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135話 陽の日〈中〉

大変遅くなりました!!!!

急ごしらえですが(いつものこと)とりあえず、アップです。

次は……色々と説明したい……です。




 魔力切れから回復した二人と一緒に買い物へ向かう。



 工房を無人にするわけにはいかないのでサフルには留守番を頼んだ。

待っている間に商品の補充や店の掃除などをしてくれるらしい。

こういう気遣いをしてくれるのは正直有難いんだよね。

 今の状態だと猶更。


「魔力切れって本当に怖いですわ。普段魔力を使い切っている時は、少し体が気怠いだけでしたのに」


「魔力が足りなくて『別の所』から無理やり魔力を作り出すみたいだからな。一番手っ取り早いのが体力、次に生命力らしい。採取に行く前に魔力切れの状態でもある程度動けるように慣らしておくべきか」


「アレって慣れるものですの? 私、正直慣れる気がしないのですけど……この中で一番魔力が少ない私でもこの辛さなんだから」


「魔力量って何か関係あるの?」



買うものを書き出したメモを眺めていた私が顔を上げてベルを見ると不機嫌そうな顔で頷いた。

パッと見機嫌が悪そうに見えるけど、これは単に体調が良くないからだろう。

 工房を出ているので口調はお嬢様そのものだ。


「初級魔力ポーションもう一本飲む? 一応持ってきてるけど」


「……貰うわ。さっきので回復したのって半分くらいだし」


「すまないが僕の分もあればくれないか」


「いいよー。ベルが前にくれたの余ってたんだ。魔力の回復って基本自然回復に任せてるし」



どうぞ、と二人に渡すと二人は一気に魔力ポーション入りの瓶を呷る。


 いつもなら歩きながら飲むのは行儀が悪いって言いそうなんだけど、それどころじゃないらしい。

二人には大丈夫なのかと聞かれたけれど、少し疲れたと思う程度だし、この後魔力が回復するにしたがって疲れがなくなるのが分かっているので問題ないよと答えた。



「ライム、貴女……タフよね。いろんな意味で」


「この三人の中で生存確率が一番高いのは間違いなくライムだな。戦闘能力云々じゃなく」


「分かりますわ、それ。どこでも生きて行けそうですわよね」



空になったポーションの瓶を道具入れに入れている二人から、感心しているような憐れんでいるような―――…何とも言えない複雑な表情を向けられた。


 二人が言うように森の中で一人切りになった場合のことを思い浮かべてみる。

思い浮かべたのは家の近所にあった森だ。

そこそこ険しくて自然環境も厳しかったけど、迷子には良くなっていたんだよね。

最初だけはおばーちゃんが迎えに来てくれたものの、二度目からは半泣きになりながら一人でなんとか家に辿り着いた。


 三日はかかったかな。



「まぁ………今なら、材料はポーチにあるし、なんやかんやで小屋くらいなら作れると思うよ。環境次第だけど生きてはいけると思う。魔物除けがあれば完璧かな。強い魔物とか強いモンスターがウジャウジャいたら即終わるけど。人生」


