27話 魔力の味と魅惑の調合
苦労性になる予定じゃなかったのに、なぜこうなった。
貴族であっても女の子の悩みは一緒です。
主人公が調合順調なのは自宅で違法とは知らないまま色々と実験していたせい。
「君がどう感じようと知ったことではないが、魔力の色についての話をする。簡単にだが紙に書き出したから目を通してくれ」
リアンが手に持っていたメモ用紙を一枚ちぎって作業台の上に置いた。
恐る恐る近づいてメモ用紙だった紙を手に取る。
うん、これも高い魔法紙だね、間違いなく。
だって中品質って言われる薄い青色だもん…こんな高いものポイッと差し出せるとかほんと敵だ。
震える手でそっと魔法紙のメモ書きを手にとった私は書かれた内容に少しだけ感心した。
(流石、性格悪くても首席合格者…読みやすいしわかりやすい)
「今何か失礼なことを考えなかったか?」
「ッ!?そ、そんなことないよ、うん、全然ない!」
「…まあいい。今まで実際にある魔力の部類は八色とされていた。まず、基礎三色と呼ばれる『赤・青・黄』次いで準基礎三色と呼ばれている『緑・紫・橙』そして特殊色と呼ばれる『白・黒』の合計八色だ。基礎色と呼ばれていることからもわかるように『赤・青・黄』の魔力が一般的で、準基礎色の魔力色を持っている者は二割ほどだと聞く。特殊色はさらに少なく希少と言われていて1000分の1の確率と称されるほどに少ない」
「あれ、ちょっとまって…?私の魔力の色って」
「源色と呼ばれる色を持たない魔力は『無色』と呼ばれていて、この魔力色を持つ者が錬金術師だった記録はどこにもない。遥か昔に一人存在した、という記録は残っている。だからこそ、こうして『無色』という魔力色が申し訳程度に教科書に記載されているんだ」
ちらりと探るような視線を向けられて思わず身構える。
いや、だってなんか…目が怖いんだよ!鳥肌も立ったし!
「ライムは髪色も珍しいですし、納得できるといえば納得できますわね」
髪の色は比較的魔力に影響されやすいと聞きますし、とベル。
当事者であるはずの私より熱心にあーでもないこーでもないと議論する二人から視線を外して、受け取ったメモを改めて読んでみる。
『基礎3色』
【赤】炎系の爆弾、恋愛系のアイテム、焼き物(肉)を得意とする。味は辛味。
【青】水・氷系の爆弾、回復系(液体)、魚系の料理。味は塩味。
【黄】雷系のアイテム、自然系の道具、主食と根菜類。味はすっぱい。
『準基礎3色』
【緑】青と黄の特徴を持つ。緑の素材の扱いに優れる。味は苦味。
【紫】赤と青の特徴を持つ。毒系が得意。味は甘い。
【橙】赤と黄の特徴を持つ。家具や雑貨が得意。味を中和する。
『特殊色』
特殊色は1000の1の確率で、味は当人の性格によるとされる。正確な分類はない。
【白】光の属性を持つものに適正がある。光の付加がつきやすい。味は当人による。
【黒】闇の属性を持つものに適性がある。闇の付加がつきやすい。味は当人による。
『源色』
【無色】色をもたない純粋な魔力。向き不向きが一切ないとされるが詳細は不明。
わかりやすかったのでとっておこう、と思いながら改めて浮かんでくる疑問があった。
「ねぇねぇ、このメモに書いてある味ってなに?」
「ん?君は魔力に味があることを知らないのか。錬金術で飲む回復薬なんかを作ると味がつくんだ。素材自体に味があるものもあるし全く影響しないアイテムも多いから問題ないといえばないが」
「へー…そういえば、確かにおばーちゃんが作ったクッキーとかお菓子ってちょっと塩っけあるのが多かったっけ。あ、美味しいんだよ?甘いんだけど少しだけしょっぱくって。私が同じように作っても同じ味にならなかったから不思議だったんだよね」
「クッキー、ですの?それってここでも作れたり…」
「うん。調合釜もあるし作れるよ」
「……ちょっと待て、クッキーを錬金術で作るのか?」
「面白いんだよ!ぷかーって浮かんでくるんだけどさ、全然湿ってなくてサックサクだし…って何、二人共」
信じられないことを聞いた、みたいな顔で私を見ているので一体何をそんなに驚いてるのかさっぱりわからない。
「れ、錬金術って奥が深いんですのね…クッキーってそうやって作っていたなんて…知らなかったわ」
