第94話 久しぶりのコレットの事件簿3 プリンの甘さは愛の狂気
あ~、みなさんはぁぁ、人から恨みを買った経験はぁ、ありますか~?
「恨み」というものはぁ、怖いものですねぇ。
なにせぇ、加害者本人はぁ、んん…意識しなくてもぉ。
被害者にはぁ~根深く残ってるものですからぁ~
あ~、今回はぁ、そんな話ですぅぅ。
あッ、私はぁ、コレットぉ・オルレアぁですぅぅ……
◇
「本当に、ごめんなさい」
ハティさんが土下座して謝る。
「僕には君だけなんだよぉぉう」
そう言ってすり寄る。
パチンっ!
手を叩く音がする。
アンジェさんがハティさんの手を叩く音だ。
(うっわぁぁ、この茶番、いつまで見せられるんだろう)
私、コレット・オルレアは辟易していた。
申し訳ないけれど、かの「最悪の魔女」ですら、私の『眼』では丸裸。
(も、もう…とっくに許してるけどぉ、これって止め時わかんないぃぃ)
正直、「ケッ」って思う。
(でもでも、ちょっと、っていうか、かな~り、このシュチュいいかも。げへへっ)
ダメだぁ、この人たち。
というか、ハティさん自身もわかってやってる。
(ふぅわぁぁぁん、「ツン」演技のアンジェ最高!次は?次はぁぁぁ!?)
変なご褒美になってる。
ダメだ、これは「変態のやり方」だ。
「はぁい、煮えたわよぉ~」
お姉ちゃんが状況をガン無視して食卓に鍋を置く。
ここは、ハティさんがエルフの集落に建造した家。
いや、細かいことにはあまり突っ込みたくない。
土と木を基調にした、「東洋風」建築様式。
草を編んだフローリングは初めて。
しかも、靴を脱いで上がるなんて。
床に座る(冒険時は別)経験のない私たちのために「掘りこたつ式」。
床が一部低くなっているので足を下ろせる。
部屋の間仕切りですらスライド式のドアを採用。
プライベートってものに配慮していないのかなって思う。
「たくさんつくったから、遠慮しないでね」
お姉ちゃんって、結構、世話焼き。
みんなによそってくれる。
今日のご飯は、お姉ちゃん特製「鳥鍋」。
ハルが持ってきたジャガイモが入っている。
野菜たっぷり、お肉も余すところなく入っている。
「お、鳥モツも入ってるんだぁ」
内臓まで無駄にせず、しかも下処理まで完璧。
……あれ?
手羽元とか手羽先、異常に大きくない?
もしかして……最初のアレ?
いつ回収したの?
「真っ先においしそうなチキンが来てくれてよかったわねぇ」
うん。良くないよ?
そして、逃げた他の巨大生物は本能的に正しかったんだね。
◇
みんな、お腹いっぱい。
幸せな気持ちで、順番にお風呂に入る。
ハティさん、お風呂作ったんだ。
変態さんなのに、無駄にスペック高すぎるね。
蛇口捻るとお湯が出てくるとかさ、どうなってるの?
「これっとちゃぁん、髪乾かしてあげるぅ」
リャナンさんが構ってくれる。
正直、かなりくすぐったい。
嬉しいけれど、ここまでされるってことがないから。
ほんと、構いたがりのお姉ちゃん。
「女子部屋で、寝よう」
そう言ってリムアンさんが手を握ってくる。
私とそう変わらない背丈。
ぶっきらぼうな言い方だけれど、とっても優しいお姉ちゃん。
「先に、布団敷いておくから」
ルーダさんが言う。
……ハルと、とっても仲が良い人。
よく気が付くし、働き者。
今だって、率先して私たちのお布団を用意してくれる。
優しい…お姉ちゃん……
◇
私は、目が覚めた。
「おトイレ……」
布団を抜け出す。
隣ではリャナンさんやリムアンさんが寝息を立てている。
トイレに向かって廊下を歩いていると、お部屋に明かりがついている。
(もう、「お姉ちゃん」ったら……)
きっと、エリーゼお姉ちゃんだ。
いつも私が寝た後、晩酌する。
「お姉ちゃん?」
部屋に入ると、テーブルを前に座っているお姉ちゃん。
(寝ている?)
そう思って、肩に手をかける。
――――――ゴトリ。
お姉ちゃんが力なく倒れる。
……意識がないっ!?
