347話 自然型ダンジョン
じわっと進んでおります。じわっ!
馬車の中でアウルさんが慣れた様子で盗聴防止結界を展開した。
揺れてはいるものの、全速力走行ではないので舌を噛むようなことはなさそうだとほっと息をはく。
「十分程度でダンジョンに到着するから、それまでの動きについて話しておくね。通常は馬車でダンジョン入りする場合、入場料が高くなる。持ち帰ることが出来る素材が増えるってことだからね」
「ちなみに一回の入場料って……?」
「場所によるけど、自然型は通常銀貨十枚。馬車がある場合は銀貨三十枚。収納無制限とか収納拡張効果付きの袋や道具を持っていれば馬車を使う必要はないよ。業者か大量納品依頼を受けている冒険者や騎士が一般的だね」
注意事項として、収穫能力に自信がある人間がいることが大前提だと言われた。
というのも、自然型ダンジョンは運以上に知識が必要になるのだという。
「あ、そっか。収穫できても品質が悪かったら安くなっちゃうからお金が……」
「大正解。自然型ダンジョンは入るたびに変わるし、難しいよね。一応、欲しい素材について聞かれると思うからそれは素直に答えて欲しい。ライムちゃんが『ロベイ様のお気に入り』であることが分かっている以上、可能な限り配慮してくれるよ。あと、君自身が『錬金術師』として有望だって証明されているようなものだから」
戸惑っているとラクサが腕を組んで、頷いている。
こういう風にわかりやすい動きで表現してくれるのは、ラクサだけだ。
ベルやリアンは呆れた顔でじっと見るとか聞き流すからね。
「カルミス帝国やスピネル王国でも『アトリエ・ノートル』の評判は広まってるッス。その中でもライムの存在は思ってる以上に親しまれてる。何せ、オランジェ様の孫で双色の髪を持っているなんて話題になるしかないっしょ?」
パチンと器用に片目を瞑ったラクサにアウルさんが笑った。
「そういうこと。君たちがトライグル騎士団と取引をして高い評価と信用を得ていることも広まっている。特に騎士の間ではね。そこにダメ押しでロベイ様の家紋だ」
必要なものや興味のあることに関しては質問してみるといい、と優しい笑顔を向けられて戸惑った。
正直、色々手伝ってくれるのは嬉しいけれど私がいるのは『留学』のため。
勉強する為にいるんだから勉強しなくちゃダメだよね、と疑問を口にすると二人は顔を見合わせる。
「真面目ッスねぇ。けど、覚えておいてほしいのは素材を大量に手に入れることが出来たらライム達は必ず有用なアイテムを作るっしょ? それが巡り巡ってオレっち達の為になるんス。人が死ななくなったり、不便が解消されたり、悩みごとが軽くなったりする」
「ラクサの言う通り。俺達の為にも皆の為にもたくさん好きに調合して。俺達がしっかり守るから」
まかせて、と自信に満ちた表情で頷くアウルさんとラクサにホッと肩の力が抜けた。
思わず笑う私を見てアウルさんが話を続ける。
「ちょっと話がそれたけど、まず馬車が止まるのはダンジョン入口前だ。ここで待機して、受付した人たちが一斉にダンジョンへ入ることになる。恐らく馬車で入るのは俺達だけか騎士団が一つってとこだろう。その騎士団も君に危険が及ばないように護衛にあたるはずだ」
こればかりは動ける人数に左右されるからね、とアウルさんは肩をすくめた。
そして「護衛は多い方が良いだろう?」と確認され、首を振る。
「人が多いと動きにくいかなって」
この言葉でアウルさんが驚いたように目を見開いた。
「私はともかく、ルヴやロボス、青っこいのもやりにくいし……アウルさんが一番動きにくいですよね」
「──驚いたな。まさか俺のことも考えてくれるとは」
「私が信頼してるのはアウルさん達で、この国の騎士を信用してるわけじゃないから」
騎士にもいろんな人がいることは理解している。
人を判断する基準は仕事じゃない。
どんな仕事をしていても、悪い人は悪いし善い人は善い。
そんなことを伝えるとアウルさんに頭をワシワシ撫でられた。
「助かるよ。俺は単独で動くことが得意だからね。護る人数は少ない方が良いし、禁則の関係で騎士団には関わりたくないんだ。それに君たちもあまりカルミス帝国の上に近づきすぎない方が良い」
「それに関しては同感っスね。カルミス帝国はライム達にはちっと生きづらいッス……競争社会すぎる。他者を蹴落とし、踏み台にすることに抵抗があるアンタらにゃ無理ッスよ。優しさが弱みになることが多いンで」
