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195話 共同調合は難しい (4)

ま、まにあった!!!ギリギリで!!!


宝石系は考えるのが愉しくて楽しくて楽しくて!!!!!

もっとこう、ラクサのターン(装飾品づくり)にスポットを当てたかったのですが……また今度ですね。

 



 調合した氷石糖の品質はA+だった。




 結果をリアンの口から聞いた瞬間、思わず二人の腕を掴む。

 興奮が粗方冷めたとはいっても調合したいって気持ちはかなり強いって自覚はあるけど、悔しさと楽しさが入り混じって気付いたら口が動いてたんだよね。



「もう一回! 忘れないうちに、ウパラエッグ作ったら直ぐにもう一回調合しようッ! 次は絶対S品質の凄いの作れる気がするっ」



 品質はどれも最高だから問題があるなら魔力操作と手順と火力。

手順は間違いなく守れてたし火力も指示通り。

三人での調合が難しいって言われる理由は少しでも魔力を注ぐタイミングがずれるとアイテムの品質に響くことが多いからだと思う。

 お願い、と言葉を続ける前にベルとリアンが頷いたので驚いた。



「そんなの、私から頼むつもりだったわ。品質が落ちたのは多分私の魔力操作が甘かったから。感覚は掴んだし、次は絶対に合わせてみせる」


「僕も感覚を掴むのに少し時間を要した。細かい素材の投入タイミングも見直したい。特に魔力回復がスムーズにできなかったから、サフルにも協力してもらった方が良いだろうな。こんな貴重な高品質の素材を使って品質がA+なんて納得できるわけがない」


(そういえば、二人とも結構負けず嫌いなんだっけ)



 呆気にとられはしたけど、嬉しかったので掴んでいた腕を離し、二人の手をギュッと握る。

で、そのまま様子を見ていたらしいセンカさんに手を握ったままブンブンと手を振った。

二人とも慌ててたけど、今かなり気分が高揚してるから許して欲しい。



「センカさんっ! 私達に次のウパラエッグの調合終わったら、『氷石糖』の調合させてください。次は絶対に文句なしの合格貰えるアイテム作るのでっ」


「ふん。まぁ、構わないがきちんとウパラエッグの調合に集中するんだね。こっちはコッチで中々骨の折れる作業になる」



 骨の折れる作業、という言葉に興味を引かれて二人を見ると作り方なんかは聞いていないようで緩く首を振った。


 不思議に思いつつ、氷石糖をポーチに入れて(腐るほどあるからいらないって言われた)簡単に片づけをして、センカさんが先程から観察しているラクサとケイパーさんのいるテーブルへ向かう。


 この工房の中でも大きい部類に入る長机には、金属の板が敷かれている。

色んな道具が置かれているんだけど、その中で一番気になったのは金属の箱の中にたっぷり満たされた白銀色の灰。



(置いてあるからには何かに使うんだろうけど……何に使うんだろう、コレ)



 服とか手をひっかけたら盛大に零れそうだから蓋閉めたいな、なんて考えているとラクサが深いため息を吐いた。

ただ、その時初めて気づいたんだけどリアンとはまた違う眼鏡をかけている。

 フレームは満月みたいにまん丸で大きい。



「あれ。ラクサって目が悪かったっけ?」



 ぐぐぐーっと伸びをすると肩のあたりから痛そうな音が鳴るのを聞きながら話しかけると、少し目を見張って直ぐに苦笑した。

 指で眼鏡を取って、私に手渡す。



「リアンが使ってるのとは違うんス。拡大鏡って言えばわかりやすいッスかね……? オレっちは火花が散ったりする細工をしないからこれで済んでるんスけど、細工師によってはがっちり目を保護するような道具を使ってたりもするッスよ。そーゆータイプはメッチャ高いんでそっち方面に行かなくて良かったと思ってるんすけどね!」


