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【書籍化中!】アルケミスト・アカデミー(旧:双色の錬金術師)  作者: ちゅるぎ
調合釜に入れてグルグル混ぜる。

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213話 三科合同交流演習の対策会議!

なっがい!!!!!

あと、ややこしい。覚えていられるかなぁ…orz


 滲む汗を拭いながらサフルが差し出してくれた水を飲む。



 前日、ワート先生が持ってきた『新しい学校行事』について話をしようと思ったんだけど、話し合って他の科―――つまり、エルやイオ、ディルにも話を聞いてみたいってことになった。

三人には手紙を出したので多分来てくれると思う。


 三科合同の交流演習について、詳しい内容はワート先生からベルが聞きだしてくれていたのでそれを目安にして話し合うつもり。



「午後2時まで店を開いて、その後閉店作業かぁ……何用意したらいいかな」



 グルグル調合釜を混ぜながらそうつぶやくと隣から呆れた声。

半目になって私と同じように調合釜をかき混ぜているベルが私を見ている。



「アンタね……もうちょっと緊張感とかもったらどうなの? メンバーがメンバーだし、仕方ないかもしれないけど」


「だってさー、ディルはともかくとして、エルとイオは久しぶりだし。あ! 短くても外に出るって言うなら装備整えなきゃだよね。装備系のアイテムは私達十分だけど」


「装備か。その辺は相談だな。一般的に装備の類いは、護衛契約を結ぶときに決まるが……装備は自分を守る為のものだ。自費が多いな。中にはパーティーを組む間だけ貸し出す、というのもあるようだがそれも珍しい」



 調合している『スッキリ飴』の光沢を確かめつつ会話をする。

帰ってきてから大量に飴を作ってるお陰で大分慣れてきたんだよね。


 ベルは【レデュラクリーム】を大量生産中。

リアンはひたすら回復薬の調合だ。

学校行事の持ち物についても『揃ってから』にしようと話したところで仕上げの段階へ。


 実は、雫時に使ったアイテムを補充するために毎日来ている人がかなり多い。

色々な所で回復アイテムを使ったらしく、興味を持った人も店に来てくれていて毎日大繁盛だ。



「冒険者や騎士だけじゃなくて、最近一般のお客さんも多いよね。なんか、見かけない服装の人も増えたけど」


「見かけない服装? ああ、一部の貴族が雇っている使用人だろうな。限定で売り出したレデュラクリームは、購入者から広まってこうして大量生産する羽目になったぐらいだ」


「コレって切り傷や手の荒れにも効きますものね。戻ってきてすぐ、ライムと一緒に一番街へ『土産』を渡しに行ったでしょう? それがいい宣伝になったみたいね。特に宿を経営してるルージュっていう女店主と道具屋のハーツ夫人。二人とも【レデュラクリーム】が気に入ったみたいだったし。積極的に【トリーシャ液】や【洗濯液】とセットでお薦めしてくれてるとか……当主から問い合わせの手紙が来たもの」



「影響力が凄いな。ああ、そうだ。【上級・トリーシャ液】は次にベルが家に帰る時に持って行ってもいいぞ。ただし、調香はベルが責任を持ってしてくれ。僕らは関わらない」


「分かってるわ。貴族に仕入れ先は絶対に言わないように伝えておく――― まぁ、分かるでしょうけどね。これだけ効果があるなら」


「だろうな。それを渡す代わりに窓口をして欲しいと伝えてくれ。それが出来ないなら、もう作れないと」



 淡々としたやり取りを聞きながら私は飴を作業台に運んで一口大に切っていく。


 雫時が終わって、新しく販売を開始したアイテムは結構あるんだけど、その中でも【レデュラクリーム】と【ハッカ風ドロップ】【氷石糖】は凄い評判になった。

 雫時の間に使い切ったトリーシャ液を買いに来たお客さんが買って行ったのを皮切りに瞬く間に在庫分迄売り切れたのは、たぶん、雫時に水仕事で手が荒れたからだろうとリアンが言っていた。



「それはそうと、今日話し合い終わったら新しい調合していいんだよね?」


「ソレは構わないが……何を作るんだ?」


「センカさんに教えてもらった『ふるるの素』を作る予定かな。それを作ると『グミ』と『ゼリー』っていう食べ物が作れるんだけど、昔一度だけ食べたことがあって……美味しかったんだよね」



