236話 お年頃?の悩み事。
おっおまたせしましたああああ!!ちこくぅうううう!!!!!(滝汗
でも、でも、かきましたよぉ!次からちゃんと、演習に入ります。必要な道具は揃ったぜ!(端折ったけど)
ざわざわ ワイワイ がやがや。
言葉にするならそんな感じだよな、と周りを見ながらお茶を一口。
目の前には厚切りの塩漬け肉を焼いた物とゴロ芋つかったマッシュポテトがあって、ひとまずお肉を齧る。
塩気が強いのはお酒と合わせる前提だからだと思う。
「それで? 相談内容を話してくださいません?」
ベルの前にはワインとチーズ。
優雅にワインを一口飲んで、尋ねたベルに強面の三人がもじもじと肩を窄めた。
正面に座る男性が今回相談してきた騎士で、その横には似たような体型と年齢の二人。
リアンとは正反対でムキムキだ。
「その、だな……話す前に俺たちが相談したって言うのは秘密にしてほしいんだ」
「構いませんわ。先に報酬についてですけど……」
「ん、ああ。それは地図を渡すってのでどうだ。第二区域に詰めてる連中も積極的に協力してる上に、今回の件は隊長たちの許可も得ているから信用して欲しい」
「違法にならないのでしたら私達はそれで。一つ聞いておきたいのですけど、ライムを連れて来いと言った理由は?」
ベルの言葉に騎士は頬を掻いて、言いにくそうに謝った。
「すまねぇ。やっぱり相手が貴族だとな。嬢ちゃんがその辺の貴族とは違うってのは分かってるんだが……ウォード家の倅だと、まぁ、商人相手だろう? そうなると相談しにくくてな。ライムちゃんなら比較的相談に乗ってくれるんじゃねぇかと」
「あー……リアンお金儲け好きだもんね」
「妥当な判断ですわ」
肩を竦めたベルに替わって私が改めて質問してみることにした。
話しやすいって方に聞かれる方が楽だろうし。
「私たちに相談ってことは、何か作って欲しいものがあるってことですよね? 薬とかですか?」
騎士が相手ということで思いついたのは、薬。
特に体の傷を直ぐに治すようなものの類いや特効薬、食事系の調合といったリアンの得意そうなアイテムだと思っていた私に騎士は言いにくそうに声を落とす。
「いや……そのだな、臭いを薄めたり消したりするアイテムなんて作れたりしねぇか?」
「………臭い?」
え、どういうこと? と思わず目を見開くとすごくすごーく言いにくそうに、事情を説明してくれた。
「騎士ってのは、汗をかくことが多いんだが……身に着けるものが金属やら革を鞣したものが殆どだろう。だからその、臭いが体に染みつくんだ。靴も、丈夫なものを履かなきゃならん。……家族に、臭いと言われるんだよ。俺には幼い娘がいるんだが、その子から最近『ぱぱ、くちゃい』って言われて抱っこさせて貰えないんだ……!! 今がかわいい盛りなのに!! 嫁も色々と値の張る石鹸を買ったり、食事を工夫したりしてくれてるんだが」
声がちょっと湿っていて、彼の両脇にいる二人も激しく首を振っていた。
驚いたけどフードのお陰で表情は隠せたらしい。
実は、酒場ってことでフード被れって言われたんだよね。
特にリアンにはしつこいぐらいに言われた。
夕暮れ時だし、酒屋は冒険者や騎士で凄く混んでて、色んな人が沢山いるからって言うのが理由なんだって。
リアンもついてくる気だったらしいんだけど、調合しなきゃいけないものが沢山あるから、代わりにラクサが隠れてついて来ることになった。
(変装していくッス、って言ってたけど……どこにいるのかさっぱり)
「えーっと……」
「恋人に臭いが原因でフラれた経験がある騎士は多い。そこで、悪臭を消せるようなアイテムが錬金術で作れないか相談してみようということになったんだ。俺たちだけじゃない……他国の騎士も同じような悩みを抱えている。国際派遣時に互いに相談し合っているからな」
「金なら多少かかってもいい。頼む。どうにかして臭いを消すアイテムを作って欲しい。オリジナルのアイテムを作るのが難しいってのは聞いたことがある。何年でも待つから、受けてくれ」