「トライグルが君たちには合っているんだと思う。ここでやっていけるとしたらベルちゃんくらいだと思うしね。リアン君とライムちゃんは厳しそうだ──ライムちゃん。君が欲しいものが採れる場所でなければすぐに出よう。入るたびに作り替わるから『当たり』が出るまで試す必要がある」
「わかりました。緑が多い環境だったら当たりってことでいいですか?」
「そうだね。ここは草原や森林に変わることが多いから大丈夫だと思う。あー、でも雨が降ってたらゴメン。俺、雨男なんだよね」
ダンジョンに入ると五割近く雨降ってる、とアウルさん。
ラクサはそれを聞いて笑いながら「オレっちは晴れ男ッスよ」と話していた。
「今回は入場料はとられないと考えていいから気楽に行こう。本来なら一回入るごとに入場料を支払わなくちゃいけないけど」
お得だよね、と眉尻を下げてへにゃりと笑う顔に釣られて私達もつい口元が緩む。
「帰ったらロベ爺ちゃんにお礼しに行かなくちゃ」
「その方がいいッスよ。ロベイ様はマジで強いんで。オレっちもベルも手も足も出なかったッスもん」
驚いてラクサを凝視すると肩をすくめて小声で「オレっちは二度と戦いたくない」と呟いていたので事実なのだろう。
私達のやり取りを見ていたアウルさんが腕を組んだまま、うーんと唸る。
「心配はダンジョンで一緒になる冒険者なんだよなぁ。馬車と通常出入り口の場所は正反対だから……遭遇したら相手の見極めは俺に任せてくれるかい?」
異論などあるわけもなく、素直に頷く。
お任せします、と声が二人分重なった所で馬車がゆっくりと速度が落ちた。
大きな音に驚いていると「開門の音だ」と声。
「そういや、ダンジョンって二重の塀に守られてたンだったか」
ぽつりと零れ落ちたラクサの言葉にアウルさんが深く頷く。
「万が一、魔物が外に出た時に足止めできるようにね。塀と塀の間には色々仕組みがあるから馬車が逸れないようにしないといけないんだ。さて、こっからが俺の出番だね。ライムちゃん、悪いけど俺に任せるって一言くれるかな」
「はい! まるっと任せます」
責任重大だなぁ、なんて笑った次の瞬間にゆっくりと馬車が停車。
ノック音と共に声がかけられたので私とアウルさんの二人が降りることになった。
馬車を降りるとその場にいた騎士が並んで敬礼していて顔が怖い。
「この度はお目にかかれて光栄です!」
「こ、こちらこそカルミス帝国の騎士様は強いって知り合いの騎士の皆さんからも聞いています。トライグルが困っている時に助けてもらっているとも聞いているので、凄く感謝しているんです」
慌ててベルから教えてもらった礼をした。
この辺りは事前に相談して、対応の仕方を聞いておいたので問題はなさそうだと思ったのだけれど騎士さん達の表情が嬉しそうに一瞬緩んだので正解だったみたい。
「トライグルの騎士……ですか」
「はい。ロベイ様もカルミス帝国の騎士様を誉めていらっしゃいました。困ったら相談しなさいって言ってくださって……頼りになるからって」
「そうですか! それはそれは。何なりと相談してください。いつでもお力になります」
一番地位が高いらしい人が満面の笑みを浮かべた所でポーチから『渡す予定だった』ものを取り出す。
「これ、今いる皆さんにしかお渡しできないんですが『トリーシャ液』を受け取って貰えませんか? 使って気に入ったらトライグルに来た時に工房へ来てもらえると嬉しいです」
「これは……確かとても話題の。妻が欲しいと言っていたのですが、中々任務で行けず。頂いてもいいのですかな?」
「はい! 是非使ってみてください。二回分ありますから、奥様と騎士様で仲良く使ってもらえたら嬉しいです」
「──では、ありがたく」
差し出した箱を恭しく受け取った彼は騎士というよりも『人』らしくなっていた。
どうやらあまり悪い人ではないようだ。
カルミス帝国の騎士はどうしても怖い、とか油断してはいけない相手というのが頭に刷り込まれていたから少しだけ苦手意識が減った。
「この先のダンジョンについてなんですけど……入るたびに地形が変わるって本当ですか? 私、ここに書いてある素材が欲しいんです。仲間と一緒に国家試験合格のため実力を身につけたくて」
差し出した素材一覧を見た騎士はしっかりと頷いた。
