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166話 戦闘音痴の戦い方

緊張感が行方不明。

なんとか、一週間以内の更新。


雨の中、現代で言うゾンビと戦ってるのに、ライムが加わると緊張感が崩れてく…orz



 雨の降り方が変わった。



穏やかで包み込むような雨だったのに、冷たく体温を奪うような、それでいて痛みすら感じるような強いものになってきていた。

 周りの温度も下がって来たらしく、吐く息が白い。



「ねぇ、みんな、ちゃんと無事!?」



口布を咄嗟に二枚重ねてつけた自分を褒めながら周囲の音に消されないよう声を張り上げる。


 視界が悪いので私は早々に周辺の様子を観察することを諦めた。

私がディルの詠唱を助ける為にサフルと並ぶように杖を構えた時、状況が急転する。

数体がゆらゆら、と一定の間隔で私たちの方に寄ってきていたのが……突然森の奥からぞろぞろとアンデッドが湧き出てきた。


 その数は多く、ディルを護るように前で戦っているベル、リアン、ラクサだけでは対処しきれなくてディルの方へ向かってくる敵が増えてくる。

サフルが護衛としてディルについているけど―――…二人の武器はアンデッドに向かない剣と槍。


 お守りの力でアンデッドへ攻撃は効くけれど、あくまでそれだけだ。



「―――…無事だっ! ライムッ、君こそ無事だろうな…っ!」


「この程度で私がやられるわけないでしょっ! ライムこそ、参加するのはいいけど、くたばったら承知しないわよ」


「俺たちは今の所無事ッス。ただ、オレっちの方はジリ貧に近いっス。持ってきていた金札の殆ど使ってるんで、後はぶん殴るしかないんスよ! このドロドロのぐちゃぐちゃを!!」



ラクサの悲惨な声が聞こえてくるけれど、その間にもひっきりなしに打撃音や衝撃音、うめき声が聞こえていた。


 返答している間にも周囲から敵が押し寄せてくる。

ただ焚火のお陰なのか、テントの方からは襲ってこないのが唯一の救いだ。

炎を避けるアンデッドは『死体』を元にしたアンデッドで、炎にフラフラと寄ってくるのは実体を伴わないアンデッドらしい。



(どうしたらいいんだろう、すごく沢山いるけど……ベル達の所だけじゃなくて私たちの方にもぞろぞろ来てるし)



一度吹っ飛ばしたけど、周りにどのくらいいるのか分からないので迂闊に爆弾は使えない。



「ディル様は今現在『浄化の炎』を詠唱中です! あと、ライム様が魔力を込めて杖を振るわれると一撃でアンデッドが吹っ飛んだのですが……」



 私も驚いたんだけど、サフルの後ろににじり寄ってきていた昆虫系のモンスターを遠ざけたくて魔力を込めた杖で思い切り殴ったら、吹っ飛んで木にぶつかって爆散したんだよね。

それを見ていたディルもサフルもギョッとしていたのが妙に面白かった。



「アンデッドには剣や槍よりも棍棒や杖の方が有効だからな……ッ! お守りでダメージが通るようになっているから、基本的にどの武器でも攻撃は可能なんだが効率がいいのは棍棒と杖、魔術などだ」



アンデッドは動きが鈍い。


 だから、私も安心して杖を振るうことができる。

私に出来た隙を埋めるようにサフルが動いてくれたり、ディルが詠唱をしながら槍で攻撃したりしてくれているので一定の間隔を空けることができていた。



(あれ、これ意外と平気かも)



 そんなことを思った私の全身は割と酷いことになってきていた。

自覚した瞬間に気持ち悪さが増して顔をしかめつつ、杖を振り回す。

左右に振り回す度に、グチャとかビチャとかゴチュとか粘着性の高い湿った音が周囲に響くのがまた不快感を上げるんだけど、文句は口に出せない。



(口布外してまともに深呼吸したら鼻と食欲が死ぬ。絶対。口を開けた拍子に間違って変なの飲み込むのは嫌だし)



可能な限り周囲を見ないようにしつつ只管に杖を振るう。

杖に込める魔力は、調和薬を作る時と同じだけだから魔力にはまだまだ余裕がある。



(問題は、雨やアンデッドの呻き声で、皆の声が上手く聞き取れない事だね)



