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第122話 今日の異世界クッキング ~ジャガイモのレモン煮~ ……多分サツマイモの方が良いのでは?



僕は露店で野菜を売りながら情報収集に努めた。



何気ない会話から情報を引き出す。


領主の評判とか、どういった人が領主館に出入りしているとか。


そんな中で、僕もコレットもかなりストレスが溜まっている。


街のみんなが口を開けば「マクスウェル」の悪口を言うからだ。



「アイツはさ、皆に嫌われて追い出されたんだ」


「王様にクビにされたんだってよ」


「自分さえ良ければいいって女だったからな、あの女」


「嫌われてたからダンジョン探索の時、誰も協力しなかったな」


「戦で自分は目立つばっかりで、領内の運営はグダグダだものな」


ハティさんやエリーゼさんへの文句。



関係のないこと、ちょっとしたことのついでに悪口を言う。


街の掲示板や貼り紙にも当たり前のように「貼り付け」てあって拡散されている。





「はぁ……」


僕とコレットは一日を終えてため息をつく。


さすがのコレットも表情が険しい。


気分転換しようかな。


「ねえ、コレット?」


「なに?」


コレットがこちらを向く。


「疲れたでしょ、何か甘いものでも食べよう?」


「うん……」


やっぱり元気ないな……


最近は「お姉ちゃん」「お兄ちゃん」って呼んで慕っていたから。





僕たちは荷台に商売道具を納めてから飲食店のある区画へと向かった。


日の傾く中、ふたりで歩く。


人通りは多い。


人を避けてコレットが寄ってきた。


――――ちょん


僕の手にコレットの手が触れてしまう。


「あ……」


コレットが声を上げる。


顔を赤らめて俯いてしまう。



僕もちょっと、むずがゆいような感じが……


コレットがちょっと手を伸ばしてくる。


え~と



そう思っていた時だった。


「あっ、アイツ!」


僕の視界の端に、「二日前の門番」ニルスが映る。


「コレット、あれ」


僕はコレットにニルスを指して教える。


手を伸ばしかけていたコレットが驚いた顔をして、僕の顔を見た。


それから、僕の示す先、ニルスを見る。


あれ?なんで肩を震わせてるの?


「コレット?」


顔を覗き込むと、引きつった「般若顔」。


こっわぁっ!



「あの野郎ぉぅ」


低い声。


え?どっから声出してるのさ。


「ハルっ、追いかけるよ!」


……うん。きっと僕たちを騙したことが許せないんだな。





「『ジャガイモのレモン煮』と『エール』」


ニルスが給仕に注文する。


「ディックさんも好きですね」


「なにが?」


「『ジャガイモのレモン煮』注文するの、この街じゃディックさんだけですよ」


「そうなの?ここのメチャクチャ美味いんだけれどな」


「褒めてくれて嬉しいです。誰も注文してくれないから」


「ニルス」こと「ディック」が給仕の女の子と談笑する。


「俺は、ジュリエッタちゃんの作る『ジャガイモのレモン煮』だから、食べたいの」


そうヘラヘラ笑って言う。


「もう、お上手なんだから」


「本当だよ~」


ミシ……


木が軋む音がする。


(ちょっ、コレット、コレットっ!)


ハルが小声で注意を促す。


隣ではコレットが木製のフォークを握りしめていた。


しかも、青筋がこめかみに浮かんでいる。


(あんの野郎っ、人の邪魔しておきながらぁぁぁぁ)


給仕の子が手を振って離れていく。

それに応じるようにディックが鼻の下を伸ばして手を振る。


――――ガタッ


席を立つ音。


コレットがツカツカとディックに歩み寄る。


「なんだ?」


ディックが不審そうにコレットを見る。


バンッ!


