174話 【アールグレイ】を作ってくれた
紅茶。こうちゃ。コウチャ。
アールグレイは私の血液。ってくらい毎日飲んでます(爆
ただ、アールグレイでもなんでもミルクティー(無糖で低脂肪乳)です。問答無用!
真の紅茶好き……ではないのかもしれませんが、私にとってのベストです。
冬は特に。
あ、緑茶も抹茶も好きです
おばーちゃんやベルとリアン以外の調合を見るのは、かなり久しぶりだ。
センカさんは手を洗ってから、作業台を拭いて大きな白い布を広げた。
白い布の上に布袋に入ったハーベル草を開けて大きなボウルとザルを新たに用意して、調合釜の温度を確認。
「さて……道具はこんな感じだねぇ。なんでもそうだが調合をするにゃ、下準備が大事だ。特に薬や肌なんかにつけるものは繊細だから特に。まず、【アールグレイ】と【ハーベルティー】に必要な素材についてだ。今日は最大量で調合をするが、初めて【アールグレイ】を調合するなら一回分、六回分、十二回分と段階を踏んで作るんだね」
「理由を聞いてもいいですか? 最初は一回分を調合するのは分かるのですが、最大量の半分で調合する理由は……」
「作業に慣れる為さ。最小量から最大量を直ぐに作ると感覚が身につかない。段階を踏んで作ることで、茶葉の状態を見極めやすくなる」
なるほど、と納得したのを見てセンカさんは私達の前に一つずつ素材を置いた。
どれも見慣れたものばかりだ。
「必要な素材は、ハーベル草、センマイ草、聖水だ。調合で紅茶を作らない場合、紅茶は一日風通しのいい日陰で干す作業がある―――…これに該当する作業を蒸留器で行うんだ」
「あれ? でも蒸留器って湯気で素材を加熱して、出てきた湯気を冷やして液体を作る装置ですよね」
暇を持て余してそこら辺に生えている雑草で適当なもの蒸留したことがあった。
その時じっくり観察したんだけど、作りや構造自体は単純だったと思う。
「そうさ。この蒸留器は本来なら紅茶には使わない。だが、それを使ったのがオランジェだ」
私達では考えもしないようなことを平気でするのが面白くてね、妙な連中が良く集まっていたもんだ、と懐かしそうにしながらも説明を続けていく。
「少し変わった使い方をするからよく見ておきな。まず、蒸留器の本体に聖水をセットして本来『冷却器』をつける場所に発酵器をつける」
蒸留器にはいくつか形があるみたいなんだけど、私やセンカさんが使っているのは『単式蒸留器』という種類。
普通なら、二つの容器を冷却機能が付いた管で結び、容器の片方を熱することで、植物素材から香りがついた液体や油なんかを抽出するんだよね。
でも、この冷却機能を発酵器に変えるだけで一日の陰干しが短時間で出来るという。
発酵器は、大きな瓶のような形をしている。
三分の二の所から上下に分かれるようになっていて、頭の部分は管を繋げるようになっている。上下に分けて、下部分に台座付きの金属皿。その下には赤色魔石。
「この皿は赤色魔石を練り込んだ金属でできてるんだ。聖水の成分で上から蒸しつつ、この赤色魔石に魔力を入れて金属皿を温めることで発酵することができる。この発酵器にセットする金属皿で火力が変わるから何種類か必要になる。大体、そうだね……低温、中温、高温で最低三枚ずつはいるし、破損に備えて予備も買った方がいいから私が持っている蒸留器と発酵器を買うなら金貨二百枚は必要だ」
「後で職人を紹介してください」
「私も依頼するわ。どっちも美容系の調合に使えそうだし」
(どうしよう、凄いお金持ちの会話してる)
交わされる会話にドン引きしつつ、センカさんの手元を見ていると赤色魔石に魔力を注ぎ終わった所だった。
聖水は既にセットされ、丁度卓上ランプに火をつけた所だ。