 昔、おばーちゃんが作ってくれたんだけど、と言えば二人とも少し考えて口を開いた。



「……まぁ、食べ物ならいいんじゃない?」


「そうだな。どちらも聞いたことのない食べ物だし興味深い」



 今は共同調合でしょ!?とか言われるかなーと思ってたので少し驚いたけど、良いって言うなら良いんだろう。

ありがとー、と言えば二人とも間髪入れずに試食はさせてくれるんだよね? って言ってきたのには笑った。勿論試食はしてもらうつもりだ。



「あと、ディルを呼ぶって言ってたから氷たくさん出してもらおうと思って」


「氷? 何に使うの?」


「あったら便利だし、ゼリーって冷やして食べると美味しいみたいなんだよね」


「魔力あるだけ使わせて氷作らせるわよ。サフル、地下に氷を置くためのスペース作って置いてくれるかしら」


「かしこまりました。すぐに取り掛かります。氷でしたら、桶のようなものを置いておいた方が宜しいでしょうか? それとも板にいたしますか?」


「……使っていない板があっただろう。アレを使ってくれ。それと、庭を作るのに必要なものは、大体午後1時に届く予定だから受け取って欲しい。金はテーブルに置いてあるだろう。あれで支払いを―――全てサフル用に揃えたものだ。壊れたり、あったらいいと思うものがあれば遠慮なく相談するように。僕が買わなくていいと判断した場合は購入しないが、素材を育てる上で絶対に必要なものは遠慮せず言うように」



 完成した回復薬を移し替えながら話すリアンに!サフルが嬉しさを滲ませた声で返事を返した。


 サフルは戻ってきてからも教えてもらったことを渡した紙や黒板に書いて、必死に覚えようとしているのを私たちは知ってる。

 リアンは学習意欲が高いのはいいことだと、栽培方法が書かれた植物の本をいくつかサフルに渡していたし、ベルは質のいい道具を揃えるのに鍛冶屋にオーダーして専用の道具を作ってくれたらしい。



「ああ、それとライムがサフルの為に用意した園芸用の服や普段着が届く。サイズが小さければ、交換もできるよう発注しているから気軽に言うように」


「ライム様が……?」


「リアンが本、ベルは道具をプレゼントしてるでしょ? 私も何か贈りたくって。いつもありがとね、これからもよろしく! 冬用の靴とかは時期が来たら買いに行こうね」



 はい、とどこか湿ったような感極まったような短い返事と鼻を啜るような音が聞こえて何事かと視線を向けると肩を震わせ、目元を拭うような仕草をしているサフルが地下へ降りていくところだった。



「……えーと、余計なお世話だったってこと、じゃないよね?」


「一般的にここまで奴隷にする主人って珍しいから仕方ないわ。借金奴隷ならまだしも、サフルはそうじゃない。主人が悪ければ、扱いなんて酷いもの。家畜以下の扱いをする主人も一定数いるくらいだし」



 ギョッとして一瞬手の動きが留まった私にリアンが瓶の蓋を閉めながら息を吐いた。

よくあることだ、と呆れたような軽蔑するような声。



「うまく使えば利益を出せるのが奴隷だ。貴重な金を生み出す存在を碌に使わずに使い潰すなんて金をドブに捨てているようなものだろう。そういう輩はどうにも好きになれないな―――…家事や仕事の手間を誰かが担えば、その分動ける人間が増える。しかも奴隷はある程度の生活水準を守っていれば長く使える。反抗もしないしかなり便利だと思うんだが」



