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【書籍化中!】アルケミスト・アカデミー(旧:双色の錬金術師)  作者: ちゅるぎ
色々な素材を集める。

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132話 開店のお祝いと(後)

 大変遅くなりました!

やっと、登場。採取旅に連れて行くメンバーを考え中です。




 副ギルド長のおつかいに来た冒険者たちを見送った後、来店してきたのは一般客だ。


 主婦と呼ばれる人が多くて、質問も多いから店内が一気に賑やかになった。

三人で来店した女性たちは二組。

二人で来たのは一組だった。

 あまり広くない店内なのでお客さん同士の距離も近い。

彼女たちは顔見知りだったらしく、簡単な挨拶をした後、売り切れない様にと商品棚の前に集まった。



「これこれ! この『洗濯液』っていうのが凄くよく落ちるのよ」


「私はまだ試したことがないけど、噂によると手にも優しいみたいだし『買いに行こう』って話になったのよね?」


「そうそう。私はハーツ夫人に一回分貰って試してみたけれど、凄かったわよ。子供が汚した服もあっという間に綺麗になったし、食べ物の染みも一度洗っただけで綺麗に消えちゃって驚いたわ。家中の服を雫時になる前に洗ってしまいたいのよ」


「そうよねぇ、雫時になる前に使わなくなった服を古着屋に売ったり作り直さないと」


「布代も馬鹿にならないですもんね」



奥様同士の話を聞きながら彼女たちの行動を観察していると、会話をしながらなのに的確に欲しいものを選んでいて凄いなぁと思う。


 洗濯液と石鹸、そしてトリーシャ液をそれぞれ購入していった奥様達はカウンターで商品を買う際に「錬金アイテムって凄く高いと思っていたけど、割と手ごろなのね」とか「なくなる前にまた来るわ」と言ってくれた。


 中には気に入ったら周りの奥様にも勧めておくわ、と言ってくれた人もいたので、洗濯液や石鹸は多めに作っておいた方がいいかもしれない。



「話をしながらでも得な大容量を買って行くのが凄いですわね」


「だね。でも、ちょっと意外だったな……ほら、錬金アイテムを使うより普通に洗濯する方が安上がりでしょ? 石鹸だってなくても困らないし、トリーシャ液だってそうだからさ」


 食品を扱う店や客相手に商売をする人たちが、身なりに気を遣ってこういったものを買うのは理解できる。

食べ物屋さんで食べ物を買うなら清潔な方を選ぶしね。


 うーん、とカウンターの中で腕を組んでいると包装を手伝ってくれていたチコが頷く。



「私も、ライムさんと同じように思ってました。今でこそ冒険者として少し余裕がある暮らしをしてるからこういったアイテムを買えますけど、お金の遣り繰りが大変だってお母さんも言っていましたし」


「毎月ある程度決まった額が入ってくるのはいいけど、いつなくなるのか分からないもんね。ほら、怪我とかいつするか……なんて誰も知らない訳だし」


「ですよねぇ。私、いつ何が起こるか分からないから貯金は絶対にしておきなさい、って家を出る時お母さんに言われましたよ」



チコの暮らしていた家はあまり裕福な方ではなかったらしい。


 私の生活について少し話すと似たような工夫をしていたり、苦労していたみたいで妙な親近感を抱いた。

二人で盛り上がってるとベルが引きつった顔で、



「庶民も大変ですのね」


と呟く。



 遠巻きに私たちの話を聞いていたらしいリアン曰く、洗濯は日常の家事でもかなりの時間と手間がかかるので、負担を減らしたいと考えるお母さんは多いそうだ。

ずっと『洗濯液』を使っている私にはちょっとわからなかったんだけど、普通の洗濯は手も荒れるし重労働だってチコがしみじみと言っていた。



「……洗濯液、私もちょっと多めに買っていきますね。宿に泊まっても洗濯は自分たちでしなくちゃいけないですし」


「洗濯してくれないの?」


「はい。冒険者ですから自分のことは自分で、です。洗濯もですけど、備品や防具、武器の手入れは死なない為に必要最低限しなくちゃいけない事だって分かってるので」



洗濯をしていないと臭いで敵に居場所がバレたりもするし、信用にも関わってくるらしい。

なるほど、と感心した所で再びお客が来店。


 一般のお客様だったんだけど、そこから冒険者も何組か来店してきたので対応している間に、ラダットたちは店を出て冒険者ギルドに行くことにしたらしい。

あまり話ができなかったので残念に思ってたんだけど、私の手が空いたタイミングでラダットが話しかけてくれた。



「今日、この後リンカの森に移動して野営の練習をすることにしたんだ。講習は受けたけど、まだ慣れてないから駐在騎士のいるリンカの森で練習しようってことになってね。リンカの森には僕らみたいな新人も多いみたいだし、良い縁があれば追加でパーティーメンバーを迎えるつもりなんだ」