見ると、口の端から「カラメル」と「金色の半固形」をこぼしている。
これじゃあ、窒息してしまう!
私は急いで横向きにして、気道を確保する。
「あ、はははは、あま~~い」
ワケの分からないことを呟いている。
いけない!
これは、事件だ!
助けを求めに、この中で「最強」の人物のもとへと向かう。
―――――手遅れだった。
口から「カラメル」と「金色の半固形」を漏らして白目をむいている。
「くぅッ!」
私はその場を後にした。
ティアさん―――――ダメだった。
ジャンヌさん――――ダメな人だった。
フィンたち―――――全滅だ。
リャナンさんもリムもルーダも……今頃はきっと――――
(どうしたら……)
そう思いつつ、元の部屋に戻ろうとした時だった。
「ひっぃぃぃゃぁぁぁぁ!」
ある人物とぶつかりそうになって悲鳴を上げた。
「ぼ、ぼぼぼくはぁ、な、ななななにもしてないよぉう」
珍妙なくらいにどもった「ハル」。
「た、助けてもらおうとぉ、お、思ったんだけれぇど」
メチャクチャ挙動不審。
ちょっと、イラつく。
―――ぴしゃり。
おでこを叩く。
「な、何するんですかぁ」
何で、敬語?
「落ち着いて。これは、『事件』です!」
「じじじじじ、じけぇんん?け、警察を呼ばなきゃぁぁ」
うん。やっぱり、イラつくね。
「落ち着きなさい、いま……じゃなくて、『ハル』くん」
「え、ええ?」
妙に挙動不審。目を泳がせる。
「外からそう簡単に襲撃できません」
「そうなると、内部の犯行でしょう」
「だ、だだだ誰がぁぁ、そんなことをうぉうぉうぉう」
結構、腹が立つね。この人。
「そんなの――――――」
言いかけた時だ。
ギシ、ギシ、ギシ、ギシ……
板づくりの廊下がきしむ音がする、
「あ……」
私たちふたりは言葉を失った。
廊下の先……角から、ひとりの少女が顔をのぞかせる。
「あれ?こんなところにいたの」
手にはバケツ。
それとスコップ大の……スプーン?
「アナタたちのぶんも、つくったのよ?」
そう言って暗い廊下をゆっくりと歩いてくる。
「ああ、あの人、目が笑ってない!」
ハルに言われるまでもなく、わかってるって!
美しい金髪のツインテール。
そのひと房の先を口に咥えている。
「とぉっても、おいしいと思うんだぁぁぁ」
首を傾げる様は本当なら可愛らしいはず。
なぜか、逆手にスプーンを構えてバケツに突っ込む。
「どぉぞ、召し上がれぇ……腹がはちきれるぐらい……けひひひひ」
ゆっくりと私たちに近づいてくる。
か、体が動かないっ!
魔術!?
それなら、ハルが!
「ま、まま魔術は僕には通じないんですよ」
ドヤ顔で言う。
でも、今「だけ」は、頼りになる。
さすが、「今、イージー(お気楽)」くん!
「あっ!?」
え?何、なにがあった?
「あはは、『棒』部屋に忘れてきちゃっいましたっ」
コイツはぁぁぁぁ。
そうこうしているうちに目の前にるアンジェさん。
「さあ、た~んと、召し上がれぇ」
『いやぁぁぁぁぁ!』
◇
あ~、加害者の諸君んん~
君たちはぁ、たとえ、軽い気持ちであってもぉ~
被害者にはそうではぁ、ありませんん。
何かの拍子に、怒りがまた込み上げる場合がありますぅ。
まさに、「爆弾」か「地雷」ですねぇ~。
たとえ、表面上では許しているようにぃ、見えてもぉぉ。
途端に腸が煮えくり返ってぇぇ、「必殺の機会」をぉ、狙ってくるかもしれませんん。
「触る『アンジェ』に祟りなしぃ」という諺がありますぅ。
まずはぁ、誤解を生むかもしれない行為やぁ、人様を傷つける行いは避けるべきでしょうねぇ~~
んん~、あ~、コレットぉ…オルレアぁ……でしたぁ~
ジャガイモ仲間の皆さんへ
今日という1日を戦い抜いたアナタ。
ヴィクトリー!
このダルい日を堪えられたのは、皆さんは最高の戦士です。
明日も頑張っていきましょう!




