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182話 雨霞の中で蠢くもの

おっまたせしましたあああぁあぁあ!!!遅れてスイマセン。

とりあえず、何とか完成。

 違和感などありましたらチマチマ修正させていただきます!


最近気づいたんです……これ、下書き公開してるような物では?と(白目



 結界の外は、酷く視界が悪かった。




 ザァザァと絶え間なく降る雨は視界だけでなく足場も悪くしている。

地面は深さのある水溜まり。

お陰で走ると転びそうになるからと早歩きで移動している。

降り(しき)る雨の中を忙しなく歩きながら、どのくらいで合流できるのか分からないまま闇雲に進んでいくのは辛かった。



(手遅れになった、とか言われたらどうしよう)



土の混じった雨と水の匂いが足元から立ち上ってきては降り注ぐ雨で散らされていく。

私の目にとっては異様なこの森の光景もカルンさんからすると「いつものこと」らしい。

 前を歩くベルの靴によって跳ね上げられた水分の多い泥は、一瞬で雨によって水溜まりへと返る。



(水をはじく性質を持っているローブや服のお陰で冷たくはないけど)



 動きにくいのはどうしたってなくならない。

真っすぐに伸びる黄金色に発光する紐を手に取って歩く速度を上げた。

前方を進むリアンの横に並ぶとチラリとフード越しに視線を向けられる。



「なにかあったのか」



雨音にかき消されない様に告げられた言葉に同じ声の大きさで返す。

肩が触れるくらいまで近づいて、普段より少し大きな声で話さないと聞き取りにくいのだ。



「なんでもないけど、この紐って合流したら外すんだよね? すごく、動きにくい!」


「カルンさんとベルは切り離すが僕と君はこのままだぞ」


「……なんで?!」



動きにくいのに?! と驚愕する私に呆れたような雰囲気が滲む。

背が高く、足も長いリアンは比較的歩きやすそうだった。

 リアンはベルの腰に繋がっている自分の紐を眺めながら私に言い聞かせるように言葉を紡いでいく。



「ミルルクさんとディルに合流するまではこのまま進む。はぐれかねないからな。集落の人間が使う道には定期的に虫よけの薬品を撒いていると言っていたからある程度近づくまでは敵は出ないだろう」



そこまではいいな、と言われて返事を返す。


 現在、カルンさん・ベル・リアン・私の順で腰に紐をつけて一列に繋がった状態で歩いている。

腰に巻かれた紐は濡れると光る性質があり、良く伸びる上に頑丈と言うことで森に複数人で行く時ははぐれない様にと各家庭に一本は支給されているらしい。



「途中まで行くと、道を外れるので当然敵は出てくる。この際にベルやカルンさんは紐を外し、外敵を排除しながら道を作る。僕はその補助で君は僕からはぐれない様に紐は着用したままだ」


「はぐれない様にっていうけど【識別液】を飲んでるから見失わないと思うよ。雨の中でもうっすら発光して見えるし」


「敵に囲まれて分断されると厄介だ。少なくとも、ベルやカルンさんは自力で自分の身を護れるが君は無理だろう。虫の多くは複数で襲い掛かってくる。僕の武器は鞭で、広範囲の攻撃が可能だ。一撃は軽くとも牽制は出来るし、ミルミギノソスやギフトートバードは重さがあまりないから相性もいい。それに今回使う鞭は、斬撃に特化した特殊なものを使うからな。多少魔力は使うが、回復手段は君が持っているのだから効率を考えても手元にいてくれた方が助かる」