「あ、旅をするなら五人くらいが理想なんだっけ?」


「うん。まぁ、人となりが一番大事だからよく相手を見てってことになるけどね。組む相手は『自分たちで』ちゃんと選べるわけだし、同じ失敗はしないように気を付けるよ」



実は、新しいメンバーが見つかったらリアンに鑑定をしてもらえないか頼んでるんだ、と耳元でそっと教えてくれた。


 対価は、採取した素材を一定数売ることらしい。

事前に買取価格表を渡されたらしくラダットたちは「頑張る」と気合が入っていた。



(この三人は最初に組んだメンバーが外れだったもんね。慎重になる気持ちも分かる)



 彼らの元パーティーメンバー二人は、それぞれ別のパーティーに入ったらしい。

苦情が入っていることは告知され、内容も開示されるのでソレを了承したというから随分太っ腹な冒険者たちもいるんだなって感心した。



「あ、ギルドに売った方が高くなるならそっち優先にしてね」


「ありがとう。割のいい依頼があればそのつもりだよ。でも、必要納品分を超えたら、一定数の素材をアイテムと交換してくれることになってさ。俺たちとしても錬金アイテムを素材と交換できるなら有難いからね」



その辺りはリアンと細かく色々決めたらしい。


 大体戻ってくる日程を聞いて、サフルと一緒に三人を裏口から見送った。

カウンターの内側に入っちゃってるから、今更お店側の出入り口から帰ってとは言えないんだよね。


 三人を見送って店内に戻る。

お昼を二時間ほど過ぎたタイミングでお客さんが途切れたので、順番にお昼を食べて売れた分の商品を補充。

 時間が少しあるからとリアンが売り上げの確認、私たちは在庫数や今夜調合するアイテムを決めることに。

 

客が来なさそうだから地下の素材も見てきて欲しいと頼まれたので、ベルと二人で地下へ向かう。

ひんやりした空気が気持ちよくて大きく息を吐いた。



「にしても……四日目なのに凄いお客さんだよね。雫時までずーっと続くのかな」


「店的にはお客が沢山来る方がいいのよね。私はもう少しゆっくりしたいわ。お茶も飲んでられないもの。自分の作ったアイテムが売れるのは嬉しいけど」


「だね。私もお昼位ゆっくり食べたいって思ったけど、お昼休みじゃなきゃ買えないって人もいるし、お店閉めるのはちょっとね。衝立があっても調合するのはなんだか落ち着かないし」



 最近の話題はもっぱらお店のこと。

休憩だったり、商品の補充、売れ行き、あとは素材の棚卸しや仕入れといった比較的切実で無視できない内容の話ばかり。


 おやつも食べてないなぁ、と呟けばベルが遠くを見ながら頷いた。



「ゆっくりお茶を楽しむ時間が欲しいわ。切実に」


「リアンに聞かれたら怒られそうだけど、気持ちは分かる」



ちょっと落ち着いたらたくさんお菓子を作ろうと二人で話しながら店舗へ戻る。

消費した素材は買い取った分で何とか補充できているものの、リンカの森に採取に行くわけにもいかないし……ほんの少し余裕ができた程度だ。



(採取旅に行った時には多めに採取できるといいな。明日から教会の裏庭で採取してこよう。いつもより早く起きればいつもより時間をかけられるし……ちょっとずつでも採取しておかなきゃ絶対足りなくなる。商品が想像してたより売れてるのはいいけど、在庫数で悩むことになるとは思いもしなかったな)



