277話 雪が降る前に
遅くなって申し訳ないです。
先週分は短編二つで連載分として……ゆ、許して下さると嬉しい。
昼食を食べた後、私はベルと一緒に教会へ行くことになった。
リアンとラクサは、留学の日程や必要な物の相談をする為に留守番。
いつもはついて来てもらうサフル達だけど、戦闘に関することも話したいらしく、加わって貰わなきゃいけないんだって。
そういう事なら、ルヴ達は連れていこうかなーと思ってたんだけど、この二頭にも聞かせる必要がある、とかなんとか。
共存獣に聞かせて、作戦がわかるかどうかは確かめようがないけど、頭がいいからもしかして?ってことみたい。
私の方は戦力的にベルがいれば問題なし、という事で久々に二人での外出になった。
「ねぇねぇ。教会に行く前に二番街に寄ってもいい?」
「あら、何か欲しいものがあるの?」
「うん。ちょっと材料を買おうと思って。リアンがいると楽だけど、たまにはね」
欲しいものは、サシェを作るための布だ。
冬期休暇中、ベルもリアンも忙しいって聞いたから安眠効果があるサシェでも作って渡そうと思ったんだよね。二人が好きな香りは知っているし、サシェならほんのり匂いがするくらいだから邪魔にならない筈。
貴族的にマズかったら困るから一応、ベルに考えていることを話すと喜んでくれた。
「嬉しいわ。それなら、私から刺繍したハンカチを贈らせて。ハンカチなら邪魔にならないし普段使いもできるでしょ」
「いいの? ベルは刺繍が上手だからすごく楽しみ。私、刺繍って今まで殆どしたことないから、色々作ったのを見せてもらった時は驚いたよ」
「貴族子女の嗜みだから、一通りは学んでるわよ。慣れればいい暇つぶしになるし」
のんびり話をしながら、二番街へ続く道を進む。
私達の工房から二番街に向かうにはいくつかの道がある。
一つはよく観光客が利用する通路で、基本的には私達もこっちを使っていたんだけど時々、二番街にしか用事がない時は裏道と呼ばれる道を使う。
住宅街の細道を通るんだけど、結構くねくねしてるんだよね。
ただ、生活道路ってこともあって色んな人とすれ違う。
基本的に住民が多いんだけど、中には冒険者や観光客の姿もある。騎士はあんまり見かけない。まぁ、二番街に行けば騎士も見回ってるから、それほど治安は悪くないみたいだけどね。
小さな子供の笑い声や母親と思われる人たちの世間話、老人ののんびりとした会話のやりとりなどが色々な所から聞こえてきて、中には私達を知っている人が声をかけてきたりもする親しみやすさがあるのだ。一番街ではあんまり話しかけられないんだよね。
時々足を止めて挨拶や会話を楽しみながら、私たちは二番街で買い物をしていた。
リボンなどを扱っている生地屋の前で足を止めて色々商品を吟味していたんだけど、そこでマリーポットに出会う。
こういう風に工房生と会う事って、あんまりなかったから驚いた。
「あら、奇遇ね。マリーも何か買いに来たの?」
「はい。私は端切れやリボンとか……毛糸や古着を買いに来たんです。もうすぐ冬が来ますし、少しお金が入ったので冬服を育った教会に贈ろうと思って」
「冬支度ってお金かかるもんね。マリーの物は買わないの?」
「あ、もう買って工房に送る手配は済ませたので、生地を扱うお店を色々見ようかと」
「私達もリボンとか買おうって思っていたから一緒に行ってもいい? 一番いいのを買いたいし」
ぜひ、という声を聴いて私たちは三人でおしゃべりをしながら買い物を楽しんだんだけど、一番大きな生地屋から出た所で貴族の馬車に気づく。
形や掲げられたタペストリーに見覚えが、と考えていると馬車の扉が開いて、中から人が飛び出してきた。
その人物は、黒くしっかりとした高そうな執事服を纏っている。
