142話 応用で【吸湿袋】が【???】になった
すごく ながい です。
こんなに長く調合を描いたのは初めてかも?
布おもしろいですよねー。
何気に高ランクというか、割と特殊な調合でした。
吸湿袋は、偶然できたものだったみたい。
おばーちゃんが思いつくままに作ったって言っていたから本当の事だ。
使い道がないアイテムも多いのよね、と話してくれた中にこの【吸湿袋】があった。
(それが売れる商品になるとは。おばーちゃん、作るのは得意だったけど売ったり使うのはあんまり得意じゃなかったのかな)
少し遅くなったけど昼食を食べ終わった後だったので、食器はベルが洗ってくれることに。
その間にリアンは店の帳簿に何かを書き加え、私は【吸湿袋】に必要な素材を取りに地下へ向かう。
丁度、手が空いたらしいサフルが素材を運ぶのを手伝ってくれるらしい。
いつものように地下に降りて素材を入れる用の籠を持ってもらう。
使うのは『砂』と『魔石(赤)』そして『接着液』の三種類。
それに加えて、湿気(水)を吸い取る効果を付加したい布素材と様々な素材を合わせる為の調和薬。
五種類の素材を使うんだけど、分量がなかなか難しい。
「色々道具を用意しなくちゃ。あとは魔石を砕く為のハンマーと鉱石粉砕用の袋だね。石を粉にするヤツは調合釜の傍にあるし」
「石を粉にするんですか?」
「うん。魔石は魔力を通す特殊な道具を使えば簡単に砕けるんだけど、均一な粒子の細かい砂や粉にするには専用の道具がいるの。私の場合はおばーちゃんが買って家に置いといてくれたから、助かったけど凄く高いよ。石の粉砕って高レベルの魔道具を作れる人じゃなきゃ作れないらしいから仕方ないんだけどね」
錬金術みたいに『職人』や『専門職』と呼ばれる人は資格を持ってる。
師匠の元で修行して一定の実力があると認められるか、職業ギルドっていう資格を管理している国のギルドで試験に合格するかの二択。
実力不足の人がいるのは『師匠』に教わって認められたって人が多いんだよね。
師匠になる人も免許さえ持っていればいい訳だし。
試験で合格した人は一定の実力があるって認められてるから、そっちの方が受け入れやすいらしいんだけど……自己申告制だから嘘をつく人もいるんだって。
「『師匠』がどういう人なのかも分からないから師匠が有名な人でも簡単に信用して、ホイホイ物を買ったら駄目だよ。結果的に無駄になることもあるだろうし」
お金を出す以上は価格に見合った効果を期待するのは当然のことだと思う。
買ってがっかり……は出来るだけしたくない。
ただでさえ高いからね、錬金アイテム。
勉強になります、と恭しく頭を下げるサフルに「みんな知ってることだろうけど」と付け足せば静かに首を振られた。
「そういった知識を身に付ける機会がなかったので、聞かせていただけるだけで有難いです。奴隷という立場にいたこともあってまともな学もありませんから」
「環境って大事だよね。私も都会に出てきて実感中だもん。勉強は一緒にしてけばいいんじゃないかなぁ……戦闘面では暫くお世話になるけど、怪我をしたときに役に立つ薬草とか料理なら教えられるから」
「ライム様たちのお役に立てるよう、全力でお仕えいたします」
(あれ、今のってそういう流れだっけ?)
真面目な顔になって頭を下げたサフルに首を傾げつつ地下室を出る。
必要なものはとりあえず私の作業台に運んで貰った。
リアンはまだ帳簿と睨めっこしてるし、ベルは縫製してもらった袋のチェックをしている。
(手っ取り早く調合できるようにやれることやっちゃおうかな)
一番時間がかかる魔石の粉砕に取り掛かることにした。
前にポマンダーを作ったベルが魔石を砕いて砂状にしてたんだけど、今回はそれ以上に細かくしなきゃいけない。
目標は粉末状だ。
「小型粉砕機、小型粉砕機っと……あった。これこれ」
調合釜の横にある個人用の機材置き場に置いてある機材から目的のものを見つけた。
結構重量がある部類の機材だから一番下に置いたのは覚えてたんだよね。
おばーちゃんが買っていた物の殆どは一人で移動できる大きさと重さだったのも幸いした。慎重に持ち上げて作業台へ。
衝撃で壊れるってことはあまりないみたいだけど、雑に扱いすぎると調子が悪くなったり、手入れをしてもらわなきゃいけなくなるんだよ。
整備費用って高いからね、かなり。
それと粉砕した時に粉が落ちて汚すことがあるので、作業台の上には予めボロ布を敷いておいた。
「んー……暫く使ってなかったし魔力の残量がないなぁ」
魔石を入れる部分の蓋を開けると魔力がほとんど感じられなくなっていたので、魔石に魔力を注ぐ。
今回砕く魔石の量は多いので入るだけ入れようと思ってる。
小型だから量を砕きたい、もしくは時間を短縮したいなら最初にある程度砕いておく方がいい。
綺麗に粉になってさえいれば品質に影響しないんだよね。