「……手元って。私は武器でも道具でもないんだけど」


「道具であり武器のようなものだろう、君も僕らも。僕も、君も、ベルも得意分野が違う―――…いちいち比較をしていては疲れると再認識したからな。最近」



自嘲ぎみに笑ったリアンはそれだけ言って言葉を切った。


 ああいう風に言われてしまえば反論できず、わかったと頷く。

リアンの言っていることは正しいと思うし、私も二人より採取に向いているのは分かってるけど二人が駄目だとは思ったことがない。


 でも、命を守る戦闘と単純にものを集めるだけの採取では色々と違うと思うんだ。

重さ、とかそういうのが。

リアンの背中を眺めながら足を動かす。



雨は一向に弱まる気配を見せず、周囲を容赦なく濡らしていく。




◆◆◇




 ミルミギノソスは、想像以上に厄介そうだった。



 最初に実物を見たのは、集落の人達の為の道を逸れるとカルンさんが宣言して十分程進んだ時だったと思う。

ディルやミルルクさんがいる場所まではまだ二十分ほどかかると言われた目印になる物がない鬱蒼とした森の中で、それらは蠢いていた。


 古い蝶番が忙しなく開閉された時みたいな不快なギィギィという音の方を見る。

すると何かが、木々の間を縫うようにザワザワぞわぞわ、動いていた。



「ひっ…?!」



思わず口元を押さえた私の手をリアンがグッと引く。


 あ、あれなに、と震える手で指さした先には不気味な髑髏が大量に蠢いていた。

地面を蠢く様々な髑髏はぞろぞろと、でも確かに何処かへ向かって進んでいく。

生えている木を綺麗に避けて、整列し、猛然と私たちに見向きもせず。



「あれがミルミギノソスだ。聴覚はほぼ無い。触覚と目による光の強弱、匂いで敵・味方・餌を区別する。味方以外には容赦なく攻撃してくるんだが、恐らくディル達の方向に先陣を切った仲間がいるのだろう。そちらの応援が先だと『女王蟻』が判断したようだ」


「ミルミギノソスのお尻って言うかお腹の部分に髑髏があるのは? あれ、凄く恐いんだけど」



眠れなくなったらどうしよう、と呟くとリアンが小さく笑った。

冗談を言っていると思ったのかもしれないけど私としては本気だ。



「髑髏が白なら普通の毒、赤なら猛毒、黄色は麻痺、紫は呪い、青は無害。どういう理屈なのかは分からないが、食べた餌によって色が変わるんだ。カルンさん次第だが、恐らく並走という行動をとるだろう。こんな集団をいちいち相手にしていたらいつまで経っても合流できないからな」



言うや否や走り始めたので慌てて追いかける。



(私達は紐で繋がってるから、一定距離離れるとどっちかが転ぶんだよね)



 少し走ると直ぐに先頭を走っていた二人が難しい顔をしてミルミギノソスの集団を警戒しつつ何か話している。

ベルが私たちに気付いてくれたので手を振った。

近寄るとカルンさんは視線を髑髏の行進を眺めながら口を開く。



「ベルさんには話しましたが、このまま並走します。通常毒を持った個体ばかりなので女王の後続護衛といった所でしょうから。ミルルクさんやディルさん達がいる場所は恐らくかなりの混戦状態になっている筈。ギフトートバードもかなりの数集まっているようです」


「ディル達は無事なんでしょうか?」


「ええ、問題ないようですね。二人とも空腹だと言っていたのでライムさん、申し訳ないのですが食べ物は大量に与えて下さい。食べた傍から回復するはずなので、半分回復したら働いてもらいます。その後は定期的に食べ物を与えておくか魔力回復薬を。使用した分の薬瓶はとっておいてくださいね、ミルルクさん達に代金を支払わせますから」



「ア、ハイ」



にっこりと優しく微笑んだカルンさんからは妙な威圧感があった。

 抵抗する気もないので大人しく頷けば満足げに頷いていて、チラッとベルを見ると私の耳元でそっと教えてくれた。



「集落に帰る途中だった二人が、カルンさんが個人的に栽培していた果物を食べてしまったらしいの。種を集めて増やすつもりだったみたいでこの通り」



結界も張ってあったようだし、注意書きなんかもしていたらしいから完全にディル達が悪いわねと呆れ果てた声だった。

 あー、と納得した所でカルンさんは少し考えた後、蟻がいる反対側を指さす。



「ひとまずは並走、としましたが反対側から音や声などが聞こえた場合は教えてください。今、別の群れと出くわして戦っているというケイパーさんとラクサさんがいますから、合流できるなら早めにしてしまいたいですし」



方針が決まった所で走りましょうか、とカルンさんが走ろうとしたので、慌ててポーチから『オーツバー』を取り出して手渡した。



「これは?」


「オーツバーです。手作りでハチミツなんかも使ってるので甘いのが駄目じゃなければ食べて下さい。雨の中だし、近接武器って体力一杯使うって聞いたことがあったので……その、食べてる余裕なくても折って口に放り込めば手は塞がらないですし」



