299話 彼らが頑張れる理由
よっしゃー!とりあえず時間内のアップです!
………ただ、もう本来ならアイテム作ってる筈だったんだけど、どうしたんだろうか(苦笑
凄まじい熱量だなと、職人街に足を運ぶ度に思う。
活気に溢れていて、賑やかで、目につく人すべてが意欲的で。
ホッとすると同時になんだか少しだけ入りにくいなって思うこともある、そんな場所に私達はいた。
案内されたのは大きな倉庫の休憩所のような所で、私はなぜか各職人さんたちとおやつを食べている。
いや、なんでだろう?と首を傾げているとボルンを食べないかと差し出された。
「中身はミルの実クリームだぞ。女の子ってのはこういうのが好きなんだろ? 二番街のパン屋で売り始めたっつってな、母ちゃんに持たされたんだ。三つ入りなんだってよ」
「あ、ありがとうございます」
いいってことよ、と笑うのは壮年の男性。
カカカッと笑う曲がったことは嫌いだという彼は、手紙関係の配送を請け負っている現場の総監督。元々は『伝達ギルド』の創設者の一人なんだって。
「にしても、ライムちゃんがこの『センベイ』を考えたんだってな。冬の間、良い茶請けになって、ここで作った器のおかげで孫たちのオヤツにも困らんかった。特にあの甘しょうゆ味がたまらん」
「何言ってるんだ、ワガ爺。やっぱ塩だろ! 酒のつまみにもいいし、チビどももよく取り合いしてらぁ。そんでよぅ、ものは相談なんだがもうちぃっとセンベイの販売量を増やしてくれねぇか? 俺らみたいに二番街に住んでると行くころにゃ売り切れててよ」
今この場にいる職人さんは、色々な部門の職人さん。しかも一番偉い人か代表の人。
最初に声をかけたのがたまたま『ワガ爺』と呼ばれるワガンさんだったんだけど、そこからの展開が凄まじく速かった。
私が話を聞きたかったのがクギを預けた『伝達ギルド』シシクに仕事を教えてくれている『大工職人』トーネが一時所属する『楽団・エルディアーナ』リッカが資格取得の為に住み込んでいる『教育者ギルド』に所属している人だったんだけど、ワガ爺ちゃんはそこらにいた人に声をかけて態々『今集まれる一番偉い人』を呼んでくれたんだよね。
これには一緒にいたリアンとラクサも口が引きつっていた。
「ちょっと待ってくださいね。リアン、どうかな? 増やせそう?」
「そう、だな……できないというわけでもない。二番街にある……そうですね、試しに『ピスキス・ティオー・キス』に三種類のセンベイを一定数販売してもらえないか持ち掛けてみます。今年は、僕らが留学する年なので定期納品はかなり難しいのですが」
「留学といやぁ、そうか。不在の間、工房はどうするんだ?」
職人さんの質問に私たちは顔を見合わせて首を横に振った。
一応方針は決めたんだけど……色んな人に店を開けて欲しいって頼まれるんだよね。
回復薬に関しては、先生たちに頼んで初級だけでも一年生に販売することを義務付けたらって話してる。私達の時は「全部自分で」だったけど、講義で初級ポーションの作り方だけでも教えて欲しいって頼んだのだ。
これは三つの工房全てで気になっていたことでもあったし、一年生の方もメリットしかないのでいいと思う。それ以上のことはできないと思うけどね。
で、二年生の評価基準も変わった。
留学している期間が長い二学年のみ経営状態を加味しないってことになってる。
「あの、ちなみになんですけど……いない間もこれだけは買えるようにしてほしいっていうアイテムはありますか?」
冒険者や騎士以外にも聞いて回っている質問をする。
戦闘ありきで生活する冒険者や騎士とは違って、戦闘はほぼない生活をしている人たちじゃ欲しいものって違うだろうからね。家事をする人達には世間話ついでに聞いてるけど、欲しいものはトリーシャ液と洗剤は絶対に切らしたくない、とのことだった。
あと冬の間はアルミス軟膏にもかなり助けられたってかなりの人に言われた。