「クッキーや他の菓子は間違いなくオーブンで作るのが常識だ。まさか調合で…そんなレシピ何処にもなかったが」
ベルは顳顬のあたりに手を添えて、リアンは何故かガッツリ眉間に皺を寄せてゆるゆると首を横に振っていた。
なんだその反応。失敬な。
折角懐かしい思い出と一緒に教えてあげたのに。
ちぇっと唇を尖らせつつもう一度だけ調合をしようと準備を始めた。
どうやら二人も早速調合してみるつもりらしく、魔力を通す付属らしいかき混ぜ棒のようなものを確認している。
「調和薬は一応調合できたし…薬効油なんかも作ってみたいけど一時間かかるし…時間を考えると調和薬並のレベルで時間のもの、か。うーん、なにかあったかなぁ?」
ポーチから手帳を出して作れそうなレシピがないかダメ元で見てみると…調和薬のページに最高品質なんて項目が加わっていた。
どうやらこういう情報も残っていくらしい。
高性能すぎてちょっと理解が追いつかないけど、おばーちゃんのものだったって考えると納得できた。
「調合素材系は増えてないし…あれ?こんなジャンルあったっけ」
手帳の後半部分に『食物調合』と書かれている。
そこには三つのアイテムというか料理というか、食べ物が載っている。
【アルミスティーの茶葉】成功度:低 必要調合レベル5 所要時間:1時間
アルミス草+魔力草+スライムの核
若葉を摘んで乾燥させたもの。蒸してから乾燥するとより味が引き出せる。
仄かに甘く香ばしい為、老若男女問わず好かれている。
高価で市販されているのは錬金術で作られたもののみ。
アルミス草と魔力草を合わせて釜の上で蒸したあと、粗熱を取り、スライムの核と共に調合釜へいれて乾燥した葉が浮いてくるまで魔力を注ぎながら混ぜ続ける。
【クミルのクッキー】成功度:高 必要調合レベル1 所要時間:30分
クミルの実+小麦粉+砂糖+油素材
クミルの硬い殻から可食部を取り出し、小麦粉、砂糖、油素材とともに釜に放り込む。
始めは少なめに魔力を注ぎ、釜の中で素材がまとまったら一気に魔力を流し込む。
調合で作ると、最低ひと月は持ち、魔力も少量ながら回復する。食べ過ぎ注意。
【乾燥果実】成功度:低 必要調合レベル7 所要時間:1時間30分
果物+スライムの核+砂糖
果物とスライムの核を最初に釜に入れて、魔力を一気に注ぎ、果物が乾燥しきるまで魔力を注ぎ続けるが、途中の半乾燥状態になったら砂糖を投入する必要がある。
魔力は完成するまで注ぎ続ける。乾燥し、結晶化した砂糖がついた果物が浮いてきたら出来上がり。
新しいレシピに私は少しだけ悩んで、材料に余裕がある【クミルのクッキー】を作ることにした。
「(さっきの話じゃ理解できてないっぽいし、調合でクッキーが作れるなら今後も楽だもんね。魔力回復するっていうなら採取に行くときに持って行ってもいいし)ちょっと必要な材料とってくる」
一言断ってから地下の貯蔵室へ向かい、小麦粉とクミルの実、砂糖、オリーブオイルをもって作業台へ。
一応お菓子ってことなので普段作っているクッキーの分量で作ることにした。
天秤を取り出して材料を計量し、硬いクミルの殻をハンマーで砕く。
コロンとしたクミルの実を粗めに砕いて計ったそばから釜に投入。後片付けは砕いた殻を捨てるだけだからさっさと終わらせた。
「さってとー、早速まぜまぜしますか」
初めは少しずつって書いてあったから調和薬を作った時と同じくらいの魔力を注いでぐるぐるとかき混ぜていると釜のそこの方で材料が少しずつ合わさって、やがて一つの塊になったのが見える。
確認した瞬間に魔力を思いっきり…といっても浮き上がってくるまで注ぎ続けなきゃいけない。
だから魔力二倍くらいで注いでみたんだけど、塊になっていたクッキー生地がちょうどいい大きさに分裂して、やがて小腹がすいた時に丁度つまみ易い円形のクッキーにしか見えなくなった。
それらは暫く魔力をまんべんなく吸うようにクルクルと釜の底で踊るように回っていたけど、大体30分位経った時に一枚ずつゆっくりと浮かんでくる。
(うん、中々美味しそうにできた!焼き色も綺麗だし、大成功だね)
