265話 採取地へ向かおう!
チョット早めの更新です!!!!
野営の準備をして、たっぷり魔力を使い切った翌日。
まだ陽も登らない時間に私達はそっと準備をしていた。
涼しくなってきているから防寒用のフード付きマントと、水が近くにあるという事から防水仕様の大きい布も買ったのだ。フード付きマントは天候が悪くなった時のことを考えた方がいいかなって思ったんだよね。
勿論、ルヴ達の薬やちょっとした遊び道具、寝具は勿論、少人数用とトイレ用のテントも準備した。
(ディルがいない分、持っていくものが増えるけど……それはそれだよね)
それと、体を洗う為の盥と中型の樽もしっかりトランクに入れた。
着替えとして服は厚手のものを用意したし、天気が変わりやすい事や寒暖差に耐えられるようにってことで、冬用テントカバーも購入してる。冬用テント買ってもいいけど、二枚重ねの方が暖かいみたいなんだよね。
カバーではあるけど、毛布や絨毯としてテントの中でも使えるし。
(テントも季節によって使い分けなきゃいけないって、こっちに来てから初めて知ったし。冬の防寒着とかってどうしてもフカフカだったり、厚手だったりするから普通は嵩張るんだろうなぁ。テントカバーは『元々、荷物を減らすために考えられた』って道具屋のリックさんから聞いた時は驚いたなぁ)
よいしょ、とトランクを閉めて、私はマフラーを巻いた。
その上からフード付きマントを身に着けて、ルヴとロボスに付けている首輪に紐をつける。
納得したように紐を観察する二匹が可愛くてぎゅーっと抱きついた。
「これがないと一緒に商店街とか、人が沢山通る場所を歩けないって聞いた時は驚いたけど、一緒に歩けるって言うのは有難いよね。人がうんと多い時間帯は、ルヴ達が潰されるかもしれないから無理だけど、人が少ない時間にまた散歩行こうね」
実は、準備期間に二匹が人混みを歩けるかが分からなかった。
だから練習を兼ねて散歩をしたんだよね。
でも、最初から行儀よく私の側について吠えることもなく、大人しくしていた。
紐をつけていても店に入ることは出来ないけれど、露天のある通りを歩くのは禁止されていない。だから試しに露店がある所を歩いてみたんだけど、二匹は売り物に興味を示すこともなく私の側を離れず、行儀良くしていた。
時々、同じように紐をつけた共存獣ともすれ違ったけれど、何故か誇らしそうにして歩いているものだからベルやリアンたちと顔を見合わせたっけ。
帰りに共存士ギルドに寄って、詳しく散歩中の話をすると職員がとても感心したように二匹を見つめていたのを今でも覚えている。
「今日からよろしくね。警戒も戦闘も頑張ってもらうことになるけど、休みは必ず取って。見張りの都合上、交代で寝て貰うことになるけど」
わふ、というカワイイ返事に頭を撫でて、いくつか話しておく。
理解している、いないにかかわらず話しかけるっていうのは大事みたいだからね。
いくつかの注意事項を伝えた後、ご褒美の話もした。
「で。獲物が狩れたら、ご飯に出すから頑張ろうね! おやつも準備ばっちりだし、ブラッシングの道具も新しくしたんだ。初めての旅だし、私が慣れてないせいで無理をさせることもあるとは思う。けど、出来るだけカバーできるように気を付けるからね」
そう話せば気合を入れた返事が返って来たので笑ってしまった。
まだ、ベルやラクサが眠っているかもしれないので、しぃっと口元に指をあてて、そろーっと部屋を出る。
極力気を付けて部屋を出ると、既にサフルやリアンが準備を終えて待っていた。
二人の荷物は前の日にトランクへ仕舞ったから、すぐに出発。
一応、メモに「いってきます!」という言葉と「地下にゴハンを作り足したから食べてね」と書いておく。
行こう、と静かに声をかけそっと工房を後にする。
まだ暗い路を歩くから、魔石ランプを持っているんだけど光源は控えめだ。