「へー……あ、ホントだ。この眼鏡かけると大きく見える。でもこれ、眼鏡かけてない時との見え方が違い過ぎて慣れるのに時間がかかりそう」


「錬金術師向きではないっスね。ま、こーゆーのも慣れッスよ。丁度良かった、細かいパーツを作り終わった所なんでざっと説明するッス」



 ラクサは自分の前にある何に使うのか分からない金属製の部品を一度小さなトレーに種類別に分けて置き、私達の前に見覚えのある形の石を置いた。


 ん、だけど……思わず石を指さして首を傾げる。


「ラクサ、これって本当に【ウパラエッグ】なの?」


「オレっちも初めて見た時は驚いたッス。ただの石コロに見えるのに磨くと―――コレですもんねぇ」


 目の前にある【ウパラエッグ】は小さくなっていたけれど、私たちが魔力を注いだ石だ。

 頬を掻きながら、ラクサは続ける。

このウパラエッグは魔力を喰う上にデリケートで加工は中級者向きなんだとか。



「正直言うと、魔力が多い錬金術師と知り合えた上に手伝って貰えるってとんでもないレベルで恵まれてるんスよ、オレっち」


 ラクサは丁寧にウパラエッグを光沢のある布の上へ置き直す。

 

 私たちが知ってるウパラエッグは、ぱっと見、ただ卵の形をした黒い石だった。

宝石だって聞いてはいたし、余分な石や岩が魔力を注げば剥がれるって聞いていたから綺麗になるんだろう、って想像してたんだけど違ったんだよね。



「私、実は魔力を注いだ時に、キラキラするんだろうなぁって思ってたんだけど全然宝石っぽくなかったから少し驚いてたんだ。つるっとした所は何カ所かあったけど……磨くとこんなに綺麗になるんだね」


「不思議なんすけど、ウパラエッグは『専用』の研磨剤で磨かないと宝石化しないんスよ。しかも、宝石になる部分がどれくらい含有されてるのかもわからないンで、その辺りは全部細工師の腕にかかるっていう厄介で――― 面白い石なんスよねぇ」


 大変そうな性質を持っている石なのに、話をするラクサはとても楽しそうだった。

その理由は恐らく目の前にあるこの石だろう。



「私は宝石の事ってよくわからないんだけど、ラクサが宝石の加工も得意だってことは分かったよ。凄く綺麗だもん」


「そ、そうっスか? へへ。いやぁ、オレっちも初めてにしては上手く磨けたなぁって思ってたんス。まぁ最初だから石の神様が加減してくれたのかもしれないンで、調子にはのれないっスけどねー。ほら、おやっさんの腕を見てると……なんとも」



 はは、と苦く笑ったラクサにケイパーさんがガッハッハと笑い声をあげた。

バシバシと大きな掌がラクサの背中を叩いている。



「ちっと細工師として学び始めた駆け出しと比べて貰っちゃぁ困るぜ。こちとら年季入ってるからなぁ! 俺ですら宝石の扱いや加工にゃ苦心することもある。中々奥が深いぜ、宝石加工っちゅーんはな。上手くやりゃ、儲けられるが運と実力に加えてセンスがいる。装飾品は好みだ」


「……ッス。ってことで、オレっちに出来るのは『宝石』として形を整える事だったんスよ。で、これはまだ未完成。ウパラエッグは『魔宝石化』してこそ真価を発揮するんスよね」


「魔宝石化って、なに?」



 初めて聞く単語に首をかしげていると黙っていたベルが口を開く。

まさかベルから解説が聞けるとは思わなくて凄くびっくりした。



「魔宝石化っていうのは、宝石に魔石のような魔力を持たせること。何種類か魔宝石化しないと『宝石』とは認められない石もあるわ。貴族が好んで身に着けるのは『魔宝石化』した石ばかりよ。魔力を石に持たせると魔術を込められるようになって、硬度も上がるから宝石が傷つきにくくなる。暗殺や人に恨まれやすい貴族にとってはなくてはならないモノってわけ」



