表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
195/349

191話 共同調合は難しい(1)

 ちょっと早めに書き上がりました。

ほぼ会話回。

素材や果物を考えるのがとても楽しいです!





 これ、と差し出された物体に首を傾げる。



 触ってもいいか、と聞くと頷いてくれたので恐る恐る手に取る。

手早く一番薄い手袋に着け替えて、黒く歪な石を様々な角度から観察してみた。



(原石なのはわかる。けど、肝心な調合素材が全く見えないのは珍しい……コレ、中にほんとに入ってるのかな?)



 重さを量るべきだろうか、なんて考えているとセンカさんが小さく息を吐いて扉の方へ移動したのが見えた。

 パッと視線を向けると丁度ノックの音が響く。



「随分早いね。まぁいい、入んな」


「ッス。お邪魔するッスよー。お、まだ魔力を注ぐ前で良かったッス」



 ニッと笑うラクサは工具箱のようなものをテーブルに乗せて、センカさんに許可を取ってから私の手の中の原石をチェックし始めた。



「随分デカいっすね――……これ、この辺りで発見された宝石なんスけど、ちょっと特殊なんスよ。ケイパーのおやっさんが錬金術師に加工してもらうのが一番いいって言ってたんで、せっかくだから今回一緒にアイテムを作るって話になったらしくて」



 持っていた道具を置いて満足そうな顔で石の塊を眺めていた。

ケイパーさんは細工の技術を学ぶのも大事だけれど、職業によって役割があるからそれを正しく理解するべきだと考えているらしく、今回は合同でアイテムを作らせたいってセンカさんにお願いしたんだって。



「素材の説明に戻るッスよ。簡単に言うと、この中に卵型の原石が入っていて、それを取り出して研磨なり加工なり細工なりするんス」



 ラクサが腰に付けた革製の道具入れから小袋を取り出し、中身を袋の上に置く。


 小さな、親指の爪くらいの大きさの石だ。

緊張で硬い表情だったベルとリアンもその石を覗き込んで驚いてた。



「リアンやベルは聞いたことあるかもしれないっスね、これ【ウパラエッグ】っていう宝石ッス。昔は多く産出されたらしいんスけど、今は産地がかなり限られてるとか」


「うぱらえっぐ……なんか美味しそうな名前だね」


「いやぁ、オレっちでも石は食えないっスよ」



 思い当たる節がない私とは違ってベルとリアンがギョッとした顔で石を覗き込んでいる。

テーブルの上の石は、ツルンとした表面で澄んだクリアイエローの石にオーロラのような青や緑、紫の光が。

 綺麗な卵型に感心しているとラクサが説明をつづけた。



「で、宝石にする方法なんスけど……まず、この原石に魔力をありったけ注ぐんス。オレっちは魔力量は一般人よりあるとはいえ、流石に錬金術師や召喚師程はないンで死ぬかと思いながらなんとか。こんだけデカい石なら相当魔力喰うと思うんで頑張って欲しいとこッスね」


「ちなみにだけど、ラクサはどのくらい魔力回復ポーション飲んだの?」


「二五本以上ッスね。飲むタイミングを間違えると体力をごっそり持っていかれるんで……大変だったッス」



 二度としたくねぇ、とため息を吐いたラクサに同情を覚えたのは私だけじゃなかったみたい。



(センカさんの家に来てから魔力回復ポーションを水より多く飲んでる気がする。お陰で魔力が切れる感覚と体力が削られ始める感覚が分かってきたからいいけど)



 ベルやリアンはまだ慣れていないらしく、ラクサには私以上に同情めいた視線と労わりの言葉をかけていた。



「まぁ、研磨剤やら研磨液なんかで外を溶かす必要はなくて、魔力を注げば余分な部分がボロボロ落ちてくるンで魔力が多い人間からすると他の材料費がかからないってのはいいっスよね。魔力回復薬が使い放題って訳でもなきゃ大赤字になりそーって最初はオレっちも思ったんス」


「違うの? っていうか、これそんなに高いの?」


「高いっスね、べらぼうに。なんで魔力を注ぐだけで宝石になるのかって話なんスけど【ウパラエッグ】には少し変わった性質があって、自分で姿を隠すようにこの黒い石を吸着してその中で大きくなるらしいんス。でも、外から魔力を注がれると黒い石と原石のつながりが強制的にはがされるンで―――……原石だけが綺麗に残るんスよ」



