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第116話 変装潜入のはずが「壁ドン」からの身ぐるみ剥がされる僕。そして、安定の「地雷踏み抜き」



ああ、なんだか既視感があるな……


僕は壁を背にし、挟み込まれるように追い詰められていた。


いわゆる「壁ドン」。



ここは「旧マクスウェル領」で「現スペンサー領」。


雨上がりの路地裏。


表通りの喧騒は遠い。


薄暗く、足元はまだ水たまりが残っている。


目の前には「白銀の髪をした美女」。


「うふふふっ、あなたから『いい匂い』がします」




壁に右手をあてて、僕を逃さないようにしている女性。


彼女が妖艶に笑う。


けれど、アイスブルーの瞳は笑っていない。



エリーゼさんとそっくりの容姿。

髪の長さやちょっとした髪質の違いがあるだけで、間違えそうになる。



そして、匂いも違う。


エリーゼさんは柑橘系の匂いに「スパイシー」な感じがする。


この人は柑橘系の匂いのなかに「重く甘ったるい」感じがする。

オルジュの街や首都で嗅いだあの匂い。



「あ、あの……」


僕は見詰められながら恐る恐る声をかけた。


「イグリースさん?ですよね」


スンスンと僕の匂いを嗅いでいる美女。


「ええ、首都であった時にはそう名乗っていましたね」


興味なさげに答える。


「ああ、『いい匂い』の元はこれですね」


そう言って左手をそっと僕の胸に這わせる。


「ちょっ……」


「あら?可愛い声」


そう言って僕の上着の中に手を入れる。

服の中をまさぐる。


「こ・こ・ね」


「あっ!?」


僕は声を上げた。


引き抜かれた手には「フェンリルナイトの団員証」が握られていた。


「私の『旦那様』の匂いがすると思ったら、コレを持っていたのね」


「返してください」


僕が言うと、イグリースさんはちょっと驚いたような顔した。


「あら、見た目によらず、ハッキリと物が言えるのね」


「いいですから、返してください」


僕は手を伸ばして取り返そうとする。


スッ―――


かわされる。


僕はなおも取り返そうとする。


スッ―――、ススススス――――


かわされる。


「いいかげん、返せよ!」


僕はちょっと乱暴に取り上げようとする。


けれど、足をかけられて転ばされる。


「っ!?」


僕は地面に転がって泥だらけになった。


「この――――――っ!?」


顔を上げた。

僕は言葉を失った。


エリーゼさんそっくりの顔。

それが冷たい目で僕を見ている。


あの晩にコレットが向けられたものに似ている。


敵意に満ちた―――


「泥棒が、よくもぬけぬけと」


何を言っているんだ。


「私の『旦那様』から『御力』をお借りしているのでしょう?『借りパク』くん」


別に、盗んで返してないわけじゃない。


ちょっとは力を借りたりしたけど。


「あなたたちは、『旦那様』にお力を借りたままで、なにもお返ししていないでしょう?」


どういうことだよ。



「借りっぱなしで返さないのですから『借りパク』くんではありませんか」


それだって、向こうが押しつけてきたようなもんじゃないか。



「『旦那様』があんなにおやつれになられて」


そっと涙を拭うマネをする。

ぜんっぜん、泣いてないけどね。


「『旦那様』の『御力』はこんなものではないのです。昔のあの凛々しくも冷徹で恐怖すら覚える御姿。それなのに、ご自身が弱体化するのも構わず、あなた達に『力』を分け与えている……わかっているのですか?」


え?


「そんなありがたい身でありながら……『眷属』にすらならず……」


言いかけて止まった。




なんだ?なにが起きた?


急にガクガクと震え出す。


「あ、あああ、あああああ」


ヤバい。この人、なんか、ヤバい。



「そ、そういうことでしたか。ああっ『旦那様』!浅はかなエルザをお許しください」


ん?「エルザ」?どっかで聞いたような。


「エルザに取り返させようというのですね。だから、いつでも奪える状態にしている……」


いや、どういうことだよ。


「ふふふっ、相変わらず恥ずかしがり屋さんですね」


恥ずかしいのは今のあなたの姿だよ。


「奪い返した私が、お返ししに現れるのをお待ちになっている」


「ご自身で私に『来てくれ』と言えないからって……んもうっ」


んもうッ、それあげるから帰ってくれないかな。



「あの~、妄想中すみませんが」


僕が声をかけると「キッ」と睨み付けられた。


「なんですか」


この手の人たちって本当「お楽しみ」を邪魔されるの嫌うよね。


「もういいです。それ、あげますから帰ってください」


言った途端だった。


胸倉を掴まれて釣り上げられる。


って、片手で!?



「オマエ、ふざけているのですか?」


な、なんで?欲しかったんだよね。僕から奪ったよねっ!?


「『旦那様』からの授かりもの。それを簡単に渡すなどっ」


いや、矛盾だらけっ、言ってること支離滅裂っ!


「……あぅ」


え?なんで急に顔を赤らめるの?


「『旦那様からの授かりもの』って、エルザったら、はしたない……そんな、まだなのに」


もうどうにかしてよぉ、この人。

おまわりさん助けてよぉ。不審者だよ。


だいたい、さっきから言ってる「旦那様」ってハティさんのことだろ?

アンジェさんと婚約してなかったけ?


あの人、どんだけ女癖悪いんだよ。




―――あ、いいこと思いついちゃった。


この手の人たちって、「精神攻撃」に弱いはず。

暴走していても、現実に戻されればイチコロだ。


「あ~イグリースさん」


「なんですか?エルザですが」


「あ、エルザさん」


「だから、なんですか?」


「ハティさんって確か『婚約者』いましたよね?」


エルザさんが固まり、僕から手を離した。


僕は解放されて地面に尻もちをつく。


た、たすか――――――あああっ!


首筋に剣を充てられる。




「小僧、死にたいようだな」




やっ、やっちまったーーーーーー!



ジャガイモ仲間の皆さんへ


今日もお疲れ様でした。


今日という日はどんな日でしたか?

久しぶりに息抜きができた日?

それともいつもと同じ?


まずはゆっくりと深呼吸して、気持ちを「スン」って落ち着けてくださいね。


本編ではついに「あの人」が登場しました。


ハルくんがピンチですね(笑)

(彼が主人公ですよ?)

さて、どうなることやら。


次回もぜひご覧ください。



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