第118話 「フッ、残像だ」捉えられぬ魔の手。って……後ろっ後ろっ!
「どうしたんだい?ふたりそろって」
ハティさんが僕たちの顔を見て言った。
今はおじいさんの姿。
話し方とか違和感がない。
僕は無言で近寄り、胸倉を掴んだ。
「あなたって人はぁぁぁ」
「どうしたんだ?」
ハティさんは暢気に尋ねる。
この様子を見て周囲は騒然となった。
「あなたのせいでっ!」
「まあ、待ちなさい」
「なにがっ」
ハティさんが周囲を示す。
みんなが注目していた。
傍から見れば爺さんにからむ若者。
非常にまずい構図。
周りの人が「最低」とか「酷い」とか囁き合っている。
「ね?場所を変えようよ」
僕はしぶしぶ手を離した。
◇
宿屋に戻る。
部屋に着くなり、僕とコレットはハティさんに詰め寄った。
「アンタ、なにしてくれとンじゃっ!」
「え?なに?どういうことっ?」
「女癖悪すぎですっ!なんで『地雷案件』ばっかり持ってくるんですかっ」
コレットも叫ぶ。
「いや、ちょっと落ち着いてっ、わけがわからないよ」
事態を飲み込めていないハティさんは「?」と首を傾げている。
「落ち着けません!」
「訳が分からないのはこ――――――」
言いかけて僕らは固まった。
―――――にょ
謎の効果音と共に、ハティさんの後ろに立っている「エルザ」さん。
「ひぃぃっ!」
コレットが悲鳴を上げた。
「ん?」
ハティさんが後ろを向くが、その時には姿はなかった。
「なにもいないみたいだけれど?」
僕たちの方を向いた。
――――――にょ
「ひいいいいいい」
僕も悲鳴を上げた。
「どうしたのさ」
もう一度ハティさんが振り返る。
エルザさんの姿はない。
「いや、後ろにっ」
「やだなぁ、僕を脅かそうってんだろ?なになに、市場でのはこのためのフリだったの?」
―――――――にょ
またしてもハティさんの背後に現れる「エルザ」さん。
穏やかな微笑み。
でも、目の奥は笑っていない。
そして、無言でコレットに圧をかけている。
「ちゃんとお伝えしなさい」と。
コレットは恐怖でカタカタ震えている。
「どうしたの?」
「そそそそ、そのっ!『エルザ』さんに会ったんです」
思い切って言った瞬間だった。
ハティさんの顔が強張った。
「聞き違いかな?今、『エルザ』って言った?」
僕たちは頷く。
ハティさんがバッと勢いよく後ろを向いた。
――――にょ
エルザさんは姿を消している。
――――バッ
――――にょ
―――――ババババババッ
―――――にょにょにょにょにょにょ!
彼が振り返るたびに背後に現れる。
つまり、ハティさんは対面していないから視認できていない。
なんていうことだ。
あまりにも速くてエルザさんが何人にも見える。
これは「影分身」!?
(フッ、残像です)
エルザさんの不敵な笑み。
いや、カッコよくない。
ゼェゼェゼェ
はぁはぁはぁ
ふたりが荒い息をついている。
片や激しい動きから。
片や興奮から。
あの魔人の「弱点」である背後を常にとっている。
「クッ、やはりエルザだ」
ようやくハティさんも理解したようだ。
「おそらく、彼女は『居る』」
「ハティさん、背後とられてますよ?」
「そうなんだ。彼女はタンクの『かばう』スキルを悪用している」
「は?」
「『かばう』は仲間を文字通り『かばう』ためのスキル。僕のウィークポイント『背中』を『かばう』というロジックを悪用しているんだ」
―――――怖いよ。
「そうして常に『かばう』という名目で背後に立っているんだ」
ぶるりと身を震わすハティさん。
「も、もう……怖くて怖くて」
なんか、かわいそうになってきたなぁ……
――ふぅぅぅ
吐息がかけられる。
「ひぃぃぃぃぃ」
本気で怯えた声。
「善き妻たる『エルザ』はちゃんと三歩下がって『控えて』おりますわ」
囁き声がする。
僕はハティさんの後ろで「ニタァァ」と笑う美女の姿を見た。
心底怯えているハティさんを見て思った。
確かに美女にモテてるけれど、この人の場合「事故物件」ばっかじゃない?
病み全開の魔女っ子エルフとか。
カップリグ厨貴腐人の女騎士とか。
あ~、一応「合法」のリムアンはマトモな部類か……
そんなことを思っていたら、エルザさんが目で合図を送ってくる。
もちろん、コレットにあの話をさせようというのだ。
ジャガイモ仲間の皆さんへ
日曜日の夜、いかがお過ごしでしょうか?
ゆっくりできた日ですか?
それとも何となく忙しい日?
新年度で何かと忙しかったり、周りとリズムが合わずにモヤモヤ溜まったりしていませんか?
何となく「後ろ」を振り返りたくなりますが…
ストレスは「スン」して、また、明日という日の「ヴィクトリー」を目指して一歩踏み出しましょう。




