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【書籍化中!】アルケミスト・アカデミー(旧:双色の錬金術師)  作者: ちゅるぎ
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47話 物騒な調合

 遅くなりましたが、更新です。


相変わらず調合しておりますが厄介ごとの気配がじわり。

調合って時間かかりそうですよねー…楽しそうだけど。




 食事を終えた私たちは各自調合することにしたんだけど…何を作るか、で悩んでいた。



っていうのも、ベルの提案っていうのが十中八九フィールドワーク、もとい採取に行きたいってことだろうからね。

ベルの場合は採取が目的じゃなくて戦闘が目的だろうけど。



「うーん…戦闘に役立つもの、かぁ」



何かあるかなぁ、と首を傾げる。

 食事中に戦闘に役立つアイテムがあった方がいいよねって聞いたのは私だった。



「ベルやリアンはちゃんと武器を使いこなせてるし戦闘も慣れてるみたいだけど、私ってあんまり戦闘得意じゃないでしょ? だからもうちょっと自分で自分を護れるようにしたいんだよね。でも戦闘が楽になるようなアイテムって言っても、そんな都合のいいモノはない、か」



やっぱり、と応接室のソファで項垂れるとリアンがふむ、と眼鏡を押し上げて参考までに、だが…と口を開く。



「毒や麻痺といった状態異常をもたらすアイテムが手頃と言えば手頃だろうな。あとは…爆弾系の調合だろう。爆弾にも種類はあるし、威力についても調合素材によって強めたり弱めたりという調整もできる筈だ。あとは…装着系のアイテムだな。特殊なものだと薬なんかもあるが…技術や知識が必要だから今の僕たちには手が出せないだろうな」


「素材の関係で考えても…毒薬系か爆弾、の二択だよね。爆弾っていうとフラバンだよね」


「威力はそこそこ、だが多少のダメージと怯ませることはできるだろうし良いんじゃないか?」


「……爆弾系ってさ、爆発した時大変だよね」



思わず昔のことを思い出した私は遠くを見つめた。

隣からギョッとしたような視線が突き刺さってくるのでため息交じりに思い出を口にした。



「実はまだおばーちゃんが生きていた時にさ、禁止されてた爆弾を作ってみたくなって…出かけてる間にこっそり作ってみたんだよね。でも全然ダメダメで結局大爆発して、すっごく怒られた」


「ライム…君は昔からあまり変わってないんだな」


「どういう意味で言ってるのか敢えて聞かないでおくけど…調合釜周辺が黒焦げるわ、色んなものは吹っ飛ぶわで片付け大変で」



だからイマイチ気が乗らないんだよね、爆弾系調合って。


 そう締めくくればリアンは疲れたようにため息をついて一言。



「毒薬か麻痺薬を作れ。しばらく爆弾系の調合は禁止だ。調合する時は釜の周囲の物を片づけてからにするように。それから失敗しても僕は片付けを手伝わないぞ」


「…そういわれると調合したくなるっていうのが人の性だよね」


「馬鹿だろう、君は」


「そんなことないよーだ。杖で調合するようになってから失敗してないし! そういうリアンは何作るのさ」


「僕か? 僕は…そうだな…回復アイテムももう少し用意しておきたいところだし、初級魔力ポーションに挑戦してみようかと思っている」



そういうリアンは先ほどから熱心に教科書のあるページを見ているので、自分の教科書を開くのが面倒だった私は横から教科書を覗き込んだ。


 驚いたようにリアンが後ずさったんだけど、突然草むらからスライムが出てきたみたいなその反応って結構失礼だからね。



「へー…作り方は初級ポーションと一緒みたいだけど、魔力の調整とか下準備が少し細かいね」


「あ、ああ。でもまぁ、調合してみない事には改善も出来ないからな。時間はあるし、今後作れるに越したことはないから試してみるさ」



ずれてもいない眼鏡の位置を直しながらさり気なく体を離すように逃げるリアンにちょっとムッとしたのと、教科書の覗き見がしにくいので本を持っている腕をつかんで見やすいように近づく。



「これなら私も調合できそうだし、作ってみようかな。素材は…うん、魔力草も結構あるし」


「……君の分も素材を持ってくる、ちょっと待っていろ」



ざっと手順を確認して材料なんかを見ているとリアンが本を私に預けてさっと地下へ向かった。

 いつもより少し速く歩く後ろ姿を見送りながら小さく“勝った”と思った。

いや、何に勝ったのかはわかんないんだけど、気分はいいよね!