暫く驚いた顔で私を見ていたカルンさんはフッと目を細めて、ポンポンと優しく私の肩を叩く。



「大丈夫ですよ、ライムさん。ミルルクさんはかなりふざけたご老人に見えますが、実力は確かで虫や鳥ごときでは早々死にません。このオーツバーは美味しそうですし、気になるので有難く頂きますね。請求はミルルクさんにしておくので」


「え。いや、お金は……!」


「受け取ってください。心配して下さったその気持ちだけで十分すぎる程嬉しいです。こんな風に心配されることはあまりないですから」



有難く頂きますね、と大事そうに道具入れにオーツバーをしまい込んだカルンさんはベルやリアンを見て力強く頷きニッコリ笑った。



「君たちは自分に出来ることを好きなようにやってみて下さい。フォローはしますからね。自暴自棄な行動だけはしないように――……まだ収穫作業も終わっていませんし、ね」



そういって私たちの肩をポンポンと叩いて、カルンさんは背を向けた。

 華奢にみえる筈の背中はとても頼もしく、大きなものに見えて私は指先にほんの少し体温が戻ったことにびっくりした。

どうやら知らない内に緊張していたらしい。


 再び走り始めた私たちは少し速度を上げた。

雨の中、それも障害物が多く足場の悪い道を行くのは体力もだけど気力もすり減っていく。

かなりの距離を走った所で新しいミルミギノソスも見えてくる。


 左右を挟まれるような形だったのでパニックになりかけた所、カルンさんは走るのをやめて振り返る。



「どうやら、合流できそうです。このまま挟まれるのは良くないのでまずはケイパーさんたちと合流しましょう。私は後ろから潰していきます。あなた方三名は、挟み込まれないよう少し戻ってから改めて進み、ケイパーさん達と合流していてください」



今なんか凄いこと言わなかった? と思いつつ、流されるまま頷けば進路を右へ変えたカルンさん。


 いつの間にか手には武器。

トゲトゲの付いた鉄球付き棍棒を手にしているのに速度は衰えないらしい。

ある程度の所でカルンさんが手に持った武器を振り下ろし、全長1メートル弱の子供ほどの大きさはあるミルミギノソスを粉砕した。一度に数十匹ほど。


 とても軽快な「さぁて、いきますよぉ!」という少し間延びした、でも思いきり楽しそうな声が聞こえた気がしたけど気にしないことにする。気にしたら負けだ。

 もう何も言うまい、と心に決めて足を動かす。



「………ねぇ」


「見るな。ライム。大丈夫だ、合流しよう。気にしたら負けだ」


「そ、そうだね」



そうっと動きだした私たちに背後から「列後方から潰していくとケイパーさん達に伝えて下さいっ」と叫んでいたので返事を返し、全力で私たちは走り始めた。



 もう必死だ。


 先に合流してしまおうと三人真顔で走って暫く、足場は変わらないけれど環境に少し適応したらしい。

少し速度を落とそうと提案するとベルとリアンも同意してくれたので小走り程度の速さに戻す。



(ラクサ達がどこにいるのかまだ見えないけど二人とも、戦いやすい場所にいて欲しいな)



どうせ戦うなら戦いやすい所の方が良い。


 カルンさんは大きな武器だから大変だろうな、と呟けばベルから棍棒が魔力の注ぎ方で大きさを変えられるらしいと教えてくれた。

どうやら赤の国のダンジョンで時々出る魔道具らしい。



「へ、へぇ……なんか物騒」



便利ではあるだろうけど、と思わず呟けばリアンが確かにと小声で賛同してくれた。

ベルはそうかしら、なんて言いながら羨ましいとぼやいていたけどね。



「そういえば、ライムは大丈夫なの? 貴女、その……ええと、散布機だったかしら」


「あ、うん。使い方は簡単だったから大丈夫そうだよ」



任せて! と笑いながら答えると先頭を走っていたベルがちらりと私へ視線を向けるその視線は私の背中に背負われているタンクへと向けられているのがわかった。


 散布機、っていうのは文字通り何かを散布するための道具だ。

私だけ戦闘が得意じゃないと聞いたカルンさんが「相手は虫なので、使えるのではないでしょうか」と貸してくれたのだ。


 背負っているタンク部分に、除草剤や栄養剤なんかを入れて必要な箇所に撒いているそうだ。

飛び散って掛けたくない場所にかからない様に細かく量や範囲、勢いも調整できるようになっていた。

調整するためのボタンは、長いホースの持ち手部分についている。



「勢いは最大、量は極少量でいいと思う。水で試してみたんだけど、今の設定だと結構狙い通りに飛ばせるよ。水の玉を相手に当てる感じ」



ただ、問題になってくるのは命中率。

視界が悪い上に、雨がかなり降っているから効果が薄くなるかもしれないと伝えた。



「その心配ならしなくてもいいと思うわ。殺虫液って少量でも虫を弱らせることができるのよ。まぁ、ミルミギノソスは毒虫だからどのくらい効くのかまでは私もわからないのだけれど」


