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8話 武器とギルド

 本編に入る前にやっぱり時間を食っております。むしゃむしゃ。


…世界観というかまったりした?雰囲気だけでも伝えられたら…いいなぁと毎回思います。むしゃむしゃ。



*令和元年9月25日に一部内容修正しています。主にスキル関係ですね。




 武器屋というだけあって、店内には少なくない武器が置かれていた。




樽の中に無造作に突っ込まれているのは余り高くない初心者向きの剣で、高価になるにつれて棚に置かれたり、壁に掛けてあるのも数点あるし、ケースに入っている武器まである。

 客が入るスペースは他の店と同じように木で作られているけど、カウンターから向こう側は土壁や石壁といった作りになっている。

その奥には扉があって、奥から微かに金属を叩く甲高い金属音が聞こえていた。

時々、怒声が聞こえてくるあたり絶賛教育中ってかんじかな?



「ここが俺のオススメの店な!武器だけじゃなくて防具も扱ってるから便利だぞ。おやっさんの腕も確かだし、贔屓にしてる先輩も多いんだ」


「マナーの悪いお客さんは出入り禁止になってるし騎士や見習いがよく来るってことで格段に安全だから、ライムさん一人でも大丈夫だと思うよ。錬金術師が使う武器があるかどうかはわからないけど…」


「イオは心配症だよな。そんなもん、おやっさんの店なら置いてるって…っと、ライム、そこのベルを鳴らしてくれよ」


「ベル?これを鳴らせばいいの?」



カウンターにぽつんと置かれた青銅で出来た小さな呼び鈴を持って思いっきり振るとチリンチリンと可愛らしい音が店中に鳴り響いた。

ちょ、ちょっと音が大きくて驚いたんだけど、店の奥 ―――…工房に通じている扉から出てきた人影をみて思わず手に持ったベルを落としそうになる。


 私の倍はある大きな身長とエルよりも短く刈り込まれた真っ赤な髪と瞳。

腕なんか私の太ももくらいの太さがあるんだから熊が出てきたかと思った。



「らっしゃい。…あ?エルにイオじゃねぇか。お前ら最近武器を買い換えたばかりだろ」


「俺たちの武器じゃなくて、これからリンカの森に行くからライムの武器を見に来たんだ。錬金術師ってどんな武器を使うんだ?」


「錬金術師…?」


じろり、と高い位置から私を眺める店長に少し緊張しつつ、自己紹介のために口を開く。

あれだよ。挨拶はきちんとしないとね。

多分今後もお世話になるだろうし。



「初めまして。私、ライム・シトラールっていいます。武器を持ったことがないから何が自分に合うのかわからなくて…できれば見て欲しいんですけど」


「シトラール?ああ、どっかで見た頭の色だと思ったらお前はカリンの娘か」


「お母さんを知ってるんですか?」


「知ってるも何も、アイツらは俺の店でしか武器を買わなかったからな。オランジェ様にも世話になったんだ。色んな鉱石を使わせてもらった御陰で今の腕がある…どれ、ちょっと待ってろ」



懐かしそうに目を細めてガシガシと大きな手で私の頭を撫でる。

いや、ただ単に頭を鷲掴みにされただけ?


 ここでもお母さんとおばーちゃんの知り合いに助けてもらうことになるなんて、と有難いやら情けないやらで複雑な顔をしてるとイオが期待に満ちた目で私を見ていた。



「な、なに?」


「本当にライムさんのお母さんはカリン様なんですね…!僕、カリン様とレミン様に憧れてたんです。冒険者と騎士で迷って、騎士に惹かれて騎士を選択しましたが…本当にライムさんは凄いです」


「いやいや、私が凄いんじゃないってば。私はまだ何にもしてないし……このまま、なーんにもできないまま色んな人にお世話になってたら絶対見切られると思うんだ。だから、期待してもらえてるうちに頑張らないと! 一応おばーちゃんの血も受け継いでるわけだし、あとは頑張り次第で国一番の錬金術師になれるかもしれない訳だしさ」



