287話 砂塵風
ちょっと早めにアップです!
すっすまなーーーいwwwwww
荒野から砂が入り混じった街道をひたすら進んで、三日。
緊張が続いていたこともあって、馬車の中では全員がのんびりと眠ったり話をしたり、食事をしたりとダラダラ過ごしている。
大変なのは交互に御者をしているトーネとシシクだけど、揺れも心地よく感じるクッションの上でたっぷり眠ってしっかり食事をしたり、砂などが入らないよう御者専用のフード付きマントを貸したところ、これ以上快適なことはないと機嫌よく馬車を走らせてくれていた。
中型の馬車を牽く【サンドコール・ホース】は、私の『所有物』になっているので『ポーシュ』という名前に。
古代語で馬という意味なんだけど、気に入ってくれたみたい。
ポーシュは魔力を注いだ水をとても喜び、懐いてくれた。
トイレ休憩なんかで外に出るたび、ブラッシングをしたり、おやつを食べさせたのも良かったんじゃないかなって思ってる。
お気に入りはキャロ根の麦蜜クッキーだ。
たまたま作ってたんだよね。ルヴ達の為に。
ポーシュには、私には他にも『共存獣』がいることを話してあるんだけど、どうにも彼女も共存獣になりたいようだった。
ただの馬、としてではなく共存獣になってしまうと簡単に売買はできなくなる。
他にも思いつく限りのデメリットを話したんだけど、彼女は首を横に振り、甘えるように私に首を寄せた。
「シシクに、馬小屋を建てて貰わなきゃだね」
そう根負けして話すと嬉しそうに嘶いて、その後はこうして機嫌よく走ってくれている。
ポーシュはメスで、そしてルヴ達と同じくらい頭が良かった。
だから、共存獣ギルドというところで登録をしないといけないこと理解したらしい。
登録の為には早く移動するのが大事だと考えているのか、かなり気合が入っている。
私は、馬車の中で手持ち無沙汰だったのもあって、家を離れるときに沢山回収していた蔦を編んで籠を作っていた。
「……ライム、お前、何してんだ?」
「籠作ってる。暇だしね~。籠はいっぱいあってもいいでしょ? 素材を入れるもよし、売るもよし! 本当は調合したいけど、調合釜がないからなんもできないしさ……次の休憩場所でちょっとでも採取できたらいいな。砂地になってきたから、一つか二つくらいは欲しいんだよ」
私の言葉に暇をしていたらしいクギが、更に不可解な物を見る目つきに。
どうしたんだろうと疑問に思ったので詳しく聞いてみる。
「つか、売るなら俺らに命令すればいいだろ。なんで主人が内職してんだよ」
「暇だし、そもそも奴隷になった皆を養わなきゃいけないのは私なんだから、私が稼ぐのは当たり前でしょ。たぶん、シシクたちに色々覚えて貰ったらしっかりした道具も必要になるし、服やら靴やら、武器も壊れたら新調しなきゃだし……あ! 戦い方とかで防具も変わるだろうから、戻ったら防具と武器屋さんに行かなきゃだね」
「………マジかよ。お前、本当に大丈夫か? 悪いやつに騙されたりしねぇだろうな?」
「あはは。しないよー。だって、悪い人って……なんとなくわかるじゃん」
籠は普段使いしやすいように細くしなやかで節を削って、特定の草木を合わせた煮汁で煮て干したものを使っている。この煮汁で蔦を煮ると色が綺麗になる上に、丈夫になるんだよね。
これは麓の集落で教えてもらった生活の知恵。
「あの、ライムさん。それってどういう……?」
「え。マリーはわからない? なんかこう、雰囲気で『嫌な感じ』がするんだけど」
基本的に外れることがない、この感覚。
騎士の人達で、嫌な感じがしたのは隊長以外の二人だ。
町では、案内してくれた少年以外ほぼ全員。
ポカンと口を開けたマリーとクギの横で、コンフが頷き、シシクたちが感心した表情を浮かべる。
「俺の持つ感覚と似ている。敵意を持っている場合だけでなく、こちらに対し嫌悪や良くない感情を持っている場合は俺も分かるから、マリーは安心していい。そういった人間を近づけないようにする為に、俺がいる」
「コンフもライムも恐らく、経験と本能で感じているのでしょう。色々な、というよりかなりの人数を見てきたからだと思います。商人などもそういった感覚を持っている場合があり、そういった人間は重宝されますよ」