「まず、蒸留器を温めておく。この段階で火は弱火だ。本体と発酵器の間にとりつける管は繋いでおいても良いが、管の先はまだ栓をしておくように。発酵器は、金属皿を温める必要があるから少し放置しておく。使う皿は一番低い二十~二十五度の皿だ」
はい、と返事をするとセンカさんは広げたハーベル草の処理を始める。
全て金色のハーベル草は、傷んでいる部分をハサミで切り落とし、鮮度の悪いものを容赦なく弾いていく。
この辺りは普通の処理と同じだ。
「本体の卓上ランプを弱火にしているのはハーベル草とセンマイ草の処理時間を確保して、後で沸騰させる間の時間を短くする為さ。処理が終わったらすぐに発酵器に入れて、一気に火力を上げる。ある程度温度を上げてあるから、聖水を素早く沸かすことができるんだ」
そういうと処理し終わったハーベル草とセンマイ草を混ぜ合わせて発酵器の金属皿へ。
均等の厚さになる様に茶葉を重ねるように、素材を並べて置けば均一に発酵させることができるらしい。
「とりあえずコレで火力を上げて、聖水が三分の一になるまで本体と発酵器は繋がない」
「なるほど……こっちの金属皿はそのままかぁ」
「ああ。で、管を繋いで五分で一度発酵器を開けて、茶葉をひっくり返し、聖水が半分になるまで蒸す」
どんな状態で何をするのかよく見ておくように、と言ったっきり暫くセンカさんは話さなくなった。
私達は蒸留器と発酵器の状態を詳しくメモしていたんだけど、途中でリアンは時間、私は状態、ベルは火力や蒸留器と発酵器の状態をそれぞれ記録することに決めた。
手分けして一つのことに集中した方がより詳しく記録できるからね。
「この後の観察記録はどうする?」
「僕は時間を計るから、ライムは素材の状態とタイミング、ベルはセンカさんの手の動きや火力などを重点的に見てくれ」
「そうね。魔力の注ぎ方に関しては実際にやってみないとわからないから、動きだけでも覚えておくわ」
「ベルは動きを覚えたりするの私達より早いもんね」
「まぁ、戦闘では必要なことだから。リアンは時間に関してはキッチリしているし、ライムは素材や状態の見極めが得意だから任せるわよ」
うん、とそれぞれ観察をしながら話をしているとサフルにセンカさんが
「この子ら、いつもこうなのかい」と聞いているのが聞こえてきて苦笑する。
いつもって訳じゃないけど、一度しか見られない調合だ。
自分達が調合する時に困らない様に、出来るだけ細かく記録を取りたいと思うのは当然だと思うんだよね。
後でセンカさんにそう話した時「錬金術師としては珍しい考え方」だと言われた。
なんでも、レシピを共有するという考え方自体が珍しいみたい。
結局同じ工房で調合釜も隣り合ってるから、レシピを見られない様に気を使うのが面倒なだけなんだよね。
(リアンやベルも最初はレシピは個人所有、って考えだったけど魔力契約した辺りから少し変わってきて今はもうすっかりレシピについて相談したり話し合うのはいつもの事って感じになってるし)
金属皿の上の葉っぱを眺めてスケッチとメモをしながら、そんなことを考えていると、あっという間に蒸留器と発酵器を使った一次発酵が終わった。
火を止めて、発酵器から金属皿を取り外したセンカさんは、白い布を取り除き一枚の使い込まれた板を乗せた台の上にしんなりした茶葉を広げた。
「ここからが重要な工程だ。水分が抜けた茶葉を掌でこすり合わせるように魔力を込めながらもみ合わせるんだ。その内、撚り合わさるが、それはほぐして構わない。団子状にならない様に、三十分~一時間くらいだね」
「一時間、ですか」