「毒虫にも効果がある様に調薬されているのが殺虫液だ。僕らが捌ききれずに寄って来たものに対応するには十分だろう。ただ、劇薬であることに変わりはないから扱いには気をつけてくれ」


「わかった。殺虫液って使ったことなかったから注意することとかあったら教えて」



雨の中を大声で話をしつつ会話をする。

途中で息が上がってきたリアンを余所にベルはまだ元気そうだ。



「私も殺虫液は使ったことがないのよね。戦闘では使わないもの」


「持って行かないの? あると便利そうなのに」


「虫を相手にする仕事ってあまりないのよ。冒険者ギルドにはそういう依頼はあるでしょうけど、騎士って国からの指示で動くから中型や大型の魔物や盗賊団への対処が多いのよね。もちろん大量発生したり場所によっては虫の捕獲や殲滅も入ってくるから戦闘訓練はするけれど」


「ベルは一時的な入団って言ってたもんね。本格的な訓練はしてないってこと?」


「訓練は基本的に騎士と冒険者の戦い方は違うから。少数精鋭が冒険者、集団戦闘が騎士なの。今でもそうだけど、単身で突っ走るのはその癖が抜けないからね。どうにか直さなきゃ……ドラゴンとやり合うならできることはしないと。護衛を雇うのも資金面で色々不安があるし」



工房のお金は個人で自由に使えない。

 そうだよね、と相槌を打ったところでリアンが口を開いた。




「だ、大丈夫? 少し速度落とそうか」


「だい、じょうぶだ……ッ」



 ずっと走りっぱなしだったこともあり、結構辛そうだ。

眉を顰めていそうな苦しそうな声に一度足を止めることにした。

周囲には雨の音と耳障りな蟲が顎を鳴らす威嚇音。


 リアンに飲み物を渡して落ち着かせる。

ベルは周囲を警戒しながらラクサ達がいると思われる方へ意識を集中し始めた。



「――……多分、この先にいるんじゃないかしら。勘だけど、それほど遠くない筈よ」


「ベルの戦闘での勘ってよく当たるから色々準備しておくね。リアンには、魔力回復できるアイテムと食べもの渡しておくから自分で危なくなったら食べて」



わかった、と口にする代わりに頷いたのを見届けてポーチから必要なものを取り出して渡していく。


 ベルには体力回復できるものと手を使わなくても食べられる一口大のものを渡して、傷薬を多めに。足りなくなったり回復する時は後方に下がってくるという事だったから、取り出しやすいように袋を分けておく。

リアンの息が整った所で殺虫液の使い方についていくつか注意を受けた。



「殺虫液だが、使用中は絶対に手袋を外すな。食べ物や口に入れる物を渡す際は素手で渡す様に」


「劇薬って言ってたもんね。毒としての取り扱いをしておけば大丈夫?」


「ああ、その認識で問題ない」



 呼吸が落ち着いたらしいリアンは口元をハンカチで拭ってから行くぞ、と一言。

そのあと全力で走ってベルの言う通り五分程走った所で、大きな音が聞こえ始めた。

時々聞こえるのは人の話し声。


 怒鳴り声と思えるほどの大声が二つ。

雨で視界が悪いと言ってもある程度近づけば動きは分かるので、目を凝らしてみる。



(――……たぶん、あの大ぶりな動きで敵を千切って投げてるのがケイパーさんだよね。大きいし。その周りをクルクル動いているのがラクサかな)



時々ラクサの周辺がちかちかしているのを見ると間違いないだろう。


 ラクサは金符を使うって言ってたし、雨が降ってるからビリビリって痺れる系のを使っているのかもしれない。

炎は使えないだろうしね。



「ラクサの負担が大きいわね。とりあえず、突っ込んで合流するわよ。私が前にでて、リアンは中距離を。ラクサとケイパーさんは後方に下げてライムの護衛兼漏れたやつを倒してもらうわ」


