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54話 調合は立派な旅支度です

美味しい調合です。

食べ物の調合2種類ほど。


食い意地を張った工房になってきてる…おかしい、こんなはずでは…ッ!


 早朝、いつものように水遣りや食事の準備を終わらせる。



普段より一時間ほど早く起きたから、外はまだ薄暗い。

空気は澄んでいてなんだかすごく気持ちがいい。

余裕があれば朝日を見ながら苦草で作ったお茶を飲むのも悪くないかも。



(採取に行ってる間は、エルの妹さんとお母さんが水遣りしてくれるって言ってたし、安心は安心かな)



 地下に降りて、昨日結局できなかった【乾燥果物】の素材を取ってくる。

普段より早起きしたのは、1人で新しい調合をしたかったから。

別に2人がいても問題はないんだけど…失敗したときの証拠隠滅が楽だもんね。



「にしても、調合しやすいように下準備しておいてよかった」



ベルから聞いた時間停止だとか何だとかっていうアイテムのお蔭で鮮度が保たれることは分かっていたから、果物を程よい大きさに切っておいたんだよね。



「切り口も乾燥してないし、匂いも切った時とほとんど変わらないって…反則気味だと思うけど、他の所もやってたりするのかな」



私たち以外の2つの工房にも上流貴族はいるし可能性は十分ある。

 学院側からまるっと工房を借りている上に調合釜まで揃っていて基本的な機材もあるってだけで十分だとは思うけど、色々作りたいならそれだけじゃ足りない。



(私は運が良いよね。本当ならこうはいかないんだろうな)



錬金術に小さなころから触れられたこと、錬金術ができる才能があったこと、組み分けでベルやリアンと同じ工房になったこと。



「錬金術の才能がなかったら、今でも私は家にいただろうし」



ずっと独りで。

 ぽつりと響いた言葉でハッと我に返る。

時計を見ると5分も経っていなかったけど、時間がもったいないので慌てて自分の調合釜に駆け寄った。

 作業台に持ってきた果物と砂糖を置いて、おばーちゃんのレシピ帳を開く。



【乾燥果物】

 果物+スライムの核+砂糖

 果物とスライムの核を最初に釜に入れて、魔力を一気に注ぎ、途中の半乾燥状態になったら砂糖を投入する。

 尚、魔力は完成するまで注ぎ続ける。

 結晶化した砂糖がついた果物が浮いてきたら出来上がり。



改めて読み直してみてもあまり難しくはない。

 一番大事なのは乾燥状態を見極めることだろうけど、何とかなりそうな気がするしさっそく作ってみよう。


 張り切って腰のポーチからスライムの核を取り出し果物と一緒に釜へ放り込んだ。

杖を握って、大きくかき混ぜながら魔力を注ぐ。

 最初こそぐんぐん魔力を吸われて驚きつつじぃっと釜の中の様子を観察する。

どうやら、魔力を吸っているのはスライムの核で魔力を吸えば吸っただけ大きくなっているようだ。



「うわぁ…これはちょっと凄いなぁ。スライムが果物食べてるみたい」



掌に収まる大きさだったスライムの核は魔力を吸って何十倍にもなり、釜の中を覆い尽くすほどに巨大化していた。


 薄い青色の核は果物をすっぽりとその中へ収納していて、まるで果物柄の模様のスライムがいるみたいに見える。

愉快な見た目に反して、弾力のある釜を混ぜるのは大変で、必死に魔力を注ぎ続けながらグルグル大きく釜をかき混ぜていく。



「ぐぬぬぬっ……弾力は、間違いなく敵っ!」



途中で混ぜるのを止めると絶対失敗するという確信があるので全力で混ぜ続けていると、少しずつ混ぜ心地が変化していくのに気付いた。


 弾力たっぷりだったスライムの核が少しずつゆるーい抵抗に変わってきている。

ついでに言えばジワジワと溶けるように小さくなっているみたい。



「抵抗が少なくなってきたのって果物の水分を吸ったから?」



スライムの核越しに見えた果物はどこか小さく、くったりとしていたり、皴のような物ができていたり、透明感が増していたりしていて……明らかに調合前とは少し違っているようだ。