「ああ。どの工程でも魔力を使うと言ったが正確に言うとこのもみの工程で一番魔力を使う。魔力を惜しみなく注ぐことで茶葉の乾燥を防ぐことができる―――…しっかり揉めていれば、手に茶葉がつくくらいベタついて、しっとりとした金色になる。揉み合わせにかかる時間は魔力の注ぎ方によって変わる。私の場合は慣れているから三十分くらいだね。揉み方もよく見ておくといい。感覚だが、魔力は一定に保つべきだろう。魔力量がまだアンタ達は少ないから、二人一組でやるといい。一人は魔力が切れかかったら口に回復薬を突っ込む役だよ」
ひひひっと楽しそうに笑いながら、慣れた手つきで茶葉を揉んでいく。
乾燥には注意するよう再三口にしながら、素早く魔力と一緒に茶葉を掌で擦り合わせているのをみて、メモをしていたベルが小声で「力加減は直接教えてもらうしかないわね」と
満遍なく揉まれながら、魔力を注がれていく茶葉の変化は直ぐに現れた。
立ち上るような香りが一気になくなったのだ。
驚いていると、魔力と揉むという作業によって茶葉に香りを閉じ込め、効能を引き出しているんだって。
「この揉みの作業が一番大事だからね、ハーベルティーの時にしっかり練習しな。ハーベルティーで品質Sが安定して作れるようになってから【アールグレイ】を作るといい。じゃなきゃ失敗するよ。素材は希少だし仕入れるにゃこの集落から買い付けるか自力で育てるくらいしか方法がないだろうからねぇ」
「ハーベル草の育て方とか聞けるなら聞いてみたいんですけど、カルンさんって忙しいですよね」
「収穫の手伝いをしながら聞けばいい。同じ労働や苦労を共にした相手には多少寛大にもなるからね」
「なるほど。収獲はいい運動にもなるし、採取の練習にもなるからやりたいですっ。何処に行ったら会えますか?」
「それなら、私から連絡しておいてやるよ。その前に明日、ビトニーの所に行って服の相談をしてきな。収獲の手伝いをするなら作業着を買った方がいい。いくら錬金服でも収穫作業には向かないからねぇ。肌をなるたけ隠さないと虫にやられるよ」
「リアン、ライム。作業中は問答無用で虫よけを使いますわ」
間髪入れずにそう口にしたベルに苦笑する。
ただ、有益な虫もいるから許可を取ってからにしようと言えば渋々頷いていた。
どれだけ嫌なんだろう、虫。
「そういえば、ライムは虫にあまり反応しませんわね。嫌いなものとかも余り聞かないし」
「言われてみると確かに苦手なものを聞いたことがないな」
それぞれの役割をこなしつつ口を動かせるのは慣れだ。
暇なときに観察しながらメモを取る練習を始めたんだけど、二人も有益そうだってことで同じように練習し始めたんだよね。
センカさんは無言だったけれど私を見ているので素材の状態を観察しながら考えてみる。
「虫は平気だよ、ウジャウジャいたし。可愛いのもたまにいるんだ。可愛くないのが圧倒的に多いけど。苦手って言うのかは分からないけど、アンデッドは暫くいいや」
いい思い出があんまりない、と言えば二人から「あー」という返事。
二人も納得したのか私の魔力色のことを考えてか、それもそうか、的な流れになったのでホッとする。
だって、色々他にないか考えてみたけど特に苦手なものは思い浮かばないからね。
(そもそも、「あれが嫌い」だとか「これが嫌だ」とか言ってられる状態じゃなかったし。自分しかいない状態で嫌だから代わりに誰か~…って話にもならない)
私の判断基準は、『できる』か『できない』かの二択だ。
『嫌い』『好き』で分類はしないし判断もできないんだよ。
パタッと会話が止んだのを見計らったかのように、茶葉からふわっと強い香りがした。
状態は細かく絵と文字で記録しているんだけど、キラキラした金色から少し茶色が強くなったような……?