「まともに考えて返答しなくていい。無性に心配になる上に沈黙が怖い。君なら本当にやりかねないからな―――…頼むから、採取先で迷子になってくれるなよ」


「そ、そうですわ! 採取先で迷子になっても大丈夫なように何か買いましょう。居場所を特定するような魔道具があるんじゃないかしら」



 費用なら私が全額負担しますわ!と鼻息荒く財布を出しそうになるベルをどうにか押しとどめて、私たちは二番街の市場へ向かう。

人の少ない工房通りを抜けると、少しずつ人が増えてくる。


 一番街に行ってもいいんだけど、お手頃価格で掘り出し物が見つかる可能性が高い二番街は私のお気に入りだ。

魔力の回復は緩やかなので少しゆっくり歩きながら、良さそうな果物の露店を探す。


 露店商には様々な人がいるので見ているだけで楽しいけれど、リアンの評価はシビアなので商品より先に販売している人間を見て買う店を決めているらしい。


 煉瓦が敷き詰められた石畳の上をカツカツと迷いなく歩くリアンは良く目立っていた。

先頭を歩いているのがリアンだから視線が彼に集まると私やベルにも向けられる。

ベルを見て貴族だと判断した後、視線は私に―――…正確には私の髪に向けられて何か納得したように視線を外す。


 聞き耳を立ててみると『錬金科』『錬金術師』『アトリエ・ノートルの…』という単語が聞こえてくる。

数人と目が合ったんだけど、目が合うと手を振ったり笑いかけたりしてくれた。

見たことも会った事もない人だったものの、同じような反応を返すと、少し驚いていたけれど機嫌良さそうにお喋りを再開。


 いったい何だったんだろう、と思いつつリアンとベルを見失わないように足を動かすこと数分。

パッと前にリアンが言っていた『評判』について思い出した。



(そっか、これが評判になるって事か。あの人たちが私たちを見て嫌な顔しなかったのは評判が悪くないからなのかも。そう考えると目があった人全員がニコニコしていた理由になるし)



なるほどね、と納得しつつ改めて『評判』の怖さについて分かったような気がしてきた。


 至って普段通りのリアンやベルは分かっていたのかもしれないけれど、大勢から注目を浴びることに慣れていない私にとって『沢山の人』から何かを訴えかけられるのは未知の経験すぎて落ち着かないし、ドキドキする。



(リアンが評判を気にしてたのって生活に直結するから……なのかな。単に商売がしにくくなるからって訳じゃないよね、きっと。ベルも接客の時に気を遣ってたし)



もし評判が悪くなったらどうなるんだろう、と考えかけた時にリアンが足を止めた。


 慌てて考えるのをやめて足を止めると、リアンはにっこりと胡散臭い商談用の笑顔を浮かべて相手に話しかけた所みたいだ。

露店に並んでいる商品は不揃いで傷がついているものも多い。

ただ、品物自体は丁度食べ頃で手間暇かけてちゃんと育てられたのが分かる。



「リアンはこの店で買うのかしら」


「だと思うよ、商品数見る限り売れ残りだろうし」


「傷が多いですものね。コレを素材にすると品質が下がるのではなくって?」


 大丈夫なの?と私に耳打ちする様に小声で話すベルに私も声量を抑えて答える。

私たちの会話に聞き耳をたてている人はいない、と思うケド……念の為に。


 交渉の相手は果物を作った本人だろう。

日焼けをした壮年の男性だった。


 彼が座っていた木箱の横にはクッションが置かれた同じ木箱がもう一つあったから、もう一人はどこだろうと辺りを見回す。

誰もいなさそうだったので改めてベルの質問に対する答えを口にした。



「品質が下がることはないと思う。傷ついてるのは皮だけで中身は無事だよ。傷の付き方を見る限りじゃ今日運ぶときについた物みたいだし、傷口が痛んでる訳でもカビてる訳でもないから」



傷ついて時間が経ったから色が変わっている所はあるけれど、どれも美味しそうだったので今日のおやつに使わせて貰おうと思う。


 半端な数の果物を眺めていると交渉を終えたらしいリアンがお爺さんと握手をしていた。

お爺さんから紙袋を受け取っていたので、紙袋に詰めてから収納するつもりらしい。



「紙袋に詰めてから収納袋に入れる。数が半端だからな」



箱だけなら問題ないだろうと言われて数枚袋を渡された。

 ベルには渡さなかったので首を傾げつつ目の前にあったアリルを袋に詰めていく。



「リアン。私にも寄こしなさい」


「……有名な貴族令嬢に果物の袋詰めを頼む人間がどれほどいると思っているんだ? 工房内ならまだしも、不特定多数の人間が行き交う商店街で僕がそういった雑事を任せるとでも?」



視線を向けることなく反対側で商品を詰めるお爺さんに聞こえない様に話したリアンの声は、呆れが多く含まれていた。


 ベルはリアンの言葉を聞いてムスッとした顔で



「詰め終わったらさっさと行きますわよ!」


と周りに聞こえるように声を出した。

 ちょっとびっくりして動きを止めた私の視線から逃れるように、腕を組んでフンっと私たちに背中を向ける。



「ライム、他に見たいものはあるのか。あるならとっとと買い物を終わらせるぞ。久しぶりに外に出たのはいいが、注目を集めすぎているしな。二番街にも貴族はいるし、この前みたいな面倒なのに遭遇すると時間が無駄にしかならない」