「うーん…よくわかんないけど、たぶんここで砂糖入れるんだよね」



半乾燥という状態だろうと見当をつけて砂糖を放り込めばキラキラと光る砂糖がスライムの核をどんどん小さくしていく。

 かき混ぜる時の抵抗が少しずつ無くなっていくのにホッとしつつ魔力を注ぎ続けていると徐々にスライムの核は消え、代わりにキラキラと輝く砂糖が小さくなった果物たちにくっ付き始める。


 小さなキラキラを沢山まとった果物は宝石みたいに綺麗で思わず、おおーと感嘆の声が出た。



「キラキラして綺麗だなぁ。これで、浮いてくるまで混ぜ続ければ……っと」



じぃっとスライムの核が消えた釜の中をかき混ぜ続けるとぷかり、と薄く砂糖の輝きを纏ったレシナの輪切りが浮かんでくる。


 目が覚めるような黄色はそのままに砂糖がキラキラと表面で朝日を受けて輝いていた。

続いて、赤い皮と黄色みを帯びた白い果肉をもつ薄切りのアリルが一枚、浮かんできたのでこれも掬い上げて釜近くにある作業台に置いてある平らなバットに移す。

 掬い上げた感じが軽かったことと薄く切ったことから多分パリッとかカリッとした食感に仕上がっているような気がする。


まずはレシナとアリルが殆ど浮かんできて、最後の方でムカカがプカプカと一気に浮かんでくる。



「ムカカが一番水分量多いから、かなぁ? まぁ、乾燥しきってるけど」



カラカラというよりもしっとり、どっしりといった感じのムカカを掬ってバットに移す。

 ムカカをはじめとした果物たちは元の色が少し濃くなってるけど、綺麗な色合いのままだったのが一番の驚きだったりする。



「普通に乾燥果物作ると色が落ちるっていうか色褪せる感じがするんだけど、錬金術で作ると綺麗なままなんだ」



試しに、と一番味が心配なレシナの乾燥果物を一つ手に取って食べてみる。


 生のレシナって肉や魚、あとは水なんかの香りづけに使ったり、眠気覚ましに口に入れることはあっても酸っぱくて生食には向かない果物の代表なんだよね。

酸っぱいイメージのまま、恐る恐る輪切りにした乾燥果物のレシナを齧る。



「うわぁ、美味しい! なにこれ!」



しんなりしてどちらかと言えばコリコリとした触感になった。

口に入れると爽やかなレシナの香りと味が砂糖の甘さと共に広がってとても食べやすく美味しい食べ物に変化している。


 甘さは控えめ、って感じだからいくら食べても口の中がくどくならない。

うわぁあ、と感動しつつ食べ進めていると階段を降りてくる音が聞こえてきたのでそちらに目を向けると、普段通りカッチリきっちしバッチリ身支度を終えたリアンが釜の前でレシナの輪切りを咥えている私を見て怪訝そうに眉を顰めている。



「……何をしているんだ、君は」



「おはよー。ねぇねぇ、乾燥果物作ってみたんだけどこれ食べてみてよ! すっごい美味しいから!」



早く早くと、手招きをすると諦めたようなため息と共にリアンがこちらへ向かってくる。

 調合したばかりのレシナの輪切りを一つ差し出すとじぃっと受け取った姿勢のまま凝視している。



「ふむ…【乾燥果物】品質はC+か。効果は疲労回復、魔力微回復、劣化半減。保存食としては中々だな」


「へー、結構品質よかったんだ……じゃなくてっ、いいから食べてみてよ!レシナ買い占めた方がいいかもって思うくらい美味しいから」


「まぁ、君が言うなら美味いんだろう…――――ん? ああ、本当にこれは美味いな。爽やかなレシナの香りや味はそのままに甘味が丁度いい。摘まみやすい大きさだし触感も面白い……甘い物が苦手な人間にもウケがいいかもしれん。食べた後に口の中がさっぱりするのが心地いいし紅茶との相性もよさそうだ」


「じゃあ、次はアリルね。たぶんこれもいい出来だと思うんだけど」



どうぞ、と乾燥してカラカラになったアリルを一つ渡して自分の口にも入れる。


 パリッという小気味良い音と共に砕けた薄いアリルは噛めば噛むほどアリル独特の甘みと酸味を感じられて、ついついもう一枚……と手が伸びそうになるような味と触感だった。



「美味しー。ぱりぱりがいいよね! アリルの味もちゃんとするし。やっぱり酸味のある果物と相性がいいのかな、乾燥果物って」


「かも、しれないな。触感も面白いし、軽い口当たりが癖になる。酒のつまみにも良さそうだ。欠点としては砕けやすいから持ち歩きにはあまり向きそうにない、といったところか。売り出すならレシナの方だが家で消費するならアリルは人気になるだろう」