私達の工房がある場所に住民はいないんだけど、少し商店街通りに近づくと民家が増えるからね。
住民が殆ど歩いていない、静かな道を進むのは、私達と同じような『外』へ出かける人か見回り騎士だ。
荷台や馬車が通るのはもう少し明るくなってから。
朝は結構冷え込むなぁとマフラーに顔を埋めると、同じことを考えていたのかリアンが微かに白い息を吐いた。
「この時期の朝晩は、少し冷え込むな」
「石畳だからじゃないかなぁ……森とかはもうちょっと温かいんじゃない?」
「数日前に雨が降ったがその影響はあると思うか?」
「んー……土砂降りって訳じゃないから、大丈夫だとは思うけど、川が近すぎる場所には設置できないよね。モンスターとか魔物は、強いやついないって聞いてるけど」
「強さの基準は人によっても相性によっても異なるからな。一応、聞き込みはして情報は集めたが、ヴォルフの類いはいないようだ。浅い場所ではなく、深い森などで食いでのある獲物を探しているんだろう。そういった理由から、この時期は大型の魔物はほぼいないようだ。冒険者も人里から離れた場所にもぐることが多いと聞く」
戦えるのがサフルとリアンしかいなくて、ルヴやロボスはまだ本格的な狩り経験がないということもあり、情報収集には少し時間をかけた。
慎重になっているのはリアンだけじゃなく、サフルも同じであれこれ心配してはルヴやロボスに話しかけてるのを時々見かけたっけ。
(心配しても、やることはやったから、なるようにしかならないと思うけど)
戦えないのに能天気ね、ってベルには言われたけれど私からすると「戦えないから」こそなんだよね。
だって、自分でどうにかできない時点で死んじゃうだけだもん。
準備を万端にして、それでも駄目ならその時はその時。
仕方ないよね!と言えば「どうにか足掻きなさいよ」って怒られた。
でもベルは色々心配してくれているらしく、ポマンダーを色々作って持たせてくれた。
ラクサは身代わり効果のあるお守りをいくつか。
心配性だなぁ、って笑ってたらミントに大量の聖水と聖灰、手作りのお守りを貰ったので何とも言えない気持ちになった。
子供たちは、美味しい木の実をたくさん集めて「無事に帰って来られるように神様にお願いしてるね」と口々に話しかけてくれたり、男の子は「こうやって倒すんだよ!」って敵を倒すコツを教えてくれた。いや、嬉しいには嬉しいよ?心配してくれてるわけだし。
(ただ、複雑ではあったな。まともに戦えないって改めて実感してさ。戦うって行為に憧れみたいなの、あった訳だし。今は前ほどじゃないけどね)
そんなことを考えている間に門が見えてきた。
私達と同じように魔石ランプやランプを持った人たちが並んでいて何だか、ちょっと面白い。
一緒だね、と声を潜めてリアンに話しかければ、少しだけ呆れたように、でもいつもよりは柔らかい顔を向けてきたので、ふと思い浮かんだ疑問を口にしてみる。
「一緒って言えば、採取も一緒にするんだよね?」
「ああ。目的地に着くまでにもあるだけ採取をしていきたいと思っている。今日の夕方までに着けばいいからな」
「わかった。じゃあ、草原で見かけたら採取するようにするね。大して時間はかからないと思うけど」
草原に生えているものは基本的にアオ草が多い。
アオ草はよく使うから、出来るだけ雪が降る前に確保したいんだよね。
一応、アオ草を鉢に植え替えをして、部屋の中で育てるつもり。
この採取旅で出来るだけ沢山採取したいから、周囲の素材をある程度採取したら別の場所に移動するってことになった。
「道中でいい状態のものであれば買い取ってもいいと思うが、この時期は値段が上がるんだ。需要が増えるからな」
「あー、そうだよね。自分たちでどうにかなるなら自分たちで採取したいよね」