 やれやれ、と肩をすくめるリアンは何処までもリアンだ。

ベルはベルで私と同じように肩をすくめているけど、ベルは奴隷=家臣が使う物っていう感覚らしい。


 稀に奴隷契約を結ぶ家臣がいるそうだけど、貴族の世界では『忠誠』の証として一種のステータス(ってなんだかよくわかんないけど)になるんだって。



「なんかよく分かんないけど、二人ともめんどくさいね」


「アンタに言われたくないわよ」

「ベルに同感だな」



 早朝の調合で盛り上がりながら、私達はいくつかの補充を終わらせる。

暫く朝ご飯は簡易だ。


 ルヴのご飯は昨日の夜色々作って地下に保管してあるから、そこから出すことにしてるし、午前中は裏庭でサフルと一緒にいてもらう予定。

もう少ししたらちょっとずつ、お店にいる時間を作っていこうって話してるけどね。



「とりあえず、開店準備は頼んでいい? 私、サクッとパイ生地作って、キッシュとかパイ生地で作るパンとか色々作るから」


「構わないけど、話し合いの時にはちゃんと参加して頂戴ね」



 はーい、と返事をしつつ作っておいた大量の飴を袋に詰める作業に移る。

この袋はサフルが暇を見つけて作ってくれたものだ。


 少しは自由になるお金が欲しいだろうなと思って、千袋で銀貨1枚渡すことに決まった。

お金を渡すことに対してサフルは凄く嫌がったけど、下着を買ったりするのにいるよねって言ったら黙った。

パンツくらい言ってくれれば作るのに。


 商品の補充を終わらせ、店に並べてからおにぎりを一つ食べておく。

ラクサは今日、お休みだ。



「にしても、ラクサには驚いたよね。私たちにサフルを少し借りたいなんて言うんだもん」


「所有者は私達だもの。当然よ。ただ、仕事の内容が簡単だし、護衛料金から引くってことになったから私たちにとってもメリットはかなりあるけれど」


「ある程度落ち着いたらラクサには自分の工房に戻ってもらうからな。その内あの部屋に家具を運び始めかねない」



 言いながら、リアンも楽しそうなのはラクサの人柄だと思う。

 ラクサの依頼は簡単で、サフルに自分の作ったものの販売を頼みたいという事だった。

ストックは出来なくても細工には時間がかかるから、少しでも数を作りたいといってリアンから栄養剤まで買ってたしね。


 色々と素材を買ったりしたから少しでも売らないと金欠どころの話じゃないって言ってたので、了承した。



「僕らも気合を入れて販売するぞ。仕入れ額だけ見ると赤字だ。今後の価値を考えると明らかな黒字にしかならないが」


「新商品も売れ行きはいいし、中級の回復薬も少し置き始めたのが良かったのかな。数は少ないし購入に条件は付けてるけど商品が出てるとやっぱり売れ行きいいもんね」


「回復薬もだけど、氷石糖の問い合わせも凄いわよ。商品が普通に売り出されないものだからって言う理由もあるけど【限定】な上に品質がいいのが評判になってるみたい」



 売れるものが増えるとお客が増える。

単価が高いものでも売れるようになってきたのは凄いよね、と言えばリアンは考え込んで口を開く。



「恐らくだが、他の工房がまだ『利用対象』ではないからだろうな。注目はしているんだろうが、僕らレベルの品物を揃えられるとは到底思えない。販売しているモノの大半が半オリジナル―――個人に伝承されたレシピだ。一般的なものではない以上、ココに足を運ばなければ買えないということになる。必要最低限のものは安く、段階に応じて手が届くアイテムが増えるようにしているから、アイテムさえしっかりしたものを作っていれば売れる。模造品なんかを作るものもいるだろうが、採算が合わなくて潰れるのが関の山だな。貴族が道楽で僕らの邪魔をすることもあるだろう。その場合でも、今までの経験から判断して賢い冒険者たちは流れて行かない。試しに流れたとしても戻ってくるさ」



 そういう風に考えて売っているからな、とリアンは話す。

看板を出してくる、と出て行ったリアンの背中を見ながら私とベルは顔を見合わせる。



「時々思うけど、リアンが同じ工房で良かった。他の工房にいたら色々と勝てる気がしない」


「こればかりは同意するわ。性格にも性癖にも難がありそうだけど、商才と見極める力はあるのよね。体力も多少マシになってきてるし」


「体力に関してはベルと比べたらダメだと思う」


「あら。その内ドラゴン系の討伐もするんでしょう? なら、鍛えておかないと死ぬじゃない。そんなのつまらないわ」


「いっそ討伐じゃなくって、死なないように素材持って帰る方法考えない?」



 慣れた様子で開店作業をする私達の元に、お客様が商品と共に話しかけてくるのはほんの数分後の事。

何時ものようにガヤガヤと賑やかに、活気に満ちる店内。

毎日計算して販売して、を繰り返すお陰でミスもほとんどなくなって来たし、商品を詰める速度も上がった。


 ラクサがいないと少し大変だけど、サフルが頑張ってくれたのでこの日もトラブルなく終了。売り上げは言うまでもなくいいもので、たくさん作った【ハッカ風ドロップ】ことスッキリ飴は綺麗になくなった。