少し近づいて茶葉を見て、判断基準を一つ見つけた。茎の部分だ。
茎が金茶、葉は薄っすら茶色みが強くなっている。
「さて、とりあえずコレでいい。ここから、調合釜に入れる。といっても、アンタ達なら五分程度だね。この工程を省くと後々出てくる美容効果が低くなる―――…この時、蒸留器を最初と同じように温めておく。気をつけなくちゃいけないのは、繋いだ管を外して、栓をすることさ。発酵器は既に冷めているから、こっちも同じように温めておく」
一斉にペンを走らせた私たちを横目で確認した彼女はパッパと準備を終えた。
揉んだ茶葉を木製のボウルに移し、そのまま調合釜へ。
「最大量の調合をする際はここで50ml、中量の6回分なら25ml、一回分なら5mlを茶葉と一緒に入れて、茶葉が浮かんでくるまで思いきり魔力を注ぐんだ」
話しながら茶葉と聖水を入れて、魔力を注いでいるんだけど、凄かった。
とんでもない量の魔力が注がれているらしくあっという間に浮かんできてその間、二分。
さっさとお玉で茶葉を掬い上げ、発酵器に茶葉を入れる。
「私の場合は調合釜を使う時間が短いから最大火力で蒸留器を温めておくが、五分なら気持ち強めの弱火がいいだろう」
「はいはい! あの、この調合ではずーっと低温皿の金属皿ですか?」
「ああ、そうさ。発酵器として使う場合は低温。乾燥器として使う場合に中温と高温の皿を使い分ける。わかっちゃいると思うが、取り換える時には耐熱の手袋か道具を使いな。作業机に直接乗せると焦げるからゆっくり冷ませるように―――…水やなんかにつけるのはよしなよ」
返事を返しながら、茶葉の扱いやセンカさんの挙動に意識を向ける。
それが分かっているらしく、少しだけゆっくり動きながら解説してくれるのでとても助かった。
「発酵器に乗せてからは同じだ。これで、蒸留器にセットした聖水がすべてなくなるまで放置する。すべての発酵が終わる前に聖水はなくなるから、すぐに火を消して管を外し、発酵器単体で発酵させる―――…目安は、そうだね。葉の三分の二が金茶色になったら取り出しな」
「全部発酵させない理由を教えて頂けますか」
始終丁寧な口調のリアンにちょっとした違和感を覚えつつ、茶葉の様子を見る。
最初は結構な量があったのに今では半分以下になって、少しずつ発酵によって嵩が減っているのがわかる。
(この発酵器って面白いかも。乾燥器としても使えるって言ってたし、乾燥させた方が美味しいキノコとか効能が良くなる薬草とかに使ってみようかな。道具って実際に使ってみないと分からないし)
手を動かしながら観察を続けているとセンカさんがリアンの質問に答えてくれた。
もう調合も終盤だからか、使わなくなった機材を片付けている。
錬金道具や機材は高いから奴隷や他人に任せるのってちょっと怖いんだよね。
サフルは丁寧に扱ってくれるってわかってるけど、やっぱり自分で使った自分のものって人に触られたくないし。
「この位で発酵を止めると紅茶として飲む時に香りが強くなるのさ。手順の説明をするが、この後は乾燥と発酵を止める為に、調合釜を強火にして魔力を注ぎながら加熱。浮き上がってきたら完成だ」
まだ暫く蒸留器での発酵が続くのが分かったベルが茶葉を揉み合わせる時の力加減などを詳しく聞いていて、練習する方法についてもあれこれ詳しく質問している。
いつもより熱心だなと考えている私にそっとリアンが
「ベルは恐らく美容効果が気になっているんだろう。今までの傾向と性格を考えるとそう考える方が自然だ」
「あー……なるほど。美容効果か。そっちの方面好きだよね、ベル」
「金にはなるな。君は興味ないのか」