 ふっと息を吐いたベルは「貴族は早い段階で『身を守る方法』について教育されるから基本知識として知っているのよ」って軽い口調で言ってたけど、楽しそうではない。

貴族としての知識を伝える時のベルは困ったように笑ってたりするんだよね。


(騎士の訓練で学んだことは嬉しそうに話してくれるのにな)


 ベルの家がどうなってるのかさっぱりわからないから、気軽には聞けない。

リアンに相談したこともあるんだけど「個人への質問はいいが、ベルは貴族だ。家への質問は自発的に教えられる迄聞かない方が賢明だろう」って言われてるし、ずっと聞けていなかったりする。


 顔には出さない様に気をつけながら、答えてくれたことに対してお礼を言えば説明をラクサが引き継いでくれた。



「魔宝石化するには、錬金術師か宝石師に頼む必要があるッス。宝石師ってのは、宝石系細工極めた細工師の事っスね。錬金術師が「何でも屋」なら宝石師は「専門店」ッス。宝石師は宝石関係の細工に使う特殊な溶液や素材、道具を作れるんスけど、それ以外はからっきしって感じっすね」



 細工師と一言で言っても、そこから様々な分野に分かれていて呼び方が変わるそうだ。

 宝石師、彫刻師、装飾師、金細工師なんかが有名どころだとか。



「オレっちは専門試験に受かってないんでただの細工師なんスよね。もうちょっと腕を磨いて勉強しないとヤバいっす。工房は持ってるんすけど、売り上げが足りなくて中々受験できなくて」


「細工師も大変なんだね……」


「専門職は基本的に免許や資格が必要ッスからね。目に見える評価基準があるとお客になった時安心できるじゃないッスか。ま、そういうのがない国もあるみたいなんスけど」



 自信にもなる上に身分証明も出来るから取っておきたいのだ、とラクサは話してから、ウパラエッグの話に戻る。



「話が逸れたんスけど、ライム達に頼みたいのは『魔宝石化』ッス。溶液は用意したんで、それを使って調合して欲しいッス」


「仕事として頼むことにしたから、報酬は俺が出す。俺が新しい武器か防具を作ってやる。どっちか選んでくれ」


「……それだと、報酬が作業量と明らかに釣り合わないのですが」



 心底困ったというような表情を浮かべたリアンにケイパーさんは楽しそうだ。

気にするな、と言った後バシッとラクサの背中を叩く。



「完成した武器や防具にはラクサが細工を施す。性能は、まぁそこそこに仕上げておく。今つけてるのよりはいいものを作る予定ではあるが、実力以上の力を発揮する武器は、死を招くだけの凶器になる。防具に関しちゃ、出来るだけ優秀なのを仕上げるつもりだがな。武器とは違って防具はいざって時に役に立たなきゃ意味がねぇ」


「ってことなんで、付き合ってくれると嬉しいッス。もちろん、モルダスに戻った後も仲良くしてくれると助かる上にオレっちも役立てるよう腕を磨くんで、先行投資ってことで一つ頼まれちゃーくれねぇッスか?」



 パンっと両手を合わせて頭を下げたラクサをみて断る理由もなく、コチラこそ、と提案を受けることに。

ついでに、とケイパーさんからは高品質の【魔力剤】という宝石を魔宝石化する為だけに使う調合素材のレシピを教えてもらった。




【魔力剤】

 調和薬+魔力の源+水素材

 宝石を魔宝石化させるために使用する液剤。

 調和薬と水素材を入れた調合釜に魔力の源(固形)を入れて溶けるまでひたすら魔力を込める。一度沸騰したら温度をキープする。



【魔力の源】※一回分の分量

 魔石(三色C品質で六個分)+中級魔力回復ポーション(C品質以上なら上級魔力回復ポーション)+聖油(教会で購入可能)