 周囲からは徐々に不快感しかない音に交じって怒声に近い声が聞こえるようになってきた。

ベルとリアンだろうなと苛立ち混じりの怒声を聞きながら、武器を振り回し続ける。


 こっちは今大変なことになっているけど、ディルは順調みたい。

途中で一度爆弾を使った時に、ポーチから取り出した氷石糖を突っ込んでおいたのが効いたみたいだ。


 この氷石糖には詠唱を短くする効果があるから役に立つかなーと思ったんだけど、想像以上に役立ったらしい。

呪文が完成する数秒前にサフルが前方へ声を上げる。



「十秒後に呪文が完成しますっ」



避けて下さいという声に三人は素早く退路を確保してコチラまで下がってくる。

一時間は戦いっぱなしだからか三人とも息が上がっているが、疲れ切ってはいないみたい。


 素早く口布を外し、慣れた様子で聖水を口に含んでいるので、私はポーチから聖水が入った中瓶を三本出して一人ずつに一本分かけていく。

既に雨で濡れてるから今更だけど、聖水はちゃんと効果を発揮した。


 私が聖水を取りだしてベルにかけた所で術が完成。

テントの方向を避けるようにして広がった白い炎が最前列にいたアンデッドに着火し、それは徐々に周囲にいるアンデッドを燃料にするかのように燃え広がっていく。


 火がついた個体は数秒で燃え尽き、火種となって地面でくすぶる。

その上を通ったアンデッドは足元から燃えていく……というのを繰り返して行くようだった。



「はぁ……疲れたッス。なんでこんなにアンデッドが湧いてきたんスかね」




墓場でもあるのか?と訝し気に周囲を見回すラクサにベルが頷いた。

ベルの綺麗な赤い髪は一つにまとめられてフードの中に全て納められている。



「リアン。この辺りに墓場は?」



吐く息が白いけれど動いているからか寒くはないようで、暑いといいながら汗を拭っている。

ラクサとリアンも綺麗なハンカチで汗を拭いて、汚れた手袋を嵌めなおして嫌そうにしていた。



「聞いたこともないな。この森には何もなかった筈だし、そもそも入り込んだら迷うような所に墓地は作らないだろう。ただ、数が本当に異常なのは確かだ」



一体何が、と眉をひそめたリアンの横で大きく息を吐いたディルが煩わしそうに口布を外す。



「ライム。助かった。氷石糖がなければ今頃、立っていられなかった」


「良かった役に立って。とりあえず、全員口開けて。サフルとベルはクッキー食べて体力回復させて飲み物は聖水だけど――…他は乾燥果物と聖水でいいよね? ディルは乾燥果物と魔力回復薬飲んで。初級しかないけど飲まないよりマシだとおもう」



こういう時に錬金術師って便利なんだろうなぁと思いつつ、ポーチから必要そうなものを出して口にツッコんでいく。



「ああもう、みんなどうして背が高いのさ! 縮んでよっ、もう」



ベルは背伸びしなくてもいいけど手を伸ばさなきゃいけないし、リアンとディル、ラクサに至っては背伸びだ。



「いや、縮めって言われても困るんスけど。てか、自分で食えるッスよ?」


「色んな汁で汚れたばっちい手で瓶に触ってほしくない」


「納得しかできないッス」



私も汚れてはいるけど三人が下がって来た時点で手袋は外して聖水で綺麗にしている。

口布もフードも外したから視界は良好だ。雨降ってるけどね。


 リアンがかなり渋っていたけど早く口開けて! と怒ったら渋々口を開けたので乾燥果物を突っ込んで、それぞれの体力や魔力の残量なんかを聞いて回復アイテムの量を調整する。



「アンデッド、あと何体いるのかな」



爆弾の数や使えそうなものについて口にすると三人は難しい顔で黙り込む。


 数の把握が難しいそうだ。

夜な上に雨で視界が悪いからかなり困っている。

一応、魔石ランプを置いてはいるけれど、広範囲を照らせるわけじゃない。


 今明るいのは『浄化の炎』のお陰だ。

焚火をここで焚くことも考えたけれど、準備をしている時間が勿体ないしそもそも雨で普通の炎はあっけなく消える。



「ラクサ。結界のような物は張れないのか?」


「アンデッド用の結界はまだ作れないんス。第一、道具持ってきてないンで無理っスよ。回復した魔力で空になった金札が使えるようにはしたんスけど、全部に補給は出来ないし……これ以上続くなら直接ボコるしかないっスね」