ぜひ!と三人に迫られて、思わずベルを見ると納得といった顔をしていた。
戸惑いつつ、相談内容を考えてみる。
(出来なくはなさそう、なんだけどな。作った【消臭液】はちゃんと効果があるって鑑定で分かったし)
「私だけだと判断できないので話し合ってから返事をしてもいいですか?」
「! あ、ああ。是非頼む。ココの会計は俺たちが済ませておくから早速検討して欲しい。連絡は俺たちでもいいが、隊長に頼んでもいいだろうか。あの人、今回の件凄く乗り気で、出来上がったら俺も使うんだと張り切っていたので」
「そういえば、結婚していらっしゃるんでしたよね。隊長さん」
俺と変わらん状況かも知れんな、と騎士の呟き。
頷いて立ち上がる。
出された飲み物と食べ物は空になってた。
◆◇◆
頼んだぞーと見送られた私達が『緑の酒瓶』から出ると、リアンがいた。
驚いていると気まずそうに視線を逸らされ、ワインの瓶を抱えたまま歩き始める。
足を速めて追いつけば、ブスっとした顔で私たちを見ることなく告げる。
「……ワインが切れたから買いに来ていただけだ」
「なんだ、そうだったんだ。良いお酒買えた? 持って帰るの大変そうだしポーチに入れておこうか?」
「………いや、いい」
「ポーチに入れてもらえばいいじゃない。何かあった時に両手が空いてないと不便でしょ」
リアンが黙り込んだので腕の中のワインボトルをポーチに入れて、ベルとリアンの手を引いて、薄暗い商店街から工房へ帰る道を歩く。
最初は何かわーわー騒いでいたリアンも大人しく、引っ張りやすくなったので良しとして、考える。
(臭いを消す、っていえばやっぱり消臭液、だよね。けど、このまま売るのは駄目だって言ってたから……ラクサに聞いてみるか。どのくらいの香りをつけたらいいのかって)
消臭液に香りをつけることは可能だ。
と言っても、後付けになるから完成した消臭液に【ペルフル・ウォーター】を入れれば大丈夫そう。
(臭いを消す………あ、トリーシャ液と石鹸作ればいいのかも)
三つもあれば平気じゃないかなと思っていると、グッと掌を握り返される。
振り向くとリアンと目があった。
「何を頼まれた」
「すぐに出来そうな物、かな。ラクサに聞かなきゃいけないけど、材料自体はあるし難しい話じゃないと思う。採取地の情報が手に入るならやるべきだって思うなー……だって、どうせ野営するなら安全な所がいいし、場所が分かっていれば無駄に歩き回って危ない目に合う必要もないでしょ?」
「まぁ、確かにな」
しっかり頷いたリアンはいつの間にか鞭を持っていた。
人通りが減って、住宅街を歩きながらあまり大きくない声で話す。
「消臭液いっぱい作んなきゃだね。消臭液って魔力かなり使うからなぁ……中級魔力ポーションも多めに作っておいた方が良さそう。回復アイテムは多めに用意しておいても損はしないだろうし」
「だな……消臭液に関しては魔力色の影響もないだろう。僕やベルでも可能だ。虫刺され軟膏は僕かライムが担当すべきだな。ベルには【殺虫弾】を作ってもらった方が良いだろう――― あまり商品開発に時間はないが、案はあるんだな?」
「上手く行きそうな組み合わせなら。三つくらいはあるんだけど、工房に戻ったら話すね」
ココでは流石に、と口にすれば二人とも短く返事を返してくれた。
暫く三人で歩いていたんだけど、工房まであと少しって所でベルが突然パッと手を放して方向転換。
「え、ベル? どうしたの、そっち工房じゃないけど」
「忘れ物したの。悪いけれど先に戻っていてくれないかしら」
何を忘れた、とか言わないまま見えなくなっていくベルの背中。
引き留める前に走って行っちゃったから、リアンの手を引く。
工房に戻ってからパッと手を離されたのには驚いたけどね。
「ッ……! と、とにかくまず、依頼内容を聞かせてくれ」