 鼻歌を歌いながら教科書で改めて作り方を確認する。



【初級魔力ポーション】

調和薬+魔力草+水素材。

飲まないと効果がない薬の代表。召喚師や錬金術師、魔法使いの必須アイテム。

作り方はポーションと同じだが魔力草は細かく均一に刻む。

魔力と注ぎ方も強弱をつけつつ状態を見極める必要があるので魔力ポーションの方が難しい。



「毒薬も調べてみようかな。レシピ帳に載っていればいいんだけど」



懐から手帳を取り出して薬のページを見る。

 初級ポーション、初級魔力ポーション、アルミス軟膏、風邪薬、苦い薬、と続いて毒薬というカテゴリを見つける。



「あった。えーと…1種類だけ、みたいだね」



沢山あっても迷いそうだから困るけど、なんて考えながら毒薬と書かれたページを見てみる。



【毒薬】

 毒素材+毒素材+調和薬。

毒素材の組み合わせで効果が変わる。取扱注意。

毒素材はすり潰すか細かく刻む、または粉砕してから混ぜ合わせること。

念の為使用した道具などは念入りに洗浄するように。


毒素材が2つ、と調和薬なら手持ちでどうにかなりそうだ。


 念の為、というかホントに少ないけど毒草も採取してあるんだよね。

調和薬もまだあるし、とそこまで考えてまずは先に魔力ポーションを作るべきだろうと判断したまではいいんだけど…毒薬に何を入れるかで少し迷う。



「毒きのこ…でいこう、うん。比較的見つけやすいし、大体どこにでも生えてるもんね」



きのこにしよう、と決めた私はポーチから森や草原とかで見つけたきのこの中でも広く知られている毒きのこを選んだ。

 一目見ただけでもわかる毒々しい赤に黄色の斑点がある、食べたら死ぬぞっていう猛毒のきのこ。



【赤きのこ/妖精の悪戯】

毒々しい赤い傘に黄色の斑点がある、猛毒のきのこ。

どんな土地でも生えてくるのでもっとも有名な毒きのこでもある。黄色の斑点は夜になるとぼんやり発光するので、特殊な塗料に使われることもあるとか。



きのこを持って調合に思いを馳せていると地下から戻ってきたリアンに不審者でも見る様な目を向けられた。



「赤きのこを持ったまま笑うのは止めてくれないか、気味が悪い」


「ごめんごめん。つい、楽しくなってきちゃって」



食事に混ぜるようなことはしないから安心してよーと笑えばリアンは緩く首を振って



「当たり前だろう、全く。毒薬に赤きのこを使うなら、もう一つの素材は黒きのこを使ってみたらどうだ?」


「黒きのこ…?黒きのこってコレ、だよね」



 ポーチから真っ黒なきのこを取り出す。

このきのこもどこにでも生えてくるんだよね、家からちょっと離れた所にも時々生えてたし。



【黒きのこ/死神の落し物】

傘も軸も真っ黒なきのこ。裏返すと傘の裏側だけが白い、毒のきのこ。

どの土地にも生えるが、特に墓場で多く見られる。

弱毒性だが、赤きのこと合わせると赤きのこの毒を強める効果がある。



ポーチから毒きのこを取り出した私にリアンが一瞬何か言いたげな顔になったけれどすぐに諦めたのか黒きのこを使うように言った理由を話し始める。



「この黒きのこ自体にあまり強い毒性はなく弱毒性のきのことして知られているが、赤きのこと合わせると赤きのこの毒を強める効果があるんだ。赤きのこ単体で毒薬を作ると『毒薬』ができるが赤きのこと黒きのこを合わせた時のみ『猛毒薬』ができあがる」


「猛毒薬ってもう別の薬になってるけど」


「ああ。猛毒薬のレシピは本来別のものだが、毒薬のレシピと同じもので猛毒薬になるから便利と言えば便利だな…まだ赤と黒のきのこはあるか? あるなら僕に売ってくれ。僕も毒薬を作っておきたい」


「鞭に塗るの?」


「ああ。ベルが何処に行きたがるのかわからないからな…買ってもいいが折角作れるんだから作っておいた方がいいだろう」


「そーゆーことなら、タダで良いよ。色々教えてもらったし。ずっと不思議に思ってたんだけど、そーゆー知識ってどこから仕入れてるの? 教科書?」



 ベルも物知りだけど、錬金術に関する知識ではリアンには到底敵わない。

私も錬金術関係のことについては少しだけ知ってるけど、基本的に経験に基づくものだったりおばーちゃんからの受け売りだったり…ほとんど自分で調べたことはない。

まぁ、教科書位は読むけど。


 でも、リアンは素材一つ一つの知識や生息地域とか細かな調合上の注意なんかも全部覚えているみたいだし。



「教科書も目は通しているが…基本的に本から得た知識が多いな。他には知り合いの薬師や武器の扱いを教えてもらった冒険者から伝え聞いた話もあるし、他者から伝え聞いた話もある。実際に見て学んだこともあるが体が弱かったこともあって君ほど多くの経験はないから、あくまで“知っている”だけだな」