(粉にするのは下処理みたいなものだからかな。石系を砕いたりするのって、ある程度力と持久力がないと時間が凄くかかるし……錬金術師って意外と体力使うって知らない人が多くてちょっとね)
特に長時間釜を混ぜなきゃいけないから腕力がつく。
魔力は三分の一程注いだけど、あとは石を砕く時に少し使う位だから問題なし。
調合までにお茶を飲めば回復するはず。
魔力量が多いってこういう時に便利なんだよね。
「魔石の色が指定されてるのはちょっと面倒だなぁ。火と水の魔石は総じて高いってリアンが言ってたし」
今回使う魔石は品質がC品質と通常品質って呼ばれる一般的なもの。
実験なら最低品質でもいいかなーって考えてたんだけどね……染める手間暇を考えると最初は通常品質を目指そうってことになった。
基準が分からないと使いやすさや用途の説明が難しいもんね。
「調合する量を考えると……魔石五つは確定。でもこれ劣化しないし、粉にした後に保存しておけば次の調合の時、時間の短縮になるか。よし、十個やっちゃおう」
しっかり密閉できる魔石紛用の瓶を大一つ、小五つ用意して並べておく。
小さな漏斗を五つ、大きな漏斗を一つ瓶にセットしてから、ゴミが入らない様に一個一個布をかけておいた。
布を取るのは合図すればサフルが手伝ってくれるらしい。
(こういうちょっとした手間が大事なんだけど、自分で全部やらなくていいって本当に楽だ。布を取って、入れて、蓋閉めて、隣の布を取って、零さないように気を付けて……って大変だし、慌てると零したり、瓶を倒したりするんだよね……じわっと面倒)
一人で保存食を作っていた時も大変だった、と昔を思い出しながら作業を進める。
鉱石粉砕用の袋に魔石を十個放り込んでしっかり袋の口を閉めて、ポーチから自分用のゴーグルとマスク、手袋を取り出して装着。
「サフルも近くにいてもらうつもりだからコレつけて。ゴーグルとマスクね。手袋は要らないか……作業しないし」
「奴隷の私にこのようなものは……」
「奴隷云々じゃなくって、基本中の基本。怪我すると薬代かかるし、痛いのは嫌でしょ? 大丈夫だとは思うんだけど鉱石の中には吸い込むと体に悪影響を及ぼすものもあるんだ。ゴーグルは目からそう言ったものが入るのを防ぐ為。砕いた石の欠片が飛ぶこともあるし、粉が入ることもある。だからそう言ったものから体を守る為に近くで作業する時は必ず身に着けて。渡すから」
「―――…はい。ありがとうございます」
手伝いを頼んだ以上大事なことだよって言えば、彼は何処か嬉しそうに笑って渡したものを身に着けていく。
ちゃんと着用したのを確認してから魔石や鉱石を砕くための専用ハンマーを手に持って、袋の上に思いっきり振り下ろす。
ポイントは魔力を込める事。
魔力は石と当たる面を強化するイメージで込めた。
魔力が無駄になるからちょっとしたコツがいるんだよね。
ただひたすらハンマーを袋の上に振り下ろしていると、硬い石が袋の中で割れていく感覚が伝わってくる。
「随分、その……簡単に砕けるのですね」
「うん。魔力使ってるから力も見た目ほど必要ないよ。砕いてる感覚はちょっと硬めの硝子とかクミルの殻を砕いてる感じだし」
がんがんと躊躇なくハンマーを振り下ろしていると、少しサフルの笑顔が引きつって見えた。
小声で「ライム様は意外と容赦が……」とか呟いている気がしたけど、石を砕くのに半分以上意識を持っていかれてたのであまり気にならなかった。
粗方砕けて砂利程度になったら粉砕機の蓋を開けて石を入れる。
袋の半分を投入口に入れてひっくり返すと、ザラザラと袋の中から機械の中へ。
袋が空っぽになったのを確認して、粉砕機の蓋を閉めた。
ボタンを押す前に蓋が閉まっているか、きちんと魔石が填まっているか確認してからボタンを押す。
凄い音と共に硬いものが砕かれていく音が聞こえ、作業テーブルが微かに震える。
振動で瓶が倒れて割れたり、傷つくのが嫌だったので慌ててトレーに移してサイドテーブルに置いた。
「す、すごい音ですね」
「石を砕いてるから仕方ないよ。これ使ってるのあんまり見たことなかったから忘れてたけど、音はすごいね」
「はい。驚きました。この機械はどうやったら止まるのですか?」
不思議そうに粉砕機を見回しているサフルに苦笑する。
粉砕機には自動停止機能がついているものもある、らしいんだけどこれにそんな機能はない。
「音が静かになったらボタンを押して止めるんだよ。入れた石が粉になると音がしなくなるからね。難しいのが砂みたいな状態なんだけど、ざざーざざーって音になるから『これだ!』って思ったら即止める」
なる、ほど……?と不思議そうな顔をしていたので耳を澄ませておくように言った。
今回の目標は『粉』だからその手前に砂の状態になるんだよね。
暫く動かしていると、二十分くらいで『ざざ ざざざ』と大きな音の合間に小さな音が混ざるようになった。
ハッとしたように私を見たサフルに頷く。