 なんか、今、男性冒険者の中で流行ってるらしい。

甘いものが苦手だったり、夜勤や野営などで舐めると眠気が飛ぶって評判なんだって。

いつもより早く店を閉めることは説明したんだけどお客さんは「明日また来る」と言って帰ってくれた。




 新しい商品の開発してるって言ったからかもしれないけどね。





◆◆◇





 集合時間少し前にお土産を持ったエルとイオが工房を訪ねてきた。



 一番乗りだよ、と言えば嬉しそうに笑って私達がいない間あった事や手に入れた素材をくれた。珍しいものはなかったけど、頻繁に使う物ばかりだったので素直に有難かったんだよね。

お礼として、丸薬タイプの回復薬を渡しておく。


 最初は貰えないって言われたんだけど、お土産だと言えば折れてくれた。

その後、時間の少し前に肉やチーズ、魚などを大量に持ったディルが工房に到着。

エルやイオを見て眉を顰めたけど私が紹介すると納得がいったらしい。



「ああ、お前たちが騎士科の」


「失礼しました。私は騎士科一年イオラ・リークと申します」


「……俺は騎士科一年のエルダー・ボア」



 一礼したイオに対してエルはじっとディルを観察している。

その二人を一瞥してディルは興味なさそうに口を開く。



「ディルクス・フォゲット・ミーノット。ディルでいい。召喚科だ」



 宜しく、とも何も言わないディルにムッとして手に持っていたパイの皿を置いて近づく。

パッと表情を変えたディルは直ぐに私の機嫌が悪いことに気付いて、オロオロし始めた。

こういう所も昔から変わらない。



「ら、ライム?」


「ディル! ちゃんと挨拶して。ここ、学校じゃないんだから。それに騎士科の二人がいないと私達大変になるんだよ? この二人は貴族騎士だっけ? あのよく分かんない人とは違うんだからね」


「……ライムは仲がいいのか?」


「初めて首都に来た時に助けてもらったんだ。お陰で迷子にならなかったし、素材も集めにいけたよ。安くておいしい店も教えて貰えたから、今度行こう」


「そうか―――…まぁ、そういう事なら。おい」



 クルッと私の手を取ってからエル達の方へ顔と体を向けたディルは先程とは違ってきちんと挨拶をしていた。



「人の目がある学院ではそう気安く会話は出来ないが、ココでは身分を気にしなくていい。学校行事では恐らく組むことになるだろうから、話し合い次第ではこちらの手の内も少し明かしておく。お前たちは二人か? 騎士科ならば三人一組だった筈だろう」



 急に話しかけやすくなったディルに戸惑ってるのが分かって、私は慌てて声をかけた。

色々あって私とディルは昔馴染みだと言えば二人は納得したらしい。


 元庶民ということもあってか、エルの警戒心が溶けるのは比較的早かった。

ニカッといつものように笑って自分から手を差し出し、握手を求めている辺りがらしい。



「ライムと昔馴染みってんなら俺らも安心して組めるな。アンタも話に聞いていたよりいい奴みたいだし、宜しく頼むぜ。俺が剣と大剣。イオの武器は一応剣になってるが、いざって時は投擲武器を使う」


「投擲か。一年次は選べん武器だな」


「おう。まぁ、入学前までは見習い騎士として先輩達と少し野外での戦闘とか野営の経験もあるから、その辺りのことも任せてくれ―――で、その三人目なんだがちょっと遅れてくる。事情は話すから少し待ってほしい。リアン、ベル。そろそろいいかー?」