最後に手を出したのはムカカの乾燥果物だ。


 小さめのくし型に切ったムカカを摘まむと、表面は乾燥しているのに中はしっとりしているのか少し重い。

1つをリアンに渡して、エイッと小さなそれを口に入れたんだけど、これも美味しかった。

 先ほどの2つとは違って皮に近い部分はねっとりとしているのに、真ん中の赤い部分のプチプチとした種の触感は残っている。


 甘味は先ほどの2つより強いけれど、自然な甘みを凝縮して強調した感じ。

これも美味しい、とうっとりしているとリアンも少し口元を緩めていた。



「どれも触感や味が違って面白いな。もし可能なら色々と実験して欲しいんだが……できるか?」



「私としてももうちょっといろんなの試してみたいんだけど、まずは干し肉とか作っちゃわなきゃ。手が空いてるなら、リアンの好きな果物を切って地下に置いといてよ。あと、切り方によって触感や味も変わりそうだし、ちょっと楽しみかも。ベルにも試食してもらおうか」



ベルの分、を避けようとバットに手を掛けた所でリアンに名前を呼ばれて少し待つように言われた。

どうしたんだろう、と振り向けば言いにくそうに視線を外しているらしくない姿が。



「ベルの試食だがやめておいた方がいい。多分、というか確実に味見じゃ済まなくなる」


「……………確かに。野営の時に食べるまで秘密にしとこうか。瓶に入れて持っておく」


「頼む、そうしてくれ。今回はこの調合ばかり頼むわけにもいかないからな」



採取が控えていなければ増産を頼んでいたところだが、と何処か悔しそうな顔をしている。


 ベルもだけどリアンも見た目以上に食べるから初めは大分驚いたっけ。

羨ましいことに食べてもお肉が付きにくいらしくて代わりに身長が急激に伸びているからか、関節が痛いって朝とか時々ぼやいてるのを聞く。




「ちなみにどれがお気に入り? これ、魔力も回復するんでしょ? クッキーも飽きるし回復用ってことでストックしておいてもいいかなって思ってるんだけど」


「確かに、君が言う様にクッキーはどちらかと言えば飲み物と一緒に摂りたいからな。こういった飲み物を必要としないような回復手段は嬉しい。個人的にはレシナが今の所一番好きだな」



 アレは食べやすい、とほんの少し機嫌良さそうに口元を緩めているリアンだけど、初めは魔力の回復は魔力ポーションの方が効率いいだろうなんて言ってたんだよね。

一か月前の時には想像もできなかったなぁ、なんて思いながら瓶に入れる予定だった最後のレシナをはい、と渡すと無言で口に入れていた。



(そういえば2人とも私がご飯作ってる時に競う様に手伝ってくれるのって味見が目的だったりして)



モグモグと涼しい顔でレシナの乾燥果物を食べている姿を視界に入れつつ、キュッと瓶の蓋を閉めてポーチの中へ収納する。


 ベルがいつ起きてくるのかわからないからさっさとしまっておかなきゃ。

なんだかんだでベルにお願いされると食べ物渡したくなるんだもん。

危ない危ない。



「(今更だけど餌付けしてるみたいだよね、これだと。ベルもだけどさ)じゃあ、戻ってきて時間ができたら皆の分作ろうか? 一番時間がかかる下処理は手伝ってもらうけど、私も食べる訳だしスライムの核提供と準備の手伝いで料金は相殺ね」



何かと私にお金を渡したがるので先手を打って提案すると、バッサリ切り捨てられることなく顎に手を当ててぶつぶつと数字のようなものと小難しいことを呟き始める。

こうなると割と長いのは分かってるから、さっさと次の調合の準備をすることにした。


 今日中に調合するのは【干し肉】【オーツバー】【簡易スープ】【クッキー】の4つ。


どれも緊急用だったり在っても困るものじゃないから沢山作らなきゃいけないんだよね。

干し肉はお肉の塊を有るだけ消費して作るし、オーツバーも指定された分は最低でも用意しなきゃいけないから、と時間配分を考え始めた所でリアンが口を開いた。



「にしても、【乾燥果物】にはスライムの核を使うのか。売り出すなら砂糖を使っていることもあるし少し高めに設定しておいた方が良さそうだな――――…ライム、今回の採取ではスライムを見つけたら積極的に狩ってくれ。水のある所では割と多く発生するそうだし、今後の事を考えても多く取っておくに越したことはなさそうだ」