 何それ面白そう、と言いかけて気づく。

思わずセンカさんを見ると彼女はニヤリと笑う。



「魔力切れの感覚はしっかりと覚えておけば、調合しながらどのくらいの魔力回復薬が必要になるのか把握できるようになるからね。何より、魔力回復薬を多めに作って置く習慣ができる」



 だから頑張りな、といわれて納得した。

私はまだ魔力が切れるかどうかはわかるけど、回復薬をどのくらい飲めばいいか把握は出来ない。長丁場になる調合もあるから、この感覚は身につけておかないとマズそうだなぁと感心しているとベルが何とも言えない顔で石を睨みつけている。



「……私にも必要ですの?」


「錬金術師として『遅れ』を取りたくないならね。なぁに、身につけておいて損する技術じゃあない。嫌なら嫌と言ってくれて構わないさ、私はね。ただ、学年が上がるごと、錬金素材が希少であったり、調合量が増えるごとに魔力消費量は増える―――……寿命も延びるんだ。気張りな」



 寿命という言葉でベルは感情を消した。

そう、と冷めきった目で石を眺めて何かを考え始める。


 私はさっぱりわからなかったんだけど、心配になって名前を呼べばベルは我に返ったらしく、少し気まずそうに視線を泳がせた。



「家族の中でも、私の魔力は少ない方だから……ちょっと気になっていたのよ。健康は健康だけど、老化も早まるみたいだし頑張るわ」



 しっかりと強い意志を赤い瞳に宿したベルにホッと息を吐く。

話がまとまった所で私たちの前には大量の回復薬が並び、ラクサとサフルが回復薬の蓋を開けて渡してくれることになったので、集中して魔力を注ぐことが出来そうだ。



「じゃあ、まずは【カンビオの実】からだね。一応確認だけど、私はひたすら魔力を注いでいけばいいんだよね?」


「ああ。僕とベルが色合いを見ながら魔力量を調整する必要があるんだったか。最初の方は色を見ながら魔力を注いでいくしかないな。口頭で互いに指示を出すか?」


「最初はそれしかないわね。とりあえずやってみましょう」



 ベルの言葉で私たちは【カンビオの実】に指を添えてそこを起点に魔力を注ぐ。

二人の様子を眺めながら急激に減る魔力を回復するべく、一本目の魔力回復薬を飲む。

初級回復薬なので続けて二本、三本と常に口に入れる状態が続く。



「うぇ……このペースだと直ぐお腹チャプチャプになりそう」


「くっ! ちょっとリアン! 貴方もうちょっと魔力を注いで頂戴!」


「そういう君はもっと魔力を押さえてくれッ! 色を見ながら魔力を調節して……ライム、君はもう少しゆっくりでいい。倒れるぞっ」


「そうよ、貴女もうちょっとゆっくり魔力を注ぎなさいっ」


「え。ご、ごめん?」



 胃の辺りを撫でながらぎゃんぎゃん言い合いをしている二人に巻き込まれて慌てて謝れば、二人とも鼻息荒く「わかればいい」といいながら集中しつつ、口喧嘩じみた互いへの指示に戻る。



(魔力量を抑えるってことは、三分の二くらいのイメージで流せばいいのかな)



 このくらいか、と魔力を流す量を少し減らす。

十本ほど初級魔力ポーションを飲んだところで瓶が変わる。


 サフルがそっと「中級魔力ポーションです」と教えてくれたので有難く片手に持っておく。

暫く集中して魔力量を調整しつつ、二人の魔力が上手く混ざるように魔力が全体をぐるりと回るようイメージをして流してみた。



「ライム、何をしましたの? 急に魔力が流しやすくなったのですけど」


「注いだ魔力が調合釜を使用している時と同じ混ざり方に変化したのは何故だ?」


「魔力が上手に混ざるように全体を回るような感じで流してみたら、意外とうまくいったから驚いてて」



 上手くいってよかった、と驚きながら本音を零すとベルが首を傾げた。

サラリと赤い髪が肩から滑り落ちる。


 魔力色は髪より瞳の色の方が近いんだなぁと改めて見惚れていると、ベルは難しい顔をしながら何本目かの、魔力回復薬を飲み干して口を開く。



「どうしてそういう風な調整をしようと思ったのか聞いてもいいかしら」


「この【カンビオの実】ってさ、流した魔力が直ぐに反映されるって言うか……色ですぐにわかるから、錬金釜みたいに見えてきて。お試しでやってみたんだけど、二人が魔力を流しやすいっていうんならもっと早く気づけばよかったよね」