 三人が立ったままなのは店の集計をリアンがしている事とベルがお茶と警備結界の準備をしているからだ。

 エルが声をかけると、二人とも作業が丁度終わったらしくテーブルに集まってきた。

ベルの手には大きなお盆と大きなポット。人数分のカップ。



「もう一人は来るんですの? 警備結界張ってしまいましたわよ」


「あー……そうだよな。どうする? イオ」


「外で待たせておけば大丈夫ですよ。そもそも話し合いがあることは伝えてありましたから。間に合わなければ外で待機し、コチラの事情を話したうえで了承が得られれば顔合わせをしてという話をしていましたし」


「お……おう。そういうことだ」



 目が笑ってないイオにエルが頷いた所で、私は苦笑しつつ大きな雫カボチャのパイを切り分けていく。

キラキラと目を輝かせたのはディルとエルだ。


「これは、雫カボチャか」


「カボチャのパイなんて久しぶりだけど、ライムの飯って美味いんだよな。スゲェ楽しみ」



 パイは作るの面倒だし材料が少し高いから祝い事じゃなきゃ食べないんだよ、とエルが唇を尖らせ、ディルは興味深そうにエルの話に耳を傾けている。



「高い? バタルの類いか」


「貴族の癖によく知ってんなぁ。あ、そうか元々俺らと同じだったってんなら知ってるか……あー、あとパイって作るのが面倒らしくって母さん殆ど作ってくれないんだよな。外で買うって手もあるけど量と金額の兼ね合いが」


「外食はそもそも結構な値段だからな」


「おう。なんだ、結構話分かるやつじゃん。その内、俺らが食うようなのでもいいなら美味い飯屋紹介してやるよ。雫時明けは屋台も色々出てるんだ」


「帰りに案内してくれ。こういう機会でもなければ買い食いが出来ないからな。召喚科の連中は面倒だから変装はするが」


「俺らもそうしてくれると助かる。召喚科の貴族様とド庶民の俺らが知り合いだってなると色々めんどくさくってよ」


「貴族も庶民も面倒であることに違いはないな」


「だよなぁ……ハー。教師もピンキリだし」


「教師こそどうにかして欲しいものだ。質がバラバラすぎる」


「ホントそれだよ」



 紅茶が配られ、リアン達が席に着いてからも二人は割と親し気に話しをしていたのでベルもリアンも驚いていた。

私も驚いたけど、仲良くやれるなら私としては問題なし。



「……あの二人知り合いだったとかじゃないわよね?」


「さっき会ったばっかりだよ」


「………変態貴族と話ができるのか。すごいな、エルは」


「リアン、そこ驚くところじゃないし。そもそも、その変態貴族ってなに?」


「気にするな」



 全員がそれぞれ話す姿勢を整えた所でリアンが口を開いた。

手元には人数分のペンとメモ用の紙。



「今回手紙を出して集まってもらったのは、各学科で『三科合同交流演習』がどのように伝えられているのか知りたかったんだ。ついでに、申請を出してしまいたかったと言うのもある。学院に行くと恐らく、勧誘が凄いだろう。断るのは面倒だからな……申請用紙は担当教諭を呼んで渡す。三人は学院で『相手はもう決まった』と言えばいいだけだ」



 これを聞いたエルがすぐに反応した。

何処かほっとしたような顔だ。



「助かる、ホント。騎士科は他の二つの科より明らかに人数が多いのは分かるだろ? 他の科の人間と組めたってだけで目標達成したようなもんなんだよな」


「そう、なの?」


「はい。他の科ではどういう風に伝えられているのかは分かりませんが……貴族騎士の教員が担当していない組では『落ちた評判を挽回し、騎士として“使える”ことを証明する為に設けられた行事』だと聞いています。貴族騎士の方では『騎士の有用性を知らしめる』とかなんとか言っているようですが」



 そこまで話してイオが笑みを消した。

何処か冷たさがある真っすぐな目は、時々ベルやリアン、ディルが見せる『いらないものを見極める』時の眼に似ている。


 エルは黙って口を挟む気がないようで紅茶を飲んで、工房の中を見回しているのを見ると事前に話しはしてきたんだと思う。



「今、学院で窮地に立たされているのは貴族騎士です。僕らのような貴族籍を持たない生徒にとっては運が良ければ『錬金術師』や『召喚師』と知り合える程度の認識です。それと、チームで動くので団体で行動する際の役割をきちんと果たせるか、またそれに対応できる力があるかを見極めることもできます。二年に上がった時の演習は長いですし危険もありますから、それに備えて『何が足りないか』自覚する為に使えと言われています」


