348話 適材適所を極めましょう
久々の!こうしん!!!!
あまり進まない、と歯ぎしりしつつ、こういう所をみっちり書きたい……
次は新しい人が出てきます。
到着したダンジョンは望みどころか理想の姿をしていた。
「じゃあ早速……!」
ポーチから採取用手袋を取り出すと肩に何かが乗った。
振り返ると眉尻を下げた顔で私を見下ろすラクサ。
「こらこら。気持ちは分かるんスけど、安全確認が先。んー、この辺りは見晴らしは文句ナシ。でも、あっちの雑木林と滝周辺は要注意ってトコか。人も動物も魔物も隠れやすいっショ?」
指さす方向へ視線を向ける。
開けた草原にいる今の場所から二キロほどの所に雑木林が広がり、その奥には大きな崖。崖の切れ間からは大量の水が地上へ降り注いでいた。
滝と呼ばれる水源があるということは川もあるということ。
「確かに水があるところには動物が集まるもんね……ダンジョンって魚いる?」
「いるッス。魚も虫も。それ目当てでダンジョン入りする人間もいるンで」
「じゃあ魚釣りに来る人も護衛を雇ってるってこと?」
「そういう人は狙い目なんス。なんせ素材を集める為に危険な場所へ突っ込んでいく必要が少ないんで。まぁ、やばい場所で釣りやら虫取りしたいってやつもいるンで、その辺りは運っスね」
「結局はそうなるんだね」
アウルさんは私たちの話を聞きながら、装備品を取り出していた。
何をしているのかな、と目で追っていると気づいてくれていたらしく笑顔で手招き。
「ダンジョンの中がどういう環境か分からないから、どういう状態でも最善の動きができる最低限の服装で来て、ダンジョンの環境によって装備を整えるんだ」
最初から全部着込んで来ると時間がかかるからね、と武器ホルダーに形状の違うナイフなどを収納していく。
彼が持っているのは収納袋でタグは色分けされていた。
「俺達はある程度金に余裕があるから出来るけど、昔は標準装備で雪山とかもあったなぁ。流石にすぐ引き返したけど」
はっはっは、と笑いながら装備を整えた彼が体中に武器を収納していく。
慣れた様子に私も何かすべきかと考えたけれど、もともとが森なんかで動くための装備だったことを思い出して杖を出すだけにした。
「あ、ライムちゃんは杖しまっていいよ。採取を最優先で」
「え? いいんですか?」
「その為の俺だからね。あ、もしよければ『青っこいの』に周囲を偵察してきてもらえたら嬉しいんだけど……あの大きさとスピードなら魔物でも見つけにくいしね。上空を飛ぶ鳥系の魔物にだけは気を付けて」
はい、と返事をして青っこいのに声をかけるとやる気満々で飛び出し、大きく頭の上で8の字飛行。ピュンッと何処かへ飛び去ってしまったので思わず感心していると、ラクサが笑いながら頭の後ろで手を組んだ。
「人の共存獣動かせる才能もある、とか凄いッスね」
「いやいや。俺に才能なんてナイナイ。間違いなくライムちゃんの共存獣の知能が高いから、必要だと思った提案を受け入れただけだよ。俺の為じゃないって分かってるから動いただけ」
買いかぶりすぎだ、と笑いながら身支度を整えたアウルさんがグッと大きく伸びをした。
改めて周囲を見回して口を開く。
「ひとまず、出入り口についてだ。時間は気にしなくていいってことになったから、今回は非常口から安全に帰ろう。時々、ダンジョン発生の出入り口は『新しい場所』に繋がってることがあるからね」
「……あれ? 出入り口と門って違うんですか?」
事前の説明で出入りできる場所が複数ある可能性がある事は聞いているし、『帰還の鈴』を使えば問題なく帰れるとは知っていた。
私はてっきり『帰還の鈴』があればダンジョンの出入り口から出られるのだと思っていたけれど違うらしい。
「いや、それが違うんだ。帰還の鈴で開錠できるのはあくまで国が設置した『非常口』だね。これはどんな形状のダンジョンでも同じだから見つけやすいし『南東』にあるって決まってるんだ──これが帰還の門専用の方位磁石だよ。ダンジョン関係の店で銀貨五十枚出せば手に入る」