「そう、この小さい音。ボタンを押した時はガランガランって大きな音だったでしょ? でも、音が小さくなってきて間隔も短くなってきてる。中の石が小さくなってきたって証拠だよ。放って置いて……あと、三十分もあれば粉になると思う。石を砕く道具は皆片付けたし、待ち時間にお茶でも飲もうか。魔力回復させなきゃ」
休もう、と腕を引いて台所へ向かう。
ベルやリアンはいつもの席で作業中だ。
「あら。下準備は終わったの?」
「あと三十分はかかるから魔石に注いだ魔力を回復させようかなーと思って。吸湿袋にどのくらい魔力を使うのか分からないし、私の魔力も満タンになってた方がいいでしょ?」
二人が調合していないのは、初めての作るアイテムにどのくらい魔力を使うか分からないからだ。
ある程度、消費魔力量が分かれば他の調合もできるけど、今回は数が多い。
(魔石を使う調合って使わない調合に比べて消費量が多いんだよね。魔力を吸収したり放出する性質があるからなぁ)
割と消費量が多いから魔力切れになって調合出来なくなったら困るよね、って話し合って決めた。
リアンは店の帳簿ではなく、数枚の用紙を見比べて何か考え込んでいる。
ベルはあまり見たことのないタイプの図鑑のようなものを眺めていた。
「ベル、それなに? 初めて見る本だけど」
「二番目のお姉様が必要ないからってくれたのよ。二人も見てみる? 割と珍しいのよ、コレ」
そう言って私たちの方に向けられた本には色鮮やかな絵があった。
本物みたいなそれはよく見る絵付きの図鑑じゃないのは一目見ただけで分かる。
絵の上には読みやすい文字で『グリューヴルム鉱石(宝石名:カラーライト)』と書かれていた。
絵に描かれている石は【未確定の原石】から取り出した状態のものが一つと、磨かれた物が三種類。
色合いが全く違うけど、それがグリューヴルム鉱石の特徴だ。
キラキラした石がとても分かりやすく描かれているのでつい、じっくり眺めてしまう。
他にも特徴について書かれていたけど、上手くまとまってるなぁと思った。
「すごいね、この絵」
「絵……ではないな。これは。『撮影機』と呼ばれる魔道具で写された物だろう。よく見るとこれは一枚のページに魔力糊で貼り付けてあるようだし、保護魔術もかけられているな。装丁にも希少ななめし革を使っているようだ」
「さつえいき? 写すってどういう」
リアンが撮影機について説明してくれたんだけど、ボタンを押すと撮影機に映っている風景がそのまま専用の用紙に焼き付けられるらしい。
「僕も写されたモノを何枚か見たことがある。ただ、一冊の本になっているのは初めてお目にかかった……相当高いな、これは」
いくらくらいだ?とブツブツ計算し始めるリアンに、思わず次のページを見ようと伸ばしかけた手をサッと体の横に戻した。
「値段なんてどうでもいいの。それより、ライム。貴女、前の採取旅行でこの『グリューヴルム鉱石』が入ってると思うって言っていたでしょ? 結構初心者向けの石みたいだし、雫時前にはブレスレットか何かを作りたいのよね。ただ、ちょっと脆いみたいだし……こういう加工についてはやっぱりラクサに尋ねた方がいいかしら」
「そうだね。宝石加工はしたことないとは言ってたけど加工方法とかは知ってると思うし、助言は貰えるんじゃないかな? それから取り掛かるのも悪くないと思う」
私の言葉を聞いて少し考え込んでいたベルだったけど、確かにと納得したらしい。
本は棚に置いておくからいつでも見ていいわ、と一言言って棚へ本を入れに行った。
「リアン、わたし、あの本棚に扉と鍵をつけるべきなんじゃないかなって思った」
「同感だ」
神妙な顔で頷いたリアンと「どうやって扉をつける?」とお茶を飲みながら話をしていると、サフルが私にそっと声を掛けてきた。
もしかして、と耳を澄ませると音がほとんど聞こえなくなっている。
驚いて時計を見ると三十分経っていた、作業台へ向かうと音が聞こえなくなっていたのでボタンを押して動作を止めた。
サフルに再びマスクとゴーグルを渡して自分も同じように顔を覆い、手袋を履き替える。
鉱石の粉を扱う時の手袋は布ではなく革手袋がいい。
布だと細かい粉が入ってくるんだよね。
「お、出来てる出来てる。イイ感じだよー! サフル、小さいのから渡してくれる? 漏斗はそのままでお願い」
「分かりました。蓋はどうしますか」
「蓋は被せるだけで。最後に私が魔力込めて封をするから」
「はい。では、一つ目の瓶を」
話しながら魔石一つ分を丁度掬える専用のお玉を使って瓶に入れていく。
粘度のない粉なので舞い上がらないように注意しながら、一つ目を入れる。
するとサフルが素早く蓋をして受け取り、直ぐに二本目の瓶を渡してくれた。
同じように小瓶五本分を詰めて、最後に大瓶に大きな専用お玉で魔石粉を入れていく。
全てに粉を入れ終えた所で、蓋へ魔力を込めながら封をする。
そのまま小瓶五つの蓋もして、漸く息を吐きだせた。