「だねぇ…一応この後実験してみるつもりだけど、簡易スープを作るのにも使うんだよ、スライムの核。ストックはあるから何とかなるけど多分今回でなくなるかな」


「僕もいくつか手持ちがあるから出そう。ベルにも朝食時に聞いてみるか」



粗方話がまとまった所で鐘が鳴った。

いつもの調子でいけば、あと1時間くらいでベルが起きてくる。


 明るくなった窓の外から近所に住んでいる人たちが二番街の市場の方へ歩いていくのが見えた。

二番街では朝市っていうかなり早い時間から市場が開かれる。

私はまだ行ったことないんだけど、結構お買い得で有効利用している人も多いっていうのはミントから聞いた。



「さてと…朝ご飯はできてるし、ベルが起きて来るまでちょっとあるから、まずはお肉の下準備も手伝ってくれない?」


「……構わないが、ライム、君も大概人使いが荒いと言われるだろう」


「えー、リアン程じゃないって」



呆れたような視線を受けながら地下へお肉や素材を取りに向かう。

 基本的に【干し肉】は調合で作るのも普通に料理するのも同じ材料でいいから、頭は使わなくても済んだ。

元々、調味料は台所にあるし、持っていくものはお肉と香料――…香りづけに使う素材だけ。

 お肉自体はどのお肉でもいいから適当に安いものをブロックで買ったから、それを運び出す。

台所へ着いてから早速下準備だ。



「まずは肉の表面を包丁の背で叩いて柔らかくして、調味料を適当に入れたボウルの中に投入。時間は最低10分。後は釜で調合すればいいだけなんだけど…」


「なるほどな。この柔らかくする作業に時間がかかるのか」



包丁を使って地道に下処理をした後、肉を調味液に漬けこんで放置。

朝食後直ぐに調合すれば丁度いい漬けこみ具合になっているはずだ。


 結局ベルが起きて来るまでに私は【クッキー】リアンは【魔力ポーション】をそれぞれ必要分揃え終わった。

そこまでは割と良かったんだけど……起きてきたベルを見て、私もリアンも今後の予定が一瞬綺麗さっぱり吹き飛んだ。




◇◇◆




 朝食を食べ終わって、簡単に予定の打ち合わせをする為に応接用のソファに移動した。


私もリアンもどう切り出していいのかわからずに普段通り、いつもの席に腰を下ろしたんだけど、やっぱり、気になる。



「ベル、いつもの錬金服じゃないけど…何かあった?」



普段の錬金服は豪華でキラキラした宝石やらレースやらが散りばめられているドレスみたいなものだったのに、今日来ている服はすっきりしている。


 そりゃ、作りは丁寧だし高価な赤系の生地をふんだんに使ってて刺繍や魔石らしき宝飾品も付いてはいるけど派手ではなくって…普段着っぽい感じになっていた。

髪型も気合の入ったものじゃなくて、簡単に左後頭部でまとめられているだけだ。



「1ヶ月経って、錬金科のパワーバランスなんかもわかってきたから、ここでは態々猫をかぶる必要ないかと思っただけよ。第一、貴族でもない相手にああいう口調で話すのって疲れるのよね」



全く、面倒だったわ。

なんてボヤキながら紅茶を飲む姿を見て、“なるほど”と納得したのは私だけじゃなくてリアンもだった。


 時々だけど口調が“お嬢様”じゃなくなってることもあったし、ベルの性格なのか割と作業が大雑把だったりもして、想像していた“貴族のお嬢様”とは少し違うんじゃないかなーと思い始めたのは割と早い段階だったから。



「貴方たち2人だけの時は“お嬢様”を演じるつもりはないから、適当に流して頂戴な」


「まぁ…僕は構わないがあまり気を抜いているとバレるんじゃないか?」


「その時はその時よ。私が家を出て訓練を受けていたことを知っている人間は大体知っているから問題もないわ。そもそも、ああいう口調や話し方、服装は対貴族用、対社交界用だから別にしなくてもいいのよねぇ…その内、他の工房の貴族もああいう無駄に気合が入った服装じゃなくなる筈だから見てみなさい。結構面白いわよ、性格が出て」