錬金術師の腕を上げるには、まず場数を踏んでコツと自分の癖を掴むことらしい。


 だから、まずは素材を集めて教科書を見ながら未知の初心者向け調合からだ。

おばーちゃんに教わった調合って実は、ほとんどないんだよね。

調合の手順だとかポイントだとかは横で見てた時に教えてくれたけど実践したことはないからほぼ素人。

効果がついたのだって、ワート先生たちに話した首飾りが最初で最後だ。



「待たせたな、っと…!錬金術師がよく選ぶ武器と冒険者になり立ての奴らが選ぶ武器、んでもってコレが試作品だな。オススメはこの辺りか」



広いカウンターに置かれた武器は杖、剣、槍、弓、拳、棍棒の六種類。

試作品として置かれているのは実用向きではない綺麗な装飾が付いた杖と剣。

勧められたのは杖、弓、棍棒の三種類だ。



「錬金術師や召喚士は一般的に騎士や冒険者より体力がないのが多いから、初心者はこの辺りが無難か。実際に持って軽く振ってみたり構えてみて、一番馴染むものを選ぶのは基本中の基本だ」


「はーい。えっと、じゃあ杖から順番に試してみようかな」



並べられた武器を手にとって何度か振ったり、殴る動作や突きの動作をしてみるけれどどれもしっくりこなくて首をかしげる。


 なんていうか、使い勝手が悪いんだよね。特に弓は当たる気がしない。

採取や調合の時に便利そうなのは杖か槍だ。

ほら、長さがあるから木になってる果物系の素材取りやすいだろうし、草むらとかガサガサするのに便利そう。

調合の時は釜をかき混ぜるときに良さそうだ。



「杖か槍が便利そう、かなぁ…う~ん。でも、何かイマイチしっくりこな……あれ?あの隅っこに立てかけてあるのなんですか?杖っぽいですけど」



何気なく顔を上げた先にはボロボロになった武器が無造作に入れられた樽があった。

そこにひとつだけ無傷に見える武器が挿してある。

長さからするに杖の類だとは思うんだけど…装飾も少し気合が入ってるから妙に気になる。



「あ? あー…あれか? あれは、まぁ失敗作だな。思いつきで作っちまったんだが、どう考えても武器にゃなんねぇから解体して別のを作り直すさ。気になるんなら見てみるか? 勧められるようなもんじゃないが」



ガリガリと頭を掻きつつ、彼は樽からそれを抜き取ってカウンターへおいた。

 ベースは杖だ。

でも、先端部分を見るとただの杖でないことは明白だった。



「……おやっさん、これ、泡立て器を見本にしたんだろ」


「思いついた時は画期的な試みだと思ったんだがなァ…一応、殴れるように先端は頑丈だぞ? 中にゃ、杖の媒介になる魔石も入れてるから杖としても使える。ただなぁ…これで命を守るってのはどうなんだって言われてな」


「調理器具ですもんね…僕が魔物や盗賊ならこれで倒されたくないな」



置かれているのは、エルの言うとおり泡立て器のような形状の杖だった。

ううん、正確には杖のような泡立て器?


 好奇心からそれを手にとって上下に振り下ろしたり、なぎ払うようにしてみたり、突いてみたり、いろいろ試してみた。

魔力を少し込めると、泡立て器の中に入れられた魔石が光って綺麗な光の軌道を作る。



「ん、これにする!調合にも使えそうだし、魔力込めて強化すればボコボコに殴れるでしょ?先端が少し重たいから振り下ろしやすいし、試した中で一番手に馴染むんだよね。ほら、泡立て器だと調合の時も便利そうだし」



これはいいよー!と絶賛しつつ、意外とツルツルすべすべな杖の部分を撫でていると、視界の端でエルとイオが何やら小声で話してる。


 あれ、なんだろう。後ろ指さされる居た堪れなさに似てるぞ。


武器屋の主人は自分の作ったものを処分せずに済んだのが嬉しかったらしい。

ま、気持ちはわからないでもないけどね。

作り手としては、どれも気合入れて作ってるから出来るだけ使って欲しいもん。

で、使った感想だとかを聞いて更にいいものを作るっていうのが作り手の醍醐味でもある。



「これ欲しいです!いくらですか?」


「うーん。元々処分する筈の物ではあったんだが、使ってる素材が普通のやつよりちょいと良いもんだからなぁ」


「おやっさん、ライムはあんまり金ねぇんだよ。庶民の錬金術師なんて珍しいし、ここはどーんと初期投資ってことで安くしとけばその内、錬金術師にしか作れない金属の類も持ってきたりしてくれるんじゃね?なぁ」