「窮地、と言いましたわね。どういう状況ですの?」


「購買で回復アイテムが買えなくなったことはご存じだと思うのですが、そうなると自分で店に行って購入する必要があります。庶民は経済的に厳しいので、持っているモノを有効活用したり、学院外の―――このお店を利用しています。が、貴族騎士は家の関係でそういう訳にはいきません。繋がりを作るという意味でも錬金術師の店で購入しているようですね。貴族と言ってもお金があればいいのですが、そうではないこともありますし、家によっては貴族の位が高いからといって錬金術師の店に圧力をかけていることもあるらしく……それが、学院長や国に知れて、処分の対象になっているそうです」


「思ったより愚かだな」



 ハッと鼻で笑ったディルにイオが苦笑しつつ頷いた。

イオが再び口を開く前にエルが話し始める。


「どうなるかは分かんねぇんだけどな、貴族騎士には一定のノルマが設けられた。本来ならリンカの森の第一区域で様子を見る筈だったんだが、大見栄を切った所為で場所が第二区域に変更された。あそこは……群れを成して襲ってくるモンスターが多い。個人の実力は勿論、連携をきちんととれないと直ぐに詰む」


「エルは第二区域に行ったことある?」



 私の質問に苦々しい表情で頷いて、気まずそうに話してくれた。

隣にいたイオも顔を伏せている。



「見習い騎士として働いている時に何度か行った。任務内容は『遺留品の回収』だ」


「遺留、品って……」


「あの場所は実力がなければすぐに喰われる。冒険者や実力を過信した騎士の死体なんて珍しくない。今は鳴りを潜めてるんだが、奴隷を餌として連れて行って、夢中になって喰らっている間に狩りをするという手法をとる連中もいる。犯罪奴隷ならいいさ。でも、そうじゃない奴隷が犠牲になることも多い」


「すいません。皆さんに聞かせたい話ではないのですが、どうしても危険であることは話して置きたくて」


「構わないわ。寧ろ、聞けて良かった。私たちも第二区域になるのね?」


「恐らくは。選べるとは思いますが、三科が全て揃ったパーティーは珍しいでしょうから」



 イオ曰く、騎士科のみの班で貴族騎士がいる場合は此処にもれなく送られるという。

貴族籍を持たない騎士は今回とばっちりを喰ってるだけなので選択できると言われていて、エル達の友人は皆第一区域で自分の実力と不足している所を補う為の見極めをするそうだ。



「ということは、貴族騎士はほぼ死ぬわね。彼ら、協力・連携とは程遠いもの」


「流石にそれだとマズいってことで、十二人を教師一人が見る形で森の中に用意された『アイテム』を回収したら帰ってきていいってことになったらしい。アイテムを置くのは学院長だから、不正は出来ない筈だ……けど、教師も貴族騎士が付くことになってるからどうなるかは分かんねぇんだ」



 貴族騎士の中には、死にたくないから庶民のグループに入れてほしいと言ってくる『通常』の感性を持った人間もいるらしい。


 第二区域に行く基準は貴族騎士二名以上が強制参加なので、一人だけなら庶民と一緒に動けば第一区域で通常通り演習を終えられる。

成程な、と全員が納得しているようだったので慌てて声をかけた。



「で、でも! その、そういうのっていいのかな。命を無駄に捨ててるようなものなんじゃないの? よく許可したよね、学校も国も」


「ライム、考え方が違うわ。騎士は、国と民を守る為の駒なの。質の悪い駒は、実際戦闘になったり任務にあたる際に害しか生み出さない。見たでしょう、私達は。商品を販売することを通して『騎士』の働きを」


「騎士になると自分の命より弱き者を優先しなくてはいけない。他者を守るには、自分自身が強くなければいけないんだ。けれど、騎士も人間だ。苦手なこともある。それを補う為に『連携』するんだ。連携することで隙を減らせる。生き残る為に必要なことだ」



