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314話 不信×不審=大概、危険物 前

よし、遅くなりましたが書きあがりましたー!

泥…臭くないならまぁ、って思いますw



 採取の順番は私とジャックで相談して決めた。



 効率を重視して、採取時の注意点なども話しておく。私には採取に集中してほしいと言われたので手袋やなんかも完全に採取仕様にして、武器は持たない。

 これには武器を持たないことで相手を油断させるっていう意図もある。相手が隙を見せたら毒薬や麻痺薬を使えばいいとアドバイスももらった。



「できれば即効性のある毒などが好ましいのですが」


「即効性って言えば、リアンの作った【即死毒】っていうのがあるけど、これ使う?」


「え、彼そんな物騒なものを作れるのですか……?」


「流石学年主席ですね、というべきか……レシピになる文献が一つしかなく、入手も解読も難しい上に調合技術というか正確な計量が必要な上に手間もかかるので作る人間はかなり少ないと言われていた気が」



 二人とも驚いていたけれど、レーナは驚きつつ何処か納得しているような声色だった。

 問題というか驚いたのはジャックの発言。内容もだけど、正直なんで作るために必要なことを知っているのだろう。

 同じようなことを考えたらしいレーナが散々迷って揺れる馬車の中でそっと口を開く。



「……ジャックは、どうして文献や解読、正確な計量が必要だと知っているのですか?」


「たまたま図書館で文献を見つけたリアン君と話をしただけですよ。少し読ませてもらったのですが、僕では解読が難しくて……リアン君は少し時間をかければ読める、と言っていたので解読はできると確信していました。作れるかどうか、はまた別の問題ですから」



 そして肩をすくめて「まさか本当に調合するとは思いませんでした。すごいですよね」とほほ笑む。リアンの場合は作るのにも明確な理由があるだろうし、使うのにも使った後のリスクなどを計算して使うと思うのだけれど、ジャックは予測が全くできないのがまた怖い。



「ら、ライム。その毒は最終手段にした方がいいとおもいます。その、死因などを話すときに困りますし」


「だよね。出来るだけ使わないように頑張るよ」


「少し実験してみたい気もしますが、勿体ないですしね」



 クローブたちは、よくジャックといっしょにいて怖いって思わないよね、とレーナとこっそり後で話をしたのは内緒だ。

話し合いや細かい注意点、万が一の想定をいくつかした後、馬車が止まった。


 先に降りたのはルヴとロボス。

そのあとに青っこいのが続いて、ジャック、レーナ、最後に私の順で馬車を降りた。

先頭はルヴ。その後ろをジャック、私、レーナの順で進み、最後尾はロボスだ。青っこいのは、私が身に着けている専用のポーチにそっと隠れて、有事の際は飛び出せるようにしている。


 採取地についた時の立ち位置も決まっているし、青っこいのは状況に応じて索敵と不意打ちを食らわせる手筈になっていた。


 まず最初に向かったのは一番遠い場所にある【パラリネスの葉】は、生える場所がかなり限られているというか発芽する条件が厳しいらしい。

一度生えてしまえばある程度、環境が変わっても問題ないみたいなんだけどね。


 停まった馬車は目的地までギリギリの場所に近づけ、戻って飛び乗ればすぐに走り出せる状態に。

 ポーシュに留守をお願いし、私達は雑木林の中を走っていく。

 地面は乾燥していて枯れた針葉樹の葉が積み重なり、所々砂に似た土が顔を覗かせている。生えている木も乾燥に強いものばかりだ。

 こういう乾燥している場所は雑草が少ない。駆け抜けて目的の木を探していると前方に何かが動くのを捉えた。

 私が指示を出す前にその陰に向かって青っこいのが高速で向かっていき、恐らく毒針か麻痺針を打ち込んだのだろう。どぉん、と数秒遅れて何かが倒れる音が響いた。


 戻ってきた青っこいのは、そのまま私の頭の上へ。

 何がいたんだろうと視線を向けると前方のジャックが「あれはボアの類ですね」と親切に教えてくれた。



「そ、そっか。ボアか。ボアを一撃で倒したんだね、青っこいの」



 そう口にすれば青っこいのはわざわざ私の視界に入る場所で嬉しそうに八の字飛行。偉い、というよりすごいねと本音を口にすると照れたらしく速度が増した。

 これ以降、青っこいのが動くものを見つけると飛んで行って麻痺針を打ち込むようになったのには驚いたけど。


 馬車を止めた場所から走って約十分経った場所に、目的の木が見えた。

 ベージュがかった土や褐色の多い周囲の景色で一際目を引く『赤』に意図せず走る速度が上がるのが分かる。先頭を走っていたルヴがぴたりと足を止め、そしてじっと耳を澄ませてクンクンと鼻を動かしているのがわかった。


