【問一】守り抜くと誓った最愛の幼馴染であるお姫様が、王子様になったときの心情の答えよ。
神龍王国は、建国の父であるガルジュベールと神龍の契約によって作られた。だから、神龍王国の王になれるのは、ガルジュベール・ド・フライシングの血を受け継いだ男児のみだった。
僕はその規則が嬉しかった。
だって、その規則のおかげで第三王女であるナタリア・フライシングは王都から離れた母方の領地で、のんびりとした時間を過ごすことができて、僕の幼馴染であれたから。
それは、ナタリアも同じように思っていると、僕は心の底から信じていた。
今はもう自信がないけれど。
兄や弟たちのように、血で血を洗う熾烈な戦いに、神龍の気まぐれな試練に振り回されることなく、自分の人生を生きられる。
彼女には、その権利があったのに。
神龍は、下した命令を成し遂げた王族に褒美を与える。
厳密に実行する人が王族である必要はない。だから僕は彼女にお願いされて、彼女の名のもと、王国の端を荒らす不届な魔物の討伐を三年間続けた。
そして、やっと神龍が認めるほど、綺麗に掃討して見せた。
その報いがこれか。
手紙では月に一度やりとしていたナタリアに、会える。今回の武功で、僕も王都に住めるだろうか。そうしたら、きっと今までの時間を埋めるように、ナタリアと会える。それだけが希望だった。
神龍と対面し、彼女が望むものが与えられる瞬間、僕は後ろから見ていた。
ナタリアは昔から、自分のしたいことをはっきり表明して、堂々と成し遂げてみせた。
僕は彼女のそういうところが好きだった。
大好きだったのだ。
〈何を望むか、賢き乙女。 ガルジュベールの血を継ぐものよ〉
「神龍様、謹んで申し上げます――」
交わした言葉は、彼女と神龍様だけのものだった。何を言ったのか、僕にはわからない。
でも、彼女の願いを聞いた神龍は笑った。僕のいる場所までその振動は届いて、髪の先までビリビリしばらく揺れていた。
笑っている。
そして、神龍が魔法を使った。膨らむ魔力の中心には彼女がいる。
ナタリアが、危ない。
僕は目の前に並ぶ神官も、武装神官も突き飛ばして(火事場の馬鹿力というやつだろう)彼女を見た。
その時には、もう――彼だった。
「ナタ、リア……?」
彼女は、いや、彼は俺を見ない。控える記録係に届くような大声で言った。
「たった今! ナタリア・フライシングは死んだ! 代わりに、神龍の祝福を受けた王子、ナルドベール・ド・フライシングの名前を記録せよ!! 王国の新たな後継者である!」
僕はその輝かしい誕生を、もっとも近くで眺めることができた。そして最も深く絶望したものでもあった。
彼の、王への道が始まった日だった。
ここで問題である。
【問一】守り抜くと誓った最愛の幼馴染であるお姫様が、王子様になったときの心情の答えよ。




