第125話 マジギレ・エリーゼさん。追放された故郷を想う。いや、早口過ぎない?どうした情緒?
このエピソードは、登場人物のストレスがとんでもないことになったため、怒涛の「セリフ・マシンガン」が炸裂します。
あくまでも演出です。
けして「作者」の情緒がどうにかなったわけではありません(笑)
場所は変わって、ハルたちと別れたエリーゼ一行。
旧マクスウェル領の近くで待機している。
「ハルたちは大丈夫でしょうか」
ティアがエリーゼに尋ねる。
「ハティもついているのです。大丈夫でしょう」
「いえ、アイツがいるから心配なのです」
エリーゼの回答を一蹴するティア。
「まあ、不安な点は……多々ありますけれど」
そう遠くに臨む故郷へと思いをはせる。
共和政府に、「ロナウ・スペンサー」に奪われた故郷と民。
旅の途中で聞くのは「一見、栄えている」ということ。
表向きは栄えていても、不正がはびこっている。
(結局、ロナウもあの伯父、セドリックと同じでしたか……)
市民の中でも格差が広がり、虐げられる者も少なくないと聞く。
ギリッ
エリーゼは歯噛みする。
(あんの「タヌキ」どもめっ、性懲りもなく)
◇
「アナウンス」
ここからはエリーゼさんの「回想」となりますが、怒りが限界突破してしまって早口になっています。
お見苦しいですが、どうぞお付き合いください。
◇
当時のマクスウェル家は酷いありさまだった。
現当主であるお父様の体調が思わしくない。
それに乗じて母方の伯父が反乱を起こした。
他の貴族を巻き込んで私を亡き者にしようとした。
人が弱っている時に何してくれとンじゃ、ボケ。
けれど、その反乱はハティの狂気によって潰えた。
ハティは単身、伯父の協力者の屋敷に押し入り惨殺した。
そして証拠を突きつけ、伯父も殺害した。
もうメチャクチャです。
なんで問題ばっかり次々と。
後始末する私の身にもなれってんです。
とはいえ、可愛い弟を死なせるわけにはいかない。
父と私、ハティの上官とアンジェで王を説得した。
というか、「脅した」。
そりゃあ、必死でしたから。
王家でも双璧をなす騎士団長の二人が詰よって離反をほのめかした。
アンジェは子供の頃の恥ずかしい話を暴露するとまで言った。
王様、最後泣きそうになってたじゃないですか。
まあ、おかげでハティが死罪にならずにすんで良かったですけど。
一難去ってまた一難。
今度はマクスウェル領に巣くう「化けタヌキ」どもが騒ぎ始めた。
広大な領地を治めるために「小領主」を置いている。小領主の中にはあの伯父がいた。
伯父一家は国外追放。
当然その穴を埋めるために私は奔走せざるを得なかった。
私は、税の収支記録を前に頭を抱えた。
あんのクソじじい、なにしてくれてんですか。
今はもうこの世にいないあの伯父をぶん殴ってやりたかった。
取り決めよりも多く税をとっていた。しかも、収支報告のない取引が横行していた。
この地区の商業ギルドを使って好き放題やっていたのだ。
それからギルド長を招集しての事情聴取。不正に徴収していた税の修正と返還。市場の正常化と領民の生活保障……バカみたいに仕事を増やしてくれている。
特にこの時世は騎士団運営で経済を圧迫しているのだ。
領民から反発をうけたら戦どころではない。
腹立たしい思いをしながらも民政に注力しなくてはならなかった。
この正常化は私たちや大衆にとっては良くても、都合の悪い者だって当然いる。
伯父と共にうまい汁をすすっていた連中だ。
そして、この手の類は口が上手い。まぁそうでなければ悪事などできないのですけれど。
そんな連中がある日徒党を組んでやってきた。
まさに「化けタヌキ」の行進。
ぽんぽこぽ~んです。
タヌキ汁にでもしてやろうかと思ったくらい。
◇
コソコソ悪事を重ねていた連中が集まって押し寄せてきた。
脂ぎった顔。ぼよんぼよんと贅肉のついた腹をゆすって。
見苦しい。私は自他ともに認める「美男子ハンター」。だからコイツらは畑の肥しレベル。
そんな化けタヌキどもが屋敷まで来てお父様に意義を申し立ててきた。
ほんんっっっと、どうでもいいことを引き合いに出してグチグチと。
だいたいはあなた達自身がやってきた悪事じゃないですか。
それをシバキ回して歩いたことの何がいけないんですか。
まだやられ足りないんですか。いいですよ。
今度こそ二度とその口が利けないようにしてあげますからね。拳を鳴らす私に怯えながらもお父様に訴えかける「化けタヌキ」ども。
しかもなんですか。伯父の反乱が、私の素行のせい?