「気づけば、というか……僕らはそれどころじゃ無かったから君がそういう所に気付く余力があったこと自体に驚いてるんだが」



 ベルと同じように回復薬を飲み干し、手の甲で口元を拭うリアンが左の眉尻を跳ね上げる。

ちょっと不機嫌そうに見えるんだけど機嫌が悪い時特有のピリピリした感じがない。



「私は二人と違って魔力を流すだけだから……量も少し減らしたし、魔力回復薬をゆっくり飲むくらいの余裕ができたからつい。悪い結果にならなくて良かったなーってちょっと安心してる」



 よく考えると、相談してからの方が良かったよねと二人に言えばギョッと目を見開いて信じられないものを見ている表情を向けられた。


 いや、どうしてその顔? と思わず聞くと、今まではそういうことを言わなかったから驚いたと言われた。



「う。わ、私だって失敗したくないって思ってるんだから……コッチに来て、調合失敗したの初めてだったから今までちょっと調子に乗って好き勝手調合しすぎたなぁって反省して……失敗する確率もあること思い出してさ。まして、私一人で実験的に調合してるんじゃないんだもんね。三人で一緒に魔力注いで、一つの素材を作らなきゃいけないんだから、もっと考えた方が良かったかなって」



 リアンにもベルにも呆れられるのは、失敗することとかを考えないで「とりあえずやってみよう」って自分で考えて決めて、突っ走る癖が悪いのかも? と思い始めたのだ。


 前々からそういう風な考えが浮かばなかった、と言えばまぁ、嘘になるんだけど……つい、いつも突っ走ってた。

失敗もしなかったから調子に乗ってたのかもしれない。



(そう考えるとハーベルティーの調合はある意味『成功』だったのかも)



 思っていることをそのまま二人に伝えると、二人とも何とも言えない顔をして黙り込む。

集中したいのかと思って、私も大人しく意識をしながらカンビオの実を眺めているとラクサが感心したようにひょっこり顔をのぞかせた。



「にしても、凄いッスね。ライムの魔力に色がないって聞いてはいたし、最初のゼーレフックの種に魔力を注いだ段階で理解していたつもりではあったんスけど、こうやって見るとジェムクラスの水晶石を更に磨いたみたいな輝きになるとは思ってなかったッス。星でも散りばめたみたいにキラキラしてるんスねぇ」



 こりゃいい、と感心したような声に少しだけ肩の力が抜ける。

思わず笑うとラクサが歯を見せて笑うので、気を遣ってくれたことが私でもわかった。


 本音っスよ、と付け足されたけど嬉しくてお礼を言えば照れた顔で



「次にオレっちがこの【ウパラエッグ】の原石を見つけられたら手伝ってもらうッス。まだ採掘はしてないンで楽しみッスね~。やっぱ、掘り出す所から手掛けたいじゃないっスか、一度は。最初に見せたのは、おやっさんが持ってた原石に魔力注いだだけで、磨き作業やらなんやらは隣で見てただけなんスよ」