「はぁあー…緊張したぁ。マスクしててもつい呼吸を最小限にしちゃうんだよね。とりあえず、これで魔石粉ができたから調合に移れるね」
手伝ってくれてありがとう、とサフルにお礼を言ったんだけど「畏れ多い!」と慌てたように頭を下げていた。
いや、なんで。
何故かサフルは顔を隠し『掃除をしてまいりますッ! 御用があれば遠慮なく仰ってください』と叫ぶように言い捨てて、洗い場へ走って行った。
背が少し伸びて髪も少し伸びて来たらしい。
(髪を結ぶ紐とかあげたらいいかな。邪魔になりそうだし……昔使ってたのが結構残ってるんだよね)
あと、足も速いんだなと結構な速さでいなくなったのを見て感心していると、呆れた顔でリアンとベルが洗い場の方へ視線を向けていた。
「君は意外と奴隷の扱いが上手いかもしれないな……にしても、これが『赤い粉』か。ずいぶんと細かい……この細かさでも品質はC」
「魔石が粉になるって本当だったのね。説明は受けていたけど、実際に見ると不思議な気分」
「それ分かる。私もコレだけ見せられたら元が魔石だなんて思わないよ。でも、これから教科書に『青い粉』とかも出てくるんじゃないかな。楽しみだよね、魔石の粉って難しい調合に沢山使うみたいだから。それから、この粉末状にするのは手作業でもできるけど、凄く時間かかるし疲れる。手作業の利点は上手くすると品質を一段階上げられる事くらいだよ。今回は『小型粉砕機』を使ったから品質はCで固定。粉砕機を使えば失敗もほとんどないし、品質が下がる可能性がないから一番無難かなぁ」
粉砕機、と二人が呟いたのでコレコレ、と指さす。
二人は初めて見た、と何処か興味深そうにいろんな方向から眺めて、使い方を説明し、実際に魔石の投入口や粉末を取り出すための蓋を開けて見せた。
特にリアンは珍しく目をキラキラさせて隅々まで粉砕機を見ている。
(そういえば、おばーちゃんが昔“男ってどうして機械が好きなのかしら”って粉砕機みたいなものを見て楽しそうにしてる人たちを、呆れた顔で見てたっけな)
粗方見て満足したのか「いずれ絶対に買う」と呟くリアンに苦笑しつつ、テーブルの上に必要な素材を並べることにした。
私が粉砕機をしまおうとしたらリアンが是非僕に持たせてくれ!と意気込んでたので頼んだ。
凄く嬉しそうだったのでまあ、良しとする。
簡単に掃除をした後、私の作業台に素材を並べていく。
「じゃあ最後の素材も揃ったし【吸湿袋】の調合方法のおさらいね」
レシピ帳を取り出してパラパラと該当するページを開く。
其処に書かれているレシピを読み上げた。
【吸湿袋】 最大調合量:五回 時間目安:二時間
布素材+赤の粉+砂+接着液+調和薬
①赤の粉と砂を1:3で合わせて調合釜へ入れ乾煎りする
②火力は強火。魔力を込めながら赤の粉と砂が溶けあい、ドロドロになるまで混ぜていく
③熱と魔力で完全に一体になったら、湯煎にかけて温めておいた接着液を三度に分けて混ぜ合わせる。
④混ぜ合わせたら弱火にして温度が45℃になったタイミングで調和薬を入れる。
⑤調和薬を入れて混ぜ、温度が37℃になった所で布素材を入れる。
⑥布素材を入れたら魔力を注ぎながら均等に満遍なく、混ぜ合わせる
⑦溶液と布が完全に一体になったものから浮かび上がってくるので取り出し、冷ました後洗って乾くまで干したら完成
=アイテム説明=
入れたものの水分を吸い取る効果がある袋。
品質が高ければ高い程、効果が高い。
使用時には魔力が必要。なお、吸い取るのは水分のみ。
アイテムの説明まで読み上げて、私たちはテーブルの上に揃えた素材に視線を向ける。
布素材は、染めた布を縫い合わせた布袋。
赤の粉と接着液は市販の物で、接着液は品質Aの良品だ。
砂に関しては『忘れられし砦』で採取した粘土を乾かして目の細かい篩でゴミや大きな粘土の塊を取り除いた。
結構何度も篩ったのでサラサラになったと思う。
「ねぇねぇ、リアン。この砂の鑑定してみてよ」
「そういえば粘土を乾かして砂にしたと言っていたな……少し待ってくれ」
どれ、とテーブルの上にある革袋を覗き込むリアンは何処か楽しそうだった。
布袋に細かい砂を入れると絶対に床に落ちるから、砂や粉っぽいものは革袋に入れることの方が多いんだよね。
革袋は作る時に鞣したり縫い合わせるのが大変なんだけど、一度作ると長い間使えるからって布袋の次に多く作られている。
「ライム……これの元になった粘土だが、まだ残っているか?」
「え? ああ、まだあるよ。粘土も二種類あったんだよね。白っぽいのと普通の泥色っていうか鈍い黄金色って言うか……それがどうしたの?」
「今回使ったのは白い粘土か」
「うん。白い方が数多かったからね」
分かった、と一言返事をしてそのままリアンが地下へ。
私とベルは顔を見合わせたものの、とりあえず計量を進めることにした。
錬金術って割と曖昧というか大雑把な所があるんだよね。