何故か慌てた感じで私を追い抜いてドカッとソファに座ったリアンに首を傾げつつ、私もいつもの場所へ腰を下ろす。
相談内容と調合アイテムについて話をすると難しい顔のまま頷いた。
「吸臭炭が大量に必要になるな。それは僕が作っておく。それと、この消臭液に香りをつける方法は悪くないと思う。品質が多少落ちるかもしれないがその方がいいだろうな……あとはトリーシャ液と石鹸か。トリーシャ液に関しては、失敗はほぼ無さそうだ。石鹸だな、問題は。レシピはあるが……香りづけが難しい」
「私もそう思ってたんだけど、魔力で固まるでしょ? それ、もういっそ完全に固めなくてもいいんじゃないかなって。半分くらい魔力を入れて、後はとろーっとしたところで香りを付けるの。そうすれば魔力を加えなくていいし、香りも付け足せるんじゃない? 失敗はしないと思うけど、品質は下がるかも」
ある程度品質が高くなる様に調合しないと、と呟けばリアンに呆れた視線を向けられる。
どうしたんだろうと首を傾げるとじっと私を見ながら口を開いた。
「どうしてそう、ポンポンと……いや、いい。今更だ。今更だが……はぁ」
「言いかけてやめるのやめてよね。もう! でも、消臭液を入れて魔力込めちゃうとさ、香りを付けても吸収されちゃうでしょ? アイテムとして使う時は魔力を込めるのが基本でしょ? でも、消臭液って強力だけど……対象のニオイには反応するけど『一つのアイテム』として込められた香りを消すには少し時間かかる筈なんだよね。錬金アイテム特有だと思うんだけど、反応速度が違うっていうのかな、もしかしたら付けた香りも消えちゃう可能性は高いんだけどね!ってことで、実験しないと」
「それは構わないが」
「匂いチェックしやすい……トリーシャ液でやってみよう。私、髪短いから嗅ぎにくいしリアンの髪借りていい?」
「…………いや、どういう意味だ?」
「え? そのまま頭洗う前と後で確認させて貰えればいいんだけど」
「………は?」
ポカンと口を開けて固まるリアンを放って、地下に向かう。
トリーシャ液、石鹸、消臭液の材料を一回分+最大調合量取り出して作業台に戻った。
リアンは何故か一緒に地下に来て何をするでもなく後をついて来るので、材料はいいのかと聞けば慌てて戻って行ったので変な物でも食べさせたかと心配になる。
「おんなじ物食べてるんだけど」
手帳を開く。
新しく作った消臭液のレシピものっていた。
【消臭液】※掃除用スプレーの応用
ビカ結晶+【水】+吸臭炭
魔力を大量に使用する。使用方法はスプレーとして全身にかける。
徹底するならば、消臭液を10ml入れたお湯につかること(大人一人が入れる樽の湯に対して)
〈下準備〉
・ビカ結晶と吸臭炭を砕く
《調合手順》
1.ビカ結晶と吸臭炭を弱火で一分混ぜ合わせる(魔力は注がない)
2.火を止め水を入れて、魔力を一気に注ぐ
3.結晶と吸臭炭が消えるまでひたすら混ぜて魔力を注ぐ
【トリーシャ液】
浸水液+ローゼルの花+香油+サイプレスの実
とろみのある液体。水や湯に触れると泡立ち、良く溶ける。
ローゼルの花を別の素材に変えると様々な香りに。
髪を洗うと綺麗にサラサラ艶々に! また、汚れにくくなる効果も。
オランジェが考えたもので他には広まっていない。ローゼルの花を入れなければ無臭になる。
【石鹸】
シャボン草+油素材+調和薬。
調和薬とシャボン草を入れて煮立たせ、沸騰した所で油素材を投入し火を止める。
グルグル魔力を加えながら混ぜると固まってくるのでそれを取り出し、成形、冷やし固めたら出来上がり。香りをつけたいなら魔力を加える直前に浸けたい香りの素材を足す。
油と調和薬は高品質のものを使うとしっとり。
さっぱりさせたいなら調和薬の品質を上げて油の品質は通常通り。
それぞれを確認して、トリーシャ液はローゼルの花と入れ替えるだけでいいし、石鹸には追加で消臭液を入れるから、最後に香り付けとして魔力を通さず香油を垂らす。