「(流石庶民仲間!懐具合がよくわかってる!)まだ金属類は作れないけど、作った金属は一番初めにここに持ち込みます!あと、武器を新調する時は緊急時以外、他の店を利用しないってことでなんとかっ」


「そ、そんなに懐具合がやべぇのか?…まぁ、俺にとっても悪い話じゃねぇし錬金術師の作る金属類を加工するのは腕を磨くいい機会だ。弟子もいるし、そいつらに打たせてやるのも悪くはねぇ…よっしゃ。乗ったぜ!負けに負けて、銀貨二枚にしてやる」



銀貨二枚っていうのが武器の相場として安いのかどうかは私にはわからなかった。

ちらっとエルを見るとちょっと不満そうに唇を尖らせている。

イオの方は表情に変化はない。



「おやっさーん…せめて銀貨一枚と銅貨五枚にしてくれよ。木の杖なんて一本で銀貨一枚もしないだろ?」


「あのなぁ…これに使った素材料を考えるとこれでギリギリなんだよ。赤字になったら母ちゃんに怒られちまう。代わりといっちゃぁなんだが、これをつけてやる」


「短剣?なんか高そうですけど、コレ」


「そこに置いてある短剣よりは質がいい筈だ。俺の一番弟子が昨日作ったんだが、よかったら使ってやってくれ。品質はいいんだが、冒険者向きじゃねぇんだよ」



呆れを混ぜた表情で太い指が短剣の柄を指差した。


 で、私やエルは絶句する。


柄を見たまま固まったのをみたイオが興味を惹かれたのか覗き込んだんだけど前髪で隠れているにもかかわらず顔色が悪いのがわかる。



「な、なんでこんなに立派な短剣に死神の絵が彫ってあるんですか?!こんなの冒険者は縁起が悪いって使いませんよ!」


「やっぱ死神にしか見えねぇよなぁ…俺も問いただしたんだが、どうやらアイツは女神様を彫ったらしい。鍛冶の腕はあるし、センスもあるんだが…どうにも彫り絵の才能が壊滅的らしい。質はいいしこのまま捨て置くのも惜しいものだから使ってやってくれると嬉しいんだが」


「さ、流石にこれはやめたほうがいいと思いますよ?ライムさん」



引きつった声で私をみるイオと激しく首を上下に振るエルを横目に、とりあえず短剣を握ってみる。


 持った感じはとても手に馴染む。

これなら素材を細かく切るのに楽だろうし、刃自体も綺麗で品質が高いことがわかる。

薬草を採取したり果物を切ったりするのにも使えそうだ。

柄も頑丈で、少し脆い鉱石を砕くのにも使えそうな気がする。



「確かに彫り細工は不気味だけど、使いやすそうだし貰おうかな。おまけってのがいいよね!うん。今度来た時、使い心地報告しますね。えーと、銀貨二枚っと」


「おお!ありがとよ。んじゃあ、これを入れるベルトとケースもつけてやるか。エルもイオもライム嬢ちゃんみたいな客がいたら連れてこいよ。次に武器を買う時にゃ紹介してくれた人数分値引いてやるぜ」



にやりと笑って手馴れた様子でベルトの付け方や武器の扱い方のアドバイスをくれた。

 エルもイオも色々と収穫があったようで笑顔で武器屋をあとにする。




◆◆




 次に向かったのは武器屋と雑貨屋の境目にあった大きな建物だった。


酒場の雰囲気にも似ているけれど看板には国の紋章が書かれた紙とペンが彫られている。



「ライムさん。ここがギルドだよ。登録しておけば、採取に行く時に誘う冒険者を誘いやすくなるんだ。だから、錬金術師や召喚士も結構登録してる」



ほら、とこっそり指さす先をみてみると確かに錬金術師っぽい人が掲示板の前に立っていた。冒険者や騎士もいる中で彼が一段と目立っているのは、彼の周りだけ人が一人通れるようなスペースができているからだ。



「ねぇ、なんであの人避けられてるの?何かやらかした?」


「違う違う。錬金術師は貴族が多いからね。人を見極めて、話しかけられそうだったら話しかけて顔と名前を覚えてもらうんだ。錬金術師と知り合っておけば仲介料なしにアイテムが買えるし、素材も買い取ってもらえる。ギルドで素材を売るのも一つの手だけど、品質のいいものや珍しいものなんかは錬金術師に直接売り込めばギルドで売るよりも高く売れたりするからさ」