だからちょっとした疑問が湧くこともある。
「今思ったんだけど、この袋って二枚の布を一枚に縫い合わせてるけど……一枚の計算でいいのかな。それともコレで二枚って考えるべき?」
「……言われてみるとそうよね。一応コレ一つで『布素材』ではあるんだし、コレで1つとみていいんじゃないかしら。足りなかったら嫌だけど」
「それなんだよね。もし布素材以外の物が不足してたらどうなるのかな。爆発…?」
「爆発は……しないといいわね」
「とりあえず袋一つってことでやってみるしかないか。減らして失敗って言うのも嫌だし」
最大調合量はどのくらい?と聞かれたのでレシピ帳を捲って確認してみる。
おばーちゃんから譲り受けたレシピ帳には最大調合量も書かれているから便利だ。
なんか途中から見えるようになったんだよね。
(前は見えなかったんだけどな。色々ページが少しずつ埋まってきてるけど、まだ三分の一もないんだよなぁ。手帳って言ってはいるけど、枚数辞書並みだし)
最後の素材は調和薬だ。
この調和薬は品質Sで劣化防止効果が付いたものに決めた。
品質Sの調和薬はいくつか在庫として並べてある。
効果は『劣化防止』『祝福』の二つだけ。
ただ、他にもいくつか品質Sの【調合素材】は備蓄済み。
魔力が余ってる時とかに作っていたのがここで役に立っていたりする。
(面白いのが、寝る前調合の方がS品質作りやすいんだよね。あとは寝るだけだから思いっきり魔力込められるのがいいんだろうけど。保存してある素材の下処理は暇な空き時間に暇つぶしでやってるし……私たちの工房ってひたすら調合ばっかりしてるような気がしないでもないなぁ)
調和薬を並べて、あとは最大調合量分の袋を振り分けていく。
残しておく分以外は調合するつもりなので一人、五枚ずつ調合することに。
「麻袋と綿の組み合わせが一つ多くなるけど、三人で五枚ずつだから仕方ないか」
「仕方がないわね。でも、失敗さえしなければ無駄にはならないでしょ。リアンが上手いこと言いくるめて売りつけるにきまってるわ」
「押し売り…?」
コソコソと話をしているとリアンが難しい顔で戻って来た。
どうしたのかと聞けば白い煉瓦のようなものを差し出される。
軽く脆そうにも見えるソレが意外と硬いことは運んだ張本人なので知っていて、それがどうしたのか聞けばリアンはため息をついていた。
「君の仕業か。あの砂の品質はS品質。粘土の状態でもAだった。鑑定すると【粘土】ではなく【古い粘土】と出ていた」
古い粘土って品質悪そうだな、と考えたのが顔に出たらしくリアンは呆れたような表情を隠しもしない。
「【古い粘土】の元は【古い石材】だった。【古い石材】は遺跡跡などに多くあるが、利用価値が高い。耐水性と耐火性を備えた錬金煉瓦の上位版のようなものだ。金槌などの衝撃にも強く、叩くと金属音に似た高い音が鳴るのが特徴だな」
「で、それの何が問題なのよ」
「……素材の一つの単価が高い」
渋い顔でそう告げたリアンに私たちは成程、と納得する。
リアンが言いたいのは『売価が高くなる』という事だろう。
「でも、便利な道具が高いのは常識よ。問題ないのではなくて? 販売時に効果と「『高い素材』を使っているから値段が違う」と説明すればいいだけでしょ」
何を渋る必要があるの?と面倒そうに肩を竦めたベルに対して、リアンは眉を顰めて考え込むような姿勢のままだ。
「しかしな……急に高値の物を店頭に置くと今後価格が上がるのではないかと考える客も出てくる。それは出来るだけ避けたい。開店して間もないんだぞ」
渋るリアンは私たちより商売に詳しいから色々なことを考えられるのだろう。
ただ、私からすると難しいことを考えすぎな気もする。
「なら、中級ポーションみたいに相手を見て売ったらどう? Bランクの冒険者とか騎士団でも部隊を誘導する人とかに限定すれば、多少高くても買ってもらえるんじゃない?」
お金持ってるのってある程度の冒険者ランクだったり、地位がある人だろうからね。
騎士団では偉くなると、仕事が増える代わりに役職手当っていうお金がもらえるんだって。
羨ましいような、羨ましくないような。
「―――…作ったものを適正価格で売るのはそれしかないな。貴族に売るのも考えたが面倒だから避けたい。売ってもいいのはディルぐらいだ。あいつはどんなに吹っ掛けても出すだろう。念のために販売する時にはライムが作ったって言っておくか」
「……リアン、アンタってとことん商人気質よね。魂の髄まで刻まれてるんじゃないの損得勘定」
うわぁ、と軽蔑を含んだ視線を向けてからベルは並んでいる素材を指さした。
「砂自体を変更する気はないのね? 買うなりなんなりすれば普通にアイテムはできるわよ」
「それも考えたが時間が惜しい。それに、【古代の砂】という素材アイテムは初めて見たから、実験がてら使ってみるべきだ」
(なるほど。高いけどリアンは使いたいわけだ―――…私もだけど!)