ぜってー触りたくねぇけど、と呟いたラクサにふと思い出したことがある。



(結界って言えば、昔おばーちゃんが塩を部屋の四隅に山にして置くと、お化けが入ってこないとかなんとか言ってたような)


この雨だから塩は駄目だろう。溶けるし。

代わりに何か、と考えて聖灰を思い出す。


 聖灰は『聖なるもの』を灰にしたもので、錬金術でなくても作れる簡単なアンデッド除けだったらしい。



「……そういえば、困った時に使ってってミントが何かくれてたっけ」



冒険者ギルドへ聖水を届ける係になったと出発の少し前にミントが、何かをくれた。

余り物だけど、と申し訳なさそうに。


 その時に受け取ったものを思い出す。

軽いけれど、結構な大きさの布袋だった筈だ。

ポーチからその布袋を出して口を開いてみるとそこには細かい灰があった。



「リアン、コレちょっと鑑定して」



一息ついて武器に聖水をかけていたリアンへ、袋の口を開けた布袋を見せる。

鑑定結果は『聖灰』と出たらしく驚いていた。



「コレを結界の代わりに撒くのはどうかな? テントの所も入るように大きな円にしてさ。塩だったり聖水だったりすると雨が染み込んで駄目になりそうだけど、灰なら大丈夫だと思うんだ」



ただ、全部に結界を張ると倒しにくいから一か所だけ開けて、と考えを話すと全員が賛同してくれた。


 武器を構えて戦う体制を整えるベル達に続いて、私も前線に出る権利を貰った。

自分達の見えない所で戦っているのを見るのが一番怖いと言われた時は、どう反応したらいいのか分からなかったけどね。



「灰を撒くのはサフルがするといい。俺は―――……『虚ろな鎧』と『ヴィスフレッサー』を召喚する。強くするのにも丁度良さそうだし、結界の外に召喚すればコッチに向かってくることもないだろ」



 うん、と一つ頷いてゴソゴソと真っ黒な宝石を二つ取り出す。

よく見ると黒に近い赤と紫だってことが分かるけど、雨に濡れ魔石ランプで照らされて妖しく輝いた。


 私以外のギョッとしている顔を見て首を傾げると、ベルは深い息を吐きながら一言。



「ライム、先に言っておくけどディルが言った二体は上級モンスターよ。なんでそんなものを使役できるのか……どっちで契約してるの?」


「完全屈服だな。ある程度懐いているが、他の人間には慣れていない」


「アンタ、『死者召喚師』でも目指してるの?」


「まさか。便利そうだったから契約した。特に『虚ろな鎧』の方は疲れ知らずだから荷物番にも警戒役にも丁度いいだろう。最初の召喚コストが高いが契約でない分、維持魔力は食わないしな―――…ただ、呪文が長い。氷石糖を食べているから短縮されているがそれでも長い。先に『虚ろな鎧』を呼び出して、偵察に出す。その後直ぐに『ヴィスフレッサー』を呼び出して結界の範囲外にいるものを食わせるから協力してくれ」


「……わかった。注意事項は」


「『虚ろな鎧』は問題なく共闘が可能だが『ヴィスフレッサー』は敵味方の区別がまだつかない。使役レベルは足りているがやや知性の伸びが悪くてな。俺以外に認識しているのは俺の召喚獣ぐらいだ。それ以外は貪り食いそうだから、俺の予備のマントを被っていてくれ。アレには俺の魔力を蓄えているから頭部を隠していれば食われないし、俺の傍にいれば安全だ」