「そ、そうだね。私も外で貴族に絡まれるのはヤダし急ぐよ。手元に爆弾あるのが駄目だよね、うっかり投げたくなるし」


「投げるなよ?! こんな人が多いところで爆弾を使うんじゃない!」


「捕まりたくないし勿体ないから投げないよ。使える部分少なそうで剥ぎ取り甲斐もなさそうだし」


「……剥ぎ取るつもりだったのか」


「あ、あはは。実は魔物とモンスターの剥ぎ取り図鑑を寝る前に見てるんだよね。今回の採取が凄く楽しみでさ」


「…………そうか」


「そだよ。素材は多い方がいいもんね」


「絶対に街の中で爆弾を投げるなよ。盗賊や犯罪者なら構わないが、爆散すると身元確認に時間がかかるから首から上は出来るだけ傷つけないようにするのが基本だ」



 紙袋に果物を詰めながらリアンは割と物騒なことを口にする。


 『手配犯』として国が認定している犯罪者は殺しても罪には問われないそうだ。

他にも『盗賊』『性犯罪者』『国賊』『殺人犯』などは殺しても問題ないんだって。

ごく稀にそういった危険な人が潜んでいることもあるらしく、治安が悪い街などでは普通に生活していることもあるらしい。



「顔と体に焼き印を押されるんだが、焼き印の上に×がついていれば『罪状取り消し』『贖罪済み』として扱いは普通の人間と変わらなくなる。斜線一本なら『保釈金完済』という意味だ。これは主に詐欺師の類いが該当するな。斜線二つなら『保釈金完済』と当事者に『謝罪金』支払い済みとなっているが……焼き印を入れられた時点で人の信用を得るのは非常に難しくなる」


「く、詳しいね」


「これも一般常識の類いだ。人が多い場所にはいろんな人間が集まってくる。先ほど話したのは『捕まった』人間で、捕まらずに逃げ回っている奴には焼き印はない。不審人物には近づかないのが一番なんだ」




 不審人物ってどんなんだろう、と思いつつ頷けばリアンは安心したのか小さく息を吐いた。

分かったならいい、と最後の木箱からレシナを移し替えた所で、離れた所で袋詰めをしていたお爺さんからも商品を受け取る。


 笑顔で店を後にした所で、リアンが店で購入した果物は全て捨て値に近い銀貨1枚という格安の値段で買い取ったと話していた。



「傷モノになった商品や小さすぎるものは全て帰りに破棄をしているらしいんだ。捨てるのにも金がかかるから、引き取ってくれるなら助かるとのことだったから、試しに銀貨1枚で引き取ると交渉したら即頷いて貰えたよ。果物自体の品質はAだが傷の影響でBかCだろう。味は問題ないし、品質があまり良くなければ自分たちで消費すればいい」



いい商談だったな、と笑うリアンは爽やかだったけど腹黒さが滲み出ている。

なんだかな、と思いつつ安く手に入ったのは嬉しい。


 歩きながら話をして次に金属を扱っている店を探すことになった。



「金属となると……武器・防具を扱っている店もしくは細工店だろうな。石材を扱っている店や木材店あたりも見た方がいい」


「武器と防具は分かるけど、細工店に石材、木材店って金属関係ないよね?」


「細工店では金属に細工をすることも多いし、石材店は宝飾を兼業しているのが殆どで、鉄鉱石などの原材料を取り扱っているからな。木材店では打ち損じた釘や壊れた蝶番なんかが安く売られていることがある。インゴットになると手間暇がかかるし品質によっては値段が張るから、失敗する可能性がある初調合では出来るだけ金をかけたくない」


「そういえば金属を使うのはどういうアイテムですの?」



買い物を終えた後、先頭を歩くのはベルだ。


 露店で売られているものを眺めながら目的の物を探す。

武器や防具の良し悪しを見分けるのは専らベルだ。

ベルが気に入ったものはリアンが『詳細鑑定』して品質を最終確認。


 私は武器や防具をあまり見る機会がなかったから、分からないんだよね。



(金属や部品の品質とか素材の良し悪しなら分かるんだけど、武器として『使える』かどうかはまた別の話だし)