どうやら採取に行く手間を惜しむ錬金術師は少なくないらしい。

私は自分で使うものは自分で採りたいけど、時間がない時は買い取るのも手だよね。

ある程度懐に余裕ができたら、だけど。



「ライム!それよりほら、早く登録してリンカの森に行かねぇと採取の時間少なくなるだろ」


「そうだよね。危ない危ない。えーと…名前だけでいいの?」



手渡された羊皮紙には名前を書く場所があるだけで後は空白の欄がいくつか並んでいる。

透かしてみたりひっくり返してみたりしたけど、変化はまるでない。


 首をかしげてじぃっと羊皮紙を睨みつけていると控えめな笑い声が正面から聞こえてきた。

顔を上げると、灰色がかった金髪をきっちりまとめた美人が笑っている。

眼鏡の奥の青色の瞳を細めて笑う姿はなんか、すごく可愛い。



「ふふ。ごめんなさいね」


「い、いえ!えっと、名前書いたんですけど、コレ」



どうしたら?と羊皮紙を指差す。

すると彼女はニッコリと口の端を綺麗に持ち上げて紙の上に手をかざすように告げる。



「このまま羊皮紙に魔力を注いでください。錬金術師専用の羊皮紙ですので全力でどうぞ。魔力が空になった時点で登録は終了ですが、使い切った魔力は回復薬で回復させていただきますので安心してください」


「回復薬は無料ですか?」


「勿論、無料です」



「ライム……お前なぁ」



呆れたようなエルの声が聞こえたけれど、その声を無視して思い切り魔力を放出する。

 要領は入試試験の時に掴んだから簡単だった。

魔力切れを起こすまで魔力を放出すればいいってだけだし、そのあと直ぐ採取へ行けるように無料で回復薬がもらえるって言うんだから全力だすよね。


 初めから遠慮なしに魔力を放出したんだけど、ゴクゴクと音を立てて飲むように魔力が紙へ吸い込まれていく。

あっという間に魔力がなくなりカウンターに突っ伏した。



「う、うぅ。きっつい…魔力切れなんて、ひ、久しぶりすぎて気持ち悪ぅ」


「じゃあ、コレどうぞ。ぐいっと飲んじゃって」


「…あい」



受け取った回復薬を一気に流し込む。

回復薬の味は少し塩っぽい気がするけど味らしい味はなく水に近い。

後からスッとした清涼感がくるのは、回復薬に使った素材特有のものだ。


 一気に、とまではいかないけれど急速に魔力が回復していく。

透明度といい、薬を入れている瓶といい結構腕のいい錬金術師が作った薬だとわかった。



「そこの二人は護衛かしら?よかったわね、彼女は優秀な錬金術師になる素質があるわ」


「魔力注ぐだけで素質がわかるの?」



びっくりして羊皮紙に視線を戻すと驚いたことに空欄だった場所に文字や数字が浮かび上がっていた。

原理で言えば、魔力晶のようなものなんだろうけど…こ、こっちの方が使われている技術は高い。



「ええ。まず、名前の下には体力と魔力の総量。錬金術師の場合は魔力の色も記されるわ。ライムさんは―――…随分珍しい色みたいね。で、コッチは基本ステータスって呼ばれるもの。ステータスが低くても鍛え方次第でいくらでも強くなれるから一種の目安に近いわね。高ければ高い方がいいけれど、体力が高くても腕や足は切れたら戻らないし、首を落とされれば死ぬわよ」


「なるほど。えっと、私のステータスってどんな感じなんですか?イマイチよくわからないんですけど」


「そうねぇ…錬金術師らしくはないかもしれないわ。体力も魔力もあるし…平均的に高めかしら? 少し防御面が不安だけどね。特に優れてるのは魔力と運。体力は見習い騎士並みね。あぁ、器用さが低いから集中力を上げると弱点も補える筈よ」



羊皮紙の上を綺麗な指がなぞり、わかりやすいように解説してくれる。


 お姉さんによると私はステータスだけで見るとかなり恵まれているらしい。

体力や腕力が高いのは、ド田舎で自給自足かつ野生児っぽい生活をしてたからだと思う。

素早さが高いのだって同じ理由だと思う。

 魔力に関しては…イマイチわからないけど、調合には少なからず魔力が必要だし有難いことだよね。

扱い方がよく分かってないせいで魔力の調整が下手くそだけど。



「それから、錬金術師としての力量は数字に変換されて、ここに表示されるようになってるの。騎士や冒険者、他の職業だとその職業の力量が数字で表されるわ。これ、不正出来ないから身分証明にも丁度いいのよね。覚えておいて」