基本的な持ち物の一つだね、と付け加える。
ラクサも同じものを持っていたようで道具入れから取り出して見せてくれた。当然、知らなかったので手元になく、内心焦っているとアウルさんは笑った。
「ライムちゃんはなくても平気だよ。共存獣もだけど俺やラクサもいるし」
「そ、そうなんですね。あ、でもその方位磁石って門があるダンジョンじゃなきゃ使えないってことか……新発見した所とか他の国とか」
「お。鋭いね。その通りだよ。じゃ、次の相談だけど、先に出入り口に行かないかい? まずはこの馬車で向かって、馬車を出入り口に置く。もちろん守る為に俺が持ってる簡易警備結界でしっかり覆うよ」
移動は速度優先。
森や雑木林といった所では速度は出ないけれどポーシュはキレイに木々の間を縫うように走ることはできるようだった。教会裏の雑木林で既に確認済みで、ベルも興味があったのか日中と夜で森に連れ出して確認済み。
そのことをアウルさんに伝えると感心したようにポーシュを見上げる。
「ライムちゃん所の共存獣はやっぱりどこまでも非常識だなぁ」
「私からすると普通なんですけど」
「まぁ、方針は決まったし早速移動しまショ」
私とラクサ、そしてルヴが荷台へ。ロボスは馬車と並走するようだ。
青っこいのは戻ってきていないけれど、間違いなく私を見つけてくれる自信があるので問題なし。虫系は主人の魔力を辿って来るのが得意だって聞いている。
馬車に揺られながら、あらかじめ用意していた非常食セットを追加でラクサへ渡す。
「オレっちもう貰ってるッスよ?」
「食料は少ないより多い方が良いでしょ。魔力回復用のお菓子だから、魔力なくなったらこれで補充してね。ラクサの武器って魔力使うみたいだし」
「めっちゃ助かるッス……! 錬金術師が仲間にいるってこんなに楽なのか」
両手でしっかり受け取って道具入れへ入れるラクサの言葉を大げさだな、と思っているとジト目を向けられた。
思わず身を引くと彼は指を私の鼻先に近づけるように口を開く。
「大げさ、じゃないッスからね? マジで、冒険者は大変なんス。カルミス帝国は実力主義。トライグルは国自体が安全で清潔、民度も高い。もちろん、法律違反は即奴隷みたいなところあるッスけど、普通に大人になれる確率が他の国に比べて段違いッスもん」
ふっと息を吐いて私の隣に四つん這いで移動してきたラクサ。
御者席の方を気にしながら『一般的な冒険者』について教えてくれた。
「一般的に『死ぬまで食っていける』冒険者はひと握りッス。今回ライムが出会った四人組はそのひと握り。普通はダンジョンで日銭稼ぎしたり、パーティーメンバーの誰かと結婚して田舎で一次産業、ってのが一番多いッスよ」
「なるほど。農業とかって人手勝負みたいなところもあるもんね」
「カルミス帝国は畜産と採掘が多いッス。どっちもキツイんで犯罪者奴隷をまとめ買いすることも割と。危険地帯での採掘は特にそうなんスけど……冬場は食糧事情がきつくなるんで、出稼ぎにダンジョン入りすることも多いッス」
それを聞いていい時期にダンジョンに来たなと思った。
出稼ぎの人が増えるとこんな風に融通を聞かせてもらうことも難しそうだし。
「ダンジョンに潜るのは若い連中だけじゃなく、年寄り連中もいるンすよ。食い扶持減らす目的なんで基本的に害はないッス。情報屋をすることもあるし、冒険者の負担を減らすために家事代行や武器や防具のメンテナンスを請け負うことも」
「戦うわけじゃないんだね、よかった」
「あ、たまに戦う老人もいるッス。死にに来てるか本気で強いかの二択で、装備を見れば分かるンで」
まかせろ、と胸を叩くラクサに苦笑する。
ここまで話を聞いたところで馬車の速度が落ち、停車した。
着いたよー、と荷台入口を覗き込むアウルさんにお礼を言って、馬車と繋がれていたポーシュを開放する。
「先に水とご飯あげちゃいますね」
「そうだね、その方が良いかも。他の共存獣たちにも先にご飯を食べさせてあげて。いつ食べられるか分からない状況も考えないと」