むふふ、とニヤニヤしながら一回分…12枚のクッキーが全て浮き上がった瞬間に魔力を切った。
出来上がったクッキーは出しておいたお皿の上にお玉で掬ってのせていく。
我慢できなくなったので一枚だけ手にとって口に入れてみた。
サクッとした食感と荒く砕いたクミルのカリコリとした食感に香ばしさ、そして砂糖の甘味。
砂糖は高級品に部類されるものだから、滅多にお菓子なんて作れないんだけど…やっぱり美味しいと思う。
一枚目を食べきると魔力が少しだけ回復するような感覚があったので、一応アイテムとしても問題ないみたいだった。
納得してお皿の中のクッキーをもう一枚咀嚼しながら二人の様子が気になったので調合釜の方を見ると二人共丁度調合を終えたところだったらしい。
リアンは瓶に詰めた調和薬を鑑定していたんだけど、納得がいかない出来だったのかブツブツと何か呟いていた。
ベルは瓶にできた調和薬を詰めている最中だったらしく真剣な表情のまま慎重に中身を移していた。
途中で声をかけて溢れでもしたら悪いかな、っと思ったからベルが作業を終えるまでちょっとだけ見守って、コルクを閉めたところで話しかけてみる。
「ねぇ、二人共初めて調合してみてどうだった?」
「はぁ…緊張しますわね、流石に。でもまぁ、なんとか完成はしましたわ。品質は…貴女のよりも低いでしょうけれど」
作業台に置かれたベルの調和薬はやや濁っている。
手にとってもいいか聞いてから観察した結果、品質はE+かDといったところだろうなと判断。
「失敗しなかっただけいいと思うけど…私なんか初めての調合で爆発させちゃっておばーちゃんに呆れられたもん。作ったの調和薬だけど魔力全力で込めたから、なんか過剰反応かなんかで爆発しちゃったんだよねー。使った素材も扱いが難しいもの入れちゃったし」
「ば、爆発するんですのね…調和薬って」
「するよ。まぁ、びっくりするのと体とかにかかるとちょっと熱いくらいだから平気だけど。で、ベルだけどこれきっと魔力を入れすぎたのと魔力を注ぐタイミングが遅かったんだと思う。私も初めはよく失敗したし―――…ねぇ、リアンは?なんかすっごい不満そうだけど」
ベルの作業台からリアンの作業台へ移動する。
ベルも興味があるのか一緒についてきた。
三つの作業台と釜が並列しているので作業スペース自体は広くみえるけどこれから機材なんかが増えていくと手狭に感じるに違いない。
「成功はした。ただ、同じ素材と同じタイミングで作ったんだが、品質はD判定。おそらく魔力の量が少なかったんだろう、色も薄い」
ほら、と差し出された調和薬を受け取って見てみるけれど彼の分析通りのように見える。
ちなみに色が薄ければ魔力不足、濁れば多すぎ又はタイミングがずれている…っていうのが一般的な失敗の見分け方。
私も品質が普通のものを作れるようになるまで結構な数を調合したから悔しい気持ちはわかる。
「こればっかりは数こなさないと品質って上がらないんだよね。でも調和薬で品質Cあたりを作れるようになったら他の調合でも注ぎ方とかタイミングわかるようになってくるよ」
「実際に見聞きするよりやってみた方が理解しやすいな、これは。理論も必要なんだろうが、この魔力の注ぎ方や調整が難しい」
「うんうん。油断すると一気に品質悪化するからいつも緊張するし…って、そうだ!リアン、これ鑑定して!」
折角だし、と先ほど調合したクッキーが乗った皿を二人の前に運んで見せると二人共ぎょっと目を見開いていた。
信じられないようなものを見た、とでもいうように私とクッキーを見比べる。
「まさか、君は僕たちが調和薬を作っている間にこれを…?」
「一応かかる時間は同じだし、材料もあったから。あ、食べてみる?おばーちゃんみたいな味にはならなかったけど、これはこれで普通に美味しいよ。多分だけど、私の魔力に味ってないんじゃないかなぁ」
面白みがないよねーなんて味付き魔力の二人に言ってみるけど二人は複雑そうな顔のまま無言でクッキーを一つ、口にした。
「……本当に、美味しいですわね。食感もですけれど、甘味が強くてお茶請けに丁度よさそうですし」
「確かに、美味いが…砂糖はどのくらい使ったんだ?」
「え?大さじ3だよ。いつもの分量で作ったんだけど」