 魔力剤を作る材料。

 ひたすら魔力を消費するが失敗する確率はほぼ無い。

 魔石がすべて溶けるまで魔力を注ぐ。石は沸騰させる前から入れておいて徐々に加熱。




 ヒクッと口元が引きつった。

これは酷い。

魔力の消費が今までの経験したことない量の調合ばっかりしている自覚はあるんだけど、魔石が溶けるまで魔力注ぐって……。



「ねぇ、これ……戻ってから私たちに調合出来ると思ってる?」


「魔力回復薬はセンカさんが在庫処分を兼ねて帰りに提供してくれるって言ってるんで、今後も頼んだッス! オレっちはこの後装飾品に必要な部品を仕上げていくンで」


「魔力の大量消費は錬金術師になれば普通のことさ。今のうちに慣れておくんだね。そうそう、錬金術師はある程度の体力が必要になってくる。長時間立ちっぱなしだし、重いものを持って作業することも多い。この程度でへこたれてちゃマトモな錬金術師にゃなれないよ」



 さっさと作業してきな! と、追い立てられるように調合釜の前に立たされた私たち三人は、遠い目をしつつ、氷石糖の予行練習を兼ねて三人での共同調合をすることにした。


 お陰で、無事ウパラエッグは魔宝石化に成功。

汗だくになりながら魔力を注いだ成果をそっと取り出して柔らかい布の上に乗せた直後、私たちはぐったりとその場に倒れ込んだ。



「もー……むり。うごけない。あつい。のどかわいた。むりぃ」


「同感、だな……氷石糖との温度差が凄まじいんだが……」


「わたくし、もっと体力付けた方が良いのかもしれませんわ……これは、ちょっと」



 ぜーぜー息を吐きながら動けない私たちに、サフルが慌てて冷たい水で冷やしたタオルを持ってきて私たちの汗を拭ってくれた。

 気持ち良すぎて寝そうだったもん。


 ちなみに、調合中は途中で何度か暑さでぼーっとしてたんだけど、背後から聞こえてくるケイパーさんの怒声とラクサの元気な返事で何とか持ち直した。

チラッと一瞬よそ見をしたら、鬼の形相のケイパーさんに熱血指導されてるラクサが。

 冷えた水を貰って飲んだ私たちは、重たい体を引きずるように完成したウパラエッグを運ぶ。

丁度、ラクサの指導も終わった所らしく、変わった形の金属の部品が複数あった。



「お。仕上がったみてぇだな。どれどれ……うんうん、いい感じだ。品質はSってとこだな。カラーも中々珍しい。グリーンとイエロー、レッド、ブルー、バイオレットも出てるな……ギリギリ、セブンストーンってとこか。バランスよく色が出てればSS品質だったんだが」