 とウインク。

こういう風な気遣いができるから周りに馴染むのが早いんだろうなあ。



「うん。あ、でもあんまり大きいのは見つけないでね。魔力足りないから。絶対」


「オレっちも丁度同じこと考えてた所っス。流石に、胃がチャプチャプになる感覚は暫く味わいたくないっスね……幸せじゃない満腹感っていうの初めて経験したンで」



 絶やすことなく注いでいた魔力が変化したのはこの会話の直後だった。

正確に言うと魔力が変化したんじゃなくて、感覚が変化したって言った方が良いかもしれない。



 ―――……手をつないだような感覚が魔力越しに伝わってきたのだ。



 初めての感覚に驚いてカンビオの実を見る。

すると何故か不思議なことに私の魔力とリアンの魔力が完全に馴染んでいるようだった。

指を置いた箇所が近いからかとも思ったけれど、ベルの指先とも同じくらいの距離だから一層不思議で、ただキラキラ輝く青色の魔力を眺める。



「いや、どういうこと?」


「ベル。ライムの魔力はわかるな? それに自分の魔力を混ぜ合わせるような感覚で魔力を注いでみろ」


「混ぜ合わせる……、難しいことをサラッと言わないで頂戴。ええと」



 眉をひそめたベルにリアンが『方法』を口にした。

それでも苦戦しているのを見て参考になればと口を開く。

まぁ、私が感じた感覚だからベルが分かってくれるかどうかまでは分からないけど。



「私は手を繋いだ時みたいな感覚がして、驚いた。こう、流した魔力って暫く気持ちがのってる事あるでしょ? 流した魔力を温かい別の魔力に包まれてる感じっていうのかな。わかりやすいのが手を握り合ってる感覚なんだけど」



「……手を繋いでる感覚、ねぇ?」



 ふぅん、と意味ありげな声を上げてニヤニヤしながらベルはリアンを見た。

ラクサもベルと同じような表情を浮かべながら魔力回復薬を手渡している。

一瞬楽しそうな表情を浮かべたベルだったけれど、数分後には感覚が掴めたらしい。


 キラキラ輝く青色に赤がジワリと混ざって綺麗な紫色になった。


 その紫の魔力は【カンビオの実】全体に行き渡って、灰色の薄汚れたように見える鱗状の殻が美しい光沢のある鮮やかな紫色へ変化していく。



「すごいね。香りも強くなってるし、キラキラしてて綺麗」



 宝石みたい、と暢気に見ていたんだけど二人はそれどころじゃなかったらしい。

真面目な顔でじっと魔力の流れを見ている。



「こういう風に魔力を注ぐ方法があったとは……意識の差なんだな。今までは流しただけで終わりだったが、魔力を注いだ先まで意識すると今までよりも細かく魔力を動かせるのか。広げて馴染ませたり、絡みつかせたり……繊細な調合をする際には有用な技術だな。効率的でもある」


「集中しなくちゃいけないから片手間には出来ないけれど、一度成功するとコツが掴めるのね。感覚に関してもライムが言っていた事が少しわかる気がする―――……一人で調合するのとは少し違うから結構難しいわよ、コレ」



 殻に、キラキラした紫色の魔力が完全に行き渡った所で二人に声をかける。

これ以上は『魔力の無駄』になるって感覚があったから。



「三秒数えるから、同時に魔力を切ろう。このまま流しても無駄になるし」



 リアンとベルの魔力比が崩れるとどうなるかわからない、と言えば二人とも納得してくれた。

3,2,1……と合図をしてほぼ同時に魔力を切ると疲労感がどっと襲ってきた。


 溜め息をついて、サフルから魔力回復ポーションを貰って飲む。

観察に夢中で魔力の管理がおろそかになっていたことをちょっぴり反省しつつ、大きく伸びをして緊張で固まった体を解す。



「魔力を切るとキラキラが大人しい色になるんだね。なんだか、宝石で出来た鱗みたい」


「言われてみると確かに。凄くキラキラしていたけれど、今は光の加減で光沢を放つ感じかしら。少し金属っぽいわ」



 言いながら、指で軽く殻にあたる部分を叩くベル。

澄んだ高音はまるで薄くても強度がある金属に似ていた。



(もしかしてこの殻って何かに使える? 結構丈夫そうだし)



 そう思ってしっかり観察してみるけど、鱗のような部分に切れ目はない。

ただ、クミルの実みたいに固い殻の真ん中あたりに溝がある。

 ここから割れば綺麗に真っ二つになるんだろうな、と思いながらいろんな角度から眺めていると、リアンが小さく咳払いをした。



「品質はS+だから文句なしの一級品だ。効果も色々とついているが、とりあえず魔力に関する効果が多い。これで『氷石糖』を作ると凄いことになるだろうな」



 無駄にはしたくない、と熱のこもった声に私もベルも静かに頷いた。

折角、三人で魔力を注いでここまで凄い品質の【カンビオの実】を作り上げたのだ。


 絶対に無駄にしない、と三人で改めて誓う。



「そうだ。折角だから寝る前に調合しない? 練習を兼ねて」



 夜なら寝てしまえば魔力は回復するし、と提案したんだけどベルとリアンが首を横に振った。ガッカリはしたけど、どうやら二人ともやることがあるらしいので諦めることに。

残念だなぁ、と思っていると今度は目の前にゴロっとした鉱石の塊が置かれる。



「さて、要領を掴んだようだからねぇ……――― ラクサ。次はアンタも参加して四人で魔力を注いでみな。宝石の加工には多少なりとも魔力を使う。素材を仕上げる段階で少しでも制作に関わる者の魔力が入っていた方が品質も効果も良くなることが多いのさ」