「あんまりない。だって、顔の基本構造って変わらないし……多少見た目悪くなっても錬金術は出来るもん。他の皆が気を使うレベルなら顔隠せばいいだけじゃん」
「それはそうなんだが」
「まあ、ベルとかリアンは人と接することが多いだろうし、今後もそうだろうから気にした方がいいのかなぁとは思ってるけどね! 私、最終的におばーちゃんと一緒にいた家で好きに調合して美味しいもの食べられればいいし」
「欲があり過ぎるのかなさすぎるのか……欲望に素直なことだけは理解した」
はぁ、と息を吐きつつ蒸留時間を教えてくれる辺りリアンはリアンだなぁと感心していると意味もなく頭を掌で軽く叩かれる。
痛くはないんだけど、どういう意味のサインなのかさっぱり分からないんだよね。
(本人に聞いても『特に意味はない』って返されたし、ベルはニヤニヤ笑って教えてくれないし。ラクサは苦笑して『オレっちからは何とも』って誤魔化されて、ディルは……殺気立ってたっけ)
やれやれ、と息を吐いて絵を描いていると「君は絵と料理と調合だけは上手いよな」と褒められた。褒め、られてる筈だ多分。首席眼鏡め。
ベルは喜々としてセンカさんに美容効果を上げるコツを聞いていたので放置だ。
巻き込まれると面倒だし。
のんびり話をしながら観察を続けていると、センカさんが茶葉の状態を見て蒸留器の火を止め、調合釜の火力を上げ始めた。
「さて、ここからは早いからよく見ておきな」
そういうと発酵器のみの状態にして、完成した茶葉を入れる瓶を持ってきた。
密封保存瓶だ、と言われたそれは二十五回分の茶葉を全部入れられる大瓶で、普通のコルクではなくキラキラと輝いたガラスのような栓で出来ている。
調合釜のすぐ横にある作業台へ蓋を開けた状態で瓶を置いたので、一瞬視線を向ける。
「変わった瓶だなぁ……コルクじゃないし」
「ああ、これは瓶とコルク両方に劣化無効の効果をつけた特製瓶さ。特殊効果をつけた【液体金属】が作れるようになったら作ってみるといい。アレは便利だよ、まぁ、液体金属だけじゃどうにもならないから腕と知識を磨くんだね」
はい、と三人で返事を返すとセンカさんは、発酵器から茶葉を取り出す。
ホカホカと湯気を出している茶葉は柔らかい腐葉土を思い出した。
「腐葉土くらいの柔らかさですか?」
「そうだね。陽があたって温かくなった腐葉土って感じかねぇ。ああ、森の中の温泉周辺の土にも似ているよ」
「あー、なんとなくわかりました」
「この集落には少し変わった温泉があるから、その内案内をつけてやろう。まぁ、もう少ししてからだね……まだ日が悪い」
木製ボウルに移した茶葉をそのまま釜へ入れて魔力を注ぎながら大きなスプーン状の混ぜ棒を動かしている。
混ぜる為の棒は数種類あると便利だと言われた。
スプーン型だと魔力を流しつつ大きくかき混ぜたりもできるしお薦めらしい。
加熱と魔力のお陰で水分が飛んだそれは、茶金色になっていたけれど輝いている。
丁寧に瓶に茶葉を移し、コルクで封をしたセンカさんは作業机に瓶を置いた。
「これで【アールグレイ】の完成だ。昼の支度をしているうちにレシピをまとめて、三人で作って見な。茶葉を揉むところは交代でやらないと今のアンタ達には作れないよ」
「それは魔力量ですか? それとも錬金術師としての腕ですか」
「両方だ。まだ錬金術を学んで一年も経っていない“見習い”にゃ荷が重い。三人でギリギリ、と言った所だろうね」
精々頑張りな、というと私たちを今の机へ移動させ静かに片づけを始めてしまった。
その姿を少し眺めていたけれど、今やれることをやろうと私たちはメモしたものをお互いにテーブルに広げ、時系列順にやるべきことなどを組み立てることに。
「あ、材料の詳しい重さとか聞いた方がいいよね」