私のメモは部下らしい人達にも回される。
「この素材はすべてここで揃います。ただ、採取に適さない地形になった場合はすぐに戻ってきてください。適した地形に入れるまで我々がサポートいたします」
「いいんですか? 騎士様もお忙しいんじゃ……他の冒険者たちもいるでしょうし」
「貸し切り、という形もできますがそれは望まれていない御様子。徒歩で入る者達に条件として提示しましょう。彼らも基本的に素材は多く集めたいはずですから」
ハズレの地形としては砂漠、水、遺跡があるのだという。
その為に騎士を同行させたいのだが、といわれて私は隣に立つアウルさんを仰ぎ見た。
「学院から同行してくれている先生がダンジョンに詳しい冒険者を紹介して下さったんです。それで、基本的に彼にルートとかをお任せしているんですけど……私の代わりにお話してもらってもいいでしょうか。私じゃ良し悪しが分からなくて」
紹介というのはこういう形でいいのだろうか、と思いながら話を繋げるとアウルさんがきりっとした顔でギルドカードを二種類提出した。
それを受け取った騎士様は訝しげだった表情を一転し、納得したような顔に。
「なるほど。ダンジョンギルドでも冒険者ギルドでも実力が証明されている冒険者ですか。流石トライグルですな。では、彼の意向を」
「ありがとうございます! ロベイ様が言っていた通り、カルミス帝国の騎士様が親切で優しいっていうのは本当だったんですね」
「まぁ、我々にとってトライグル王国は尊敬すべき兄のような国ですからな。王ともども、我ら騎士団も皆尊敬しておりますからこの程度は配慮の内にも入らんのですよ」
気分良さそうに笑う姿にホッとしてアウルさんを見ると後は任せて、というように一歩足を踏み出した。
和やかな雰囲気を壊さないよう話をつけてくれたアウルさんに感謝しつつ、先に馬車へ戻る。
馬車に乗り込んで肩の力を抜いた私に視線が向けられたので指で丸を作ればラクサとクギには伝わったらしい。
嫌な人と一緒じゃなきゃいいな、なんて考えているとアウルさんが馬車へ乗り込んできた。即座に盗聴防止用結界を展開して懐から懐中時計を取り出す。
その盤面を私達へ見せながら円になるよう伝えられたので馬車の中で時計を覗き込む。
「これから十分後にダンジョンへ入ることが決まったよ。学生留学という面から、騎士の力を借りると不正を疑われかねないと伝えて遠慮してもらった。いっやぁ、ライムちゃんが事前に相手をいい感じに懐柔してくれたから楽だったよ」
「かいじゅう……そんなつもりはないんですけど」
「ライムだから仕方ないッスね。リアンがしょっちゅう頭抱えてるッス」
にしし、と歯を見せて笑ったラクサにアウルさんも「うーん、目に浮かぶ」と苦笑。
私としては失礼がないように話をしただけなのでかなり心外だ。
「ま、それで協力ってことで一つお願いをしたんだ」
「お願いッスか?」
「うん。徒歩で入ってくる冒険者の選定。選定、というより条件を少し厳しくしたいと伝えた。これには相手方も理解を示してくれてね。何せ『中』で護れない分、危険を減らすと約束してくれたよ」
無免許と貴族の入場禁止、冒険者ランクB以上でグループは最大二つまでとなったらしい。
かなり絞ったな、と驚いているとアウルさんは苦笑した。
「といっても『グループ』だからね。その場で即席パーティーを作られたら人数はそれほど変わらなくなる。でも無免許の人間が入ってこないだけ有難い」
「でも貴族も入場禁止ってよくできたッスね」
「法律で『ダンジョンでは身分制度を適用しない』というのがあるんだ。勿論、奴隷は別だけどね。そもそもダンジョンを使う貴族は『跡継ぎ』以外が殆どで、王族が来ることもあるがその場合は貸切るから事前に情報が回るんだ。ギルドの掲示板にもたちどころに貼り出されるし、口頭でも注意事項として伝えられるからね」
アウルさん曰く、ダンジョンで活動する貴族は三男以降が多いそうだ。
拠点として家や別荘のような場所を提供され、有益なものは家へ還元されるのだという。
「冒険者を雇ってる、みたいな感じ?」
「理解的にはそれでいいよ。大成する人間は一握りだからね。金がかかるのも一時的で、上手くいけば収入が見込めるってことで貴族も積極的にダンジョンを活用しているってわけ」
「だから貴族も入場制限できるんですね」