ちらっと周囲の様子を窺うと浄化の炎が少しずつ落ち着いてきている。

まだ燃えているけれど、五分ほどで火が消えるだろう。


 サフルは既に聖灰を撒き始めているのでギリギリ間に合うかどうか、といった所だ。

雨は激しさを増し、汚れを防ぐ為に身に着けたローブは泥と腐敗した肉やら体液やらに塗れていて異臭を放っている。


 余りの悪臭に鼻が利かなくなったのが今はとても有難い。



「……タイミングを間違ったら悲惨だな」


「だねぇ」



うわぁ、と冷たい雨に打たれながら私たちはノロノロと武器を構える。


 吐いた息は相変わらず白くて少し体が冷えてきた。

動けば温かくなるわよと笑うベルと淡々と召喚準備をするディル以外の顔色は良くない。



「……えーと、終わったらお湯出してもらおうか。良いよね、もう一本魔力回復ポーション渡しても」


「ああ。ついでに、何かツマミを作ってくれ。ワインを開ける」


「良いっスねー……飲まないとやってらんねぇーッス。はは」



がっくりと肩を落とすリアンとラクサはお互い遠くの方を見て深い息を吐いていた。

気持ちはわかるけど、飲むんだねと苦笑し私たちは走り出す。


 ベルは誰よりも早く浄化の炎の中を駆けていき、炎を遠巻きにしているアンデッドを軽快に殴り飛ばしていた。

大斧も迫力があるけど、棍棒を振り回す姿も迫力しかない。



「そういえば、ライムは魔力大丈夫なんスか?」


「うん。平気。調和薬作る位の量で吹っ飛ばせるし」


「心強い返事に泣きそうッス。俺は金札が切れてから武器を使うッス。投擲も効きにくいんスけど、牽制くらいにはなるンで」



 動く死体は怖くない。

そんなことを思いながら不気味に揺れながらこちらへ押し寄せる死者の大群へ、大きく杖を振りかぶり、降ろす。


グチャ、と何とも言えない音が聞こえて来たけれどすぐに横へ杖を薙ぐ。


 数体が燃えているアンデッドを巻き込み吹っ飛んだお陰で、火がついていた個体と上手くぶつかってあっという間に燃え尽きた。




◇◆◇




今、四方を動く死体に取り囲まれているという、精神的に大変優しくない状態だ。



 一掃作戦を企てたまではいいんだけど、そこからが問題だった。



(ホント、お守り作っておいてよかった。魔力を込めた攻撃なら効くって言われてたけど、ここまで効果があるのはアンデッド対策をしっかりしてたお陰だよね)



そうじゃなきゃ私程度の力で吹き飛ぶはずがない。


 頭に杖が当たると頭が吹き飛ぶし、魔力を込めすぎてたら爆散。

脆いのかな?とも思ったけど、撲殺音を聞く限りでは中々に堅そうなんだよね。

雨で視界の悪い中、かれこれ一時間は戦っている筈だ。

武器を振り回しながらいい加減に休憩したいなぁと思っていた時の事。



「―――…っ! ライムッ、無事だろうな…っ!」



打撃音と断末魔の合間に聞こえてきたリアンの声に私は慌てて声を出した。


 無事だよーと答えたのはいいんだけど、うっかり魔力を込めすぎて私の周りにいた腐敗した狼や原形を留めていない死体、折れた関節からえぐい色の体液を垂れ流し首が取れかかった中型の昆虫が凄い勢いで吹っ飛んで――…爆散。


 誰もいない場所で破裂したから被害はなかったけど、危ないと冷や汗をかいた。

私の周りにいたアンデッドは倒し終わったので苦戦しているラクサの後ろににじり寄っていた膝位の芋虫型モンスターを叩き潰しておく。



「ラクサ、大丈夫?」


「助かったッス。オレっちの武器って、どうしても膝より下の奴に当てにくいンで」



円形の武器は投げる以外に、剣に似た使い方ができる事をこの時私は初めて知った。

 ザックザックと容赦なく首を落とし、腕を落とすラクサは困ったような声で話す。



「こういうアンデッド系を相手にするのはどうも苦手なんス。汚れるし、じっくり見たいもんでもナイっしょ?」


「気持ち悪いのが多いもんね。腐りかけとか虫が湧いてるのとか」


「うっへェ……って感じっすよホント。しかも、剣よりも短くて短剣よりも長いっていう間合いなんスよね。つまり、誰よりも接近して攻撃する必要がある。結果としてこんな風に盛大に腐敗した血やら体液やらを被っちゃうんス」