 そういうとセンカさんはニヤァッと笑った。

クイッと節くれだった細い指で二階に続く階段を指して



「倒れたら眠ればいい、夕食を喰いっぱぐれるがね。ああ、魔力回復ポーションはあるだけ飲んでいい。片手間に作ったものだし、何時でも作れるし、暇な時にアンタ達を扱き使うつもりだから前払いだ」



 精々頑張ることさね、と彼女は言い捨てて何処かへ出かける準備を始めた。

声をかけると「散歩だよ」とそっけない返事。


 いってらっしゃーい、と声をかけると鼻を鳴らしてパタンと静かにドアが閉まる。



「……とりあえず、始める? ラクサ、コツとかはないんだよね?」


「ないっすね。ただひたすら魔力を込めるだけッスよ」


「地道に頑張れって事ね。わかった」


「そういう事っスね。この集落で暮らしてる人間――特に生産職に携わる人間は極端なんスよ。細工を生業としてる人間は軒並み魔力が多いみたいで……こういう作業には慣れてるからオレっちが魔力回復薬がぶ飲みしてるのみて驚いてたんスよね」


 はぁ、と息を吐いてラクサは続ける。

私もベルもあまり集落の事情については知らないので大人しく耳を傾けた。



「集落で暮らしてる人は、全く魔力がない人間もいるし、逆に多すぎて制御が出来なかったり、体に不調をきたすような人間も多いとか……共通しているのは、大概が能力の所為で迫害されていたり居場所がなかったりする人が殆どって所っスかねぇ。子供なんかは、そういう経験がないみたいなんスけど」



 ここの暮らしに慣れると外で生活するには向かないかもしれないっス、とラクサはケイパーさんから聞いたことを話し始めた。


 子供であろうと、集落から出ていく時は例外なく『記憶を消される』そうだ。

両親に大切にされていた、愛されていた記憶だけ残して集落に関係することは全て完全に消されるので二度と戻っては来れないという。



「それは、まぁ仕方ないよね。貴重な素材は勿論、珍しい果物や値段を想像したくもないもので溢れてるんだもん……ましてや技術者も一級どころじゃない腕の持ち主みたいだし。魔力が多い人が多いっていうのもちょっと納得かも。チラッと見たけど『魔力補充屋』っていうのがあったし」


「僕も同意見だな」


「今となっては、あれだけ過剰に外部から来た私たちを警戒していた理由が分かるわ。これは、貴族やら王族に知られたら大変だもの」


「拷問されても口を割れないって契約に書いてあった時は物騒だと思ったんスけど、おやっさんたちの技術は恐らくどの国よりも進んでるッス。太陽と月を人の手で作ろうなんて考えて、実行した挙句一体何をどうやったら『完成』させられるんスか」


「深く考えると頭が痛くなるからやめましょう。この場所に関しては自分達が得られる物を吸収して、それで都合のいい夢を見たとでも思っておいた方が良さそうだわ」



 ベルの言葉を最後に私たちは口を噤んで黙々と【ウパラエッグ】を大きめのトレイに載せた。

ボロボロと岩が崩れるって聞いたから掃除の負担を減らすためだ。

それぞれ指を添えて魔力を込めていく。


 


 真っ先に回復薬を飲み干したのはラクサだった。






 誤字脱字変換ミスもですが、矛盾点などに気付いたり「ここはどうなってるの?」という質問などがあればお気軽に聞いてください。感想にかかれた質問にはできるだけこたえるようにしています。

 読んで下さって有難うございます、もうすぐ200話ですね!がんばろー。

取り合えず、調合回が二回くらいは続きそう。それから、温泉にいって、って感じですね。

長い上にスローペースですが調合や素材についてのあれこれは詳しく書きたい!って思っているので、お付き合いいただけると嬉しいです。

 今回出てきた素材のまとめは、次回に回します。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] ライムが相談しようと思うようになったのが嬉しいですね。素晴らしい成長だと思います! [気になる点] 『随分デカいっすね――……これ、この辺りで発見された宝石なんスけど、ちょっと特殊なんスよ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