「ダンジョンランクじゃなくて冒険者ランクで縛りを設けたのは冒険者だとランクアップ時に面接だとか人格だとかが見られるからッスか?」
「信頼はできないけど参考にはなるからね。実際は入ってみないと分からない。一応、採取中は警備結界を展開してくれると嬉しい。自然型ダンジョンでは立地・環境・人の順で注意するのが原則だ。多少、安全性が上がっているとはいっても契約していない相手を信じるのはやめた方が良い」
うん、と全員で頷いたところでアウルさんが目を細める。
視線の先にはルヴとロボス。
「ダンジョン内では共存獣を持っている人間は一目置かれるんだ。感覚が鋭いから、危険を察知する能力が俺達より格段に高い。だから召喚師は人気で弱くても強くなるまで面倒を見る奴らが多い。弱い野良ネズミリスとしか契約できなくても、野良ネズミリスは聴覚、嗅覚が鋭い。小さいから色々なところを調べられるってことで報酬も弾んで貰える」
「ディルがいたら人気者だったね」
「ライムはライムで良かったッス。けど、出来るだけ他のやつと喋らない様に。なんかあったらオレっち、いろんな意味で無事じゃすまないンで」
ふっと遠くを見て笑うラクサに首を傾げた所で馬車が停止した。
外から大きな音が聞こえる。
まるで固く重たいものが擦れるような音だ。
「御者には予め警備結界を渡してあるから安心して。帰る時は『帰還の鈴』を五回鳴らすんだ。そうすれば帰還用の門が開く」
聞き覚えのないアイテム名に首をかしげると彼は道具入れからハンドベルを取り出した。
金色のそれは高そうで、それでいて不思議な雰囲気がある。
「これも忖度の一つ。帰還は俺達次第。多分、そういう説明をあちらも受けているだろうから接触はしてくるよ。いつ帰るのかっていうのは向こうも知りたいはずだから」
解除するよ、という声と共に結界が切られた。
数秒の沈黙ののち、ゆっくりと馬車が進み始め、一度ガコンと大きく揺れてから再び同じ音が聞こえる。
門が閉じられた音だよ、とアウルさんが教えてくれた。
「いよいよダンジョンの中へ入るよ。このダンジョンは入口と出口が二つあるタイプなんだ」
「このダンジョンは、ってことはダンジョンによって違うんですか?」
「ん? 言ってなかったか。入口が一つで出口が二つ、その逆、もしくは出入り口が一つ、みたいなのもあるし、どこからでも出入りができるような穴だらけの所もある。出入り口がある場所も時に土の中だったり、木よりも高い場所に在ったり、はたまた水の中だったりいろいろあるんだ」
カルミス帝国では新しいダンジョンを見つけると速やかに国へ報告する義務があるそうだ。身分にかかわらず、報告した人間には一定額の報酬が払われるのだという。
そして、入口は分かりやすく扉であることが多いけれど、窓だったり穴だったりと形も様々あると言われて興味が湧いてきた。
「井戸の中に落ちなきゃいけないっていうのもあったし、木の洞から入ることもある。ここは大きな扉だね。扉といっても真っ暗で先が見えないんだけど」
入り口をくぐると直ぐにダンジョンの中ということになるらしい。
ゆっくり進んだと思っていた馬車は直ぐに停車した。
「──ライムちゃん、一緒に見てみる?」
悪戯っぽく笑って差し出された手に私は自分の手を重ねる。
そうこなくちゃ、と囁かれた声に導かれるように馬車の外へ。
馬車の出入り口を開いた瞬間、私は思わず感嘆の声を漏らしていた。
「家の裏みたい!」
「大当た……え? 家?」
「はい。私の家があった所って山だったんですけど、結構広くって。岩肌がむき出しだったところもあればこんな風に短い草木が生えていて開けていたり……色々な植物が沢山あったんです」
目の前に広がる色鮮やかな風景に懐かしさを覚えた。
ダンジョンなのに『空』があって『太陽』がある。
「お、大当たりじゃないッスか」
ラッキー、なんて口笛つきでラクサの声。
いつの間にかルヴやロボスも馬車から降りていて私の傍で鼻をひくつかせている。
「アウルさん、素材ですけど……ここならある程度揃うと思います。【山頂パール】はココから見えるあの滝の岩肌辺りに。【黄金苔の雫】はキレイな水と温度が低く適度に湿っていて月明かりが良く差し込む場所に発生するので」
私達が目標にしていたのは【山頂パール】という特殊な花と【黄金苔の雫】という水素材。といっても前者はまだ分かりやすいんだけど、後者はきちんと調べないと採取ができない。