「わかった。ライム、紐を外す。合流地点まで絶対に僕から離れるな。死ぬぞ」


「わ、わかった!」



ベルとリアンが武器を構え私が頷いたのを確認してから、ベルが大きな声でラクサとケイパーさんに向かって大声で叫んだ。



「応援に来たわよッ! 二人とも合流したら私が先頭、リアンは中距離、二人はライムの護衛と打ち漏らしの処理しつつ体力回復して頂戴ッ」



叫びながらベルは大斧を大きく横に凪ぐ。


 ぬかるんだ地面で少しだけ足が滑ったのか小さく舌打ちしたものの、直ぐに地面を蹴った。

リアンはミルミギノソスを吹っ飛ばし、空いたスペースを更に開けるように大きく鞭を振るうけれど柄の部分以外私は認識できないので勝手に敵が飛んでいく。



(初めて見た鞭の形だなぁ。なんか、痛そう)



 茨鞭とはまた違った、とげとげチクチク具合にウッカリ切られたらいやだなと思っていると手を思いきりグイッと引っ張られた。


 リアンに「ぼーっとするな!」と怒られて慌てて足を動かす。

腕を引っ張られながらバシャバシャ地面を蹴ってミルミギノソスでぎちぎちの道なき道を縫うように進んでいく。


 ラクサやケイパーさんが慌てた様子でこちらに向かってきてくれているのでちょっとホッとしたらまたリアンに怒られた。



「君はどうしてそう集中力を直ぐに放り投げるんだ!?」


「あ、あはは。ごめん」


「ごめんじゃない! 戦闘技術以前に緊張感のなさをどうにかしろッ」



 そんなこと言われても、という言葉を飲み込んだ。

でも、私だって周囲はしっかり見ているとおもう。

 現在、周りにはミルミギノソス二体分くらいの空きスペースが常にある。

前方にいる敵はベルが容赦なく平均五、六匹とかまとめて飛んでいくんだよね。


 どうやっているのかは分からないけど、数体を上空へ浮かしてから首を落としているみたい。

正直、目で動きが追えないから、ベルの腕の動きで察するしかできないんだけどさ。


 リアンは鞭を的確かつ効果的に左右や後ろから襲い掛かろうとするミルミギノソスを切り刻んでいる。



「なんか、凄い虫の輪切りできてるね」


「その表現どうにかならないのか?」


「いや、だってほかに表現しようがないじゃない」


「……念のためにバラバラになった虫の死骸は極力踏まないようにしてくれ」


「靴溶けたら嫌だもんね」


「そうだけどそうじゃない!!」



 走りながら宙を舞っては死んでいくミルミギノソスをただ眺めていると、あっという間に合流した。

ケイパーさんとラクサは私達のやり取りをしっかり聞いていたらしく、何とも言えない表情で私の護衛を引き受けてくれたんだけど、疲れている筈のラクサがポンっと肩を叩いて



「大丈夫ッス。殺伐とした戦場では、一人くらい暢気でいる場違いな人間が必要な時もあるッスよ」


「ラクサ、おめぇフォローになってねーぞ。嬢ちゃん、まぁ、そのなんだ……とりあえず生きて帰ろうぜ。な」



ハイ、と頷いて二人に体力回復効果があるポーションを渡す。

続いてさっくり食べられるオーツバーや解毒薬なんかを押し付けていく。

 ポンポン出てくる道具に二人は少し驚いていたけれど、楽しそうに戦うベルとリアンを見て何も言わずポーションを飲みながらオーツバーを齧り始めた。



(帰ったらセンカさんに危機感ってやつをどうやって身につけたらいいのか聞いてみよ)


 ここまで読んで下さって有難うございました。

お待ちいただいた方、帳尻があって丁度良かったよーという方、うっかり開いてしまった方!

ツイッターやたいあっぷなどから飛んできてくださった方も有難うございます。


 誤字脱字変換ミスなど恐らくあると思いますので、発見された方は四つ葉のクローバー見つけた!みたいな気分で誤字報告してくださると嬉しいです。拝みます。

 評価、ブックなどもとても嬉しいです!感想や質問はお気軽に。


少しでも楽しんで頂けたなら幸いです。これからも書くぞー!

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