「僕が聞いてくるから、ベルは確定事項を魔法紙に書いて欲しい。ライムは茶葉の様子をこっちの用紙に書いておいてくれ―――…この二つの魔法紙は少し特殊で、最初に魔力認証をした人間以外見ることができない。登録者以外が見ても無地の魔法紙にしか見えない。これに書いて保存しておけばレシピをほかの人間に知られずに済む」
「便利なもの沢山持ってるね」
「使えそうなものは先行投資もかねて購入する癖がついているんだ」
「根っからの商人気質ですわね」
「仕方ないだろう、そういう風に育ってる」
「役に立つ癖だからいいんじゃない?」
確かに、と息を吐いてベルがサラサラと文章を書いていく。
調合アイテム名の所には【ハーベルティー】の文字。
貴重なものを見たなと改めて思いながら渡された用紙にスケッチを参考に絵を描いていく。
ベルとリアンは文字が綺麗で、絵が描けるのは私とベルだけだ。
「リアンが絵心なくてよかったよ。私の出番何にもなくなるところだったもん」
「絵心以前の問題よね。美的感覚はある程度備わっているのに、どうして描けないのかしら」
「さぁ……?」
コソコソそんな話をしつつ、私たちはまとめ作業を急いだ。
こういうレシピをまとめる作業って結構楽しいんだよね。時間はかかるけど。
(午後から調合か……三人で調合するのは初めてだけど、上手くいくといいな)
めっちゃ、頑張った!!
機材の説明などが入っていますので、ちょっと面倒かもしれません。まとめるのが、ヘタです。こう、できるだけ現実的になる様に、紅茶の作り方を勉強しつつ、異世界アレンジ。
ふはははは…めっちゃ、疲れた。美容効果については次回。
誤字脱字をチェックする体力と気力がww
一応、何カ所か気付いて直していますが……非常に、怖いです(震
以下、新調合の手順です。クッソ長い。
=新アイテム=
【アールグレイ/ハーベルティー】
聖水150ml・*50ml+ハーベル草(品質:高品質固定)+センマイ草
*は調合量による。1回分なら5ml、6回25ml、12回は50ml
ハーベル草は1回分なら10g(6回分:62g。12回分:125g)
センマイ草は2g(6回10g、12回分:25g)
注意:単なる倍数ではないので分量は慎重に測ること。誤差は±2程度。
≪道具≫
・木製板(香りのないもの)・白い布(ゴミなどを見やすくする為)
・木製ボウル ・蒸留器 ・発酵器(低温皿(二十~二十五度用))
・保存瓶 ・茶葉を調合釜から出すお玉
≪手順≫
【下準備】
・茶葉を選別(ゴミ、枯れなどを徹底的に除去。コレを加味して多めに用意)
・蒸留器と発酵器の準備。発酵器の皿は低温皿を使用。魔石には魔力を込めておく
・蒸留器に聖水をセットして弱火で温める、発酵器は低温皿を温めておくがそれぞれ連結せず、単独で温めておく
・処理をした茶葉(ハーベル草とセンマイ草を混ぜたもの)を合わせて均一に発酵器の皿へ。
均等の厚さになる様に注意し、聖水が三分の一になるまで放置
・三分の一になったら管を繋ぎ、五分分置いて茶葉をひっくり返す。聖水が半分になったらボウルへ移す
・ボウルから、木製板の上に乗せて擦り揉みをしながら魔力を込める。
※団子にならない様に三十分~一時間揉む
一瞬香りが強くなるので集中し、茶葉の茎が金茶に、葉がうっすら茶色みが強くなったらやめる
※蒸留器と発酵器を準備しておく
・調合釜に聖水と茶葉を入れ、浮き上がるまで全力で魔力注ぐ
・浮き上がったら直ぐに発酵器へいれ、葉の三分の二が金茶になるまで発酵
※聖水がなくなったら火を止め管を外し、発光器単体で発酵させる
・発酵が終われば、再び調合釜に入れて強火。魔力を注ぎながら加熱し、浮かび上がったら完成