冬場の水仕事は、ひびやアカギレになりやすくて大変だったけれど、少量でもすぐに効果があるアルミス軟膏はとても助かったそうだ。
薬師の薬はじっくり効くタイプだからすぐには治らない。
内服薬は内臓に負担がかからないように薬師の薬を飲むのが一般的だけど、旅をしている最中は錬金薬を使うのが常識で値段を考慮しても普通に生活する為に錬金アイテムはなくてもいいって考える人が多かった。
今は、トリーシャ液や洗濯液のおかげで錬金アイテムも便利でいいねっていうのが、少しずつ広まっていってるみたいで嬉しい。
「そりゃ、アルミス軟膏だな。それとセンベイ」
「俺もアルミス軟膏とセンベイ……いや、カリカリ豆ってのもうまいよな。あれ、安くてうまいってことで嫁さんが良くつまみに出すんだが、妙に癖になる」
「オレはスープがいい。あの粉のやつは休憩中に丁度いいんだよな。女房の機嫌のいい時につけてくれるんだが、まぁ美味い。あのこっくりとした甘みがたまらん」
私の質問を機会にワイワイガヤガヤと「あれが美味しい」「いや、これも美味かった」などと話が盛り上がっていて苦笑する。アルミス軟膏は全員が役に立つと言ってくれているので、それプラス食べ物系かとメモを取っておく。
メモをした所で貰ったボルンにかじりつく。
ちょっと油分が滲んできてるけど、それでも十分美味しいと感じるのだから、流石首都ってかんじ。
「そういや、ライムちゃんは何を聞きに来たんだ?」
「私の奴隷のことで……どうかなぁって思いまして」
「ああ、預かってるクギ坊のことを聞きに来たのか。贖罪奴隷だったか? 随分珍しい奴隷だなとは思ったが、接してみると中々素直で扱いやすいぞ。なにより、他の出稼ぎ奴隷と違って気概があるし、元々犯罪奴隷だって聞いていたがカッとすることもねぇ。休憩時間も働こうとするのが少し困ったところだが、何回か話をして『何故頑張るのか』がわかって納得できた」
頑張る理由、って何だろうと首を傾げる。
最低限とはいえ奴隷にも賃金は発生する。その中の一部を本人たちの報酬として渡すことにしたんだけど、これにはサフルをはじめとする一同が反対した。
理由は『犯罪奴隷だから』だ。
私としては、ある程度自分たちで使えるお金は大事だと思っている。
緊急時、必要なものが買えなくて死んだ…なんてことになったら嫌だしね。それに、働くには多少なりとも報酬がないと意欲って続かないものだと思う。
「買いたいものとか欲しいものがあるんじゃないですかね。ほら、一生懸命働けば、周りの評価もお金も獲得できるわけだし」
思わずそう呟いたら周りの人たちはきょとんとして苦笑したり、仕方ないなぁといった表情で私の頭を撫でる。
「嬢ちゃんが主人であいつらは良かったなぁ。あいつらが必死に働く理由は保身という理由もあるだろうが、お前さんが困らないようにってのが一番でかい。奴隷の失敗は主人の失敗だ。使い捨てられないと分かった奴隷は、主人によって態度を変える」
「うちにいるシシクは若い職人と違って黙々とやってるぜ。ただ、物を作るってのは好きらしくてな……昼休みに新人の一人とよくつるんでアレコレ廃材で作って遊んでら。他の奴らは年相応に遊んだりしてるみたいだが、年齢も一番上ってことで世渡りも上手い。まだ家を建てるまでは長いが、できるだけ急いで教えてはいる。ただ、あと二年で家を建てるまでってのはキツイぞ」
「やっぱりそうですよね。うーん、シシクだけ延長でお願いしてもいいでしょうか。本人の意思も聞かなくちゃいけないんですけど、地元にはこっちにいる職人さんみたいに腕の立つ人はいなくて」
麓の集落にある家は、外から大工職人を招いて建ててもらったものだと聞いている。
だから、一軒増やすってわけにはいかないんだよね。住む人がいなくなった場所を使いまわしたり、新しく建てるにも木をある程度伐採したり、お金を稼ぐのも大変なんだよね。
共同で家を建てる資金は集めてるってことだけど、どのくらい貯まったんだろ?