ハイ、と頷いてそれぞれの為に用意してきた専用の飲み物や餌を専用のお皿や台へ入れていく。ルヴとロボスも安全な場所だと分かっているのか一心不乱に餌を食べている。
ポーシュのブラッシングをしつつ馬車一台が通れる門を見上げた。
「……重そうな門。ベルなら開けられるかも?」
「力だけじゃ無理かな。普段はその時ダンジョン内にいる人間が最大限いられる時間にならないと開かないんだ。だから、出口を探す。門が空くのは一定時間に一度だけ。決められた時間に外へ出ないと二度と門は開かない」
そうなのか、と納得しているとラクサがげんなりと門を睨みつけた。
「しかも、ダンジョンランクがあるのは覚えてるッスよね? それに応じてダンジョンに潜れる時間があったのは?」
「覚えてる。細かい時間までは怪しいけど」
「それでいいッス。ランクに応じた時間内にダンジョンから出なければ超過料金払う事になるってのは?」
ギョッとする私をみたラクサがどこか得意げな顔で話を続ける。
「下の連中はその分を加味して搔き集めなきゃいけないンで必死になるんスよ。野良やってるやつは基本的に問題があって他人と組めないというハンデ持ちが多いンで」
「ラクサの言う通り、手段を問わないってやつもいるからね。単独行動は禁止……よし、馬車はこれでいいかな。簡易結界も張ったし」
荷物はポーチひとつ。
トランクはディルが作ってくれた魔術布に収納してあるのでかなり身軽だ。
こういう点で私たちは非常に有利。戦闘できない私がいても問題ない、と言い切るくらいなんだから荷物の負荷は結構大きい。
私はラクサとポーシュに跨り、アウルさんは並走するそうだ。
これまででアウルさんの足の速さは知っているので心配はしていないけれど、疲労回復が望める食料アイテムを渡す。
「え、いいの?」
「はい。身体能力が高いのは分かってるんですけど、それでも疲れるのは疲れるだろうから……このくらいしか私にはできないし」
「このくらい? とんでもない! すごく大事というか有難いよ。はー……パーティーメンバーに欲しい。ウチ、基本四人で行動してるけど完全支援タイプっていないからさ」
治癒能力持ちの人でも魔力色によっては回復能力が落ちることは聞いていた。
実際、回復手段が多ければ多いほど生き残る確率が上がる。
「引き抜き禁止ッスよ」
「いやぁ、つい。でも、まぁ……そっち関係で色々誘惑もあるだろうから気を付けて」
走りながらも話すアウルさん。
この人どうなってるんだろう、と思いつつ頷く。
実はこうして大声で話すのも『作戦』の内だったりする。
今、ダンジョンにいる他の冒険者たちがどういう人なのか早めに把握し、可能な限り安全に採取に集中したいのだ。
ダンジョンに入る際にあらかじめ説明を受けていることは知っているので、あちらは『非常口の鍵』を持つ私達への接触を第一もしくは第二目標にしている筈。
顔が広く、人当たりのいいアウルさんが対応し後で『危険』『注意』『安全』などの判断をすることになった。
安全、もしくはお互いの利害が一致した場合は共に行動することも念頭に置いてほしいとも言われている。
「ポーシュ、すごく速いのに、よく追いつけます、ね!?」
馬上で声を張り上げるとアウルさんは緩く笑いながら手をヒラヒラ振ってみせた。
「あはは。慣れてるからねぇ。追われてるともう少し速度出るよ」
これもちょっとした能力なのだとか。
私たちより先を走るのはルヴ。後方はロボス。青っこいのはまだ戻っていない。
無事かな、と思いながら目標の先へ視線を向ける。
「広いって聞いてはいたけど、普通に採取しに来たみたい」
ポーシュの背中にしがみつくようにしていた私の言葉に上から声が降ってくる。
何処か楽しそうに、私が落ちないよう後ろから覆うように支えてくれるのはラクサだ。
髪が首や頬を時々くすぐって、思わず笑いそうになるほどには近い。
「そりゃ、自然型なんで。けど、もうちょいで着くッスよ。ほら、ルヴが少しずつ減速してるじゃないッスか。ポーシュも少しずつ速度落としてるっしょ?」
「よく見えるね。風が強くてあんまり目が開けられないのに」