「ちなみに、あの部隊の副隊長と奴隷商は、不正取引やら賄賂やらで儲けてやがるぜ。隊長が『使えねぇ』からな」
コンフに続いて、リッカ、シシクと話が続く。
どうして知ってるのか、という疑問をぶつけると馬屋から聞いたらしい。
あと、ソコソコ有名なんだって。
「カルミス帝国の騎士は、スゲェ分かりやすいぜ。上の連中は正義感の塊の脳筋か使い分けが上手い奴、真ん中は平凡、下は醜悪もしくは無能だ」
「し、辛辣ですね」
「事実だからな。あの隊長ってのも力や戦う能力はあるだろうが、難しい話なんかは面倒で丸投げしてるタイプだろ」
そういって肩をすくめるシシクに私は首を傾げる。
何となく、そういうタイプじゃないと思ったから。
「うーん、あの隊長さん……たぶん、頭いいよ。あの人だけだったら事情を話してもいいかなって思ったけど、他の二人には嫌な予感しかしなかったから、諦めただけだし」
時々見る巡回中の騎士で、無口だったり口下手だったりする騎士の人がああいう感じなんだよね。必要なこと以外話さなかったり、別の業務を担っていて話せなかったり……そんな雰囲気を感じたから、関わらずにスルーを決め込んだ。
「その感覚は私達にはわかりませんが、事情を話さなかったという判断には少し驚きました。そういうのを気にするタイプには見えないので」
リッカの驚いたような、感心したようなしみじみとした評価と表情に苦笑する。
私は肩をすくめて、あの場で話さなかった理由を伝える。
「時間もなかったし、相手がどういう行動をするのかサッパリだったから放っておくことにしたんだよ。だって、急いでたし、資金は節約したかったし……ばれると、副隊長と奴隷商のコンビが絶対口出ししてくると思ったもん」
無理無理、と顔の前で手を横に振って笑ったところで、馬車の速度が落ちていくことに気付く。
驚いて御者が座る後ろについている小窓から外を確認すると、街道から離れた場所にある大きな岩の方へ向かっているのが分かった。
「なんだろ? 何かあったのかな」
「道をそれてますね。この速度なら停まるつもりでしょう」
なんだろうね、とマリーと顔を見合わせていると、それほど時間をおかずに馬車が止まる。
ぴったりと岩にくっつけるように止められたので、全員で馬車を降りた。
地面は砂。
ただ、足で少し砂を左右にかき分けてみると土も見えてきた。
周りを見ると大岩はいくつかあって、周囲には中程度の岩が転がっているし、岩の横には枯れ木のような大木が岩を風よけにするように在る。
大木の下には小さな背丈の草が生えていて、乾燥地らしく、葉がぷっくりと肉厚だ。
この周囲に似たような場所がいくつかあるのもわかった。
其処には目的の【血豪扇】と【水豪扇】も見つけた。
「おおー! ここ、いいね!近くに採取したかったものもある。色んな種類のカクトトスがあるんだね」
カクトトスは、植物の一種だ。
乾燥地帯にもいろいろな植物があるんだけど、棘がある多肉植物全般をカクトトスって言うみたい。
形は様々で、棘も針のようなものや、小さな棘、または退化して一部にしか棘がないものもあるみたい。手入れも簡単ってこともあって、観賞用の植物としても人気があるんだって。
カクトトスの中に【血豪扇】と【水豪扇】っていう種類がある。
名前の通り【血豪扇】は血液を吸い、【水豪扇】は水を吸う。私が探していたのはこの二つだ。どちらも市場で売られていて、比較的安価なんだけど一度は自分で採取してみたい。
沢山市場にある理由は便利だからだ。
特に【血豪扇】は女性にとってなくてはならないもの。
月に一回、出血するんだけどそれを一気に吸収してくれるから助かるんだよね。これがないと一週間ぐらい、使用した布とかを洗ったりしなきゃいけないけど、これを使えば一日で終わるし。血が出ないようにするための薬もあるけど、そっちは割と高い。
あと、肉屋なんかでも血豪扇は大活躍している。
血抜きに使うんだよね。高いお肉とか処理がしっかりしているお肉は、これを惜しみなく使って下処理することが多い。