彼は優雅に一礼し、無駄のない洗練された足取りで私たちのいる方へ向かってきた。
この人はベルの従者だ。
だからなのか、時々ベルへの手紙とかを届けてくれたり、こっそり様子を見に来ては差し入れとして高い紅茶とかをくれるんだよね。
「お嬢様、ライム様。そして、ご学友のマリーポット様ですね。申し訳ありませんが、ベル様に当主のレイラ様から招集がかかっております。お嬢様、お乗りください。屋敷へ向かいます」
「待ちなさい。屋敷に向かうのは構わないわ。でも、それならライムを乗せて工房へ…――」
「工房に立ち寄る時間はありません。至急集まれ、とのことでした。ライム様申し訳ありませんが」
「ベル、急ぎみたいだし私も教会に行ったら直ぐに帰るから。ね?」
心配そうに眉を寄せるベルに、そう言い募るけれど眉間の皺が深くなっていくばかりで中々頷いてはくれない。
それに比例して、笑顔が徐々に深くなっていくルーブさんがコワイ。
冷や汗が滲んできたところで、控えめに名前を呼ばれた。
視線を向けると居心地悪そうなマリーが小さく手を上げている。
「も、もしよければ、私がライムさんと一緒にいましょうか?」
「一人よりはいいけど、マリーはどの程度戦えるのか聞いてもいいかしら」
「はい。リンカの森で戦う事はできます。第二区間では無理ですけど」
がんばります、とこぶしを握り締めたマリーにベルが肩の力を抜いた。
ベルは少し悩んでいたけれど、ルーブさんに声をかけられて舌打ちを一つ。
そのあと、申し訳なさそうに「ライムを頼むわね」と言い残して、馬車に乗り込んだ。
目の前の馬車はすごい勢いで走っていったのを見送って数秒。
私とマリーは顔を見合わせた。
「あの、ライムさんって戦えない……んですよね?」
「うん。まったく。一応、杖を振り上げておろす、とかならできるんだけど……才能がないっていうか、ダメダメなんだ。ごめん」
「い、いえ。でも、そういう事ならあまり周りに言わない方がいいですね。私、ライムさんが戦えないこと、ちゃんと内緒にしておきますから! えっと、教会に行くって言ってましたけど、何をしに行くんですか?」
不思議そうに聞かれたので友達のシスターに会いに行きたい、と告げると納得してくれた。
マリーも首都の教会に興味があるらしく、一緒に行きたいと言ってくれたので二人で向かう事に。
(よかった。マリーのこと考えたら一度工房に返って、リアンとかラクサに頼まなきゃって思ってたから)
ほっとしつつ、二人で歩き出す。
通る道は人が多い場所を選んで、フードをかぶっておく。私の髪は目立つしね。
その時考えられる万全の準備をして、私たちはおしゃべりをしながら進む。
教会へ向かう為の道はいくつかあるけれど、二番街から向かうのは緩やかな坂道で時々走る道だ。
「ライムさん、毎朝走ってるんですか?!」
「うん。ほら、せめて逃げるのだけは迷惑かけないようにって思ってさ。今、ちょっと走る距離を伸ばしたんだ! あとね、重たい荷物持って走ってるからちょっと体力もついたんだよ。小さめの樽に水を入れて背負うところから始めたんだけど」
「……えっと、樽をしょって走ってるんですか」
「そうだよ。誰かが怪我したら背負って走れるようにって思って。リアンとかサフルとか私の共存獣とか、ラクサとか」
「あの、ベルさんは?」
「ベルが走れなくなったら背負うけど、たぶん、相手を倒した後だから治療を先にした方がいいと思う」
ボロボロになっても戦おうとするのはきっと、ベル。
リアンやラクサとかは引き際って言うのをうまく見極めるタイプだと思うんだよね。
サフルは無茶をしない方針だろうし、って自分で常日頃考えていることを話したんだけど、なぜかマリーの笑顔が固まっている。
(あれ、私、変なこと言ったかな?)