 同時に青っこいのが飛び立ち、素早く周辺の索敵へ。その間私はジャックやレーナたちと目的の【パラリネスの葉】の元へ。

 先頭のジャックが周辺に敵が潜んでいないか確認してから素早く私の後ろへ。次に先頭へ出たのはレーナだ。



「このあたりに罠は仕掛けられていません。大丈夫です」


「わかった。見晴らしもいいし、ココは三人で採取しよう。ハサミで枝と葉の間を切って。一応この木は丈夫だけど、できるだけ傷つけないようにお願い。私こっからバーッと刈り取っていくから。収穫しちゃいけないのは葉の先端にある新芽の部分ね。ここから次々に葉をつけるから、木の三分の二のあたりを重点的に」



 口頭で伝えつつハサミを動かす。拾い集める時間はないので切る部分を決めてエプロンを木の幹にさっと広げて結び、一気に刈り落としていく。

 広げたエプロンの上に大量に積み重なる赤い葉は細い豆のさやに似ている。勿論、この部分は葉なので中に種は入ってないけど、豆の莢に似ているから食べられるだろうと判断し食べ始めたことで薬効などがあることが分かったとも言われているのだ。

 時間の管理は基本的にジャックがしてくれるというので止められるまで刈れるだけ刈り取ろうと決め、ひたすらハサミを動かす。


 一定数溜まったらポーチから引きずり出した布袋にバサッと入れていく。選別は後だ。

 片っ端から刈り取って九本分の【パラリネスの葉】が集まったところでジャックの号令。私はレーナやジャックが刈り取った分も受け取ってポーチへ突っ込み、ロボスを先頭に走り始める。帰りはロボス、ジャック、私と青っこいの、そしてレーナ、ルヴの順だ。


 走って来た道を引き返しながら次の場所で採取できる素材について採取法を脳内確認。

ついたら直ぐに馬車に乗り込む。

 サフルの出発の合図とともに走り始めた馬車の中で私は水を配って、自分と仲間ののどを潤し一息ついた。ルヴやロボスも勿論給水済だ。青っこいのには小さい魔石を与えようとしたんだけど、うっかり色んな魔石がこぼれてしまった。



「ちょ、ちょっとま……青っこいの、それがいいの? それ、青魔石じゃないけど」



 ご褒美に与える予定だった魔石には見向きもせず、色をなくした魔石に青っこいのは飛びついた。小さめの魔石しかなかったんだけど、大事そうに抱えてチュウチュウ吸っている。

 それを眺めつつ散らばった魔石を入れ直し、ポーチへ収納。暫く観察していると空っぽになった魔石を名残惜しそうに眺めて私に差し出した。どうやら再利用できることを知っているらしい。



「もしかしたら主人であるライムさんの魔力だけが欲しいのかもしれませんね」



 ジャックがポツリと口にした言葉に青っこいのがコクリと頷くような動作をみせ、そして嬉しそうに私の頭へ。ルヴ達が羨ましそうに見ているので二頭の頭を撫でていると嬉しそうにすり寄ってきた。



「言われてみると、確かに私の魔力を吸うなら色のないカラ魔石を使った方が都合いいよね。次からカラ魔石に魔力を注いでおくことにするよ……とりあえず、これで【パラリネスの葉】は問題なしっと。結構採取できたね」


「結構どころか、想定以上で驚きました。ベルが良く『ライムの採取能力はすごい』と言っていましたが採取後の木も観察しましたが注意通り新芽部分も木の枝も一切傷ついていなくて……私は一本分の採取が精一杯でした」