「大さじ3?それでこの甘さがでるのか?…まぁ、いい、そのうち君の魔力の特性もわかる筈だしな。で、鑑定だったか…ちょっと待ってくれ」
興味深そうに難しそうな表情のまま鑑定を始めたリアンをよそに、ベルがまだ食べたそうだったのでもう一枚クッキーを差し出した。
「わかる、わかるよ、ベル。美味しいよね、止まらなくなるんだよ…恐ろしいことに」
「ですわね。これは、ちょっと…危ないですわ。甘味は他の物より強いのですけど、嫌な甘さではなくて本当に…このクミルがアクセントになっているから尚美味しく感じるのですわね。お茶会で色々とお菓子は食べましたけど…こういうお菓子の方が私は好きですわ」
「私はお茶会っていうのがよくわかんないから、何とも言えないけど。でもでも、おばーちゃんが時々作ってくれたパイとかタルトとかすっごく好きで楽しみだったなぁ!やっぱ、お砂糖高いから誕生日とか記念日くらいにしか作ってくれなかったけど」
「毎日こんな美味しいもの食べていたらあっという間に太ってしまいますし、いいんじゃありません?貴族はお茶会があった日、必ず食事量を調整したりダンスレッスンなど体を動かすようにしていますもの。私は騎士の家系に生まれたのもあって稽古をすれば消費できますけど…そうでない方の方が多いですから、体型の維持は皆さん苦労していましたわ」
そういいながらチラチラとクッキーを見ているベルに思わず苦笑する。
貴族だとはわかってるけど、こうやって話してみると高慢さはあまり感じられない。
これなら本当に仲良くやれそうだなーなんて考えながらクッキーを作業台へ戻しに行く。
「今は二枚で終わりにして、残りは食後にとっておこう。これ、魔力回復するし…ちょっとだけど。リアンももう一枚食べて。鑑定って魔力使うんでしょ?」
ベルは貴族だけあってお茶会とやらでお菓子を食べていたらしいことがわかった。
そのうち、レシピみたいなの貰えるかもしれない。
ちょっとの下心を隠すようにクッキーを一枚鑑定を終えて目頭を抑えているリアンの口に押し付けると何故か、二~三歩後ずさられる。
「っ、自分で食べられる!それから【クミルのクッキー】の品質はC+。特殊効果として劣化防止、魔力微回復が付いている。これは量産できるか?これなら主力商品として工房で販売できるだろうな。女性や子供ウケ以外にも冒険者の需要もありそうだ」
口に押し付けられていたクッキーを受け取った彼はパクリと一口で食べてしまった。
拒まないのを見ると甘いものは好きらしい。
「冒険者ってこういう甘いものも食べますの?あまりイメージがないのですけれど」
「疲労回復の意味合いでこういったものを購入する者も多いんだ。それに魔力を微量でも回復できるなら魔術師や召喚師の需要も見込める。勿論、同業者である錬金術師もな」
そう言いながらニヤリと笑うリアンは確実に悪徳商人ばりの悪人顔をしていた。
「なんか、貴方って本当に…アレですのね」
「アレがどれなのかわかんないけどさ、あくどい顔似合うよね、リアンって」
「おい、悪口を言うならもっと聞こえないようにやってくれないか。で?これはどのくらい作れるんだ?」
「褒めたつもりだったんだけどな。でも、うーん…クッキーは最大調合数で3回分を3回連続で作るとしても、せいぜい12袋位かな。それ以上は無理。疲れるし、他の調合だってしたいし…お砂糖高いし」
ぼそっと告げるとリアンとベルが呆れたように私を見ている。
なにさーと頬を膨らませるとリアンがやれやれ、と首を横に振った。
「店で販売する場合、材料費は工房の資金から出す。後で原価と利率を含めて計算するから使った素材だけ教えてくれ。流石に調合方法や手順までは聞かないから安心していい」
「ん?調合方法教えなくてもいいの?皆で作った方がたくさんできるのに」
私としては二人に作り方を教えてちょっとだけ楽しようかな?なんて考えていたから驚いた。
お店に出さなくても味の検証もしてみたかったから教える気満々だったのに、怖い顔をしたリアンに見下ろされる。
その後ろでベルが苦笑しながら“諦めろ”とでも言うように首を横に振っていた。
いやいや、見捨てないで助けてよ?!