はて、と首を傾げた所でマリーがそうだ、と両手を合わせた。
ちょっと強引な話題変更だとは思ったけど聞き返せば、彼女は目をキラキラさせてズイッと顔を近づけてくる。
「あ、あの! やっぱり本命はリアンさんですか?!」
「……ハイ?」
「あ、でもでも、レーナはディル様が怪しいっていうんです。リムは大穴でエル君とかいいんじゃないかって言ってるんですけど」
きゃー、と楽しそうな声を上げて頬に手を当てるマリーに聞かれたことを考えてみるけど、さっぱりわからなかった。
(本命って何だろう。戦闘の話は終わった、から……え、本気で何の話!?)
冷や汗が背筋を伝う。
どうしよう、マリーが良くわからない。
くねくねしながら、楽しそうに、でも何処かウットリした感じであれやこれやと話す姿にちょっと、引いたのは内緒だ。
「え、えっと……本命って」
「もしかして、その反応……初恋、まだだったりしますか?」
「はつこ……? 何それ。新しい現象なの? 皆そういうの経験する?」
「え、えーと……はい。恐らくは大抵の人が経験するとおもいます」
「なるほどね。じゃあ、私はきっとまだだよ。新しい才能とかも貰えてないし、何かと区別できるようになった!っていうのもないもん」
「いや、あの、初恋っていうのは試練とかじゃなくてですね」
どういったものか、と考え込んだマリーを見ていてふと思った。
私が知っていて、マリーとも接点があるのはたぶん一人だけ。
「そういえば、レイとは最近あってる?」
「ひゃい?! え、あ、れ、れレイ様ですか?! えーと、そのぉ、今は色々騎士科が忙しいみたいで手紙を毎日……素敵な贈り物付きで」
頬や耳を赤く染めたマリーがモジモジと指先を動かしながら、ポソポソ話す。
こういう反応をあまり見ないのでちょっと珍しく思いつつ、よほどいいものをレイは贈ってるんだなぁと感心した。
「へぇ! すごいね。どんな素材がついてくるの?」
「そ、素材? ええと、普通に綺麗だったり可愛らしいお花が」
「………そっかー」
「ライムさん、あの、なんでそんなにガッカリしてるんですか?」
「いや、どうせもらうなら素材になる花とか草の方が嬉しいのになって」
「わ、私は普通のお花でも嬉しいです、ケド………り、リアンさんたちも大変ですね。面白いといえば面白……って、あれ?」
話している途中で、マリーの足がピタッと止まった。
なんだろ、と同じように視線を辿ると裏路地の方を見ているマリーに首を傾げる。
どうしたんだろう、と思っているとマリーが少し怖い顔をしてとある場所を指さした。
「あの、木箱の上にあるのって手袋、ですよね」
遠いし暗いけど、そのくらいの判別はつくので同じように目を凝らしてみると確かに手袋があった。それがどうかしたのかな、と首を傾げる。
「ごめんなさい、少し気になるのであれだけ確認してもいいですか」
「うん。いいよ」
落とし物だったら騎士団に届けた方がいいだろうし、と言えばマリーはズンズンと手袋めがけて歩いていく。
その後ろを歩きながら大きな道路からそれることが少し気になったけれど、マリーと離れる方が危ないと判断して三つ編みの後を追う。
手袋が見えた路地裏は、なかなかに狭くて、大人一人が通れるだけの薄暗い建物と建物の間だ。人の気配がしなかったし、ドアの形からして倉庫だなんだろうなーと見当をつけた。
首都といえど、王様の方針なのか町の色々な所に食糧庫や倉庫があるんだよね。
防災対策だったり、魔物が外から来た時に籠城できるように、とか色々な理由はあるっぽいけど、国でもなんでも対策は大事だよねと一人で納得。
陽の射さない薄暗い路地裏に足を踏み入れたマリーは木箱に置かれた手袋の元へ。