「僕もレーナさんと同じくらいの収穫量だったので、驚きましたよ。次は【ハッヒツの実】ですね。これは見つけやすそうですが、問題は最後の【ロマドイの枝】が不安ですね」


「私も調べたことがあるから知ってはいるんだけど……これ、片っ端からになるよ。なんというか、泥の中を探さなきゃいけないんだよね。で、枝って名前なんだけど、鉱石なの。白くて、四角い結晶がこう、連なって枝みたいになってるって書いてあった」



「……泥の中、ですか」


「そう、泥の中。二人は服が汚れたら困るからどっぷり行かなくていいよ。私、汚れてもいい服に着替えて指先にあたった硬いものを片っ端から袋に入れてくことにする。ただ、心配なのは毒と泥の中に敵がいるかどうかなんだよね。手袋はしていくし丈夫な靴とか服にはするけど、泥地だとルヴやロボスは入れたくないんだ。毛皮汚れたままって多分不快だろうし」


「そうですね、泥に潜む寄生虫などもいるのでしょう? それ以外にも毒虫やクレイスライム、他にも傷口から泥が入って体調を崩すこともあると聞いていますもの……できるだけ避けたいです」



 現場を見てみないと何とも言えないけど、と一言伝えてから大きめのスコップや移植ゴテのようなもので泥を丸ごと採取して後で洗い流すっていう方法もある、と伝えた。



「ただ、個人的には泥の中を手探りで探す方が確実だと思う。こう、触った時に氷でできたガラスを掴んだみたい、って書いてあったから脆い筈。品質を考えるなら絶対、手探りの方がいいだろうしね。最悪、解毒剤、持ってきてるから体調ダメそうなら使ってもいいかな?」


「……僕は構いませんが、そういう役は男の僕がした方がいいのでは?」


「え、私やりたい」


「毒を受けるかもしれないと話していたと思うのですけれど……怖くはないのですか?」


「解毒すれば死なないし、苦しいくらいなら問題ないかなって」


「問題しかみあたりませんわ」



 頬に手を当てて困ったように微笑むレーナ。

その横で苦笑するジャックが私に視線を向けて「リアン君が言っていたのはこういう……って、あの、本当に?」と確認してきたので問題なし、と自信満々で頷くと心底心配そうな顔で頷いて一言。



「毒にかかっているかいないかを別にして【ロマドイの枝】を採取後には解毒剤を飲んでください。あと、お湯もしくは水で体を洗ってから出発しましょう。簡単に、ですが」


「時間かからない?」


「病気になるのは怖いですから。と言っても、本当に簡単に、ということになるので服を脱いで上からお湯や水をかぶってすぐに馬車へ……ということに。勿論、僕は見ないようにしますので」



 頷いてからどんな服装がいいか考え、防水加工をしたズボンと上着が一体になったような作業服を身につけることにした。この下には脱ぐのが楽なワンピース。手足には丈夫な包帯を巻いて皮膚の露出を極力控えることに。



「髪についても面倒だから、包帯でこう、グルグルグルーってしておくね。あとは口布と布を巻いてっと……不審者っぽいけど仕方ないね。【ハッヒツの実】と【ロマドイの枝】は近いところにあったはずだし、パパっと着替えちゃうね」



 ポーチから用途別に分けておいた着替え袋を取り出す。包帯なんかは別の袋だったな、と取り出していると慌てたジャックの「僕は出入口を見張るので」と上ずったような言葉がかけられたので、とりあえず「わかったー」と返事を返しておいた。


 着替えを進めながらふと、嫌な予感というか楽しい採取なのに落ち着かない。

私だけが感じている感覚みたいなのでこっそり「気を引き締めなきゃ」と、覚悟を決めた。



◇◆◇



 まず【ハッヒツの実】は問題なく採取ができた。



 湿地の中央当たり、特に湿度が高い場所に生えているという情報通りの場所にあったことや周囲にかぶれたりする植物がないことからレーナとジャックも積極的に採取に加わってかなりの量を採取できた。

 道中はずっと虫除けポマンダーと虫除けオイルを併用して使っていたからか虫に悩まされることもなく快適で、足元は湿った土が多かったけれど落葉樹が多かったからか滑るような粘土質の土ではなく、若干湿ってはいるもののフカフカして歩きやすいタイプ。また、ある程度人の出入りがあるのか草も少なくて歩きやすかった。