そう話すリアンは楽しそうに地下から持ってきた素材を2人分に分けてくれていた。


 私もその様子を見ながら納得しつつ新しく赤きのこと黒きのこを取り出して念の為に小さめの籠に乗せる。

流石に素手で渡すのはねー。調合用の手袋をしているなら別だけど。



「今回は有難く受け取っておこう。しかし…君はいったいどれだけの素材を持ってるんだ?」



次々に採取した覚えのないものがそのポーチから出てきているんだが、なんて言われるけれど基本的に目についたら採取してるだけなんだよね。


 家の周辺でとったり、教会から工房までの道で見つけたらちょこっと拝借したり…みたいな。

庭の隅に生えていた雑草とされる素材を採取することも多々ある。



「自給自足生活が長かったからつい素材を見かけると採取しちゃう癖があるみたい。流石に人の庭に入ったりとかしないけど、道端に生えてるのとか…妙に目についちゃって」



あはは、と笑えば呆れたような感心したような顔で



「採取はいいがくれぐれも人の家の庭に入り込むようなことはしてくれるなよ」


「流石にそれくらいは弁えてるってばー! 田舎では割とふつーだったけどこっちではそういうの駄目みたいだし」



不便だよねー、なんて呟きながら素材たちをそれぞれの作業台へ移動する。


 私もリアンも作るものは一緒だし、作る手順も一緒なので完成したものの品質なんかが違えば色々検証してみるのも面白いかもしれないなーなんて頭の片隅で考える。

ここにベルがいたら3種類のアイテムが出来上がるわけだからもっとよかったのに。




◇◇◆




 私たちは無事に「初級魔力ポーション」と「猛毒薬」を完成させた。



 私は両方品質Cだったんだけど、リアンの作ったアイテムはC+という結果。

ただ、私とリアンの作ったアイテムにはそれぞれ違う特殊効果がついていたのであーでもない、こーでもないと色々検証してみた。



「恐らくだが効果の違いは魔力色の違いだろうな」


「ってことはベルにも同じの作ってもらう?ほら、私たちみんな魔力色違うし」


「そう、だな。その方がいいだろう―――…現時点で確信は持てないが、僕は薬品や水系のアイテムにはより強力な特殊効果が付きやすいと考えられる。君の場合は…素材の力を引き出すのが得意なのではないかと思う。教授の前で調合した品や過去に調合したという『結晶石の首飾り』も他にもいくつか試してはみるが、恐らく間違いはない。一応、ワート教授にも報告をしておくぞ、いいな?」


「うん。でも、素材の力ってことは素材系の調合と相性がいいってことなのかな…ちょっと面白くないね」


「面白いかどうか僕にはわからないが…素材となる調合アイテムが高品質であればある程、完成するアイテムに大きな影響を与えるんだ。大きな強みにもなるし、最悪、上位調合ができなくても食い扶持には困らない」



何なら僕がすべて買い上げてもいい、なんてサラッと言うものだから思わず笑ってしまう。



「食い扶持に困らないって、リアンもそういうこと考えるんだ」


「当たり前だ。僕の家は商家だぞ?食って行けるかどうか、損得勘定は嫌という程叩き込まれてる上に物事の見極めにはある程度の自信がある―――…さて、まだベルが戻ってくるまで時間があるからな…早速素材系調合アイテムを作ってみるか」