リアンもある程度考えがまとまったらしい。
切り替えが早いので、計量に加わり砂の分量を計測し始めた。
「調合手順は確認した。素材の振り分けも終わっているし、調合に移るか」
「そうだね。素材は計って分けてあるし、作り方は大丈夫?」
「ええ、さっき確認したから平気よ。ここからは個人の力量ってことになるのよね? 品質を下げない様に頑張らないと」
勇ましく自分の調合台へ向かって行ったベルを見て、私たちもそれぞれ自分の調合釜へ。
釜の横にある作業台に必要な素材を置いて、サッと作り方を再確認したら調合開始だ。
◇◆◇◆
調合をする前に私はいつも小さく深呼吸をする。
新しい調合は緊張するけどワクワクするし、慣れている調合は快調に進むと気分が良くなる。
アイテムが完成して、思い通りにいかなければ悔しくて“もう一回!”ってなるし、上手くいけば“やった! やればできる!”と満足感と充実感を味わえるからね。
出来上がったものを渡して人が喜んでくれると、何かが満たされるような不思議な感覚がある。
それだけじゃなくて、ソワソワと気持ちが落ち着かなくなるのに、大好きなオヤツやご飯を食ベている時と似たような温かい気持ちが体の奥にふんわり灯るあの感じは、何度感じても嬉しいし、ちょっと癖になるのだ。
「さってと、頑張りますか! 新アイテム! あ、そうだ二人とも。今回の調合は釜の前で二時間は立ちっぱなしだから気を付けてね。結構暑いし」
「言われてみるとそうね。ちょっとサフルに掃除が終わったらコチラに来るように伝えておくわ。水の補充とかできないもの」
「そうだな。悪いが、魔力回復ができる乾燥果物をいくつか僕らの作業台において貰っても? ライムも魔力切れにならないようにしてくれ」
分かった、と作業を始める直前だったベルの作業台と既に乾煎り作業をしているリアンの作業台に、小皿を置きそこに乾燥果物を乗せておく。
サラッと「僕はレシナが多い方がいい」と要求してくるあたりがリアンだなと思う。
ベルの所にもベルが好きな乾燥果物を置いておいた。
自分の作業台にもある程度準備をして、ついでにお手洗いも済ませたので改めて気合を入れなおした。
よぉし、と意気込んでキラキラ輝く【赤の粉】を手に取る。
粉砕機で潰されて粉になってはいるけれど、光が当たると角度によっては光るので中々綺麗だ。
「これをバサァッと入れて、一緒に砂もザバーッと投下……んで、焦げない様に混ぜるっと」
多分砂と魔石の粉だから焦げることはないと思うけれど、イメージではそんな感じだ。
火力も注意しつつ、白い砂と赤い粉が綺麗に、均等に混ざるように杖を動かす。
泡だて器の部分を使っているのはより混ぜやすくする為だ。
(いつも思うけど……調合釜に“女神の水”が入ってなかったら大きなヘラで混ぜないとダメだったんだろうな。杖とか細い部分で混ぜても問題ないって結構凄いよね)
改めて感心しつつ最初は全く粘度がないのでさっくり腕の力だけで混ぜていく。
この“女神の水”の不思議な所はまだある。
調合中に液体特有の“抵抗”が一切ないのだ。
粉を入れても濡れないし。
(不思議な術を操る女を『魔女』男を『魔術師』とは上手い表現だよね。絶対アイテム名とか付けるの得意な人だと思う、初めに呼んだ人)
強火にしているので満遍なく偏りがない様に、上下反転させるようなイメージで混ぜていく。
勿論魔力は最初から流している。
魔力を注ぐ量をどうするか迷ったんだけど、釜の温度が上がる感じで少しずつ上げていって溶けた所で流す量を固定して、他の素材を入れることに。
暫く……大体二十分くらいで少しずつ赤の粉が発光し始めた。
何の変化もないまま二十分魔力を注いで混ぜ続けなきゃいけないのって、結構不安になるんだよね。
「完全に溶けたら……温めておいた接着液を三回に分けて混ぜる、と」
接着剤はベルがお湯を張ったボウルに入れておいてくれたので、しっかり温まっている筈だ。
掃除を終えたらしいサフルにお湯が冷めてきていたら継ぎ足すか、入れなおして冷めない様にして置いて欲しいと頼んでいるのが聞こえたから安心。
一人でやる時はすごく大変で、温め続けたり冷たい状態で使わなきゃいけない素材の準備が結構大変だったりするんだよね。
(前は大したもの作れなかったから良かったけど、帰ったら何か考えなきゃ)