で、水豪扇は液体をなんでも吸い込んでくれる。
赤ちゃんのオムツとかに使われるようになってから、大活躍してるんだって。
オムツとか生理用品に使い始めたのは、おばーちゃんを筆頭とした女性錬金術師たち。
不便さを解消する為にって、おばーちゃんが若いころに色々な女性錬金術師に声をかけて共同開発した。特殊なのは、このレシピを各国で公表した事。
おかげで、これを専門に作って生計を立てる錬金術師や素材を育てる専業農家もできたらしい。砂漠で生計を立てるのは結構難しいらしく、スラム化していた町なんかが救われたっていう話も各所にある。
それと、血豪扇は冒険者が血を止める為に使うこともある。
この場合は、大きささえ間違わなければ有用な手段だ。大きすぎると余計な血を吸っちゃうからね。
周囲の観察をし終えた私は、難しい顔で進行方向を睨みつけているトーネの元へ足を進めた。
「トーネ、どうしたの急に停まって」
「あっちを見てくれ。先が見えねぇだろ」
「……ほんとだ。空も見えないね」
「砂塵風だ。あの感じからすると移動してくるぜ。今行っても突っ込むだけだから、俺としてはここで休んで砂塵風が過ぎるのを待った方がいい。砂塵風ってのは、そうだな―――…大体、一日から二日かけて吹き付ける強烈な風だ。砂なんかが大量に巻き上げられて吹き付けてくる。進めねぇこともないが、馬のことを考えるなら進まねぇ方が無難だな。進行方向も視えねぇし、街道をそれて余計に時間を食うこともある上、砂漠で遭難なんざシャレにならねぇ」
「わかった。じゃあ、ここを拠点にして今日は早めに休もう。明後日には出られる?」
「ああ。今夜くらいからここら辺に吹き付けて―――……早けりゃ明日の夜にはやり過ごせる。この時期は砂塵風が起こりやすいんだ。防水用の布や布目がしっかりした丈夫な布はあるか?あるならここに臨時のテントを張るべきだな。トイレやなんかも仕切り分けしておくぞ。採取をしてぇって言っていたが、早めに済ませろ。護衛は、クギとリッカでいいな?」
「マリーも採取する?」
「え?あ、私……は、はい。折角なので」
「じゃあ、収獲用の袋貸すね。ポーチに入れて持って帰るから、工房で中身だけ渡すよ」
とりあえず、とポーチから取り出して袋を二つ渡した。
作っておいたタグを持ち手に付けておけば間違わない筈だ。
ナイフは持っているそうなので、コンフも護衛に加わって私たちは一番近くにある素材を確保しに向かう。
シシクやトーネはテントを作ってくれるというので布をいくつか出して渡した。
トーネが「持ってるのかよ」って呆れた顔してたけどね。
「大きな岩などを利用して砂除け、その中にテント、目隠し布を使った簡易のトイレを作る形になる。砂が四方から入ってくるから作るにはコツがいる。ポーシュのことを考えると、大きさもある程度必要だ」
「うん。お願い。私は採取が終わってやることがあるなら手伝うけど、まだ大丈夫なんだよね? 早めに晩ご飯を作っちゃおうか。焚火は風が吹くなら無理だろうし、今の内」
「そうしてくれると助かるぜ。ポーシュ、お前もついていくか?」
声をかけられたポーシュは少し迷ったけれど私に自分の手綱を咥えて差し出してきた。
停めた時点で馬車から解放してるからね。
苦笑しながら手綱を受け取ると、ポーシュは満足そうだった。
彼女はゆっくり目に、私たちは急ぎ足で点々と存在する目的の採取物へ近づく。
◇◇◆
【血豪扇】は、吸血カクトトスと呼ばれる植物だ。
厚みがあって、平たい扇形の葉はいくつか繋がる形で、砂の中に立っている。
この血豪扇の赤や水豪扇の青緑は、黄土色の砂地の中でひどく目立っていた。
一番近い場所にあったのは血豪扇。
150mほど先に見える赤へ早足で近づくと、徐々にその根元に白いものが複数あることに気付く。
大きかったり、小さかったりするその白に目が向く。
「……あー、なるほど。こういうことか」
へぇ、と思わず納得する私とは対照的に少し後ろを歩いていたマリーが小さく可愛らしい声を上げて怯えていた。
その様子に反応したのはコンフで、守るように一歩、マリーの前へ。