ちなみにベルが今着ているのも錬金服らしい。


 まぁ、口調や服装が多少変わったと言ってもベルはベルだ。

物腰や日常の動作はどこからどう見ても私みたいな庶民とは違って…なんていうのかな、丁寧っていうか行儀がいいっていうか…まぁ、普通の庶民じゃない事だけは丸わかりなわけで。



「で、私は爆弾の調合していいのよね?終わったら鑑定して頂戴」


「わかっている。爆弾に関しては僕たちにも色々と影響があるからな」



はぁ、とため息を着いてリアンが紙を取り出して何かを書き、私とベルに渡す。


 反射的に受け取った紙には私にしか調合できないアイテムの名前と数量が書かれていた。


一番下に【乾燥果物】※レシナ多め と書かれていたのには少し笑ってしまったけど、自分がやるべきことは分かり易くなったので素直にお礼を言って早速調合に移る。



(調合順番としては【干し肉】【オーツバー】【簡易スープ】【クッキー】【乾燥果物】でいいかな。うん、干し肉は調合した後1時間風に晒さなきゃいけないし。問題のスライムの核もベルとリアンから融通してもらえたし、スープだけじゃなくて乾燥果物も作れそう。時間はギリギリだけど)



 下処理をしておいたお肉を持って釜へ向かった。

ベルとリアンはそれぞれ地下に素材を取りに行っているので先に作り始める。



「味付けした干し肉を入れて、香料は…アリルの枝でいっか」



このアリルの枝はお肉屋さんで大量購入した時にオマケで貰ったんだよね。

 沢山の塊肉を買った私達を不思議に思ったお店の人が何を作るのか聞いてきたから、干し肉を作るって答えたらくれたものだったりする。

丁度燻製用の木を買わなきゃなーって思ってたから凄く助かった。


 ぽいっと枝を入れて、魔力を注ぎながらグルグル大きくかき混ぜる。


 釜の中でまず最初に変化したのはアリルの枝だ。

魔力によって枝は徐々に小さな欠片…いわゆるチップと呼ばれる状態に変化して、徐々に白っぽい煙が釜の中に充満していく。


 煙は、塊肉にまとわりつく様に漂い、徐々にその濃度を増していった。

魔力を注ぐ量が一番多いのは香料が煙を出し始めるまで。

それからは少し弱めて…火でいうと強火から中火位に火力を落とす感じで、混ぜていく。

煙がお肉を覆い尽くしてしばらくすると少しずつ薄れて、いい感じに燻されたお肉が見えてくる。


 仄かに色づいたお肉はカチカチというよりも、ギュッと水分が抜けて旨味だけが閉じ込められているようでかなり美味しそう。



「完成は浮いてくるまで……だったっけ」



ぐるぐーる、と混ぜながら様子を見ていると、やがて煙が消えて1つ、また1つと肉の塊が浮いてきた。

大きな塊を全部で6つ、調合釜横の網に乗せ、風通しのいい場所へお肉が乗った網を置いた。

このまま1時間放置すれば完成だ。


 残りはどれも調合したことのある物ばかりだから、難しくないし失敗もしないと思う。

……出来上がったお肉、ちょこっとだけ夕食に使おうかな…味見は大事だもんね。




 ここまで読んでくださってありがとうございました!

次回は採取にでかけ…ると思います。出かけます、ええ、出かけますとも!


=アイテムとか=


【乾燥果物】

 果物+スライムの核+砂糖

 果物とスライムの核を最初に釜に入れて、魔力を一気に注ぎ、途中の半乾燥状態になったら砂糖を投入する。

 尚、魔力は完成するまで注ぎ続ける。

 乾燥し、結晶化した砂糖がついた果物が浮いてきたら出来上がり。

【干し肉】

 肉素材+香料+調味料

 肉素材を調味料に漬けて軽く揉み、10分以上放置する。

 10分後に香料と共に漬けこんだ肉素材を釜へ入れ、魔力を込めて30分程グルグル混ぜる。

 乾燥した状態で浮いてきたら救い上げ、1時間ほど風に晒せば完成。

 ※使う香料によって香りが変わってくるので気を付けること

【アリルの枝】

 燻製の材料として良く用いられる。仄かに甘い、アリルの香りがつく。

おまけとして貰えるくらいなので割と入手しやすい。



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