 ベルとリアンの言葉に思わず目を瞬かせる。


 分かったような気でいたけど、その前提があるから騎士は憧れられて、尊敬される。

だから家族は回復薬や役に立つもの、お守りなどの道具を持たせて帰って来られるように祈るんだろう。



「そ、っか……」


「ライム。あんまり聞いてて楽しい話じゃないと思うけどな、大事なんだ。連携が取れるかどうか、相手を気遣って尊重できるかどうかは」


「僕らを指導してくれた副隊長や隊長はいつも言っていました。死体を回収しながら、こうはなるなよって―――……だから、僕らは出来る限り貴女たちを守ります。協力を要請することもあるでしょう。それは、生き残る率を上げる為です。本当に危険な時、皆さんは僕ら騎士を囮にして逃げることが許されていますし、推奨されています。召喚術師は勿論、錬金術師に替えは少ないですから」



 そう言って笑う二人は凛としていて今まで会った事のある『騎士』と変わらないように見えて、息を飲む。

その様子を見ていたディルが置いてあった申請用紙にサラサラと名前を書いた。



「―――二人を騎士と認め、俺の命を任せよう。お前らなら安心して組めそうだ。召喚科では『優秀な錬金術師』との接点を持つことを重視するよう言われている。召喚科は、騎士科とも錬金科ともほとんど関りがないからな。二年に上がった時の合同演習のことも踏まえて、他の科の人間を見極めるように言われている。俺の場合だが、第二区域にいるモンスターは召喚獣として適さない。教員にも手持ちの召喚獣を見せて『契約』はしなくてもいいと許可をもらっている―――代わりに、錬金術師が今回の演習で採取した素材で作ったアイテムを購入して来るように言われている。素材の採取には協力しよう。俺たち召喚師は錬金術師が作ったアイテムを使って契約することが多いから、優秀な錬金術師とつながりがあれば優秀な召喚師として扱われることも多い」



 ディルは残っているパイを指さしてもう一切れ食べてもいいか?と言い始めたので、苦笑しながら皿に盛ってあげた。

それを嬉しそうに眺めながらディルがこの演習での動きについて話していく。



「そういう訳で、俺も戦力として数えて構わない。召喚師はある程度の戦闘もできるように訓練しているからな。素材や魔物、モンスターを従えるのに召喚師が弱くては話にならねぇ。ライム、他にも何かパイはあるか?」


「パイはないけど、パイ生地パンはあるよ」


「食べたい」


「はいはい」



 早速、とパイに齧りついたディルはモグモグ口を動かしながら話を続ける。

行儀が悪い!とベルに小言をもらってたけどね。



「俺の武器は槍。召喚術は規模がデカい奴しかいないから、出せない代わりに魔術も使えるから、ある程度のことはできるぞ」


「……な、なんでもありですね」


「ライムには便利だと褒められた」


「ライムさん、便利で済ませたんですね」


「何気に一番すごいよなー……召喚師捕まえて『便利』って」



 何かおかしいかな、と首を傾げるとエルとイオが苦笑しつつ、錬金科について教えてほしいと言われたのでリアンに視線を向ける。


こういう説明はリアンが一番上手だからね。





ここまで読んで下さって有難うございます。

新しい章になってから、学院系の話が増えます。

書いていて楽しいけど、どうなることやら。


 いつもアクセス、読んで下さって有難うございます。

誤字脱字変換ミスなどに気付かれましたら誤字報告にて教えて下さると嬉しいです。

不明な点等は感想やコメントなどでお気軽にどうぞー!

ギリギリ一週間更新に間に合ってよかったです(苦笑


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― 新着の感想 ―
どう考えても三科揃ったチームなんて妬まれるし魔物より貴族騎士の妨害のほうが厄介な気が…。
[気になる点] そう言えば、学院長が置いてきたアイテム回収の話はこのあとほとんど出てこなかったですよね。 第2区域に行く貴族騎士たちのみに課せられたものなのかな、アイテム回収したら戻ってもいいって話も…
[気になる点] はーやーーくー!続きが読みたい!!! 毎日5話くらい読みたいですねw(無茶ぶりにも程がある) [一言] 今回みたいな個々の擦り合わせも楽しいです(* ´ ꒳ `* ) ライムに説明し…
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