「……ライムはソレをみても何とも思わねーんだな」
「生き物に骨があるのは当たり前だし、アンデッドみたいにぐちゃぐちゃじゃないから、気持ち悪くもないし」
驚いた方がよかった?と聞けばクギが噴出した。
ケラケラ笑いながら、私の肩を叩く。
機嫌がよくなったらしいクギの横で、リッカが口を開いた。
「血豪扇と呼ばれる、カクトトスですが別名というかこちらでは『吸血カクトトス』として広く知られています。死体の血液を吸って、水分および養分としているのが特徴です。一応、根からも水分を吸い上げているようですが、血液を吸う性質を持っているカクトトスはこの種類だけです。なので、現地の人間はコレを利用して獲物の血抜きをしたり、盗賊が証拠隠滅に使用するとか」
私たちは使ったことがありませんが、と続けたリッカに相槌を打ちながら分厚い手袋をはめる。
一番最初に身に着けたのは皮手袋で、次に分厚い皮と布を組み合わせた手袋だ。
「とりあえず、採取していい量とかも聞いたからサクサク行くね。細かい作業は後でもいいみたいだから、馬車の中でするよ。クッションのない場所で、だけど。マリーはどうする?」
抜いた棘が刺さるのは嫌だし、と話しながら自分の背丈より少し大きい位のカクトトスの前へ。
一つの大きさはさまざまだけど横幅が30センチ程度。表面と側面に生えている棘は規則的で、大きさはまちまち。
大きく太い棘があることはめったにないけれど、10~15センチほどの針を見つけた際はそれだけを採取することを勧められた。これ、特殊な縫い針の素材になるらしく、結構高い値段で売買されるんだって。
「わ、私は……一つだけで。あの、ナイフを貸していただいてもいいですか? 私のちょっと小さめなので」
「うん。いいよ。棘もあるし刃の部分長い方がいいもんね。えっと、先にとってもいい? こっち、マリーは取りやすいと思う。身長的に。私はこれかな―――…うん、大きい棘はなし、と……んー、ここだと三つか。サクサクとっちゃお」
採取する葉を覆うように袋をかぶせ、節目にナイフを入れてさっくり切り取る。
棘を落とすのは後で。一つの袋に一つのカクトトスを収納し、口を縛ってポーチに入れていく。
マリーにもナイフを貸して採取をしたのを確認してから、一か所目の採取を終了。
そのまま近くにあった水豪扇の採取も同じ要領で、最後に少し離れた所にあった血豪扇を四枚分採取した。
急ぎ足で馬車まで戻り、成果を報告したところで何かに視られているような感覚。
馬車の位置が変わったわけではない。馬もトーネ達も特に気付いた風はなくて、あれ、と周囲を見回していると砂が大量に吹き荒れる砂のカーテンのようになった場所に違和感。
「トーネ。なんか、来てない?」
「あん? いや、特になにもいねぇぞ。つか、砂塵風の中を走るなんてのは、よほどの事態じゃなきゃ――――……いや、なんかいるな」
「いるよね?! なんだろう。姿は見えないけど」
「……お前ら、武器構えておけ。砂塵風を抜けてこっちに来てやがる。ライムをクギ、マリーはコンフが守れ。いいな。俺らのゴシュジンサマだ、傷ひとつ付けんな」
おう、と答えた全員が武器を構え、そして馬車の周りで戦うと被害が出かねないという事で前進。私とマリーは待機を命じられたんだけど、妙に気になったので一緒に同行させてもらうことに。
いざって時は警備結界を張るってことになったしね。
意外だったのは、ポーシュも行くといったこと。
足が速いクギとシシクは走り、体力温存の為にトーネとコンフが馬に乗った。
私はクギに、シシクはマリーを背負って向かうことに。
リッカは走ることになったんだけど、足の速さはシシクの次に。体力はコンフよりあるんだって。ただ、本人が『走る』のが好きではないとの理由で走りたがらないんだとか。
「ものぐさって訳でもねェんだがな」
「シシク、失礼ですね。私は【体力温存】という才能が有るので貯めているだけですよ。いざという時の為に動けないと困るじゃないですか」
砂が舞う為、全員口布と目深にかぶるタイプのフード付きマントを身に着けている。
じりじりと直射日光に照らされている現在だけれど、この後、陽が落ちると一気に気温が落ちるのだ。