咄嗟にベルに視線を向けた私に気づいたらしいリアンから小さくプチっという音が聞こえた。
え、ちょっとまって何の音?
「君はっ、本っ当に…馬鹿だな!?いや、馬鹿というより、非常識すぎる上に、認識が甘い!」
「ひょぇ!?って、なんで私怒られるの!?変なこと言ってないよね?!ちょ、ベル、リアンが壊れてる!」
「阿呆か!ちゃんと僕の話を聞け!いいか、錬金術師にとってレシピは財産であり武器であり盾でもある大事なものだ。それをホイホイ教えてどうする!?レシピがあれば調合ができるということはレシピが広がってしまえば其れだけ取得できる利益が分散されて減っていくばかりか、他の人間が我が物顔で作ったアイテムを販売するんだぞ!?」
「え、あ、うん?まぁ確かにレシピがあれば作れるけど…そんなに?」
「僕たちが君から【調和薬】の作り方を教えてもらったのは本に載っていたからだ。本に載っているということは、それだけ広く周知されたレシピで普及している一般的かつオリジナリティがないものということにもなる。だが、このクッキーのレシピは広まっているものではないし、君の財産とでも言うべきものだ。それを同じ工房生で生活を共にするからといって簡単に教えるべきではない」
がしっと意外に強い力で肩を掴まれて鬼気迫る表情で説教されながら真っ先に、ひょろっこい癖して力は一応あるんだなと妙な感心をした。
あと、リアンって陰険でちょっと暗くて真面目すぎる嫌味なやつだけど、顔立ちはそう悪くないらしい。
いよいよお金に困ったら工房の外で客引きでも頼んだらいいかもしれない。
すごい早口で私の認識の甘さだとかレシピの重要性を説いているリアンには悪いけど、そろそろ夕飯の支度をしたいんだよね。
「とりあえずさ、レシピを簡単に教えちゃダメだってことはわかった。うん、十分わかったよ、だからご飯作らせてくれない?お腹すいてきたし」
タイミング良くグーっとなったお腹の音に感謝しつつキッチンを指させば、さっきまでの鬼気迫る勢いが急に萎んでいくのがわかった。
がっくりと力なく肩から手を外されたので私はそそくさと踵を返してリアンから逃げだす。
多分だけど時間を置けばきっと忘れてくれるよね!私なんか寝たら嫌なこと忘れるもん。
「―――……君は……っ、ほんっとうに……ああ、もう勝手にしてくれ。僕たちは工房の掃除をしておく」
力ないリアンの声を背後に聞きながら私はさっさと地下の倉庫へ向かった。
ふっふっふ、パンは面倒だから調合釜で焼くだけの状態まで作っちゃえ!
【魔力草】
魔力を帯びた薬草。魔力溜まりや魔力の濃い場所に咲く。
無臭だが苦味と辛味があり、乾燥すると辛味が抜ける。生命力は強め。