「慣れッス。ただ、意外とライムが体幹しっかりしてて驚いたッスよ。普通、もうちょいぐらつくんスけど」
「ポーシュが私を落とさないのは知ってるし、ラクサが後ろに座ってくれてるからじゃないかな。落ちそうになってもどうにかしてくれるだろうなーっていい具合に体の力が抜けてるのかも」
あはは、と笑えばしばらくの沈黙の後、耳元で恨みがましい声が聞こえた。
「この移動方法、リアンとディルの前でぜってー言わない様に。マジでヤられる」
「落ちない様にしてくれてるって普通に分かると思うけど」
「……男にはイロイロあるんスよ」
「あははは。いやぁ、青春だねぇ。いいなぁ……俺ももうちょっと若ければ」
並走しているアウルさんがそんなことを言って数分、私達は雑木林入口へ辿り着いた。
少しの揺れを感じつつ、ルヴ達に魔力入りの水を飲ませる。
ルヴとロボスは種族的に可能な限り水分補給は小まめにした方が良いのだ。
「毛皮ってのも不便っすよね……」
「気持ちいいけどね、ふかふかで。共存獣用のトリーシャ液のお陰で血を吸う虫とかもつかないんだよ。こういう面で錬金術ってすごく便利だなーって思う」
「俺達からすると共存獣にそれだけ技術を注いだアイテムを使えるのが凄いって思うよ。共存獣を持ってないってのもあるかも知れないけど、カルミス帝国だとどうしても自分が最優先になりがちだから」
肩をすくめるアウルさんに木製カップを渡す。同じようにラクサにも。
「なにくれるんスか?」
「レシナ果汁とキシキシの葉を入れたハーブ水。氷でしっかり冷やしてあるから、さっぱりするかなって。飲んだらコレを吹きかけて。匂い消し兼虫よけ」
「お。助かるッス」
慣れた様子で受け取って使い始めるラクサに予備の虫よけを渡しておく。
入れ物はラクサとリアンが作った特製の携帯スプレー容器。
元々あったものを職人さんたちと改良して小型化に成功した、とかなんとか。
「え、それ……え?」
「オレっちとリアンで若い細工好き職人見習い連中に声かけて作ったんスよ。携帯スプレー容器。中身が劣化しない様にしてあるッス。あと、残量が分かりやすいように満タンで青、半分で黄色三分の一以下で赤に全体の色が変わるッス」
「……いくら? それいくら?! すっごい便利じゃん! 匂い消しマジで必要! 冒険者は常ににおい消しに飢えてるってか男も女も革用品愛用者マジで臭い問題あるから。常に消臭希望」
匂いを消すために香水を使ったり、服を特殊な香でいぶしたり、洗濯の際に虫除け効果のある香りに浸け込んだりと色々工夫をしているらしい。
それでも、革や金属の匂いは問題になるのだとか。
「今回、全員分用意してあるので奴隷を含めて一人一つ渡すつもりでしたけど……買取希望なら、後でリアンに」
「言い値で買い取るよ」
品物を渡せば、彼は喜々として使い始めた。
ちらっと一瞬ルヴ達へ視線を向けて確認するように私へ質問を投げかける。
「ちなみに、共存獣には?」
「使わないです。ルヴ達にとって『におい』って大事なものだろうから」
「流石だね。モンスターや魔物は『におい』で相手の強さを測るとも言われてる。本能は契約じゃ縛れないことが多いんだよね。人間もある程度そういう感覚があるけど動物や魔物には敵わないから──あ、索敵範囲内に気配があるな。最短でこっちに向かってくるってことは結構レベルが高そうだ」
きょろ、と周囲を見回す。
今いるのは雑木林と草原の境目のあたり。
見える景色は空とどこまでも続いていそうな草の絨毯、色々な種類の木々。
「……え、人います?」
「うん。俺、割と索敵範囲広いんだよね。ソロ活動歴が長かったからかなぁ……俺の方から接触してみるよ。ラクサ、悪いけどライムちゃんの護衛をお願い。それと……そうだな、ロボスと一緒に行ってもいいかな?」
「あ、はい。ロボス、私の替わりに偵察してきてくれる?」
屈んで私の指示を待っていたロボスを撫でると元気な返事。
彼の首輪に共存獣用のオヤツ入れがあるのを確認し、追加で状態異常無効のアクセサリーを付け足した。
元々つけていたのは、環境適応効果のあるアクセサリーだ。
