第25話 猛虎と狂犬と 【コレット・ルート】
私こと、コレット・オルレアは非常に気まずい思いをしている。
なぜって?それはお姉ちゃんとハティさんがケンカ中だから。
つーんっていうのならまだわかる。
でも、この二人はとんでもなくぎこちない。
「ええ、この先の『ケトゥスの街』に立ち寄るのですが、その手前の村で一度休もうかと…」
変にそわそわして、目を泳がせつつハティさんが言う。
「そ、そうですかぁ、分かりましたぁ、ハ、ハティの思う通りでいいですよ……」
な、なに?この初デートみたいな緊張感。
この姉弟、本当に血が繋がっているんだよね?
街道とはいえ、戦のせいで道は荒れている。
私は石ころを避けた。
ちょっとハティさんの方へ寄ってしまった。
ハティさんはそれとなく距離をとる。
そう、ハティさんはロリ…じゃない、「蕾愛好者」を名乗るけれど、触れようとはしない。
絵画や物語を鑑賞するのと同じだ。
まあ、ある意味、真性の変態だけれど。
でも、そのせいでハティさん、お姉ちゃんの手にちょんっと触ってしまう。
「「あ……」」
ふたり同時に声を上げる。
それから顔を赤らめて触れてしまった自分の手を握り、顔を反らす。
な、なに、これ。
私は何を見せられているの!?
ふたりは付き合っているの!?
姉弟なのにぃぃぃっ!?
もう、我慢できない。
私は能力でふたりを覗く。
(うううう、ハティに嫌われたぁぁぁ、私、これからどうやって生きていけばいいのぉぉ)
お姉ちゃん……バカなの?
(なんたることだっ!姉上に暴言を吐くなどとっ!己の不徳を恥じるばかりだ。腹を切って詫びるかっ!?)
なに?その「ハラキリ」って。ヤバい自殺方法?
ハティさんはぶっ飛んだ……バカなの?
もう、この姉弟どうしようもない。
しかたない、ひと肌脱ぎますか。
「あ……」
私はわざと足をとられたように転ぶ。
そう、「転ぶ」私をふたりは見逃さない。
とっさにふたり同時に私を抱えようとする。
「う……」
私の体を支えながらふたりはお見合い。
頬に朱が差した。
いや、だからぁっ、本当に姉弟なんですよねぇぇぇぇぇぇっ!?
「あ、あねうえっ!」
ハティさんがいった。
「は、はぃぃぃ」
お姉ちゃん、なんで声上ずっているの?
「も、申し訳ございませんでした」
ハティさんが頭を下げて謝る。
「姉上に対する口の利き方ではありませんでした。申し訳ございません」
「い、いえ、私も嫉妬のあまりやりすぎてしまいました。本当にごめんなさい」
う~ん、納得いかない。
なに、この「初めてケンカした付き合いたてカップル」みたいな感じ。
それからふたりは笑った。
そうして私を真ん中にして手をつないだ。
「コレット、ありがとう」
まあ、仲直りできたのなら、いいか……