 勿論、君もだ。


ニヤリと何かを企んでいるかのような笑顔を浮かべる。



「(あ、これ逃げられない系の笑顔だ)わ、わかったよー…どっちみち調和薬とか浸水液なんかは作っておかなきゃって思って……あ!そうだ、ちょっとこれ使ってみて」



ふと思い出したのは昨日の朝採取した少量のアオ草。


―――……聖水を与えて育てた“アオ草”の葉は丁度2回分。


明日の朝にはまた2回分取れる筈なので別に惜しくはない。

 はい、とリアンに1回分のアオ草を渡せば訝しげに眼鏡を押し上げた後“鑑定”を始めたらしい。



「なっ…“祝福”つきのアオ草!?」


「折角だからこれで作ってみない? 調和薬。水素材は…聖水にしようかなって思ってる。明日の朝、丁度教会に行く予定だし」



「それは構わないが…いいのか?祝福つきのアオ草なんて、銀貨1枚以上するぞ?」


「いいのいいの。今の手持ちはそれだけだけど、その内ちょこちょこ採れるはずだから。で、リアンは水素材どうするの?」



聖水をポーチから取り出した私にリアンも少し悩んで聖水を使うことにしたらしい。


 彼も自分で聖水を手に入れていたらしく貴重もしくは比較的高価な素材を入れている木箱から聖水を取り出していた。

それから、私たちは丁寧にアオ草を茎から外し、小さな新芽や葉の部分のみをとって、茎の部分は捨てる。


 葉っぱ自体は全部で5枚程度しかないのであっという間の作業だ。

 リアンも丁寧に葉を外して、濡らした布で丁寧に葉の表面を拭いている。

私も同じように処理をして、聖水の分量を正確に測った後、2つの素材を調合釜へ投入した。


 緩く弧を描くように杖を動かしながら、少しずつ沈んでいく葉を眺める。

最後の葉っぱが釜の底に沈んだのを見て魔力を流していく。

初めこそ緊張したけれど、もう調和薬の調合には慣れてきていて魔力の調整もそれほど難しくはない。


 ぐるぐる、と混ぜていくと葉っぱが完全に溶け、色が均一になったので瓶に移してみる。

同時刻に調合を始めたリアンも同じように瓶に液体を移しているようだった。

出来上がった調和薬は鮮やかな黄色で気のせいか、キラキラと輝いているようにも見えた。




「きれー…こんな調和薬初めて見たかも」



瓶を持ち上げて色々な角度から眺めていると同じように瓶を持ったリアンが近づいてきた。

その顔には満足そうな笑み。

早速鑑定を終えたらしいリアンは直ぐに私の調和薬も鑑定してくれた。



「素材がいいのと作り慣れていたからだろうな…僕のも君のも品質はSだ。最高品質である上に特殊効果で【祝福】がついている。僕の物には【薬品能力・大】がついているが君の調合した物には【効力増大】がついている」


「へー…? じゃあ、ベルが帰ってきたら同じ組み合わせで調合してもらわないとね。違う効果がつくかもしれないんでしょ?」


「ああ、そうだな。祝福つきのアオ草を調達できる、と考えていいんだな?」


「大丈夫。明日にならないとだめだけどねー…にしても品質Sって初めて作ったよ。すごいね、キラキラしてて綺麗だし」


「―――…素材がいいとは言っても品質Sのアイテムがこれほど早く作れるとは…薬品の能力を上げることができる特殊能力がついているなら、これは高レベルの薬品調合ができるまで取っておくか」



嬉しそうに貴重品を入れる鍵付きの金庫に仕舞い込むのを見ながら私も出来上がった物をポーチへ仕舞い込んだ。


 それから、私たちは在庫が少なくなってきていた調和薬や他の素材系調合アイテムを作ったんだけど品質はどれもCかC+止まりで、もう少し品質のいい素材を採取したいね、なんて話してこの日の調合を終える。


 日が傾いて赤みの強くなった夕日を見ながら夕食を作っていると玄関の外から馬車が止まる音が聞こえてきた。



「ベルかな?リアン、ちょっと出て!スープもうちょっとでできるから」


「ああ、わかった」



ソファで本を読んでいたリアンは腰を上げて玄関のドアを開けると丁度こちらへベルが戻ってくるところだったらしい。



 ベルは軽くリアンに礼を言って室内に戻ってくるなり、ずかずかと食卓テーブルのいつもの席に荒っぽく腰を下ろした。

なんか、目が据わってる様な気がする…んだけど気のせい?



ここまで読んでくださってありがとうございます!

誤字脱字変換ミスなどがあればこっそり教えてくださるとうれしいです。


=アイテムや素材など=

【初級魔力ポーション】

調和薬+魔力草+水素材。

飲まないと効果がない薬の代表。召喚師や錬金術師、魔法使いの必須アイテム。

作り方はポーションと同じだが魔力草は細かく均一に刻む。

魔力と注ぎ方も強弱をつけつつ状態を見極める必要があるので魔力ポーションの方が難しい。


【毒薬】

毒素材+毒素材+調和薬。

毒素材の組み合わせで効果が変わる。取扱注意。

毒素材はすり潰すか細かく刻む、または粉砕してから混ぜ合わせること。

念の為使用した道具などは念入りに洗浄するように。


【赤きのこ/妖精の悪戯】

毒々しい赤い傘に黄色の斑点がある、猛毒のきのこ。

どんな土地でも生えてくるのでもっとも有名な毒キノコでもある。黄色の斑点は夜になるとぼんやり発光するので、特殊な塗料に使われることもあるとか。


【黒きのこ/死神の落し物】

傘も軸も真っ黒なきのこ。裏返すと傘の裏側だけが白い、毒のきのこ。

どの土地にも生えるが、特に墓場で多くみられる。

弱毒性だが、赤きのこと合わせると赤きのこの毒を強める効果がある。


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