらない。

髪が双色で得したことより損してることの方が多い気がする。



「べ、別にその髪がダメって言っているわけじゃないのよ?!ただ変に顔を覚えられて恨まれることだって…!」


「へ?あ、うん。ええと、おばーちゃんにも散々“目立つこと”は良い側面も悪い側面もあるって教えられたし、わかってるよ。ありがと、ベル」


「――……お礼なんて必要ないわ。私はただ、その…ちょっと庶民の貴方にそういう事を理解するのは難しいのではと」


「ぅえっ!?心配してくれたんじゃないの?」


「わ、私は心配なんてしてないわ!あなたってば本当に非常識だから私に迷惑が掛からないように指導して差し上げているだけなんだからっ」



もう知らないっ!なんてそっぽを向いて歩くスピードを上げたベルはリアンを追い越して先頭をずんずん進んでいく。


 すれ違う時にベルの耳が赤くなってるように見えたんだけど……気のせいか。

照れる要素がどこにもないもんね。

リアンとベルの後姿を眺めながら歩みを止めずに進む。



(そういえば、合流地点を過ぎてから景色が変わってきたみたい)



 木々が少なくなって、平原が広がっている。

あと時折大きな岩を見かけるようになった。

雑木林っぽいものも見えるけど、遠くの方に見えるだけで近くはないし川もない。



(お水が無いって大変だよね。今回はディルがいてお水出してくれるから楽できるけど、普通は持ち歩かなきゃいけないって聞くし)



持ち歩くにしても私達にはトランクやポーチがあるからさして負担にはならないけど、普通に持って歩くことを考えると遠出するのって大変だと思う。



「ライム、疲れたのか?」


「ディル!ううん、私は全然大丈夫だよ。ディルこそ疲れてない?護衛って疲れるんだよね?」


「警戒するのは慣れているし、そもそも警戒するのは癖みたいなものだからどうってことない。それに今はミントが警戒してくれているから、俺は必要最低限でいいんだ。それに、こうも見晴らしがいいと敵も隠れようがない」



ある程度距離があっても槍なら届くし、魔術も使えるから問題ない。


 そういって歩くディルや少し後ろを歩くミントは一見すると普通に歩いているようにしか見えないんだよね。

警戒って辺りをキョロキョロしたり、手に武器持っていつでも戦えるようにするんじゃないのかな?なんて思ったけど、それは後で聞くことにする。

だって他にも気になることがあるんだ。



「魔術っていえば、召喚師ってどうやって戦うの?どんなことするの?」



実はずっと気になっていた召喚術について聞くいい機会なので、ディルを仰ぎ見ると嬉しそうに口元を緩めて私を見下ろしていた。



「俺のこと気にしてくれるんだな、嬉しいよ。そうだな、召喚師っていうのは基本的に召喚したモノを呼び出して戦うことが多い。召喚術はそもそも自分が契約したモノを呼び出す術だ。対象は魔物やモンスター、道具や武器に至るまで様々あるが対象物によって消費する魔力の量が変わる」


「じゃあ、食べ物とかも呼び出せるの?」


「できなくもないが契約したモノのみを呼び出せる術だから食べ物は食べてしまった時点で終わりだろ?契約にも魔力は使う上に召喚の際にも魔力は使うから、やる人間は非常に少ないんだ。ああ、戦争中なんかは別だけどな―――…召喚術について少し話しておく。そうだな、まず初めに『召喚術』は対象物や対象となる物との相互的または一定条件を満たした上での魔力契約をし、術者である召喚師の元に相応の魔力を対価として呼び出す技術を指し示す」



ディルによると、召喚科では歴史や歴代有名召喚師についての座学もあるらしい。


 計算を学んだり、他国の言葉を覚えたりする以外にもモンスターや魔物の特性なんかを覚える授業だけじゃなく、礼儀作法・ダンスといった貴族ならではの授業もあるんだって。

座学ばっかりなのかと思えば、実習も多いと言っていた。

 護身術の授業から見習い騎士と同じような体力づくりの訓練もしているとか。



「召喚術の訓練?ああ、確か石やペンなどの小さな物から始めて徐々に自分の武器や防具などの実用的な無機物、ネズミや昆虫なんかの意志の希薄な物、奴隷、しつけされた小型の魔物やモンスター、野生の魔物やモンスターといった順で契約能力を高める、みたいな授業があったな。俺は野生のモンスターや魔物と契約するのは普通にできるから一度見せたら授業免除になったぞ」