お姉さんの解説に従って数字を目で追う。

私の今の実力はレベル1らしい。

家でこっそり調合してたとは言っても殆ど成功しなかったし、仕方ないんだけどちょっと悔しい。



「冒険者のレベルはここ。ま、冒険者レベルはオマケみたいなものね。冒険者レベルを上げたい時は、難しい依頼をクリアするだけじゃなくて、素材を売るだけでも少し上がるから、貢献度として見てくれて構わないわ。で、ここに書かれているものはスキルと呼ばれるもの。大体が、先天的に持っているものばかりだけど適正や隠れた個人の資質、経験なんかで新しく表示されることもあるわね。コレを見る為に登録する人も多いの」


スキルをわかりやすく言うなら『才能』だ。

 ある一定の年齢になると教会などでスキルを鑑定してもらう事ができる。

実は、この才能がなくても練習や努力で出来るようにはなる。



(けど、才能もちの人には敵わないんだよね。技量の伸び方が半端ないっておばーちゃんの友達からも聞いた事あるし、錬金術師や召喚師はスキルがないとアイテム作ったり召喚獣呼べないっていうし)



 私の羊皮紙にはちゃんと『錬金術師』の文字があってひっそり胸を撫で下ろす。

もしスキルが無かったら家で今も一人暮らしをしていたと思う。


 ちょっと貸してね、と優しく言われて羊皮紙がお姉さんの下へ渡る。


何をするのかと好奇心に負けてその手元を見ていると銀色に輝く液体の上に羊皮紙を乗せて何やら呪文のようなものを唱えはじめた。

 すると、羊皮紙が液体に溶けて、代わりになにか小さいものが液体の上に浮かび上がってくる。



「はい。これがギルドカード。報酬の支払いや依頼を受けるときにも必要になるから無くさないように。わからないことがあったらいつでも聞いて――――それと、リンカの森に行くならこの辺の依頼がオススメね。受ける?」


「イオ、どうする?」


「今回は案内するだけだし…この辺でいいんじゃないかな?」


「だな。んじゃあ、ねーちゃん!これで頼むよ」



二人が選んだのは【野良ネズミリスの討伐】と【アルミス草の採取】という初心者向けのもの。

どれも短時間でこなせる内容なんだって。


 ちなみにネズミリスっていうのは魔物の一種でよく森にいる。

危険性はあまりないけど、繁殖力が強いのと農作物に被害を及ぼすことから立派な害獣としても認識されている。素材的には…あんまり活用する場所はない。

お肉はそこそこの味だからお金なくなったら食料にしようと思う。


 アルミス草っていうのは調合でも使う基礎中の基礎素材。

中和薬につかったりアルミスティーの素材になる。アルミスティーは、初心者でも調合できるから庶民の間では定番の飲み物だ。ちょこっとだけ魔力が回復する。



「それでは、いってらっしゃいませ」



綺麗な窓口のお姉さんに見送られて、私たちは途中で必要なものを少しだけ買い足しながらいよいよリンカの森へと向かう。



 とりあえず、リンカの森では品質のいいアルミス草は多めに採取しておきたい。

いくらあっても足りないし、ね。

あと晩御飯になりそうな魔物が出てきたらいいな。

首都だけあって物価が高いし、節約しないと。




いよいよ、首都での初採取!

授業の前に少しストックしておいたら授業受けたあとにすぐ調合できるよね!






=解説など=


【ギルドカード】

冒険者だけではなく、騎士、錬金術師や召喚士なども持っている。

商人の場合は専用のカードがあり、店の規模や収支などが確認できるようになっていたりする身分証明書の一つ。

こちらでいうなら、運転免許書や保険証のようなもの。


*アイテム&素材*

【アルミス草】

現代でいうヨモギに似た草。

独特の香りがあり、広く庶民に親しまれている。料理やお茶に使われる。


【アルミスティー】

若葉を積んで乾燥させたもの。蒸してから乾燥するとより味が引き出せる。

仄かに甘く香ばしい為、老若男女問わず好かれている。




まずは武器をゲット。

武器は泡立て器(型の杖)です。泡立て器、いいフォルムです。

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