問題は【ペルフル・ウォーター】だ。
「香油……か。どの素材を使おう? 香りは弱い方が良いよね」
少なくとも甘い匂いは却下。
使う相手を考えるとサッパリした香りが良さそうだと判断したんだけど、手元の香りの元になるものが花と柑橘系の皮、あとフルーツくらいしかない。
私なりに考えた結果……適当に混ぜることに。
比較的後を引かない、爽やかでさっぱりした香りを中心に集めて分量をメモ。
甘い匂いになっても、何かには使えるだろうと香油の調合に移る。
【香油】
香り素材+調和薬+油素材。
調和薬に香り素材を入れて魔力を通し、素材が消えたら油素材を入れ、魔力を加えて混ぜ溶かす。効果は香り素材による。
ひとまず、調和薬を入れる。
品質が高いものを使って、そこにメモし、きっちり計量した材料を放り込む。
一回目の調合はいい香りにはなったけど……大人の男性が身につけるには可愛らしい感じになったので、断念。
「あ。庭に何か生えてないかな。適当にちぎってこようかな」
悩んでいると、サフルがルヴ達と戻ってきたので、リアンに一声かけて裏庭へ。
じゃれつく二頭と共に少しの香草とニガ草を採取。
工房に戻る前に二頭とサフルに飲み物とオヤツを出した。
「私達、多分今日も遅くまで調合することになると思うから先に寝ててね」
「はい。分かりました。ルヴ達は僕が預かります」
「うん、お願い。いい子にしてるんだよ」
よしよし、と二頭の頭を撫でると甘えるように掌に頭を擦りつけて、切なげに鳴く。
明日は一緒に寝よう、と伝えると元気な返事。
おやすみ、と挨拶をしてから作業台に戻るとリアンは既に調合の準備を整え、これから調合するという所だった。
調合するのは吸臭炭だろう。他にも消臭液の素材がある。
「ライム、調香はうまくいきそうか?」
「一回目は女の子向けになっちゃった。次はもうちょっと量を変えてみるつもり」
お互い調合釜の前に立って無言で作業。
ベルやリアンと調合している間ずっと話している訳でもないので、いつも通りだった。
調合釜でゆらゆらと揺蕩う薬草や花、果物を眺めているとフワリと良い香りが鼻をくすぐる。あまり嗅いだことのない系統の香りだ。
爽やかで青をイメージさせる香りにパッと思い浮かんだのはリアンだ。
髪の色も瞳の色も雰囲気も何となく、リアンっぽい。
「……うーん、これはこれでトリーシャ液作ってもいいかも」
男性向けだよな、と思いつつ使う気にはなれなくて三回目の調合。
この三回目で納得できるものが出来た。
ニガ草を入れて、柑橘系の果物、薬草、シャボン草と少しの花を入れたら……さっぱりとした大人の男性向けの香り。
そのまま続けて香りを量産、と言っても素材の数がギリギリ最大調合量分しかなかったから作れる分だけ用意して、作り慣れたトリーシャ液から調合を始める。
これは問題なかったんだけど、一回分の材料が余ったのでリアンに渡そうと試作品を作った。
「ああ、トリーシャ液から作ったのか」
「うん。そうだ、これリアンにあげる。使ってみて」
小さな瓶を渡すと不思議そうな顔で受け取って、多分鑑定したんだろう。眉を顰めた。
「トリーシャ液なら僕は既に自分で作ったものを使っているぞ」
「知ってるけど、リアンっぽい香りになったから。いらなかったら弟君とかにあげてよ」
私の返事を聞いて無表情に戻ったリアンがキュポッと栓を開けて香りを確かめている。
へぇ、と感心したように瓶を眺め、すぐに栓をしながら私を見た。
「この香りだが……分量を教えてくれ。こっちの方が好みだ」
「いいよ。はい、これメモね。じゃあ、私は【石鹸】の調合するね。その後、【消臭液】をアレンジしてみる。全部揃ったら鑑定頼んでもいいかな」
「ああ。構わない。僕は引き続き【吸臭炭】を作っておく。今後、君が作っている商品の発注が増えそうだからな。恐らく騎士団には売れるぞ。手間と材料費、魔力消費量を踏まえるとそこそこの値段になると思うが……効果によってはお互い気持ちのいい取引が出来そうだ」