「っていうか、召喚師って皆すぐに契約できる訳じゃないんだ?」


「ああ、錬金術と同じだ。材料を揃えたり組み合わせを考えたり、不要な物を取り除いて必要な物を選んだり…下準備があって初めて成功するだろう?召喚術は魔力と才能が有ればできると言われているが、そうでもない。体力・魔力・資質の三つをうまく使わないと契約できないし、召喚術は発動しない」



ディルは養子になって間もなく毎日の体力づくりと召喚術の練習、魔力消費のための魔術取得をしていたらしい。



(さらっと言ってるけど魔力消費って…魔力をすっからかんにして寝て回復ってやつだよね?あれって結構きついような)



ぽかーんと口を開けている私に気づかないらしいディルは歩きながら、目を細めている。



「と、とりあえず!召喚が難しいことだけはわかった」


「それがわかればいいんじゃないか?簡単に言うと召喚師なんて『契約・喚び出す・還す』の三点ができて成立する能力だ。国仕えが多いのも、そういった能力が有事の際に役に立つからだな。召喚師がいると戦力だけではなく物資輸送や緊急転移の際にも無駄がないし魔力ポーションの類さえあれば何度でも使えるんだから国としては大量に確保しておきたいんだろう。そもそもなり手が少ないから国は積極的に囲い込む。召喚師は魔力が一定以上なければなれないから魔力量の多い貴族出身者が多く、それ以外でも養子に入って召喚術を学ぶことになる……俺がこれに当たるな。小さな町でも魔力の高い子供は身分にかかわらず資質を調査されるようだ。俺のいた町でも似たようなことをやっていたが、俺は途中で魔力が増えた特殊なタイプだから少々変わってるかもしれないな…まぁ、それは追々話すさ」



なるほど、と頷いた私を見てディルが懐かしい笑い方で私の頭を撫でた。

 懐かしいなぁと目を細めていると



「それから俺以外の召喚師にはあまり近づくな。あちらから近づいてきて絡むようならミーノットの名前を出せ。それでも引かなければコレを見せるといい。家紋入りのハンカチだ。一般的に家紋入りのハンカチはその家の者に気に入られている証のようなものだからな。これを見せても引かなければ名前を確認して手紙を出してほしい。後は俺がどうにかする」


「でも、貴族の関係って面倒なんじゃない?ディルも召喚術の勉強忙しいだろうし、ベルとかリアンもいるから何とかな…」


「俺がどうにかするから、教えてくれ。な?」



心配と手間をかけさせたくなくて言ったんだけど、ディルから妙な圧を感じて思わず頷いた。

 普通に話してた時と表情が変わってないのに何だろう、すごい迫力というか圧力というか重力というか。



(これも召喚術の一種とかかな。契約する時に使うのかも?いやいや、でもちょっと待て私。これに似た感覚をベルとかリアンとかからも時々感じるような…ええー、いやでもなー。ディルってそういう感じじゃなくてもっとこう、家族的な感じの…あ、そうか私ちょっと疲れて目を開けたまま寝てるんだ、うん、違うとは思うけどそういう事にしておこう)



 少し戸惑いつつ“押しの強いお客さんってこんな感じなのかもしれない”とか貴族ってみんなこんな感じなのかな、とか色々現実的なことを考えて居た筈なのに、体は勝手に反応していた。



「……ハイ、ヨロシクオネガイシマス」


あれ?と思った時には声まで出てて、私の返事を聞いたディルはいつものディルに戻って満足げに私の頭を撫でまわしている。


 とりあえず、召喚師と貴族は怖いってことだけがわかった。




◇◇◆




 目的地である『忘れられし砦』は想像以上の場所だった。


 まず、丘を唯一の入り口として左右は削られた岩山、奥には大きな岩山が行く手をふさぐように聳え立っているのが見える。

丘を降りた先がどんなふうになっているのかはわからないけれど、行き止まりなんだろうな、と漠然と思う。



「綺麗だけど…ちょっと怖いね」



真っ赤だ、と呟けばミントが私の手をそっと握った。

 ちらっとミントを見るとじぃっと目を凝らすように砦を見つめている。



「ここは、多くの命が失われたところですから怖いと思う気持ちもわかります――ディルさん、今見張りはいないようですね。でも、あの場所から見られたら私たちはすぐに見つかってしまいますし、街道から外れませんか?」