基本的なものなら一人で充分だけど、高度な錬金アイテムを頼まれた時に『調合できません』とは言いたくない。
素材がない時は断るだろうけど。
「んんー……もうちょっと、かな。完全に溶けるまで二十五分くらいかかるのか」
釜の中はまだ砂の粒が所々にあるので、あと数分は加熱が必要だろう。
使った魔力は半分以下だから全然平気だ。
チラッとかき混ぜながら左右を確認する。
ベルは真剣な顔でじっと釜の中を見ながら混ぜてるし、リアンは片手で混ぜながら蓋を外していた。
(二人とも大丈夫そうだね。多分だけど毎日魔力切れまで調合してるし、魔力量が増えたのかな)
自分の釜に意識を戻す直前に接着剤の蓋を外し、杖を持っていない方の手で入れる準備をする。
視線を釜の中に向けると砂の粒がなくなりかけていたので大きく全体を二、三度混ぜてから完全に砂と赤の粉が同化したのを確認。
温かくなった接着剤を一回分入れる。
灰色がかった白い接着液は直ぐに赤い溶液に溶けていく。
熱で焼けるような音も聞こえなかった。
湯煎中の接着液も熱くなってるんだろうな、と思いつつ手袋を【耐熱】のものに換えておいてよかったとコッソリ息を吐く。
(リアンに感謝だね。これは。温めた接着液を掴むんだから“熱に強い”手袋に履き替えろ、って言われて初めて気づいたもん)
時々うっかり忘れるんだよな、と思いつつ接着液は再びお湯を張ったボウルへ戻す。
グルグルと大きく混ぜ合わせ3分ほど混ぜたら二回目を投入。
二回分を混ぜてから、ドロッとしてきて杖を動かしにくくなる。
最後の接着液を投入。
ドロッとしていた溶液が、もったりとして……最終的にねっとりドッシリ。
「……うん、体力ないと腕が死ぬやつ。リアン~、腕大丈夫そう?」
声だけをかけて魔力を入れながら混ぜ続ける。
魔力の残量は三分の二くらい。
ずーっと魔力込めっぱなしだからなぁ、と思いつつ半分になったら乾燥果物をいくつか口に入れようと思う。
「この程度なら、まだ何とか……なる筈だ」
「……そ、そう? ちなみに布素材入れると多分もっと重たいから頑張ってね」
「―――……まだ布があったな、そういえば」
ハハ、と乾いた笑いが聞こえてきてちょっと心配になったけれど、隣ではベルが鼻歌を歌ってるのが聞こえて割と両極端だよなぁと改めて思う。
完全に接着液が混ざりあったのが、重たいけれど滑らかになったことで分かった。
少し艶々していて綺麗だ。
(確かこの辺りで弱火っと)
火力を強火から弱火へ変えて今度は大きく円を描くようにグルグル混ぜていく。
少し空気を含ませるように、ゆっくり温度が下がる様なイメージで混ぜるのがポイントだ。
それをしながら専用の温度計を釜の縁にぶら下げて温度を測る部分がちゃんと溶液の中に入ったのを確認。
温度はまだまだ高いのでここから暫く混ぜなきゃいけないだろう。
45℃まで溶液の温度が下がったのは、最後に接着液を入れて十五分ほどしてからだった。
46℃になった辺りで調和薬の蓋を開けて手に持つ。
45℃になった瞬間に少しずつ釜の中に円を描くよう、静かに調和薬を投入。
(調和薬を入れたらサラッとしてきた。え、どういうこと?)
驚きつつ魔力量は変わらず注がなきゃいけないので、口の中に乾燥果物を放り込む。
混ぜただけゆっくり抵抗が消えて、艶を残したまま溶液の“とろみ”がなくなっていくのは妙な感覚だった。
首を傾げつつ、こういうものなのだろうと思うことにして混ぜていく。
ここでサフルが戻って来た。
丁度良かったので、サフルに布素材を作業用の小さなテーブルに運んで欲しいとお願いした。
「置き方に拘りはありますか?」と聞かれたので「一枚ずつ投入しやすく」して欲しいと頼むと嬉しそうな返事が返ってきた。
リアンは一足先に布素材を投入している筈だ。
「温度が下がってきた。そろそろ準備した方がいいかな」
調合釜に取り付けた温度計の温度が38℃になったので、サフルが用意してくれた布をまとめて片手で持つ。
一枚ずつ投入しやすく、と言ったのはまとめて投入した時にバラバラにしやすいから。
満遍なく溶液に浸けるのには布同士が重ならないのが一番いいんだよね。
溶液の中に五枚分の袋を入れ、魔力を注いだんだけど―――……
(なにこれ、すっごく面白い!!)