「あの、ケイパーさんはパッと見ただけで品質が分かるんですね」



 道具もなしに肉眼で少し角度を変えて眺めただけ、に私は見えた。

思わずそんなことを口走ると彼はキョトンとして豪快に笑う。



「宝石の目利きは基本だからな。宝石鑑定の資格も取ってるし安心してくれ。流石に特殊効果までは分からんがな」


「ライム。ケイパーさんは軽く言ってるが宝石鑑定の資格を取得するのはかなり難しい。道具なしで詳細鑑定と同じ鑑定結果を出せる人を僕は初めて見た」


「なるほど。ラクサは規格外な師匠を持った、と」



 苦労するわねぇと悪気なく言い放ったベルにラクサは真面目な顔で



「ほんとそうなんスよ。ま、中々キャラが濃い師匠なんスけど、技能も指導も的確なんでめっちゃ儲けたッス」


「儲けた、で済ませていいのか……? それは」



 何とも言えない表情で腕を組んだリアンと呆れた顔のベル。

私は少し休んだからか余裕が出てきた。

ウパラエッグが何になるのか注目していると、ラクサが小さく咳払いして見ててほしいと一言。


 全員が注目している中で、ラクサは眼鏡をかけて細かいパーツを何の迷いもなくウパラエッグに取り付け始める。


 完成したウパラエッグは直径1センチほどの卵型。

母岩と美しい宝石が程よく入り混じって神秘的な輝きと独特の存在感を醸し出している。


 ラクサはかなり集中していて一言も言葉を話さなくなった。

それを見ていたケイパーさんが苦笑する。

優しく見守る様な視線は弟子を見る目というより息子を見る父親って感じ。



「ラクサの凄い所は集中力と手先の器用さだ。頭もいい。器用貧乏になりそうだが、一皮むけりゃ化ける。厳しく指導しても逃げ出さねぇ根性もあるし、お前さん達はいい細工師を見つけた―――……装飾品の一切は、任せてもいい。宝石・木工・金細工は素質がある。呪術系の耐性と適性もあるようだから、呪いを刻むのも出来るだろう。こいつには俺が持ってる本をいくつか譲るつもりだ。必要なら資金も出す」



 成長が楽しみだ、と口の端を持ち上げたケイパーさんにベルが口を開く。

妙に雰囲気が硬い。



「どうして、そこまでするんですの? 血の繋がりのない、他人でしょうに」


「弟子だからだ。俺が若いもんに技術を教えるのは、必要なことだと理解してるがな………人ってのは最終的に『人柄』を見るのさ。気に入らねぇやつに教える物好きではないんでね。ラクサは『細工』が生活の一部になってる」



 人柄、と口にするとケイパーさんは頷いた。

そしてチラッとセンカさんを見たけど、彼女は小さく鼻を鳴らしただけでそっぽを向く。



「弟子なら、今までたくさん取ってきた。何だかんだで出会いは多かったからなぁ……いいのも、悪いのも。その中でもラクサは逸材だぞ。教える立場としては、かなりいい。こいつはな――― 俺に会えたのを心から喜んで、俺の技術を全て盗もうとしてる。俺が作業している間は必ず起きて、メモをし、俺が寝てる間に只管練習を繰り返してんだ。睡眠時間なんざ放り投げて、ひたすらな。若いころの俺でもそこまでしなかった。体に悪いからやめさせたが、放って置いたら、ひたすら細工してやがる」