「それしかないか。幸い、砦跡の左右に木が植えられているからそこに身を隠しながら進んだ方がいいだろう。見張りがいない今のうちだ、急ぐぞ」



ミントとディルの意見に私たちは素直に頷いて街道を外れ、短い草の上を走る。

 一キロほど先に見えている岩壁下の広葉樹の元へ着くころには私たち全員の息が上がっていた。

全速力でなりふり構わず走ったのに、ディルとミント、そしてベルは速かった。

ディルなんてトランク抱えてるのに先頭を走ってたくらいだし。


 最後尾を私とリアンが走って、走って…身を隠した瞬間にリアンはそのまま座り込んだ。

私も息は上がってるけど、リアンなんか見ていて心配になるくらい全身で呼吸している。

先行していた三人は一分程度で息が整ってたから、私も走り込みするべきだろうかなんて本気で思った。

ポーチからレシナの果汁と少量の塩と砂糖を入れた飲みやすい飲み物をカップに入れる。



「リアン、とりあえずお水。あと、クッキーと乾燥果物一枚ずつ食べて」


「………」



返事を返す気力も残っていないらしく荒い息のまま何とか水の入ったカップを持って飲んでるけど、手と足が震えてるのに気づいた。



「情けないですわね。あの程度走って逃げられなければ有事の際に大変ですわよ?」



呆れたような馬鹿にしたようなベルの言葉にもリアンは何も答えず、無言で渡した物を口に入れ水で流し込んでいる。

俯いて顔は見えないけれど疲れた顔を見せたくないのか、ただ単に顔を上げる気力すらないのか余計な動作を一切排除してゆるゆるとコップの中身を傾けている。



「まぁまぁ…あの距離を全速力で走れば錬金術師の方ならリアンさんのようになると思いますよ?あまり遅れずに付いて来られただけでもすごいです。でも、ライムが平気そうなのに驚きました」


「ライムは標高の高い山で自給自足といってもいい厳しい暮らしを送っていたから、体力はある方だぞ」


「なるほど、高所訓練ということですわね。私も何度か経験が……――あら、気づきまして?」



リアン以外のカップをディルに渡すと魔術で水を入れてくれた。

各自休憩を兼ねてそれを飲みながら小声で会話をしていたんだけど、不意にベルが言葉を顰める。


 何事?と周囲を見回すけれど変わったものは何もない。

伏せるよう言われたので身を隠すように木々の間に体を伏せると、話し声のようなものがかすかに聞こえてくる。



「――…盗賊の見張りが戻ったようですわね。数は二といったところかしら」



ベルの視線の先には清潔とはいいがたい服の上に真新しい革鎧を付けた中年の男が二人、武器を持って街道の方を眺めている。

一人は弓、一人は剣を使うようだ。

 あちらは普通の声で話をしている為か微かに音が聞こえてくるものの内容まではわからなかった。



「腕利きという訳ではなさそうだな。警戒の仕方がなってない」


「お酒も飲んでいるようですね、少々顔が赤いですし」



じぃっと木々の間から丘の上に立つ盗賊を分析している三人は口調こそ普段通りだったけれど、表情は真剣だ。


 そのうちディルが黒い布を取り出し目だけを出して頭全体を隠し始める。

ぎょっとする私を他所にベルとミントは小さく頷いて



「偵察頼んだわ。こっちは準備始めるから長くても三十分位で戻ってきて」


「ああ。ライムを頼んだ―――…行ってくる」



小さく何かを呟いたディルは音もなく、少しずつ会話が聞き取れるようなぎりぎりの距離まで移動していく。

 地面に這いつくばったまま呆然とその後姿を見ているとミントの優しい声が聞こえてくる。



「ディルさんは魔術を応用して相手に見つかりにくく接近できるんです。少し手合わせもしましたけど実力はありますから、あの程度の相手なら何の問題もないので心配しなくても大丈夫」



