才能
才能が欲しい。何でもいい、ただ何かに秀でていたい。俺が最も輝ける、才能を。
俺は、才能を持て余して腐らせる奴が嫌いだ。才能を持ってるくせして、努力だの何だのと抜かしやがる。目の前にいる、コイツがそうだ。
「僕テニスやってみたいんだよね」
頭がいいはずなのに、何故わざわざ運動をする。
『..いいんじゃね』
神様も馬鹿だな。俺に才能を授ければ、それを絶対に活かしてやれるのに。
--------
二位。二位二位二位。二位づくしの生活。一位はいつも、アイツが取っていくから。
ほとんどの朝会で、アイツが表彰されていた。県の賞だの、日本のなんとかだの。いい加減聞き飽きてきたところだ。
アイツに勝つためだけに、好きだった運動もやめて勉強をした。 それでも勝てない、才能の差だ。
俺は勉学の才能がなくて、アイツには才能がある。 俺が才能を持つと、俺と同じ状況にアイツが陥るかもとも考えたが..そんなのはどうでもよくなった。
少し前までは闘争心を燃やしていたけれど、今はただの燃えカスだ。どれだけやっても埋まらない差。大きすぎる差に、ただ絶望しかない。
死にたい、そうは思うけれどサクッと死ねるほど肝は座ってない。
(いっそのこと、アイツがいなくなれば楽なのにな)
------
実現してしまった。アイツはいなくなった。自殺だ。
遺書には勉強と運動の両立、過度なプレッシャーで自殺を決めたこと、そして俺への感謝が書かれていた。
(感謝されることなんて、何もないのにな)
制服を着て、アイツの墓の前に線香を立てる。
今まで渇望していた一位になることはできた。ただ、俺には才能がないから。それはダンボールでできた、ハリボテのメダルだ。
アイツがいなくなったのに、悲しむこともなく俺はただ、才能を欲している。俺に才能があれば、アイツが一位というプレッシャーを感じることもなかっただろう。そんなちっぽけな善意があるからだろうか。
アイツは遺書に、「君の前では笑顔でいれた、話したいことも話せた。ありがとう、ごめんなさい」と書かれていた。
最後にポエムじみたことを書いて、俺をバカにでもしているのかと、そう思った。
ふつふつと胸の奥から感情が溢れ出してくる。才能が欲しい。くれないのなら、せめて努力で一位の座を勝ち取りたい。そんな浅ましく、強欲なドロドロとした感情が。
でも、そんなこと神様は許してはくれないから。だから欲しい。
誰にも負けない、世界でいちばんになれるくらいの。
アイツを殺した才能を。