「うちの店を選んで腕を認めてくれるってのは有難い。まぁ、こっちもできるだけ教えてやるさ。ああ、それとシシクと新人が遊びで作った玩具が子供に評判になったから、売り始めることにした。その相談もしたかったんだ。一応材料費はこっちで少し貰うが、売り上げの一割どうする?」
「金額によります。あまりに多いようであればシシクを預かってもらってるってこともあるし、そっちで半分って感じにしたいけど、それほど売り上げがないならシシクに渡してください。何かと入用だろうし」
おう、と頷いた大工職人さんに続いて声をかけてくれたのはリッカの受け入れ先である教育ギルドの人。今日はたまたま休日で職人街をうろついてたらしい。ペンの購入がしたかったんだって。
「リッカさんの教育担当をしていますが、彼、かなり頭の回転が速いですね。物腰も柔らかいですし教育者としてはかなり優秀です。能力的にあまり苦戦しないだろうと思っていましたが、予定外の分野にも手を出してその知識もものにしていますよ。知ることと教える事が好きなようです。同僚とは少し距離をとっていますが、まぁ、事情を皆聞いていますしギルドですからそこはお互い割り切った付き合いなので心配はいらないかと……ああ、錬金術に関する法律や権利関係の資格も取得したいと言っていたので、貴女の役に立ちたいという気持ちはあるようです」
そうなのか、と頷きつつ有難いなと思う。
法律関係のことって私さっぱりわからないし。
最後に口を開いたのは『楽団・エルディアーナ』の団長を務めている人だ。
恰幅のいい男性で、この人も楽師だったそう。今でも熱狂的なファンがいるんだって。
ベルが言ってた。
「こちらで預かっているトーネですが、彼はいい声をもっていますね! 元盗賊と聞いて反発する団員もいましたが本人を見て少しずつ意識を改めるものも増えていますよ。まぁ、反発していたのもおりましたが、彼は先日退団しましてね―――…ずっと真面目にやっていたトーネが怒るのは初めて見ました。ただ、その周囲も一緒になって怒っていたのには驚いたものです。素行でいえば、反発していた男の方が悪かったのでこちらとしては少しすっきりしたのもあります。彼程度の声はどこにでもいますから。トーネには、一通り楽器を仕込んでいる所で、生まれた家で少し触ったことがあるという事で上達も早い。他の皆さんも言っていましたが、雑用でもなんでも嫌がらずにやるので助かっていますよ。本人は『下積みの時にしたことは、身になることが多い。雑務でも意外なところで役に立つし、学びに来ている以上まじめにやるさ』と周囲に話していました」
「……ん? あの、トーネが怒ったんですか?」
「ええ。激怒しておりましたね。いやぁ、流石盗賊団を束ねていたというだけあって迫力がある! あれはいいですなぁ。怒るというのは人を見極めるのに適しておるんですがね、元々正義感のある人間だったのでしょうな。コレと決めたら良くも悪くも愚直に進む。胆力もあるし、人の目を引く側の人間だ。あれは化けますぞ」
「そ、そうですか」
けが人は出てないんだろうと楽しそうな団長さんの姿にホッと肩の力を抜く。
まぁ、次の言葉で冷や汗がどっと出たんだけどね。
「トーネのパンチは中々でしたよ。しっかり腰を落として体重を込めたものでしたし、殴りかかるまで予備動作のないままだったので、私じゃないと対応しきれなかったですね。いやぁ、鍛えるいい機会になりそうです。私も若造にはまだまだ負けませんがねぇ、ああいったタイプは適度にノしてからの方が使いやすい」
「ひぇ…! す、すいませ……怪我とかしてませんか?!」
「ははは。心配無用です。トーネはそのあとすごい勢いで謝罪してきましたしね、まぁ、よくあることなので問題なしです。喧嘩の理由も理由でしたから、私も周りも納得していますよ」
嫌なこと言われて我慢できなくなったんだな、程度のことしか考えていなかった私は詳細を聞いてギョッとした。