ね?と女神様みたいな笑顔でさり気なく相手を貶すミントに私はどうにか首を縦に振った。

ベルも頭に黒っぽい布を巻いて目だけを出し、周囲を見回して何か考え込んでいるようだ。



「あ、あの…ミント?」


「はい、何でしょう」



にっこり笑うミントもどこからか布を取り出して口元を隠し、出していた前髪をシスターの頭を覆う布の中にしまい込んでいる。



「……なんで三人とも布を顔に巻き付けてる、のかな?」



ぶっちゃけどっちが強盗なのかわかんない気がするんだけども。

 そんな心の声が聞こえたのか目を丸くしたミントがふんわりほほ笑む。

握った手は、暖かくて柔らかいのに何かぞくっとした気がする。



「これですか?顔を隠したり見つかりにくくする目的と髪や肌に血が付くのを防ぐために、巻いてるんです。ほら、夜って白いものや明るい色が目立つでしょう?私やディルさんの髪は光を反射しますし、ベルさんは肌の露出を抑える目的でつけているんです。リアンさんも同じようにされるはずです」


「そうなん、だ?」


「はい、そうなんです。常識ではないですけど、自衛の為に顔を隠すのは暗殺の基礎知識ですよ」


「あんさつのきそちしき」


「はい。あ、ライムはリアンさんの隣にいてくださいね。遠距離攻撃ができる人の近くにいた方が守りやすいんです。私とベルさん、ディルさんの三人で遊撃と捕縛をするので、ライムは捕まえた盗賊を無効化するようなアイテムを使ってください。ちゃんと相手の状態はリアンさんに鑑定してもらってくださいね。まれに耐性持ちがいて寝首を掻かれる…みたいなこともありますから」


「あ、はい。なんかすいません」


「もうっ!謝らないでください、これも適材適所です。それに私もディルさんも護衛として雇われてるんですから、ちゃんと働かせて貰えない方が困ります。あんな美味しいご飯食べさせてもらってるのに働かないとか神罰が下りそうで……盗賊より私はそっちの方が怖いです」


(強盗よりただ飯が怖いシスター…ってなんか違う気がする)


「よ、よろしくおねがいします」


「ふふ、こちらこそ」



もう大丈夫そうですね、なんて普段通り目を細めて笑うミントに何とか笑顔を浮かべる。



(ミントも、ベルも、ディルもすごい)



地面に転がったままそんなことを考えて居ると回復したらしいリアンが身じろぎするのがわかった。

顔を向けるとバツが悪そうな顔をしていたけれど直ぐにむっつりと不機嫌そうな顔になって、手早く黒い布を顔に巻き付け、ずっとつけている白い手袋を黒い手袋に交換している。



「もう大丈夫なの?」


「……ああ。体力も魔力も問題ない」



突き放すような声色だったけれど、リアンの性格からしてあそこで一人だけへばっていたことを気にしてるんだろうなーなんてぼんやり眺めていると眼鏡の奥の目が少しだけ揺れている。



「ライム。君も準備をしてくれ。ローブは黒いものがあっただろう」


「わ、わかった」


ごそごそとポーチを開けてローブを探しているとリアンが近づいてくる。

何か用事だろうかと仰ぎ見るとすっごく小さな声で





「―――…すまなかった。あと、その…助かった」



と謝罪とお礼を言われた。

思わず反射的にリアンの方を振り向いたんだけど、リアンはとっくに私に背を向けてミントと何やら打ち合わせを始めている。

 静かに殺気立ってるような気がするのは見間違いだってことにする。

触るな危険って言葉が浮かんだし


「なんだろう、この一人だけ戦力外通告されてる感…置いてけぼり食らってる感じ丸出しで辛い」



実際、置いてけぼりなんだけども。


 いいもん、いいもん、なんて若干投げやりになりながらローブを薄茶色から黒いものへ交換する。

頭には髪が見えないように厳重に黒い布を巻いた。

目だけ出して布で覆うってかなり高等な技術なんだね……私には無理だった。

 話を終えたらしい二人に


「これ、ローブのフード外れたら完全に風呂上がりの不審者だよね…」


そう呟けば二人とも無言で私から顔を背けて小刻みに震え始めた。

……ひどい。巻き方くらい教えてくれてもいいじゃないか。

夜食奮発してあげるから。





ここまで目を通してくださってありがとうございました!

鈍足ですがじわじわーっと書き進めていきますのでよろしくお願いしますー。


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― 新着の感想 ―
帽子で隠すとか布を巻くとかすればいいのにと思ったら同じような感想が。やっぱりそう思うよねぇ。 主人公の警戒心のなさもこれだけ注意されても治らないって庶民的というよりアホなだけな気がする。 これがないと…
主人公は帽子くらい被ればいいのになんでそのままなんだろう
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