ベルがブツブツ小声で武器の品評をしているのを聞きながら苦笑する。



「ベルも武器見るの好きだよね。斧も売ってるからかな」


「武器によって使い方も違うからな。いくつか手元に置いておきたい気持ちは分からないでもないが……家柄もあるんじゃないか? 戦術に長けていたようだから、戦闘に関する教育は他の貴族よりも厳しかった筈だ」


「小さい頃に騎士団に入ってたくらいだもんね……そういえば、リアンはベルとは違って武器とか防具にあんまり興味ないの?」


「正直あまりないな。かさばるし販売するにしても、場所と人を選ぶから面倒な上に売れるのは戦争や紛争、魔物の異常発生時。当たればデカいが当たらなければ邪魔なだけだ」


「言われてみると、身を守る必要がある時以外は武器って買わないよね」


「戦うことが生活に直結する人間ばかりではないからな。その上、僕が扱っている武器はこういった露店には間違いなく売っていないし、オーダーメイドが基本だ。多くの鞭は女性用で作られるからそれだと僕にとっては使い勝手が良くない。使えないこともないんだが……」



なるほど、と頷く。


 忘れがちになるけどリアンの武器って割と少数派らしいし、露店に並べられているのをまず見たことがない。

鞭や格闘術を使う人達用の篭手なんかはオーダーメイドが基本だと言っていた。

身長や腕の長さ、手の長さが大きく影響するかららしいけど。



「僕自身も武器の強化はしたいが、どうせなら自分で素材を用意して職人に作ってもらいたい。その方が癖も掴みやすいだろうし、愛着も湧くからな」



 武器は使い捨てではなく、状況に応じて使い分けるという冒険者や騎士は多い。

武器の適した選択ができるというのも大事な能力の一つだとリアンは締めくくる。



「ベル、熱心に武器屋を見るのもいいが、あの辺りで見繕うぞ」



斧や短剣を見る度に足を止めて質問をするベルに呆れ果てたリアンが、深いため息を吐きながらとある一角を指さした。


 指さされた方角には、遠目にも分かる煌びやかな宝飾品と細かな細工を謳う旗や看板が掲げられている。




◇◆◇




 細工店というのは、腕とセンスがモノを言う厳しい世界らしい。


 リアンの提案で、細工職人が開いている露店で金属板や鉄くずなどを買うことに決めたまでは良かった。


 結果的に言えば、正規の金属板を売っている露店はなく、鉄くずを売っている店もなかった。

意外だなぁと考える私の横でリアンの行動は早かった。

多分、女性客や恋人関係らしい男女が煩わしかっただけなんだとは思うけれど、装飾品に興味があまりないらしい。



「当てが外れたか。無駄足を踏ませてすまなかった、とりあえず……一番街の武器屋に聞いてみるか」



早々に踵を返し、武器屋に交渉しに行こうとしたリアンの襟首をベルが無遠慮に引っ掴んだ。

 うぐっ、と苦しそうな声と首が閉まる音が聞こえてギョッとする私を他所にベルはにっこり笑う。



「首飾りを作る参考になるかもしれないから見ていきましょう」


「帰って調合するんだ、時間が惜しい。早く戻って―――」




「 見 て い く わ よ ね ?」



「はい」

「う、うん」



ニコッとほほ笑んだベルにリアンは目を逸らして項垂れた。

私もつられて返事をするとベルは満足したのか、私の手とリアンのマントを引っ張って歩き始める。


 抗えない力に抵抗する気のない私と引っ張られるのに全力で抵抗したリアン。

抗議を受けてリアンを解放したベルは意気揚々と露店巡りを開始。

ベルの言う様に『結晶石の首飾り』はどの露店にもあって、かなり凝った造りだったり、日常使いできるような素朴なものだったり、男性向けだったり見ているだけで勉強になることが分かった。



「ねぇ、リアン。これ男の人向けみたいだよ」


「―――……確かに、これなら大抵の服に馴染むかもしれないな。ただ、ここの金具の処理が難しい。溶接……か?」


「何軒か露店を見ましたけど、ライムがくれた『首飾り』は店に出しても遜色ない出来ですわよ。今まで【結晶石の首飾り】は手に取って見たことがなかったのですけど、実際に見て触れれば分かりますわ」