「販売価格を考えると買い取りはな……出来るだけこまめに採取しているから、在庫自体はあるが、工房を開いて一年目だ。正直、どのくらい売れるかが分からない。前年度の売り上げや帳簿があればある程度予測ができるが、それがない以上は手探り。生産能力も考慮しなくてはいけないから、販売数設定も中々難しい。冬期休暇中は、最低在庫数を残して売り切ってしまってもいいが、アオ草や他の素材が取れるようになるまではどうしてもな」
リアン曰く、二年目になれば前年度の販売実績があるから、それを参考に…と話しているのでそれを聞きながら、周囲に視線を巡らせる。
暗い中で騎士がランプを持って簡単な聞き取りをしているのが見えた。
並んでいる冒険者や観光客の反対側には馬車がある。ここでも手続きをしているのでそこそこ賑やかだ。
「そういえば乗合馬車って、他の国にもあるの?」
「あるにはあるが、トライグルと青の大国とも呼ばれるスピネルは国営で、赤の大国・カルミスは民間だ。国営であれば国費で運賃の補助があるが、民間だと時期によって変動があるな。性質の悪い乗合馬車もあるし、盗賊やなんかと手を組んでいることもあるから、乗る際は注意がいる」
「げ。盗賊と組んでるって……それどうやっても逃げられなくない?」
「余程腕に自信がなければ、逃げるのは難しい。金を払って解放若しくは身ぐるみ剥がれて最悪は殺されるかの二択だ。盗賊も馬鹿ではないから、基本的には前者だな。生かしておけばその内、金をため込んで馬車に乗る可能性もある」
絶句する私にリアンは首を傾げて、ああ、と何かに納得したようなそぶりを見せた。
チラッと周囲を見て声を潜める。
「――…盗賊かどうかは、基本的に見極められるから安心するといい。あいつらが狙うのは観光客や金を持っていそうな貴族なんかだ。ダンジョン帰りの冒険者を狙うこともあるが、その場合は『実力』をしっかり調べてから狙う。下手に強い相手を狙うと返り討ちに合うからな」
「そ、壮絶だね。よかった、私トライグルで」
ホッと胸をなでおろした所で近くに騎士の姿が見えた。
サフルやリアンと「何番隊の人かな」と話しているのが聞こえていたらしく、私達の所に来た時嬉しそうに身に着けている腕章を見せてくれる。
「よう、今月は二十四番隊が当番なんだ。いやぁ、会えて良かったぜ。ライムちゃん達が作ってくれたあの、臭いを取る錬金薬、すげぇ効果でよ。妻子持ちの連中も若い奴らも全員恩恵に与ってる。他の隊の連中に探りを入れられるくらいにゃ、絶好調よ。なんかあったら、俺らに言えよ。犯罪行為じゃなきゃ、ある程度融通がきくし、お前さんらの工房で売ってるモンは全部美味いしな」
あのクソ不味いオーツバーを喰わなくていいってのが、何よりうれしいと騎士は笑って必要事項をサラサラと書いていく。
「聞き取り内容は何ですか?」と聞けばガハハと笑ってから声のトーンを落とす。
「んなもん、嬢ちゃんらなら顔パス……と言いたいところだが、行き先と目的は?」
「この辺りに採取に行く予定です。冬になると薬草系の素材が集められないので、出来るだけ今のうちに。学院も冬期休暇に入りますし、秋のうちに来春分まで確保できたらと」
「ほぉ。そりゃ……なんつーか、頑張ってくれよ。お前さんらの回復薬は今までのより格段に効果がいい。価格もだが安心して使えるから助かってるんだ。さっきの地図、チラッと見せてくれ」
そういった騎士にリアンが地図を渡すと、目的地から少し離れた所を指で囲うように指でなぞり、声量を落とした。
「ここに山豆の木があるぜ。んで、こっちにゃ、アオ草が茂ってる。穴場だ」
パッと顔を上げた私たちに騎士はパチンとウインク一つ。
いや、まぁ、不器用なのか両方の目をつむってたけど。
「俺らが小遣い稼ぎに時々採るんだが、ライムちゃん達の採取は綺麗だから問題ねぇさ。あと、ココにゃ良型の魚がいる。岩塩が一部溶けているらしく海の水と一緒なんだ。ココだけな」