黒と赤に染まった布を入れた途端、うっすらと溶液が光を帯びた。
キラキラと輝く赤い光は淡い。
ぼんやりと夜に見る蝋燭のランプに似ている温かみのある光にうっとりしつつ、魔力を込めたままの杖を動かす。
光は魔力に反応するらしい。
杖の軌道を追う様に光が強く濃くなりやがて淡く周囲の光に溶けていく。
それだけではなくて光り方も時間が経つごとに変わってくるのだ。
まだ魔力を吸っていない布が動く度に、ゆらゆらと光の濃淡が変わった。
溶液が揺れると光の帯状になったり、散ったりと忙しく、目まぐるしく釜の中の景色が変化する。
「きれー……」
光が一定になるように、満遍なく釜の中を満たす様に混ぜ続けて、溶液の光よりも布が光を多く集め始めた時―――……プカリ、と一枚の布が表面に浮き上がった。
五枚の布ははじめ、完全に溶液に沈んでいた。
かき混ぜても釜の下の方をゆらゆら、グルグル揺蕩うだけだったのに。
(溶液を吸い込んで、完成が近くなるたびに浮かんできて……完全に吸い上げたらこうやって浮かび上がるんだ)
分かりやすいなぁ、と感動すら覚えながら魔力を伝え続け、そして片手で杖を動かす。
空いている方の手で布用トングを使って浮かび上がった布を取り除き、足元に置いておいた大きな桶へ。
一枚が浮かび上がると次々に浮かび上がってきたので、それを回収しつつ、釜の中で少しずつ弱くなっていく光をただ見つめる。
錬金術は、時々、とても綺麗な光景を私に見せてくれる。
おばーちゃんが生きていた時は良く釜の中を覗いていた。
高レベルの難しそうな調合をしている時のおばーちゃんの顔も手つきもよく覚えている。
そしてなにより、釜の中も。
幾重にも重なる光。
時々湧き上がるいい香りの水泡。
パチパチと薪が爆ぜる音。
素材同士が溶けあって別のモノへ姿を変えていく、独特の美しさ。
私も、リアンも、ベルも。
釜の中から光が消え、調合が終わったと分かっていても暫く釜の前から離れられなかった。
離れがたくて、忘れたくなくて、とても、とても素敵なモノを釜の中で見つけてしまったから。
出来上がったアイテムは【吸湿袋】ではなく、何故か【乾燥袋】となっていたのだけれど。
(結果的には大成功……かな?)
ほっと息を吐いた時には体中に魔力切れに似た倦怠感と、飛び上がって大声を出したくなるような衝動がむずむずと体の奥から溢れてきた。
ここまで読んでくださって有難うございました。
誤字脱字変換ミスなどは誤字報告などで、そうっと教えて下さると嬉しいです。
というか毎度毎度助かっております……感謝しかない。ケーキかお餅をプレゼントしたい。
ブックマークや評価は勿論、読んでくださっているだけでとても嬉しいです!
アクセス数を見てにやける……ちょっと危ない人になります。
=アイテム・素材=
【吸湿袋】 最大調合量:5回 時間目安:2時間
布素材+赤の粉+砂+接着液+調和薬
①赤の粉と砂を1:3で合わせて調合釜へ入れ乾煎りする
②火力は強火。魔力を込めながら赤の粉と砂が溶けあいドロドロになるまで混ぜていく
③熱と魔力で完全に一体になったら湯銭にかけて温めておいた接着液を三度に分けて混ぜ合わせる。
④混ぜ合わせたら弱火にして温度が45℃になったタイミングで調和薬を入れる。
⑤調和薬を入れて混ぜ、温度が37度になった所で布素材を入れる。
⑥布素材を入れたら魔力を注ぎながら均等に満遍なく、混ぜ合わせる
⑦溶液と布が完全に一体になったものから浮かび上がってくるので取り出し、冷ました後洗って乾くまで干したら完成
=アイテム説明=
入れたものの水分を吸い取る効果がある袋。
品質が高ければ高い程、効果が高い。
使用時には魔力が必要。なお、吸い取るのは水分のみ。
【古い石材】軽く百年は経っている古い石材。
古いがまだ使用可能な状態の石材。硬いが軽い。金槌などで叩くと金属音がする。
水と火に強いのも特徴。
【古い粘土】
古い石材が長い時をかけて砂になり、周囲の土と混ざって粘土化したもの。
【古い砂】
古い粘土を乾燥させ、砕き、篩いにかけて砂状にしたもの。
一般的に知られておらず、一部専門職が時々用いる。
【グリューヴルム鉱石】宝石名はカラーライト。
現代で言うフローライト、または蛍石。基本的に無色透明。魔力に反応して光る。
この世界では加熱処理することで初めて色が発現するので、運試しの原石とも呼ばれる。
加熱処理をしても魔力を通せば光る性質は変わらない。
少し脆いため、特殊なコーティング薬を使って磨く。
【魔石粉】
魔石を細かく粉砕し粉状にしたもの。
手作業でもできるがかなり時間がかかる。
粉砕機がある場合は粉砕機を用いて使う。
粉砕機はいれた魔石の品質をそのまま反映。
手作業の場合、丁寧に品質を一段階上げることも可能。