コイツら本気でぶっ飛ばします。「帰り道」でどうなるか憶えておきなさい。
女の身で戦に出ず、領地運営に注力しろですって。
バカも休み休み言いなさい。私たちが「公爵家」であり「騎士団」を持っている時点で「国防」にあたらなければならないというのを知らないのですか。
ああ、自分の手を汚さずに他人を使って悪事を働く輩でしたね。
「義務」と「権利」をはき違えていらっしゃいますわ。おととい来やがれ。
お父様もこれにはキレ気味。ああ怖い。私などよりも「銀の狼」と呼ばれた男を前によくも言えましたわね。
そうですかそうですか「本当に怖い思い」をしたことがないから。
身の危険というものすら理解できないのですね。
口が上手く、狡猾に立ち回ってきた弊害ですね。
私たちを口先三寸で丸め込めると思っているのでしょう。
この民意の代表を気取ったバカ者ども。
人数を集めて口々に批判をすることで正当性を主張しようというのでしょう。
「みんなが言っているから」正しいことだって。
ほんと、この「みんなが」って言葉は反吐が出る。
悪い噂を流して広め、何も知らない人に信じ込ませる。
そうやって自身の陣営に引き込んで口々に批判をさせる。
そうして「みんなが言っているのだ」と言うのだ。
といいますか、あなた達の「お仲間どうし」「同じ穴のムジナ」が言ってるだけでしょ。
あらあら「タヌキ」でしたね。ぽんぽこぽ~ん。ボンボコ、ボコりましょ。
認知における「バイアス」かかっているのに気づかないのかしら。
ああ、気づけもしない幼稚な人間でも「知識」があれば悪だくみはできるんですものね。
ほぉんと、「化けタヌキ」どもめが。
悪口や為政者への批判は良い憂さ晴らしになるでしょうよ。
でも、それって結局自分じゃなんにもできない奴らの負け犬の遠吠え。
安全なところで、遠い存在のことをキャンキャン吠えたてていればいいんですから。
ああ、タヌキでしたね。ぽんぽこぽ~ん。腹をぶち破ってやろうかしら。
しかし、このバカ者どもは勘違いが過ぎましたね。
よりにもよって私たちの目の前で堂々と述べ立てたのだから。
相手が誰かまで考え至らなかったらしい。
ここまで自分が「正しい」という幻想を持てるって哀れにも見えてきます。
忠言?言論の自由?何言ってるんですかね。ここは、私たちが治める土地ですよ。
マトモなことをマトモな人が言っているならまだ耳を貸しますけれど。
あなた達は「論外」ですね。
お父様とてマクスウェルの人間です。家族や一族を愛してやまない。
それを堂々と目の前でけなされて怒り心頭。
お父様はコイツら一喝した。
「思い違いも甚だしい」と。
「増長して無礼を働いた罪を贖わせる」とまで言った。
お父様の怒気を受けてようやく自分で自分の首を絞めたことに気づいたみたい。
でも、もう遅い。本当に頭の良い人間ならば、のっぴきならぬところに行く前に気づくはずです。どうしてここまで勘違いできるのかしら。
「化けタヌキ」どもは足腰が立たなくなっていました。それどころか失禁していました。
なんということでしょう。タヌキに小便を漏らされるとは。
ええ、クリーニング代は頂戴しました。
「小便垂らしの無礼者」とあなた方の大好きな「みんな」に教えて差し上げましたよ。
◇
「さて」
お父様が私に向き直った。
「エリーゼ、よく我慢したな」
「はい」
私が手を出さなかったことを褒めてくれた。
「だが、しかしだ」
続いて難しい顔をされた。
「悪評というのは面倒なものだ」
「はい」
「噂というものは長く人々の記憶に残る。まことしやかに語られれば何も知らぬ者が耳にすれば信じてしまう。そして無責任な者は何も知らぬままにこれを広めてしまう。嘘でも真のように語られ、信じ込まれる。まことに厄介なものだ」
「はい」
「お前のことを良く思わない者、ただ何かに不満を抱いている者、自分に自信がなく何かを貶めなければならない者、どうしようもなく暇な者、そういった者たちが数多くいる。そのような有象無象の者たちがこぞって話題にするだろう」
拳を握る。
「ハティのことで、お前もよくよく思い知っていると思う」
そう、領内でもハティのことを悪く言う者は少なくない。
声高に言う者もいる。
いちいち処罰をしていられないくらいだ。
ルークたちが怒鳴りつけると「何も言ってませんよ」とシラを切る。
きまって複数人。仲間に同意を求めて証言し合う。
「お前たちは強い。それは心が強いのだ。そのような下賤な者たちに負けはしない」
お父様は「しかし」と続ける。
「身軽なハティと違い、お前はこの領地を、家を守らなけれならない。だからこそ、この悪評を払拭する必要がある」