 何故か勝ち誇った顔をしてベルは首から下げた【ベルの首飾り】を摘まんで笑う。

勝気そうな表情で手に持っていた結晶石を戻しているのを嬉しいようなくすぐったいような気持ちで見ていると、突然肩を掴まれた。



 驚くのと同時位に顔と体の左側に硬いけど暖かい何かが当たる。


え、と目を丸くすると見覚えのある服の袖が動く。

ふわっと微かな風に乗って鼻を擽ったのは知っている匂いだった。



「――――……彼女に何か用ですか?」



 頭上から降ってくる声は冷たく硬い。

顔を上げると険しい顔をしたリアンが誰かを睨んでいた。

その視線の先には両手を上げている見覚えのない男の人。


 彼の首元にはベルの短剣と心臓の辺りにリアンの短剣が添えられている。

幸い切れてはいないけれど、横に手を動かしただけで簡単に皮膚と肉を裂くことができるのは私にでも分かった。


 状況を理解するまで周囲の音が消えたような感覚に襲われていたけれど、直ぐに周囲の騒めきが飛び込んでくる。


 リアンに肩を引き寄せられたまま、周りを見回すけれど私たちのやり取りに違和感を覚えた人はいないらしい。

ベルの服の袖口が長いから周りからは短剣は見えていないだろうし、リアンの場合もマントに隠れて恐らく見えていない……からかも?

 正直、何が何だかさっぱり分からなかったけれど声だけは出さなかった。


 店の前で固まって相談をしている光景は割とよくあるので誰も気に留めていない、というのが一番大きいかもしれない。

引きつった顔をして青ざめるその人は、不器用に数歩後退って視線を彷徨わせる。

 こういう場面で騒ぐのは悪手だってことくらい私にも分かるからね。

状況だけでも理解したかった、んだけど……。




「い、いや、その子っていうか……君たち三人に―――『アトリエ・ノートル』の錬金術師に用事があった、って言うか……なん、というか」



 転がり落ちた言葉に私は首を傾げる。

工房に用事、ということは仕事の話かな? と考えて、お客さんになる人だったらこの状況は不味いんじゃないか、と私を庇ってくれているリアンの服の裾を引っ張ってみる。


が、二人の手から武器が離れることはない。


 それを見て益々焦ったのか冷や汗を流す彼はごくりと生唾を飲んだ。



「と、とりあえず危害は加えないので物騒なモンを納めて……オレっちのハナシ、聞いてくんないっスかね」


「「ずっと私(僕)達の後をつけていた不審者の話を聞く必要がどこに?」」



お願いシマス、とへらッと笑う彼にリアンとベルは笑顔で返事をした。

清々しい程の返答に私の顔も引きつる。


 ただ、目の前に居る男は中々肝が据わっているらしい。



「やっべ、バレてた」


「は、え、嘘?! ち、ちょっと待った。ずっとって何時から?!」


「あー……アンタは気づいてなかったんスね。やっぱ。道理で隙だらけだとおも……ヒッ!? いや、下心はないんで!!! ちょっと相談というかっ、提案というか……ッ」



 二人とも息がぴったりだったからか、笑顔が怖かったからかは分からないけど、返事を聞いた彼の足がガクガクと震え始めたのに気づいた私は慌てて二人に声を掛ける。


 とりあえず話だけでも聞いてみよう、と武器を持った手に触れると二人は渋々、近くの酒場へ移動することに同意してくれた。

ただ、武器からは決して手を離さない上に目が怖い。



(あれ。私たちって……ただ買い物をしに来ただけ、だよね?)



何でこんなことに、と喉から出かかった言葉を無理やり飲み込んだ。

笑顔を張り付けた二人と初対面の青年を忙しなく見比べながら、私は良く晴れた空を見上げる。



(とりあえず、そろそろお昼ご飯が食べたい……疲れた)



遠くの方で昼を過ぎたことを知らせる鐘が鳴り響いた。




ここまで読んでくださってありがとうございます!!


 誤字脱字などがありましたらドシドシ遠慮なく誤字報告などしてくださると幸いです。

見直しては……いるのですが、漢字変換ミスが一番多い、です。申し訳ない……。

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