「わ、ありがとうございます。あの、これ良ければ後で食べて下さい。二つしか渡せないですけど」
ポーチからパッと取り出したのは、調合しておいた【チーズパイ】だ。
結構騎士に差し入れをしている人は多いので問題なく受け取ってくれた。
「なんだいこりゃ?」
「チーズパイです。少し温めて食べると中のチーズが溶けて美味しいですよ。寒いから、少しでも暖かいもの食べて下さい」
紙袋の中を覗いて、嬉しそうに笑う。
エルやイオから門番をすると腹が減る、という話を聞いていたので食べものにしたんだけど正解だったみたい。
「おお、そりゃありがてぇ! どれ、んじゃオマケのオマケだ。この辺りでクリ芋が採れる。見つけるのは難しいかもしれねぇが、ちいせぇのを一つ持って帰って植えりゃ、来年増やせるぜ。あとは、カルモンの木があった筈だ。苦手じゃ無けりゃ採って帰るといい……にしても、チーズか。酒が飲めりゃぁな」
惜しい、と悔しそうに呟いて次の人へ。
人間らしすぎるその一言にクスクス笑いながら、嬉しい情報だったので忘れないように場所をリアンやサフルと確認した。
「結構進んだね。夕方には着けるかな」
「到着までは休憩なしで行こう。トイレなんかは少し時間を取るが、歩きながらでも食事は出来るしな。行儀は良くないが、効率を重視した結果だ。仕方がない」
「だね。あ、休憩なしで歩くと疲れるから、夜は盥にお湯入れて汗を流そうよ。盥で物足りない時は中型の樽もあるし。採取中って殆ど調合しない分、魔力が余るから魔石を使って水も出せるよね。川の水は綺麗だって情報もあったし、熱湯にして、魔石から出したお水で温度調整すれば沢山往復しなくて済むし」
好きなオイルを混ぜたものを持ってきているのでそれを入れるとリラックスも出来そうだ。
この入浴用オイルはベルが「あったらいいわよね」って呟いてたから、二人で作った。
費用は私とベルの二人で出したから文句はない筈。
「朝晩冷えるから温まって寝るのはいいな。夜は警備用結界を張るから、一応安心して休めるはずだ。見張りは交互に、というか主にサフルとルヴ達に頼むことになる。僕らが採取をしている間、拠点で仮眠をとってくれ。こういった場所の獲物は基本、夜に活発になるから、ルヴ達もその方が活躍できるだろう」
「食べられる獲物の時は解体して焼いて食べようね。スープとかにするのもいいし。あ、魚釣りもしたいな。たくさん釣れたら干して乾物にしてもいいし。上手くやると美味しいんだよ」
「ああ、海側の地域ではよく見かける魚の乾物か。匂いは独特だが、あれは酒によく合うし美味い。ライムは作れるのか?」
「作れるよ。おばーちゃんに教わったんだ。川は近くにもあったからね」
任せて、と胸を張るとルヴ達もどこか嬉しそうだ。
乾物にした魚なら二匹も食べられるなと思いながら頭を撫でたり、他愛のない話をしているとあっという間に順番がきた。
手続きを済ませ、担当してくれた騎士に「気を付けてね、怪我しそうになったらすぐに逃げるんだよ」って念押しされて何とも言えない気持ちになった。
まだ夜も開けていない街道は混んでいて、一番混雑しているのは乗合馬車の辺り。
ガヤガヤと賑やかで、冒険者や観光に来た人たちがあれこれ話している。
何となく会話を聞いているとお金の話をしているみたい。
「ねぇ、リアン。なんであの人たちお金の話してるの?」
「直接雇用という雇用方式だ。通常、冒険者ギルドを通して冒険者を雇うことが多いが、ギルドを通すことなく金銭のやり取りをすることもある。特に乗合馬車なんかではよく見るな。移動期間中だけで、かつ優先的に雇用主を護るという内容で契約を結ぶことが多い」
「そうなんだ。結構気楽に雇えるんだね」