「山頂パールは俺も依頼で採取したことがあるから探せるけど、黄金苔の雫は見たことがないな。どういう感じ?」
「オレっちが見たのは瓶に入ってる状態なんスよね」
二人の言葉に私は一冊の本を取り出す。
これは写本専用の本で、中身は真っ白な魔法紙だ。
「学院の図書館でまとめました! 実物は見たことあります。【黄金苔の雫】は家の傍にはなかったけど、おばーちゃんが持って帰ってきて絞ってるのを見たので」
「絞る…?」
「え、絞るんスか? 苔を?」
言葉こそ発してないものの、クギも二人と同じように首をかしげていたので、思わず笑ってしまう。
私も最初は二度聞き返したものだ。
「分かりやすく言うなら【黄金の苔を身にまとった食虫植物の消化液】かな。水袋みたいな袋になってるの。その上に薄い黄金色の苔があって……そこに虫とか獲物が乗ると重さで落ちて消化液で溶かされて養分になるんだ」
「……え、それが薬の材料になるんスか」
「そうだよ。これ、調べていて分かったんだけど消化液だけだと薬にならないんだ。必ず黄金苔の部分を採取する必要があって……実際に採る時は黄金苔を見つけたらそのまま引っこ抜いて、蓋になってる黄金苔を消化液に入れて、大体三十秒だったかな。中和が終わってから瓶に移す方が品質と効力が高いから私がやるね」
分かりやすく、悪臭がナッツみたいな香りになるから分かりやすいと言えば、二人が顔を見合わせて両手を挙げた。
「ごめん、採取はライムちゃんに一任していいかな。俺、警戒する方が得意」
「同じくいつも通り頼むッス」
「うん。あ、青っこいのには山頂パールを採ってきてほしいんだけど……分かるかな」
山頂パールを飛んでいる青っこいのが採取できるならとても助かるのだけど、と試しに聞いて見ると道具入れから勢いよく飛び出して8の字飛行。
どうやら行けるらしい。
「え。青っこいのちゃん、とってこれるの? あれ、結構扱い難しいんだけど」
「脆いですしね。でも、花の蜜とか集めるの上手だしいけるのかも……難しければ私が崖を登って取りに行くから、先導してもらえばいいかなって」
崖登りは割と出来る、と胸を張るとアウルさんの口元が引きつった。
俺が行くけど、と言われたけれど警戒をしてくれればいいと伝える。後手伝ってもらうとしたら、ロープが切れない様にしてもらうことくらいだろう。
「上級回復薬の素材を集められるだけ集めたら、目につく素材を片っ端から採取します。水、土、薬草、花、木……見覚えのあるものが多いですけど、多分、貴重な素材もあると思うので全力で頑張ります!」
「そ、そっか。分かった。じゃあライムちゃんは俺の横を歩いてほしいかな。行く方向を指示してほしい。警戒は俺が。左右の警戒はルヴとロボス。後方はラクサだね」
はい、と頷けばアウルさんは深く息を吐いて御者さんに話をしに行った。
視界からアウルさんが消えた後、そっとラクサが近づいてくる。
「余裕があったらでいいんスけど、オレっちの細工に使えそうな素材も集めてくれたり」
「いいよ。警戒をお願いしてるわけだし、そのくらいはさせてね。綺麗な花とかも取っておくよ。ほら、クレシオンアンバーで加工したら売れそうだし」
「良いっスねぇ! ライムと物づくりすンの刺激になるんで工房で作るの楽しみにしてるッス。あ、勿論ナイショっすよ?」
怖いんで、と遠くを見てふっと微笑む姿に何が怖いのか聞こうと思ったけれど、アウルさんが戻ってきた。その手には手綱。
「ポーシュも行きたいって言ってるんだけど、もしよければライムちゃん乗ってくれる? 乗れないなら俺が抱えるけど」
どうやら私はポーシュに乗って移動するらしい。
私は楽だけど……と躊躇しているとアウルさんがにっこり笑う。
「脚には自信あるんだ」
まかせて、と胸を叩いて……ちょっと噎せていたから心配になったけど、この心配は杞憂だったと後で思い知ることになる。
読んで下さってありがとうございます。
割とweb連載は下書き感満載の手探り(という名のやりたい放題)でやらせて頂いております!
書籍は現在三巻まで出ていますが、それとはやっぱり別。
こっちはこっちで楽しい……時々混ざりますが。ええ。
と、とにかく! 読んで下さってありがとうございました! 次回も早くお届けできるよう頑張ります。