 はぁ、と息を吐いて重たい地下の扉を閉める。

しっかりと鍵をかけた所で私の名前が呼ばれた。


 視線を向けるとカウンターの前に購入上限の錬金アイテムを並べた青年が立っている。

深い紫の瞳と人目を引く銀髪にあれ、と首を傾げた。

少し遠かったけど目はいいので直ぐに誰が来ているのか分かって口元が緩んでいく。



「ディル、来てくれたんだ」



久しぶりだねとカウンターに駆け寄ると対応していたリアンが小さく息を吐いて体をずらした。


 代わってくれ、と疲れ切った声が聞こえたかと思えば直ぐに調合スペースへ。

ディルは一緒に採取に行ったけど、一度きりだったし貴族だからそういう態度をとるのは珍しいなと思いつつ、商品を包装するために紙袋を取り出した。



「やっと来れた。色々聞いてるがこういう『錬金術の店』は初めて見たな――…このアイテムはライムが作ったのか?」


「私だけじゃないけど、皆で作ったよ。あ、このトリーシャ液は私が作ったんだ。気に入ってくれると嬉しいんだけど」


「気に入るに決まってるだろ。ライムが作ったものはどれも買い上げたいくらいだからな」



 大げさな誉め言葉だったけど、家族のように思っているディルから褒められて悪い気はしない。

嬉しさはあるけど、照れ臭くて誤魔化すように商品を紙袋へ詰めていく。

 お金は既にリアンに払ったとのことだったので、錬金アイテムがぎっちり入った紙袋を渡したんだけど、ディルはカウンターに大きめの布を広げていた。



「試しに作ってみたんだ。あくまで収納できるだけで時間を止められる訳じゃないんだ。でも、こういう劣化しにくいものを入れるには割と使える」



 ディルはカウンターに広げた、黒い布の中央に紙袋を乗せた。

布の中心には銀色の糸のような物で魔法陣のような物が刺繍されている。

かなり細かいので手間暇もお金もかかってるだろうなと考えていると、魔術陣の一部にディルが指を乗せ、魔力を流していく。


 魔力を流されている銀糸は、金色に光り淡い光を発したかと思うとずぶずぶと荷物を飲み込んで、カウンターの上には黒い布しか残っていない。




「なにこれ凄い」



思わず色んな角度から不思議な布を眺めているとディルが懐から同じ布をもう一枚取り出した。

 そして私の前に置いて見せる。



「本当は一番最初の客になりたかったんだが、前期試験で抜けられなかった。召喚科を主席卒業するのは条件の一つだったから諦めざるを得なかったが、最短で試験を終わらせてきた。何を手伝ったらいい? 雫時に採取に行くなら俺も付いて行くぞ。丁度、水属性の召喚モンスターを手に入れる必要もある、という表向きの理由もあるしどこにでも行ける」


「……え?」


「これは『結晶石の首飾り』と交換だ。今までずっとあの時貰った首飾りが自分の物ではなく、借り物だと思っていた。でも、これをライムが受け取ってくれれば『取り換えっこ』になるだろ」



 そう言いながらディルは大切そうに首にかけていた『結晶石の首飾り』を取り出して見せる。

ミント達に贈ったものより格段に拙い造りのソレ。

記憶にあるものと全く変わらず目の前で揺れているのを見て、申し訳なくなってきた。


 視線を手元に落とせば良く分からないけど凄い布がある。

貰えない、と唇を噛む。

居た堪れない位に申し訳なくて、どうしようもなく悔しかった。



「ダメ。私、これ貰えないよ。だって、どう考えても価値が違うもん。私は、私が贈ったのは……おばーちゃんが作った最高の素材を使って作っただけの錬金アイテム。実際に私がしたのはほんのちょっと魔力を込めただけ。おばーちゃんに手伝ってもらわなきゃ作れなかったし、ミント達に上げたやつの方がずっと性能も……ッ!!」



 無性に恥ずかしかった。

コッチに来て失敗らしい失敗を錬金術でしなかったから、得意になっていたんだって気付いたから。


 今度こそ、ちゃんと作るからと口にする為に顔を上げてディルを見る。




――――ディルは、眩しいものを見るようにただ微笑んでいた。




 想像もしていなかった表情に驚いて体が強張る。

息が詰まって、口から出かけた声が何処かへ溶けてなくなった。



「ライム。次は俺に腕輪を作ってくれないか」


「作るけど、でもそうじゃなくて……」


「俺はコレが気に入ってるし、正直……コレに俺の作ったものが釣り合っているとは思えない。俺にとってはこの首飾りは『誇り』で『支え』だ。コレがなければ俺は今の立ち位置にはいなかった。血反吐を吐いてでも、薄っぺらい誇りを捨てられたのも、踏みとどまれたのも全てライムに出会って、過ごして――― 叶えると決めた想いがあるからだ。俺はこの首飾りに誓いを立てたからこれじゃなきゃダメなんだ」


「それで、いいの? 本当に?」


「これがいい。重要な素材は自分で集めたが、それ以外は俺以外の人間の手が入っている。魔術陣は俺が刺繍したが……まだ魔力を流していないんだ。魔力認証をして欲しい。コレの所有者はライム以外に認めないからな」



貰ってくれないか、と言われて私は色々言いたいことも聞きたいことも飲み込んだ。


 指の腹を持っていた短剣で小さく切って魔法陣の中央部分にある刺繍に血を染み込ませた。

淡く光を放った魔術陣を見てディルが嬉しそうに笑う。



「完成したのが試験の直前だった。アイテム名は決めていないが、『魔術布』とでも呼んでくれ。収納したものは中央部分に魔力を流せば取り出せる。収納したい場合は一番外側の円部分に触れて魔力を流せば収納、容量が一杯なら置いた物はそのままになる」