「顔見知りだったり、何度か雇ったことがある相手であればこの直接雇用の方が安く済む。仲介料がかからないからな。そうでない場合、注意が必要だし雇っていると言っても警戒はしなくてはいけない。だからこそ『目的の場所に着くまで』という条件を付けて雇うことが殆どだ」
ワイワイと賑やかな乗合馬車の辺りを眺めながら、リンカの森とは反対の街道を歩く。
徒歩で進む人も割と多いけれど、だいたいの人はケルトスに向かうみたい。
冒険者も若い人たちが多くて、冒険者の街って呼ばれているファストリアに向かうってことが会話から伺えた。
テクテク歩きながら、徐々にモルダスから離れていくにつれ、人は少なくなっていく。
暗い中でもアオ草やなんかは生えていると分かるから、時々採取をしていたんだけど、ルヴとロボスが私を護る様について来てくれるので安心だった。
十本を束ねて一束にしたアオ草を収納袋に入れた所で呆れたような声。
「朝日も昇らない時間帯なのによく見えるな。ランプがあると言っても精々足元がみえるくらいだろう」
「慣れれば誰でも出来るよ。見えるっていうか、違和感があるっていうのかな。なんだろ?って思うから近づいてみるだけなんだけど、結構な確率で見つけられるんだよね。最近は特に」
「……結構というか、必ず何かしら収獲して来るだろう、君は」
「いやー、だって手ぶらで戻ってくるの嫌じゃない?」
そう聞くとやれやれ、というように肩をすくめられた。
ある程度歩いた所で人の気配がなくなったから、フードを外してもいいと言われたので有難く被っていたフードを外す。
冷たい風にさらされてフルっと体が震えたけれど、気分はしゃっきり。
もう入らないってくらいに冷えた空気を吸い込んで吐き出すと何だか、体の中が新しくなったような感覚になる。
「ふふ。昔はよくこの時間から採取してたなぁ」
思わずそんなことを零すと意外にもリアンが返事を返してくれた。
先頭を歩いているから顔は見えないけれど、意識が私に向いているのは分かる。
「そうなのか? この時間に取るより日が昇ってからの方が見やすいだろうに」
「移動時間を考えるとこの位の時間に移動しないと争奪戦に負けちゃうんだよね。寝坊した時とかは悲惨だったよ。美味しい所だけ持っていかれてるのを見た瞬間の何とも言えない悔しさって言うのかなー。全部捕まえてお肉にして食べてやろうかとも思ったし」
「……まて。君は一体何と争ってたんだ」
「鳥と小動物と虫」
「………そ、そうか」
「うん。時期によって、とか前日の気温や天気で採取できるもののタイミングがずれたりするから、感覚掴めるまでは大変だったんだよ。連敗して、流石にもうこれ以上失敗すると食べものがないってなってから、よーやくコツが掴めて……もう駄目かと思ったのが何度かあったもん」
えへへ、と恥ずかしい失敗を話しちゃったなぁと誤魔化すために笑えばリアンもサフルも凄い顔で私を見ていた。なんでだ。
リアンはともかく、サフルは多少似たような経験あるんじゃないかと思ったんだけど首を横に振られた。
「あ、けどね。そのお陰で罠も仕掛けられるよ。簡単な物だけど。落とし穴とか」
「落とし穴」
「うん。結構捕まえられるんだ。こう、落とし穴の中にとがらせた木の枝を敷き詰めたりとかして」
「そ、そうか」
「皮をはぐ時も結構楽なんだ」
だから任せてね、と横に並ぶように足を速めて隣へ。
此方を向いたタイミングでグッと親指を立ててそう伝えるとリアンは私から目を逸らし、ズレてもいない眼鏡の位置を直しながら「その時は頼んだ」とだけ口にした。
歩きながら捌き方教えようか? って聞いたんだけど断られた。
(正直、盗賊とか相手に結構えげつない事出来るのに、どうして動物とかだめなんだろ。食べられるかどうかの違いでしかないと思うんだけど)
色々出てきた素材。
今回はまだマトモに採取してないので、次回のせようと思います。