 単純に魔力が多い場所だから雑草が生えにくいっていうのはあるかもしれないけれど。



「次は確かこの近くだったよね。聞いた話だと此処から十分くらいの所だっけ?」


「ええ。方角を聞いているので僕が誘導します」



 うん、と頷いたのを確認したらしい彼が走り始めたので私達も後に続く。このとき私を挟むようにロボスとルヴが、最後尾はサフルが走ってくれた。レーナはジャックの数歩後ろを走っているので二人が丁度壁になる形だ。

進んでいくにつれてまず、濃厚な樹木の香りからじっとりと纏わりつくような水の濃い香りに徐々に塗り変わっていく。


 地面もそれに対応するように木葉が土に、土が粘土質へ。埋まっている木々も種類が変わっていく。

砂地、腐葉土、水分を多く含んだ土に、粘土質の地面と目まぐるしく変わっていく土質に「植物系統の素材が豊富なわけだ」と一人納得をしているとジャックとレーナが揃って失速していく。それだけじゃなく、そっと屈んだのを見て私も咄嗟に体勢を低くした。


 地面と近くなることでより、周囲の音がやけに大きく聞こえる。

地面をける何かの音。何かが湧くような音、そして―――ルヴとロボスの警戒する低い唸り声。


 嫌な予感がした。


 「やっぱり」って言葉が頭に浮かんで、私の全部が「間違いなかった」って答えるような、何かが繋がった感じ。咄嗟にポーチに腕を突っ込んで爆弾を手に取る。爆弾の種類は痺れ薬を存分に詰め込んだ特別製。



「前方に、誰かがいます。シルエット的に女性だと思うのですが様子が少し」



 妙だ、とジャックが続ける前にレーナが小さく息を飲んだかと思えば、直ぐに地面を踏み込んだのが見えたので咄嗟に腕を取った。



「っ、なにをなさるんですか?!」


「……ダメ。多分、あそこにいるの、ダメなやつ」


「ダメなって、被害者の一人に違いありません! 衣服の乱れもですけれど、あんなボロボロで呆然とされているということはよほど酷い目にあったに違いありません。せめて、せめて一人くらいは」


「嫌な予感するからダメ。ジャック、人に会ったら警戒してって言ってた」



 ぎゅと握った腕に力を入れる。

 顔は見てないし声も聴いてないけれど、それでも譲れない。例え酷い目にあっていたのだとしても「たすけて」と言われていないのだし、と言い訳めいた言葉を口にする前に同じくらいの子がこちらを向く。



「っあ、あの…た、助けてください!!」



 冷たくて嫌な感じか喉から胃の中へ伝い落ちるように広がって、やがてそれは全身にいきわたった。

 私が警戒しているのをルヴとロボス、青っこいのとサフルは十分理解してくれているようで厳戒態勢のまま。



「ジャック、お願いです。どうか」


「見たところ武器はないようだし話だけでも聞いてみる、というのはどうかな」



 けれど、レーナとジャックの二人は警戒はしているものの、どこか空気が和らいだので嫌な予感がどんどん強くなってくる。急ごうよ、と言っても無駄だというのは雰囲気からも十分予測できたので、サフルを手招き。さっと屈んでくれたことに感謝しつつ私は前方から見えないようにさっと木の幹に隠れる。