背の高い建物に囲まれているせいで明るい時間帯だというのに、少し肌寒い。
自分の後ろを見ていた方がいいかな、なんて考えていた私の耳に深刻そうな動揺したような、そんなマリーの声が届く。
「こ、れ……ッ!やっぱり、レーナの手袋」
「え?! レーナってマリーの所の上流貴族だよね?」
「はい。おろしたての手袋がなくなったって言ってたんです。レーナの髪みたいな綺麗な色の布で作られた薔薇がついていたので覚えていて……これ、マリーの、えっと、騎士科の友達のお母さんが作った手袋だったからレーナも完成したのを凄く喜んでて」
「そっか。どうしてここにあるのかは分からないけど、とりあえず、レーナの所に持って行ってあげようよ。教会には後で行くし、ここからなら私たちの工房よりマリーの工房の方が近いよね」
「は、はい。ありがとうござい……ッ!! ライムさ……―――!」
しゃがみ込んでいたマリーの後ろ姿がしょんぼりしていたので、ポンっと肩に手を乗せて話しかける。
ビクッと肩がはねたけれど直ぐに「そうですね」と、小さく笑って振り返った。
その時見えたのは安堵に彩られた優しそうな表情。
温かい笑顔に私も釣られて笑い返す、はずだった。
マリーの顔色が一瞬にして変わる。
血の気が引いて、わななく唇。
どうしたの、と聞く前にマリーは何かに焦ったような表情を浮かべる。
名前を呼ばれて驚いていると――――プツンと目の前が真っ暗に。
直前に聞こえてきたのは声にならない悲鳴のような、ひきつった声。
それに対して何か考える間も、抗うこともできずにその場に崩れ落ちた、んだと思う。
次に目を覚ました時、額だとか膝だとかが痛かったからね!
◇◇◆
???視点
陽が落ち、ぐっと下がった気温に人々が足早に家々へ向かう。
ポツポツと温かい光が灯る住宅街の一角に、それは片方だけ残されていた。
滑らかで上等な生地を使った女性物の手袋。
それを拾ったのは短く息を切らした一頭の獣で、クンッと周囲のにおいをかいで高らかに吠える。
数分後に聞こえてきた足音にその獣はその場にぺたんと座りジッと天を仰いでいた視線を向ける。
「―――ッ……ルヴ! ライムがいたのかっ!?」
全身で喘ぐように呼吸をする飼い主のにおいを少しだけまとった人物に獣はジッと足許を掻いて、近くに堕ちた手袋を咥える。
ぽと、と息も整わない青年の前にそれを落とし、伏せる。
その耳も尾も力なく垂れていた。
「……手がかりは手袋だけ、か……」
ぜぇ、と息を無理やり整えているのをみて、獣はその横をすり抜ける。
路地を抜け、向かう先は手袋の匂いがする方角。
待て、という言葉を無視して獣は進む。
かすかに聞こえる足音を時々気にしながら、暗闇の中を進んで、そしてピタリと足を止めたのは一つの建物。
ここには大好きな優しく自分を呼ぶ声も、しっかりと自分を認めて褒めてくれる手も、想いが詰まった美味しいご褒美やご飯を作ってくれる人の形跡はまるでないけれど。
賢い獣は、唯一の手掛かりを生かせるであろう青年を待っていた。
息も絶え絶えといった風の青年は、手にしっかりと手袋を握りしめ、獣の眼前にある建物を睨みつける。
強烈な怒りと殺気を隠すことなく、暫く扉を睨みつけていたが深く息を吐き、身なりを整え―――……眼鏡とかいう道具の位置を正す。
ふわふわと温かく陽だまりのようなにおいがする主人とは違う、静かで深い夜のようなにおいを纏う青年はギラギラと深い青色の瞳を輝かせ、笑みを張り付ける。
不気味なほどに、温度のない笑顔だった。
ノック音が数回。
ガチャッと乱暴に開けられたドアの向こうには、獣の主人と同じくらいの年頃の女が二人。