コレットはディックの偽名「ニルス」のサインが入った「受領書」をテーブルに叩きつけた。


「これ、何ですか?」


「何って?」


「偽の受領書ですよね?私たちから受け取った『銀貨』はどうしたんですか?」


ただならぬ様子に周囲も注目し始める。


「知らないな」


「知らないってことはないでしょう『ニルス』さん」


「俺は『ニルス』じゃない。人違いだろ」


シラを切る「ニルス」こと「ディック」。


「じゃあ、この『領収書』を騙されたって憲兵さんに提出しますね」


コレットの言葉にディックが片眉を上げた。


「筆跡であなただと分かりますよ」


その言葉にディックが吹き出した。


「何を言うかと思えば」


それから身を乗り出してコレットに言った。


「どうぞ、ご自由に。無駄足だと思うがね」


「何を根拠に」


「それはこっちのセリフだよ。お嬢ちゃん」


それからディックは続けた。


「まず、『筆跡鑑定』なんてのは手間がかかる。憲兵も忙しいからどこの馬の骨ともわからないお嬢ちゃんのために時間を割かない。割いたとしても何年後かな?」


「そして、仮に俺が騙し取ったとして『証拠』はあるのか?門番は何人もいる。お前に会ったという人物が俺であるということも証明できないだろ」


そう言って笑う。


「ほら、名探偵ごっこは『詰んだ』な。お嬢ちゃん」


手をひらひらと振って追い払う。


「俺はこれから『好物のレモン煮』で一杯やるところなんだ」


様子をうかがっていた給仕の女性が来る。


「ジュリエッタたぁん、待ってたよう」


そう言って深鉢に入った「ジャガイモのレモン煮」を嬉しそうに受け取る。


周囲の客は「ゲテモノ食い」とか「それ頼むの大陸じゃお前しかいない」と囁く。


「いっつも僕のために作ってくれてありがとうね。これ、チップ」


そう言ってジュリエッタと呼んだ給仕の胸に銀貨を押し込む。


「ちょっと、ディックさん」


給仕の子が戸惑う。


「いいからいいから。お仕事、がんばってねぇ」


ヘラヘラと笑う。


そして、コレットは見逃さなかった。



ディックが彼女に渡した銀貨。


それこそ「エルフ自治区の銀貨」であったことを。





「あれ?」


僕は変な紙切れが混ざっていたことに声を上げる。


「どうしたの?」


コレットも覗き込んでくる。


「これさ」


そう言って紙を広げる。


僕たちは書面を見て硬直した。


そして、ふつふつと湧いてくる怒りに震えた。


それは、「ニルス」……いや、「ディック」のサインが入った受領書の控え。


そして、旧式の「通行許可」の控えだ。


「なんで、こんなものが箱に」


「さっきの片付けではなかったよね」


誰かが紛れ込ませたのか?

でも、いつの間に。


僕はあることに気づく。


――――――この、染みは。


紙に顔を寄せて匂いを嗅ぐ。


やっぱりそうだ。


「ハル?」


僕が紙を舐める。


「ちょっと!?」


コレットが驚いて身を引く。


……うん。甘酸っぱい「レモン」と「砂糖」の味。


そして、油の奥に感じる「土」と「ナッツ」のような「ジャガイモ」特有の匂い。


やはり、犯人は「ヤツ」だな。




僕たちは翌日、何事もなかったかのように門を訪れた。


「積み荷は?」


「野菜です」


「検めるぞ、手続きをするから降りろ」


言われて僕は御者台から降りる。


「通行証はあるか?」


門番に言われて通行証を見せる。


「うん。間違いないな。では、通行税に銀貨――――」


言いかけたところで僕は門番に言う。


「今度は『本物』でしょう?ディックさん」


門番は驚いたようだ。


そう、目の前の門番はディックだった。


「通行税は確か、『銀貨2枚』ですよね」


僕はちょっと意地悪く言った。


「帳簿では通った商隊の分が治められる」


「つまりは、『銀貨2枚』は金庫に入るんだ」


「通った商隊の数は他の門番も確認しているから誤魔化せない。だから『2枚』は騙せないんだよね」


僕の笑みにディックは覚ったみたいだ。


「ちょっと、こっちに来い」


僕を別室に引っぱって行った。




僕とディックは二人で個室に入った。


これから何が起きるか。


口封じに殺されるか。


でも、僕は「負けない」。


たぶん、負けることはない。


だって、「将軍」級の化け物を見てきた。


ガレットさん、エリーゼさん、ハティさん、ティアさま。果てはランドルフまで。

その立ち回りを見ている。


ランドルフ相手だったら詰んでいるけれど、コイツはそれに比べたら大したことがない。


いつでも「土寄せ棒」を振るえるようにしていた。



そうしたら、コイツは急に頭を下げてきた。


「ごめんっ、許してくれ」


「え?」


「俺も、悪いことをしているとは分かってるんだ」


急に何を言い出すんだ?


「でもよ、でも『言い訳』なんだけれど」


そう言って涙目で僕の手を握る。


「酒場で見ただろ、ジュリエッタちゃん」


ああ、給仕の子。


「あの子、生活苦しくてさっ、病気のお母さんの面倒見てるの」


そ、そうなのか?よくわからないけれど。


「酒場の給料だけじゃ養っていけない。俺が何とかしなくちゃって」


ディックが詰め寄る。


「だから、悪いこととは思っているんだけれど、彼女のために……」



いや、ダメだろ。


「お前たちの銀貨はもう返せない。だから」


そう言って僕の手を握る。



「便宜を図るよ」


はぁ?


「俺の担当の時は、その……積み荷の重さとか量を誤魔化すからさ」


何言ってるんだコイツ。


「通行税だけじゃなく、積み荷の数とかで追加徴税されるだろ?それで、お前たちから貰た分を相殺するよ」


そう言って「お願いします」と繰り返して頭を下げてきた。



「いや、そんなことを言われても」


「人助けだと思って」


「こっちも困るよ」


僕はそう言って、偽の「受領書」と「通行書」を押し返した。



「ともかくっ、事情はどうであれお前のやったことの始末は自分でつけてくれよ」


そう言った。



「僕らの『銀貨』は今は流通してないらしいからなっ、見分けつくだろうからちゃんと返してくれよ!」


僕はそう言って部屋を飛び出した。




「ハル、どうだった」


外で待ていたコレットが尋ねてくる。


「予想以上に、ダメな奴だった」


僕のため息にコレットも深々とため息を吐く。


「はぁ……」


(もしかしたら、「ハッティくん」の保険が早くに役立つかなぁ)



ジャガイモ仲間の皆さんへ


今日もお疲れ様でした。


今日は何事もない日でしたか?

それとも、ズルいやつにイラッとした日でしたか?


まだ今週も始まったばかり。

適度に休憩とりながら、一緒に頑張っていきましょう。


次回は小悪党を成敗する最強タッグが誕生!

コレットちゃんが大暴れ!

キン肉祭りでハッスルしマッスル!


ぜひご覧ください。



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