「確信も保証もないけど、あの前にいる人は近づいちゃいけない人だと思う。絶対に近づかない

で。あと周りに気を付けて。仲間がいて囲まれたりするかもしれない」


「かしこまりました。周囲に人間を見つけた場合はどうしますか」


「捕縛出来たら捕縛、もし無理なら……動けないようにして。油断したところを襲ってくる、とかありそう」



 はい、という力強い返事にほっとしてそっと顔を隠すためのマントを羽織る。作業着の上からだけど、ないよりはマシ。警戒しながらそっとレーナたちの方へ近づく。

 二人は一応距離を開けたまま前方の人物の話を聞いているようだった。



「では、貴女は襲われた冒険者のメンバーだったと」


「は、はい。わ、私、直ぐに抵抗をやめたから飽きてしまったみたいで……一人きて私を乱暴してから、直ぐの人の所に行ってしまったみたいで…隙をついて逃げてきたんです」


「それはつらかったでしょう。あの、とりあえず体を隠すものは?」


「荷物もすべておいて来てしまって……武器もです。だから、モンスターや魔物が来ないかずっと不安で……! でも、追手が来ていたらと思うと声も出せなくて」



 徐々に涙声になっていくその声色は、たぶん可哀そうな子そのものなんだろう。

気のせいなのかな、とも思ったけれどずっと鳥肌が立っている。

それでも一応、対応はしなくちゃいけないのかもしれない。私は、布を渡す気も武器になりそうなものを渡す気もなかった。


 ベルやリアン、ラクサやミントにも「身近なものを使って相手を殺そうと思えばいくらでも殺せる」って言われて今ここにいるのだ。


 泥にまみれた白い肌と華奢な体格。

 あまりご飯を食べていないのか全体的に薄い。薄い茶色の髪はザンバラに切られているのが見えたけれど、怪我はあまりないみたい。


 二人が私に声をかけて何か体を隠すものは、と聞いてきたけれど「ない」と答えてそれっきり。

レーナはたぶん、だめだ。ジャックでギリギリ……かな、と思いながら私は話の行く末を見守る。私が警戒しているからかジャックはまだ警戒を続けているみたいだった。

 少し話をして分かったんだけど、貴族令嬢ということもあって駆け引きやなんかは得意な部類だと思う。それこそベルみたいに。


 でも、ベルと違うのは経験の差。

 ベルは割り切りが上手で根本にある考えは騎士のそれだ。だけど、レーナは根本がご令嬢なんだよね。庶民の友達が欲しかった、と話していた姿を思い出すと危うく感じる。

 まぁ、私もいつもなら気にせず布でもご飯でも渡すのだけれど……あの子は、だめだと分かったから近くにいるのも嫌だった。


 理由も根拠もないまま疑う私をよそに、一時的に保護することが決まる。と言っても採取地に一緒に行って、草原のあたりに行けば人がいるので其処で別れるという話になったようだ。草原にはまだ人がいる。敵もどちらかといえば草原の方が少ない。



「ごめんなさい、学院行事だから街まで送ることはできないのだけれど」



 レーナも私が馬車に乗っていいというとは思っていないらしい。

 自分の持ち物であれば同行を許可していた筈だけど、あれは私の持ち物だから。



「いいえっ、そ、そんな……! 誰かと一緒にいられるだけで充分です」



 歩き始めたので私は最後尾をサフルとともに歩く。私の横にはルヴ、私の背中を守るようにロボスが付いてくる。油断すると滑るような地面に最大限警戒しつつ移動をしていく。

 移動速度が落ちたので時折、採取予定ではなかったものも採取しつつ進む。

 水気をたっぷり含んだ水の気配が強いその場所は粘土特有の臭いと混じった臭いに明確に変わったころ、足元が明らかに泥へ変化した。



「……ルヴ、ロボスはここで待機。サフル、青っこいのは私ときて」



 そこは広く、まるで大きな池だった。

 以前聞いたことのある底なし沼があるジズン廃鉱山もこんな感じなのかもしれない。その場所には底なし沼に住む蛇の魔物もいるみたいだし、それがないだけいいけどね。

 一歩足を踏み出したところで思いつく。



「二人とも、その子は泥の外に置いて私の所に来て。採取が先だよ……あなたはそこから動かないで」



 先に行動を指定してしまえばいいのだ。あの子が戦えるかどうかはわからないけれど、合流した時の主張を踏まえるとこれが一番いい。

 私は態々喧嘩したいわけじゃないんだよね。ただ、あの子とは一緒に動きたくないだけ。


 嫌な予感が杞憂であれば、それでいいと心から思う。





ここまで読んで下さってありがとうございます!

素材については次のお話で、かな?と

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― 新着の感想 ―
[一言] ライム達ってわりと結構排他的というか警戒心が高いけど、それが他の子らにもそうとはならないよな〜 更新感謝〜!!
[良い点] 上着とずぼんが一体化のツナギよりも、胴付き長靴が欲しいところでしたね。 そして、善意を装う暗殺者?盗賊?登場。 ベルやリアンだと、ライムより先に警戒状態だろうけれど、こちらの貴族たちはま…
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