過酷すぎる環境の変化についていくのに、体力が削られているのかマリーが少し体調を崩している。だから、コンフはマリーにつきっきりだ。
こんな状態のマリーを馬車に一人残しておくと暗殺者が来る可能性もあって、連れていくことに。
「マリー、大丈夫?」
「は、はい。少し体が重いかなってだけですから、あまり気にしなくても」
「そうはいうけど、旅の途中に具合悪くなるとかなりキツいから、無理はしないでね」
ひょい、と抱えられたマリーへ視線を向けるとマリーがはにかむ。
そして小さく「あ」と何かを思いついたらしく、目をキラキラさせて聞いてきた。
「ライムさんは、どういう対策をしてるんですか?」
「え? なんの?」
「体調不良にならないように、気を付けてる事とか」
そう聞かれて首を傾げる。
対策に薬とかは持っているけど……とそこまで考えて、思いついたことが一つ。
「ちゃんと食べて、しっかり寝る事?」
「………あ、ハイ」
それ以上何も聞かれなかったので、適切な答えだったんだろうな!と納得した。
私達は平和に話をしてるんだけど、私を抱えたクギやシシク、ポーシュに乗った彼らはどんどん加速していく。
個人的には、ポーシュ(魔物)の脚力というか速度についていけるクギとシシク、そして何より【走る】ことに関して才能を持っていないリッカがほぼ一列で走っているのが凄いと思った。
(盗賊もベルみたいに化け物的な能力がないと駄目なのかもなぁ……私、盗賊には向かなそうかも)
ぼんやり流れる景色を眺めていると、こちらへ走ってきているものの正体がわかった。
それは馬とは違ったタイプの生き物に騎乗した数名の人間。
「クギ。アレ、なに?」
私の疑問にクギは答えなかった。
代わりに、パッと進行方向を替え、他の面々も同じように引き返すように来た道を戻り始める。
え、と疑問符を浮かべるのは私とマリーだけで、皆必死に走っている。
「え、え、え?!」
「ド畜生が……ッッ!! あのクソ商人ども、コルス・コリーダの卵に手ぇ出しやがった!!」
なにそれ、と悪態をつくトーネに尋ねる前に凄まじい咆哮。
口から零れたのはベルたちに聞かれたら「緊張感がない」って言われそうな、ちょっと間が抜けた感想。私を抱えて走るクギが「ライム、てめぇ、まじで緊張感どうにかしろ!」って怒鳴って来たけど、私は見えたものの姿が衝撃的すぎてポーチに手を突っ込んでいた。
手に握ったそれの形と効果を考えながら、状況を見極める為にフード越しにこちらへ逃げてくる一団と追う魔物を観察する。
「うわぁ……調合にむかなそぉ……」
ここまで有難うございます!
この後、やっと書きたかったことが書けそう!!! 長かった―――!!!!
ってことで、新しい奴の紹介です!
=新しい素材など=
※カクトトス:現代でいうサボテンの総称。チックチックだったりなんか、花を咲かせるのにコツが必要だったりする。大小さまざま!
【血豪扇】呼び名:けつごうおうぎ。別名:吸血カクトトス。
鮮血色~黒血色。丸みを帯びた平たい扇形。
棘は鋭利で短め。まんべんなく生えている。特性として、血液を吸う。獲物一頭分の血液を吸うと二年は生きられる。根からは水分を吸う。
葉にある棘から吸血、もしくは根から水分を吸う事で成長及び生存している。
オランジェら女性錬金術師によって、生理用品としての利用価値を見出されてから積極的な栽培をされるように。カルミス帝国の重要な輸出物となっている。
【水豪扇】呼び名:すいごうおうぎ。別名:大水喰らい。
青緑色。丸みを帯びた平たい扇形だが、受け皿のように中央が窪む。
棘は鋭利で短く、まんべんなく生えている。雨などを葉にため、棘から吸収するほか、根からも水分を吸い上げる。
バケツ一杯分の水分で一年。雨期に振った大量の雨を溜め込み、溜め込んだ水で乾季などを耐え抜く。純粋な水でなくとも、動物の尿などでもよい。水分だけを抜いて吸収する。
オランジェら女性錬金術師によって、オムツとしての利用価値を見出されてから積極的に栽培をされている。こちらもカルミス帝国の重要な輸出物になっている。