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第71話 乱戦、混戦!そして漢を見せろ、ハル!ヴィクトリィャー!



「いきます!刀技【青嵐の太刀】」

リャナンが気合と共に剣を振るう。


嵐のような連撃。

黒い巨体が千々に切り裂かれる。


彼女はその場に居つくことなく、次に備える。

その後に残った「もの」には一顧だにしない。


「オレも負けてられないな」

ルーダが連射式ボウガンを構える。

「お願いします!連射の名作『タカハシさん・八号』!」


ハンドル式ではなくなっている。

しかも銃床が伸びて肩口に固定される。

トリガーを引いた瞬間、矢が連続で放たれる。


ダダダダダダダダ――――――


小気味良い射出音が響く。

弾倉がポーチ型のマジックバッグになっていた。

以前ハティに買わせたものだ。


何万本も収納されているので、尽きることがない。


「まだまだぁ、弾倉の予備はぁ、売るほどあるんだぜぇ~」


財布を見て涙するハティの影を無視し、ルーダが笑う。



離れた場所ではアルセイスが魔術を乱発している。


「【ウッド・パイク(樹木槍)】」


「【ウィンドブラスト(風爆)】!」


「【ウィンドアロー(風の矢)】!!!」


初級から中級であるのは魔力消費を抑えつつ、連続での使用のためだ。

彼はそれができるだけの実力を備えている。


アルセイスの攻撃を掻い潜って接近する魔獣をスヴェンが倒す。


「【盾撃シールドバッシュ】」


盾を使って数体まとめて殴り倒す。

蕎麦包丁のような片手斧で敵を斬る。



「フィン兄!」

「任されたっ」

フィンレーが走る。

今は血のように赤い槍を手にしている。


「槍使いはリムだけじゃないんだぜ」

そう言って振り回す。

いとも簡単に数体の魔獣を切伏せ、立ち止まる。


「『魔槍ビルガ』、存分に血を吸わせてやる」

石突を地に立てると魔力を解放する。

周囲に蜂の幻影が浮かび上がる。

「行けっ!」

命令とともにそれらが飛び、向かい来る魔物に襲い掛かる。


「こっちに、来るなよっ!」

オーレが魔物に向かって袋を投げ、粉を撒き散らす。


「吹っ飛べ!」

手にした筒状の物を投げつける。


「【燃焼フロギストン】!」


指をパチンと弾く。

魔物の手前で筒が爆発を起こし、魔物を吹き飛ばした。

それだけにとどまらず、撒いた粉に引火し、炎が広がって大爆発を起こす。


「うぉあ、熱っ!?あぶねぇなぁ!」

巻き添えをくらいそうになったフィンレーが叫ぶ。

「ごめ~ん、フィン兄」

舌を出してオーレが謝る。

「おまえなぁ~」



一方そのころのハルたちはというと……

「わわわわわわあわわわ」

コリガンが慌てふためいている。

「あわわわわわわわわわ」

ハルも慌てふためいている。


「はぁっ、やぁっ!」

リムだけが冷静にかつ懸命に斧槍を振るって敵を倒していた。


「……なんでふたりして同じところぐるぐる回って追いかけっこしてるの」

リムが尋ねる。


「だ、だって怖いっ、魔物だよっ魔物!」

「知ってる」

その問答の間に、また一体が迫ってくる。


「ふっ」

リムが鋭い呼気を放つとともに魔物を突く。

一撃で倒した。


「だからって、無駄に体力使う必要ないとリムは思う」

ふたりの狂態に何も思わないのか、冷静に返す。


「だ、だってさぁ」

「まぁ、リムは自分のできることをするだけなんだけれど」

そう言って魔物に向かう。

「反対側に来たら教えて」


淡々とこなすリム。

別段ふたりをバカにしているわけでも落胆しているわけでもない。

リムにとっては姉弟の役割としか思っていない。


「わぁっ!」

コリガンが悲鳴を上げる。

「っ!」

リムがすぐに反応して駆ける。


怯えて座り込んでいるコリガンに向かう魔物。

ハルも動けないでいる。


リムアンは斧槍を投げて牽制する。

そのまま間合いを詰めて倒そうとした。


だがその時、新手の魔物が彼女に襲い掛かった。

「っ!?」



なにをやっているんだ、僕は。

あれだけ、あれだけ頑張ってきたじゃないか。

それが、魔物を目の前にしてビビッて、コリガン君と一緒にあわあわして。


自分の情けなさ、ふがいなさにガッカリしている。

リムはこんな僕たちを見てもバカにもしない。

期待外れなんてこともない。


……はじめから期待されてないんだ。


「わぁっ!」

コリガンくんが悲鳴を上げる。

「っ!」

リムがすぐに反応して駆ける。


魔物が襲い掛かってくる。

リムは武器を投げて、コリガンくんを守ろうとした。

いつぞやダンジョンで見せた技を使うつもりなんだ。


リムの瞳が光り、体に電気のようなものを帯びる。

一瞬で距離を縮める、あのダッシュの前動作―――


でも、その初動は別の魔物によって阻まれる。

彼女に襲い掛かかってきた。


スタートを切ろうとしていたから対応が遅れている。

ふたりとも、危ない――――


そんなとき、ガレットさんの言葉が思い浮かぶ。


『そのときが来たとき、お前はどうするんだ?』


なんだろう、酷く悔しくて、腹立たしい。


『男なら自分はどうありたいのかを考えてみろ』


アンタに、僕の何がわかるってんだ。


『男だろ』


何をやってもダメで、失敗ばかりの僕に気持ちなんて。

恵まれた才能もない。何もない僕に、アンタは何を望むってんだよ。


『でもよ、俺はハルならできるって信じているぜ』


なんでアンタはそんなふうに僕を買いかぶるんだよ。


『俺だって空中に足場つくるだけしか能のない男なんだぜ』

ガレットさんの笑顔。

そして小突かれた胸が熱くなる。


『俺は、ハルの意地を信じる』


本当に、うるさいよ。


そうだよ、そのとおりさ。

僕はリムの投げた斧槍を手にして振るう。


『叫べよ!ヴィクトリィャーー―!』

だからぁ!うるさいって!

イメージの中でも暑苦しいよ!オッサン!


僕は心の命じるままに叫んだ。


「意地があるんだよ!男の子にはさっ!」

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