 だから虫とアンデッドは嫌いだ、とラクサが珍しくぼやきながら―――…ふらふらとおぼつかない足取りでこちらへ向かってくる子供の死体の首と胴体を切り離す。

周りには私達が倒した幾つもの部位が転がっている。



「実際に近くで見て思うよ。戦うのって本当に大変だね」



適当に杖を振っているだけで大丈夫な私とは違ってリアンもラクサも苦戦気味だ。

 ベルは豪快に棍棒で敵を吹き飛ばして楽しそうだけどね。



「―――……武器が武器だからな。茨鞭には毒の代わりに聖水を仕込んである。お陰で効果はあるが効率は良くない」


「リアンが敵を大量に拘束して、オレっちがその首やら胴体やらをチャクラムで斬り落とす方法は効率がいいんスけど、拘束中はリアンが攻撃できないし、チャクラムを投げるとオレっちの武器がなくなる。動きがトロいのが救いっすよ。中には早い動きの奴もいるんで油断できないのもまたイヤらしいッス」



大量にいるのも嫌だ、と呟いたラクサに苦笑して杖を振るう。

 こうして同じ場所に立つと分かる。



(戦いに向いてないっていうのはホント、納得だなぁ)



戦いは『見極め』と『経験』と『行動』が大事だってよくわかった。

私みたいにとりあえず武器を振り回しているだけじゃ駄目。


 どんな天候で、どんな攻撃をしてくるのか、行動速度は? 武器の種類や使い方、癖は? とか、色々考える必要があるって言われた理由を実感中。

ベルもだけど全員が対象の相手や範囲によって、息を吸うように武器の使い方や力の込め方、回避と防御を使い分けている。



(私の方に来るのが似たような大きさなのも二人が調節してくれてるんだろうな)



時々力加減を間違って吹っ飛ばしちゃうけど、今のところは無傷だ。

よし、この調子で頑張るぞーと杖を振っているとサフルが



「皆様、灰は撒き終わりディル様が三秒後に『虚ろな鎧』を召喚します。僕らのいる場所とは反対の場所へ召喚するそうなので、一時的にアンデッドがそちらに殺到する可能性があるとのことですから、お気を付けくださいませッ」



わかったーとそれぞれ返事をした所でベルが戻って来た。

よく見ると既に浄化の炎は消え、淡く光る聖灰の結界のみとなっている。



「――……ライム、爆風強化の爆弾は持っているかしら」


「あるよ。一つ? それとも二つ?」


「二つ頂戴。良さそうな所で投げるから、投げる前にラクサかリアンの背中に隠れなさい。リアンは体が薄いから、出来るだけラクサの方に隠れて頂戴。最悪、リアンでも背に腹は代えられないわ。貴方もうちょっと筋肉付けたら?」


「……放って置いてくれ」



ぶっきらぼうな声でベルに言い返すリアンが小声で「そんなに薄いか?」と呟いていたのには気付かない振りをしておく。

ベルは筋肉質って訳じゃないけど、しっかり引き締まってるんだよね。


 ラクサは顔に似合わず割とがっしりしてる。太って見えることはないけど、必要な筋肉が必要な所にある感じ。



「……リアン、筋肉付けるなら私もやる。ちょっと動きにくいし」


「ライムが筋肉付けてどうするのよ。というか貴女の動きにくさは胸の所為でしょ! なんで同じもの食べてるのにそっちにばっかり栄養が行くのよッ」


「し、知らないってば。ベルだって足とか長くて綺麗じゃん! 私なんか殆ど背が伸びてないんだよ! 成長盛りなのにっ」


「いや、多分成長のピークもう終わってるんじゃないんスかね。個人差があるって聞いたことあるッス」


「筋肉か……筋肉……腹筋か?」



動く死体を殴り続けるという現実と向き合うと精神的に疲れるからか、私たちは暫く無駄話をしながら作業的にアンデッドを倒していく。


 背後で生暖かい笑みを浮かべたサフルと複雑そうな顔でこっちを見ているディルには気付かなかった。





ここまで読んでくださって有難うございます!

評価、ブックマーク、感想、誤字報告とても有難くて嬉しいです。

アクセスして読んでくださるだけで励みになっていますが、一言貰えただけで有頂天。

単純な構造すぎて自分でも呆れます(苦笑


 ここまで読んでくださって有難うございます。

次は、多分さっくり終わって、さっくり……いけるといいな!集落に!

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