あのトーネが怒った理由が『自分の主人を貶め、罵倒したから』だったらしい。
どういうことなの。
ぽかん、と口と目を見開く私に彼は笑う。
そして周囲もそれを聞いて納得したらしい。
「そういや、クギ坊もライムちゃんが悪く言われた時はいっちょ前に殺気を飛ばしておったなぁ。手こそ出さなかったが、盗賊の一面を見た気がするわい」
「シシクもそうだな。雰囲気がガラッと変わりやがる。ただ、ライムちゃんが褒められると喜ぶから、主人馬鹿だなと周りも微笑ましく見てるが」
「リッカは、あまりそういうのを実感することはありませんが……毎日、持参してきている昼食を食べるときは雰囲気が変わりますね。貴女から貰ったというものの扱いは、宝物でも扱う様に大事にしていますよ。魔術師の才能を持っている講師もいるのですが彼が所有している筆記用具に『いくらで保護魔術を付加していただけますか』と熱心に聞いて、その為にお金を貯めると決めたようですし」
リッカ、いつもニコニコで本当に分かりにくいとか思ってごめん。
私の考えていることを読んだみたいに呆れたような視線が左右から。リアンとラクサには口止め料代わりに何か作ろうと思う。
「そんで、ライムちゃん、相談してた薬の話はどうだい? できそうかい?」
そう聞いてくれたのは、ワガ爺ちゃんだ。
とりあえず、色々考えていることを片っ端から試してみるつもりだと答えると、申し訳なさそうに、でも有難そうに深く頭を下げられる。
「すまんなぁ、こんなことを頼んで。ワシらでも買えるような値段で回復薬だのを売ってくれてるところで満足すればいいとわかってるんだがな、ばーさんが腰をやってしまってから暫く調子が悪くてな。趣味の編み物も読書も長時間座れない所為で家からあまりでなくなってきとるんだ」
「痛いところがあると生活するの一気に不便になるから、できるだけ急ぎます。ただ、必ずできるって約束はできないし、時間も留学前にはと思ってるんですけど、オリジナル調合になるので」
「いやいや、やってくれてるって報告ができるだけ有難い。クギ坊らの件は、これとは関係ないが安心して任せとくれ。この歳になると次の世代に引き継いでほしいことだらけで教える時間が足りん」
カカカッと笑う姿は元気そうではあるけれど、職人だったってことは何処か調子が悪いところが出てきてもおかしくはない。そういう人たちが好きなことをしたり快適に過ごせるようなアイテムを作りたいと決意新たに私たちは職人街を後にした。
クギたちのことも聞けたし、帰りに色々買えたのも中々良かったと思う。
◇◇◆
で、どうしたもんか。
ドーンと作業机にのった素材を眺めて仁王立ちしたまま考える。
イマイチ、何かが足りない。むむむ、と色々な角度から眺めたり、一つずつ持ち上げてみたりもするけれど「これ!」っていう感覚がやってこない。
「んんんー…布、かな多分」
これじゃない感が強いのは布と薬。
薬はもうちょっと!って感じだから何か一つ、ここにはないものを足せばいいと思う。
ただ、薬でここにないものっていえば……とレシピを開いて今自分たちが作れるであろう物を調べてみる。
「薬…って感じじゃない気がするんだよなぁ。何だろ」
パラパラと手帳を捲っていて手が止まったのは【美容】のページ。
何気なくパラパラ捲って新しく加わっていたレシピが目に入った瞬間、一つの引っ掛かりが解決。素材を見る限り、問題ない。
あとは、と続いて捲っていくと布のカテゴリが。
「リアン、ちょっと質問なんだけど……色んな種類の端切れみたいなの手に入らないかな。多分失敗何度かすると思うんだよね」
「布か。布なら母の所に行った方が早い。不足は布だけか」
「酒の素を結構使うかも。ドクハキ草を使ってドクハキエキスを作りたいの。これを作って、回復薬なんだけど……んん、回復薬も考えなきゃダメかも。患部に染み込む感じにしたいんだけど、生傷があるところに塗るわけじゃないから軟膏じゃだめだと思う。接着剤は――…こっち、かな。ちなみにこれ、何素材?」