一つの首輪に付き、一つしか付けられないのが惜しいなと思いながらアウルさんとロボスを見送る。
その間に出していたものを片付け、こちらも準備を整えた。
「攻撃手段とか身を護る為のアイテムは出しておいた方が良いよね?」
「そう、ッスね。杖……いや、爆弾出せるようにしといてほしいッス。たしか、ベルが対人用小型爆弾作ってたっスよね?」
「もらった! ベルが『堅物眼鏡には黙っときなさい』ってくれたやつだよね」
「護身用に爆弾ってのもどうかとは思ったんスけど、ライムの場合必須になるッスもんね。クギの装備は大丈夫ッスか?」
「万全の装備にしておこうか。何があるか分かんないし」
今の装備はクギが『一番動きやすい、基本的な』ものが多い。
ポーチから、革製手袋を取り出す。
「暑い場所じゃないし、水の中には潜らないからコレをつけてくれる? 格闘術も使えるって聞いてるから、金属板も仕込んだよ。あと、これは回復薬が入った隠し瓶。蓋とケースの色が青は魔力回復薬、緑は体力回復薬、黄色は万能薬。状態異常になったら飲んで」
「ちょ、こんなに……」
「相手がパーティー全員で襲ってきたら、ルヴ達やラクサ、アウルさんで対応することになるでしょ? 私の護衛として傍にいてほしい。そうすれば他の人が安心して戦えるから」
それでも何か言いたげなクギに私は今回の私自身の仕事について話をする。
ラクサはラクサで警戒をしながら武器の準備をしていた。
「私の仕事は採取。あとは支援。集中的に狙われたら、真っ先に治療しなくちゃいけないのはアウルさん。次にラクサ。でも、その時私がどの場所にいるか分からないでしょ? クギが近い場所にいたら私の替わりに回復薬を飲ませて」
「だから、多く渡したのか」
「そうだよ。あ、回復薬は共存獣……虫の青っこいのにも効果があるんだ。回復や支援は誰にでも、どこでもできる方が生き残る確率が上がるでしょ?」
え、というように渡したものを確認する姿に思わず肩の力が抜けた。
感心しつつも納得したらしいクギが装備品を黙って身につけていくのを見守りつつ、言葉を続ける。
「……私に出来るのは、怪我を最小限に、素早く採取をして危ない所から帰るか。それだけだからね」
やれることはやるよ、と言えばクギがグッときつく唇を結んだ。
何か言いたそうだったので「どうしたの」と聞けばふいっと視線がそらされる。
「俺は足が速い。新しい才能で痛みを感じにくくなったし、反射神経もいい。体力も盗賊をしている時よりついた……うまく使えよ。命令するだけで、やばい所でも走り抜けて救出でも回復でも撃退でもしてやるから」
「うん、信頼してる。お願いね、クギ」
「おうよ。任せとけって」
トンッと胸を叩いたクギを見て思い出したのが一つ。
はい、と最後に【無限収納袋】を渡す。
「良さそうなものを見つけたらポイって入れてね。魔力認証つきだから、今やって」
「………いや、それ奴隷の俺に言うのどうかと思うぞ?」
「だって足速いってことはそれだけ速く持って帰ってこれるってことでしょ? ルヴ達くらい走れるって知ってるんだからね」
いっぱい正しく持ち帰ってね!と念を押すと観念したようにクギが項垂れた。
こうして準備を終えた私たちを見計らったように、いつの間にか青っこいのが戻ってきた。その小さな体がぎゅっと大事そうに持っているのは小さな花や葉、石、土。
「おかえり。凄いのいっぱい持って帰ってきたね」
どうぞ、というように差し出すので私が手のひらを開くとそこに持ってきたものを置いていく。
身軽になったら嬉しそうに8の字飛行。そのまま蜜玉をねだりに来るかと思ったけれど、青っこいのは身を隠すように私の髪へもぞり、と身を潜めた。
動くことなくじっとまるで何かを待つようにアウルさんが駆けていった方角を見たままだ。
「何が来るんだろうね……なんか、あんまりいい感じがしないけど」
毎回読んで下さってありがとうございます!
更新速度はかなり遅くなっておりますが、それでも更新停止にならないようがんばります!