「夜分遅くに失礼いたします。この手袋に見覚えは?」
底冷えするような低い声を聴いて獣は一歩、二歩と歩みを進める。
片方の女がその持ち主だと分かっているのかジッと薄紫の髪をもつ女へ小さく吠えた。
「私の、手袋ですわ。それをどうして貴方が?」
「ライムの共存獣が見つけたんです。ライムがどこにいるのか教えていただけますか。今ここで教えていただければ騎士団にはいきませんので」
「ライムさん? 何の話を――――」
訝しげに潜められた眉を見て青年が纏う空気に殺気が薄く混じる。
冷え冷えとしたその空気に、黙っていたもう一人の女が口を開いた。
「リアン様。こちらも質問があるのですが、マリーポットがどこに行ったか知らないでしょうか」
沈んだ、暗い声に殺気が、戸惑いへと転じる。
「……マリーポット? 彼女の姿も見えない、のですか?」
「はい。昼食後に買いたいものがある、と工房を出てから……今まで戻ってきていません。今までこのようなことはありませんでした。最初の頃、ほとんど会話をしていなかった時ですら、帰る時間などを黒板に残していってくれたのです。でも、今回はそれもなくて……今、フラン教授の元へ相談に行こうかとレーナと話していたところなのです」
「そう、でしたか。申し訳ないのですが、二人とも僕らの工房へ来ていただけませんか。ベルも戻ってこないので、ラクサに彼女の実家へ行って所在確認と詳しい事情を聴きに行ってもらっているのです。ライムも昼すぎにベルと共に出かけたので、何かわかるかもしれません」
「わかりました。そういう事でしたら」
慌ただしく戸締りを、ともたつく女に青年が『念のために武器なども持ってください』と指示を出しているのを獣はじっと聞いていた。
簡単に準備を終えた女二人と青年を確認し、獣は夜道を進む。
できるだけ工房に近く、人がいない道を迷うことなく。
時折ついて来ているか確認しながら、静かな夜道を進み―――……家へ。
工房と呼ばれる飼い主との巣へ戻った獣は、もう一頭の傍に座る。
鮮やかな赤毛で飼い主の匂いが少しついている女が青ざめて、震える手でカップを握っている。その横には難しい顔をしたいつも飄々としていた筈の青年。
「―――…ベル。まず、君の話を聞かせてくれ。ライムはどうした」
呼吸を整えることもなく真っすぐにテーブルへ向かっていった青年に、赤毛の女はクシャリと前髪を握るように顔を覆った。
「ライムとは、二番街で別れたの。家から馬車が来ていて当主から招集がかかったから……せめて送っていこうと思ったんだけど、丁度居合わせたマリーさんが」
ここで、はじかれるように声を上げたのは長い薄紫色の髪の女。
玄関から客が入れない場所、応接用のソファの前に移動し、バンッとテーブルを叩いた。
「ッ……マリーポットをどこへやったの?! あの子はどこにいったの!?!」
「わからないわよ! 私もラクサが屋敷にくるまで知らなかったんだもの! あの子たち、教会に行くって……――――あ。そう、そうよ、もしかしたら教会の、ミントのところにいるかもしれないッ」
カップを叩きつけるようにテーブルに置いた赤毛の女が飛び出したので、獣二頭が顔を見合わせ、そして空いている玄関へ向かって駆ける。
行き先は教会。
毎朝、大好きな主人と向かう慣れた道だ。
全力で駆けて、駆けて、たどり着いた大きな建物。
無数の子供の声がする。穏やかな声もする。
でも、聞きなれた主人の声は何処からも聞こえなくて、獣二頭の寂し気なくぅん、という子犬のようなその鳴き声は誰の耳にも届かずに消えた。
視点がかわります。
何してんだかはちょっとわかんないんですけど、ちょっと緊張感が出ていいですよね!たぶん。