「それは【パラジットラーナ】の――寄生蛙の粘液だ。比較的大量に取れて、保湿力がある。ただ、まぁ、敬遠されがちだから着実に稼ぎたい人間にとってはウマい依頼になる」
「沼地にいるんだっけ?」
「ああ。安価で出回っているから量産時に使うのは楽だぞ。ただ、生臭さが問題だが、脱臭炭があるからこれも問題ない。ドクハキエキスというのは、ドクハキ草を抽出してつくる、と考えても? 蒸留方式か」
「うん。それが一番いいと思う。ただ、それだけだと足りない気がするから、酒の素につけて成分を抽出する方法でもやってみたいかな。酒気は程よく蒸発…いや、あった方がいいのかな。その辺は作ってみないと何とも言えないけど……んん、分量は酒漬けの方が少な目の方がいいから3:7くらいがいいと思う。リアン、悪いんだけどドクハキ草を使って蒸留してもらっていい?」
工房に戻る間に手伝ってくれるって話だったから頼んでみるとかまわないという返事と共に言いにくそうに視線が泳ぐ。
多分、器具のことだろう。
「勿論私が頼んでるんだから器具は私のを使って。たくさん作ってくれていいよ! って、言いたいところだけどドクハキ草も限りがあるから。もう少し時間があればたっぷり摘んでこれたのに」
ごめんね、といえば呆れ果てた視線を向けられため息とともにリアンが口を開く。
トントンと人差し指で作業机を叩く音がする。
「誘拐されて諸々の危機がある最中であれだけの量のドクハキ草を取って帰ってこれたということ自体に僕は驚いたんだ。全く。ドクハキ草に関してだが、留学時にあちらでいくらでも採取ができるだろう。それに、育てることも可能だからサフルに相談してみた方がいい。あれは繁殖力が強いとのことだったから大型プランターを複数置くべきか……いや、いっそ教会で栽培を頼んで買い取る形にしてもいい。費用を安く、もしくは無料にする代わりに出来あがったものを一定数、
教会に卸すというのもありだろう―――…君が信頼を得ているお陰で、モルダスの教会はかなり協力的だからな」
「リアン、あくどい顔になってるってば。全く。でも、そうだね。教会で暮らしてる子供とかシスターが少しでも美味しいご飯食べられるようになるなら、その方がいいかも。切り傷とかにも効果があるし」
「決まりだな。布を見に行く前にサフルに相談するか。おそらく、育てる際の注意点もあるはずだ」
「なんだか大変なことになってきたね」
「普通オリジナル調合をつくるとなるともう少し費用やら素材が必要なんだが……君に言っても無駄だろうから、もう何も言わないさ」
あはは、と笑って誤魔化しつつ、気になっていることを相談してみる。
保存方法についてだ。
「これ、完成したとして密封容器がいるよね。どうしようか」
「そこまで考えていなかったが、確かに必要だろうな。蒸発する可能性もあるし、一つずつ小分けにして……密封瓶に入れるべきか。袋状のものなら扱いやすいが、今の段階でそれは難しい。販売するとすれば、密封瓶の費用は最初に貰うという形になるな。初回だけ有料で次回からは瓶の費用を引いたアイテムの利益だけというのが妥当だろう」
「じゃあ密封瓶も多めにいるね。あと、試作品を試して欲しい人が職人街にいっぱいいるんだけど」
「まずは職人街からでいいだろう。この辺は完成してから考えるぞ。ひとまず調合してアイテムをつくらないことには商談もできない」
分かった、と返事を返して私たちはサフルに話をすべく、裏庭で作業をしている彼の元へ。
色々話をして、大型プランターを二つ、種を教会に持って行こうという事で決まった。
ドクハキ草は中々栽培が大変みたい。一度、根を張ってしまえば管理は『広がらない』ようにするだけだって話だけどね。
移動ばかりで中々調合にとりかかれないけど、こればかりは仕方ない。
素材がないと私達も調合しようがないもん。
いつものように、伸びました(笑
なんてこと!ただ、今ライムたちが考えている調合はかなり難しいと思っています。