 絶句する私とリアンの横でベルが小さく頷いた。

で、何故か胸を張って私を指さす。



「ライムの調合バカと同類ってことね」


「いや、その辛辣な表現っ! せめて調合好きとか細工好き程度にしておいてよっ! それに私ちゃんと寝てるっ」


「ライムの場合は寝てると言うか気絶に近いじゃない。朝から晩までずっと動いて何かしてるんだもの。少し休んで頂戴な。見てて落ち着かないのよ」


「ああ、確かにな。スタミナどうなってるんだと思うことが多々ある」



 しみじみ同意されて唸っているとラクサの明るい声が響いた。

パッと視線と意識が向かう。



「出来たッスよ! 【ウパラエッグのブローチ】ッス。まぁ、ブローチって言ってもスカーフ留め、ループタイにも使えるようにしてあるんスけど」



 ちょっといいか、と私の首元にある石と交換させて欲しいと言われ、頷く。

外した石を見せて欲しいとケイパーさんに言われたのでそのまま渡した。




「―――……あら、似合うじゃない」


「ホントっすね。いい感じっス」


「……首元だと少し派手じゃないか?」



 じっと首元を見る三人に冷や汗が噴き出た。

震える手で取り付けられたブローチを指さす。



「いや、あの、これS品質って言ってたよね? しかも宝石。恐ろしい値段なんじゃ」


「やだなぁ。気にしたら駄目っスよー。正直オレっち達の中で一番装備貧弱なの、ライムなんスよ? 一番弱いのに」


「憑りつかれるしな」


「魔力で殴るのは出来るみたいだけど、魔力切れたらすぐ死ぬのよ?」



 むぎぎぎ、と何も言い返せずにいるとケイパーさんが徐に私の腰を指さす。

指さした所には丁度リボンの結び目が。



「そこの石をこれに入れ替えた方が良さそうだ。首飾りは保留」



 そうね、などと私以外の全員が同意して流れに依り私が【ウパラエッグのブローチ】を持つことになった。

 ウパラエッグには『創造力を高める』『未来への導き』『幸運を生み出す』といった宝石言葉なるものがあるらしい。


 錬金術師として想像力を働かせる助けになればいい、とラクサが言ってくれたので有難く貰うことに。



「あの、ありがとう。宝石貰ったの初めてだから、もう、なんて言っていいのか分からないけど……」


「いやぁ、光栄っス! でも絶対今のはディルの前で言わないように。ホントマジで。オレっち召喚獣の餌になる未来しか見えないんで」


「? う、うん」



 頼むから勘弁してくれ、と熱弁されたのでとりあえず頷いて置いた。

あ、ベルやリアンからは「幸運……ってことは珍しい素材に出会える確率が上がるんじゃ」とか「採取量が増えたりしてな」って言われただけだったり。

サフルは褒めてくれたけどね!



 いいんだけどさ……ベルとリアンは、もうちょっとラクサとサフルを見習ってほしい。







 ここまで読んで下さって有難うございました!!!

毎度のことながら、誤字脱字や変換ミス、矛盾点など教えて下さって有難うございます。

それだけでなく、感想やブック、評価もとても有難く……っ!バイブレーションしてしまう位、嬉しい…あれです、なんか嬉しくて震える系作者です。


 誤字報告、いつもありがとうございます。即適用。即修正。

感想などもお気軽に。現在100%返信しております。このキャラが好きですー!なんてのも頂けると、私は飛んだ上に羽ばたけそうです。重いからあれだけど。



=アイテムなど=


【ウパラエッグ】

 ウパラ(パリオス)ストーンという古くから愛される宝石の変わり種。

ウパラ(パリオス)ストーンは色の定義のない特殊な石で、正式名称はウパラ・パリオス・ストーン。直訳すると『色の変化を見る貴重な石』とるが、その名の通り光の反射などで何種類もの色を発する不思議な石。

 レッド系、イエロー系、ブルー系、グリーン系、ブラック系、ホワイト系におおよそ分けられるが、最上はセブンストーンと呼ばれる七色の色を持つ石。

色が多い程価値が上がるが、数色でも色の入り方や反射によって見え方が違うので愛好家が多い。

そんなウパラストーンの中でも変わった性質を持つのがウパラエッグ。

このウパラエッグは、成長過程で黒い石を吸着し、その中で大きくなる。

どれほどの大きさになるかは石と環境次第。価格も良心的なものから城が買えるようなものまでさまざま。

《加工について》

 ウパラエッグを覆う、黒い石を剥がすには魔力を注ぐ必要がある。

外から魔力を注ぐことによりウパラストーンと黒い石のつながりが強制的にはがされ、原石+母岩が残る。なお、黒い石は母岩ではないので注意が必要。

基本的に母岩が原石を内包していることが多いので、ウパラエッグの出来を左右するのは磨きの作業。

『見せる場所』『角度』を原石がどこにあるのかを見極めながら作業する必要があり、磨くためにはウパラエッグ専用の研磨剤を作成し使用しなければ宝石化しない。

また、母岩は基本的に赤~黄灰色と取れた土地の岩の色をしていることが多いが、魔宝石化された場合何故か銀もしくは金色になることが多い。不思議な性質を多く持つウパラ系ストーンはどんなに安価であっても一つとして同じものはない。

なお、宝石モデルはカンテラオパール。

【魔力剤】

調和薬+魔力の源+水素材

宝石を魔宝石化させるために使用する液剤。

調和薬と水素材を入れた調合釜に魔力の源(固形)を入れて溶けるまでひたすら魔力を込める。一度沸騰したら温度をキープする。

【魔力の源】※一回分の分量

魔石(三色C品質で六個分)+中級魔力回復ポーション(C品質以上なら上級魔力回復ポーション)+聖油

 魔力剤を作る材料。

ひたすら魔力を消費するが失敗する確率はほぼ無い。

魔石がすべて溶けるまで魔力を注ぐ。石は沸騰させる前から入れておいて徐々に加熱。





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後書き) >価格も良心的なものから城が返るようなものまでさまざま。 城が買える?
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