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第65話 オカンからの手紙  涙と鼻ペロと……バナナ?


「今戻ったニ」

クロエが部屋に入ってくる。


「お使いは終わったニ?」

「うん」

コリガンが手紙を見せる。


「読むニ」

その言葉を聞いてハルは驚いた。


「読んじゃうの?」

「そうだニ。そのための手紙だニ」


「ハティさん宛てじゃないの」

「ハティは読んでいいと言ったニ。それに手紙を奪われるかもしれないから、内容を憶えて伝えるようにとも言っていたニ」

「それって……」

(誰かが裏切って情報を流すことを考えていないんじゃ……)


「ハルは誰かが裏切ることを心配している?」

コリガンの問いにハルは言葉に詰まった。


「親父は、たぶん、裏切っても許すと思う」

「え?」

「許すって言うよりかは諦めると思うな」


「犬っころは誰も信用していないニよ」

「そんな、寂しいことを」

「裏切られ続けた寂しい男の性だニねぇ」

クロエが苦笑いをする。


「それはそうと、読もうか」

コリガンが強引に話を変える。

「あれ?」


ハルが首をひねる。

紙には何も書かれていなかった。


コリガンがフィンリルナイトの団員証を取り出した。

銀の狼のアミュレット。

それをかざして、紙面をゆっくりとなぞる。

紙面に文字が浮かび上がった。



――――あの日、英雄になれなかった君たちへ


大きな過ちには、大きな償いが伴います。

小さな過ちでも、積み重なれば大きな償いを必要とします。


だからといって、過ちを犯さない人はいません。

日々、間違いを犯さないよう、正しくあろうと努めている君たち。

君たちには言うまでもないことでしょう。


だから、君たちは苦しくても辛くても、それでも堪えているのだと思います。


今、辛いのは、雌伏しふくの時を迎えているのは、今までの過ちを清算する償いの時だからだと私は思っています。


こんな言い方をすると、君たちを責めているのだと誤解されそうです。

ですが、けして私は君たちを責めているわけではありません。


だって、私も君たちと同じだと思っているから。

だから、今を乗り越えれば、清算をすることができれば、きっとまたお互いに笑える日が訪れるのだと信じています。


だから、心から笑い合える日を迎えられるように、今は堪えてください。

ひどいことを言っているのは十分にわかっています。

説教臭いっていうのもわかっています。

私も同じです。

私も堪え忍び、頑張ります。


だから、頑張れ。頑張れ。頑張れ。頑張れ。

君たちは強い。

君たちは負けない。


だから、頑張れ。

巻き返しの時は必ず来ます。

それまで、頑張って、いざというときには踏ん張って前に進んでください。

その時の一歩はとても大きな「勇気」が必要です。


頑張っていたら寄り添ってくれる人も現れるでしょう。

ねえ、その人の瞳を見て。

とっても綺麗な色をしているはずよ。

だって頑張っているあなたたちと同じ苦しさを抱えているはずだから。


そんな人がいてくれたらさ。

人生ってそんな悪いもんじゃないねって言えるようになります。


長い時を生きてきた私が言うのですから、説得力があるでしょう?

今はまだ我慢を強いられるときです。


けして焦らず、怒らず、冷静に状況を見極めてください。

きっと風は吹きます。

暴風かもしれませんけれど。


最後に、体を大切にしてください。

君たちは私よりはるかに寿命が短いんですから。

その命を大切に。


また会える日を夢見て 


     アンジェ・フラン・スカーレット


追伸 早く迎えに来い、ハティ。

   このバカ野郎。




僕はその文章を読んで、涙をこぼしてしまった。

囚われの人が、みんなを気遣っている。

暴発するな、我慢しろと言いながらも、「頑張れ」って励ましている。


「君たち」というのはエリーゼさんたちのことを言っているようだ。

けれど……でも、僕たちも読むことを知っていてぼやかしている。


こんな人が、こんな優しい人が「最悪の魔女」だなんて。

最後の一文は照れ隠しのわざとだろうな。


「寄り添ってくれる人は、協力者」

「暴風はハティ」

「チャンスを見逃すな。命を奪う術がある」

クロエが呟く。

語尾を忘れているのは突っ込まない。


「頑張れってのは?」

コリガンの問いに面白くなさそうにクロエが答えた。

「エルフが一丁前に私たちを励ましている……あ!?…『だニ』」

我に返って語尾を慌てて加える。


それからクロエが僕の顔をじっと見た。

「え?ちょ、ちょっと……」

黒猫の獣人族。

彼女は小柄で猫耳としっぽがある。

「動くなだニ」

そう言って僕の頬に手をあてた。

じっと目を覗き込む。


ちょっとクセのある髪をした美少女。

ほとんど僕ら人間と変わらない外見。


そんな子に見詰められるなんて……うう、ドキドキしてきた。


「っ!?」

突然、クロエが僕の鼻先をぺロッと舐めた。


「バッ、ば、なななななななっ!」

あまりのことに動揺してしまう。


「バナナ、だニか?食べたいのかニ?」

い、いや、今鼻をぺロッてしたよね。

どういうこと?

「良いだニよ。今ので『写し』終えただニから。お使いのご褒美だニ」


「じゃあ、『市場でデート』だニねぇ~、ハル」


ジャガイモ仲間の皆さんへ


アンジェからの手紙、いかがでしたか?

これは本当に作者からの手紙でもあります。


私自身、朝起きて外出するのにも力が必要です。

だから、「頑張れ。頑張れ。頑張れ。頑張れ。」ってね……


そう言ってくれた人もいるからさ。

みんなも、「頑張れ」って私は言いたいのです。


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