「結構簡単だね」


「複雑にすると使いにくいからな―――…あと、採取旅に行く時は絶対に呼んでくれ。俺がいると便利だろう。護衛費用は要らない。俺も召喚術の素材探しに行きたかったんだ」


「私の一存じゃ決められないから、ベルやリアンにも話してみる。ディルがいると心強いし」


「! そうか、じゃあ俺からも後で手紙を書いておこう」



よし、と満足気な顔をしたディルは機嫌良さそうに帰って行った。


 カウンターから手を振って一応他のお客さんと同じように「ありがとうございました、またお越しください」と言葉をかけると即座に振り返って真顔で頷かれたのには驚いたけどね。


 ディルが店を出て行ったのを確認したのか、リアンがカウンターに戻ってくる。

ベルも同じように戻ってきたので二人ともいつもの席にいたらしい。

呆れたような顔でディルが出て行った店の出入り口を眺めているベルの横でリアンが『魔術布』を見せて欲しいと言ってきた。


 鑑定を終えたリアンは呆れたような顔をしてベルと同じように店の出入り口に視線を向けた。



「いつも思うんだが、ディルは労力と金と時間のかけ方が異常だな」


「まぁいいんじゃない? 収納が増えるのはいいことだし、時間が止まらないなら酒類を持って歩けば上手く熟成させたりできるって事よね?」


「温度とかは影響しないのかな? 後で手紙出して聞いてみる。温度が影響しないなら時間経過で熟成するものとか入れて置けるし」



貰った布はポーチに仕舞っておく。

 大事なものは身に着けておかなきゃね。



(問題はこの『魔術布』に見合うような効果をつけた腕輪が作れるかどうか、だよなぁ)



 装飾品の作り方を本格的に勉強すべきかな、と考えてみる。

召喚師が喜ぶような効果を調べてみようと心に決めたのは言うまでもなく。


 無事に営業を終えて閉店作業をしている時に召喚師に有効な上位効果などを聞いてみた。

二人ともディルとの会話を聞いていたからか、作業の手を止めて私をじっと見ている。



「魔術師なら“魔力”を増加させるようなものがいいんじゃないかしら? 魔力は多ければ多い程いいでしょうし」


「これといって思いつかないが……防御系の効果も有効じゃないか? 詠唱中は無防備になることが多いと聞くし、怪我をする確率を下げるのは基本中の基本だからな」


「魔力と防御か。ちょっと色々調べてみる。うーん、狙った効果がちゃんとつけばいいけど……多分、素材の結晶石が元々持ってる性質みたいなのが一番大事だと思うんだよね」


「そう、ですの?」


「感覚的すぎて説明しにくいんだけど、三人の首飾りを作った時に『あ、これはミントのだ』とか『こっちはベル』『リアンのはこれ』ってピンときたっていうか……後でもう一回石を見てみようかな……結局洗浄できてないし、夕食後にでも洗って明日の朝にでも確認するよ」



助言有難う、とお礼を言った所で二人も洗浄を手伝いたいと申し出てくれた。

 汗を流した後だったし、結構な数があるから大変だよ? と一応断ったけど、二人には



「それなら尚の事手伝うわよ」


「三人でやった方が早いだろ」



と言い切られる。



 私が料理を作っている間も接客したり、後片付けや補充をしてくれてるから少しでも休んで欲しかったんだけど、それを言ったら怒られそうだから黙っておく。


 食事を終えて、食後のお茶も飲まずに石を取りに地下へ向かう。

時間が惜しかったのと石の洗浄・選別作業に時間がかかると思ったからだ。

実際、石を洗うだけでもかなり時間がかかって、洗い終わった石の選別にはもっと時間がかかった。


 三人で好みの石や色、どこに振り分けるか……と話していたらあっという間だったよね。

寝る時間が近いことに気付いて慌てて作業を中断し、魔力を多く使う中級ポーション作りに全力を注いだ。



 おかげで中級ポーションに余裕が出てきたので、明日からは少しずつ長旅に向けたアイテム調合もしていこうと思う。






 ここまで読んでくださってありがとうございます。

誤字脱字などの報告、毎度毎度お世話になってます…本当に。


 まだまだ盛り込みたい話がありますが、じわじわ行こうかなって思いなおしここで切りました。

次はどうしよう……。

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― 新着の感想 ―
[一言] 毎回とても楽しみにしています 登場人物の性格など事細かくまた時とともに成長する様子が楽しみです。 頑張って書きつづけてください。
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