口の端をちょっと持ち上げたリアンは相変わらずだ。
ベルはいつ戻ってくるかな、なんて話をしながら私達がアイテムを作り終えた後、のんびり魔力回復も兼ねてお茶をしているとドアが開いた。
「ライム、聞いて頂戴! 騎士団で―――…あら、アイテムできたの? 早いわね」
「おかえりー。お茶飲む?」
「いらないわ。それより、アイテムが出来たなら今すぐに騎士団に行くわよ!」
「え、なんで? 明日でも……」
「それがね、アンタと一目会ってみたいって見習い騎士達が言っていたの。歳も同じくらいだし、話だけでも聞いてくれないかしら。私たちはあまり馴染みないんだけど、貴族籍を持たない場合は自由恋愛で結婚するんでしょう? 三年なんてあっという間だし将来有望な騎士見習いばかりだから、知り合っておくだけでも―――」
興奮気味に話しながら私の前に立って腕を引き、テーブルの上にあるアイテムをポーチに入れるよう急かすベル。
戸惑いつつ、早いうちに情報は欲しいから騎士団に行くのはいいか、とされるがままにしているとベルに掴まれていない方の腕を掴まれた。
「僕も行く。あと、ライムは『そういう相手』を考えていないようだし、時期尚早だろう。それにこれから危険な場所に実習に行くんだぞ? 情報はこの依頼でどうにかなるし、ライムの護衛は僕らやサフルがいる。ルヴ達だっているんだ、これ以上はいらない」
無表情なんだけど、なんだか怒ったような焦ったような口調だった。
首を傾げつつ私も首を振る。
「そういうの面倒だからいらないかも。知り合って、あれこれ注文されそうで……断ってなんか恨まれたりするのも嫌。何より、結婚だっけ? ずっと一緒にいるならベルとかリアン、あとディルやミント、ラクサとかがいい」
「分かってはいたけど本当に興味ないのね、ライムは」
やれやれ、と肩を竦めつつ、手は離してもらえなくて、引きずられるように工房を出た。リアンがサフルに声を張り上げ留守を言いつけて……追ってきた。
表情はない。
「あら、ついてこなくてもいいのに」
「僕が行かないと価格が決まらないだろう」
「一応新アイテムだもんね。私達じゃ相場も分からないし、リアンがいてくれた方が便利だよ。手間もかからないし」
「それもそうね」
「便利……いや、まあいいんだが。もっと他に言い方ってものが」
「え? なにか言った?」
「なんでもない」
不満が伝わるつっけんどんな返事に首を傾げるとギュッと空いている方の手を握られる。
グッと私を引きずるようにベルの横に立ち、私を挟んで二人が何か言い合いを始めたのには少し驚いたけど、二人とも楽しそうだったので黙って見ておく。
騎士団に行くとつい数時間前に話した相手が、私達を見て驚いていた。
最終的に、それなりの価格で取引が決定。
様子を見に来た隊長さんと副隊長さんも目を輝かせて購入していったのがやけに印象的だった。不足分は今回の件が終わったら是非売り出してくれと懇願される。
実演付きで使ったものの効果が抜群だったようで、翌日、朝一番に商品を売った騎士団の人が興奮冷めやらぬ勢いで「娘が俺に近寄ってきて頬ずりした!」と思い出して咽び泣いていた。
お客さんは、ドン引きする人と興味深そうに話を聞く人に分かれ……男性冒険者の熱望により、数量限定で店頭に並べることになったのはまぁ、予想外だったけど。
不定期更新気味になってしまい、もうしわけありません。
ひとまず、更新。大体週一更新ってかんじで緩く考えて下さると嬉しいです。
じわじわーっとブックや評価が上がってきて驚いております。PVなども嬉しくて……!読んでくれて本当にありがとうございますッ!嬉しい…(´;ω;`)ブワッ
=新アイテム=
【ペルフル・ウォーター】
香油をアルコールと水で溶かしたもの。
魔力を使わない場合と、使う場合があり、魔力を使わない場合は香りのみを付加。
魔力を使うと使用した香油などの特性が引き継がれる。