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第114話 木漏れ日の中で……



チュンチュン……


鳥のさえずりが聞こえる。


サワサワサワ……


風が吹き、頬を撫でていく。


こんなに爽やかな朝だというのに……


目の前には岩のような大男がいる。


旅を共にし、苦楽を共にした仲間。


「スヴェン」だ。


今、僕は彼に「話がある」と連れ出され、家から僅かに離れた森にいる。


いや、いいんだ。


スヴェンとは仲が良い。


気楽に話せる兄貴分って感じだ。


でも、なんで……


僕は彼に壁ドンならぬ「樹木ドン」されているんだ?


「いや……その、なんつぅか」


いつも泰然自若としているスヴェンとは違う。


木を背にして立つ僕。


僕の顔の横に手を着いて挟み込むようにして立つスヴェン。


落ち着きなく、視線をさまよわせている。


「き、昨日さ、ハル……エリーゼさんにキスされたろ?」


その言葉で僕はまた顔が火照ってきた。


「その反応、やっぱりか」


スヴェンが困ったように顔をしかめる。


「ハル。俺、昨日のことで、もう自分の気持ちが抑えられなくなったんだ」


スヴェンが苦しそうに呟く。


「恥ずかしいんだけれどよ、『嫉妬』しちまったんだ」




なななんじゃぁこりゃぁぁぁ


私は草むらから二人の様子をうかがって絶句してしまった。


(コレット、動かないでっ、気づかれる!)


小声でリャナンさんが注意してくる。


(ごめんなさい)


私たちは朝ごはんの後、ハルとスヴェンが出ていくのを目にした。


しかも、ただならぬ様子。


気になって後を追いかけた。


(これは、どういう状況?)


リムが首を傾げる。


(俗にいう「壁ドン」だよな?)


ルーダも訝しむ。


女の子チーム勢ぞろい。


あ、エリーゼお姉ちゃんたちを入れてないけれど、許してね。


(このシュチュっていったら「アレ」しかないでしょ)


リャナンさんが断言する。


アレって……「アレ」ですかっ!?


(「アレ」ってなに?「亜鈴アレイ」?)


ルーダがとんちんかんなことを言う。


ちなみに「とんちんかん」の語源は「鍛冶」からきてるとか。

ルーダらしい……


(るーちゃん、そういうボケはいらないの)


リャナンさんが真面目に言う。


(それとも、わかっていてボケてるの?)


(なにがだよ)


(ハルが「される」と困るからでしょ~)


(な、なに言ってるのっ)


リャナンさんとルーダが小声で言い合う。


(うるさくしていると気づかれる)


リムが注意する。


(「アレ」っていうのは「告白」のことでしょ。リムは賢いからすぐにわかった)


……


私は胸がチクリと痛んだ。


ハルが、誰かに「告白」されるんだって思ったら。


隣でルーダが服の裾をぎゅっと握った。


きっと、ルーダも同じ気持ちなんだ。


(でもでも、スヴェンが?意外だよね……男の子どうしで)


(いやいや、今や「多様性」の時代。恋愛の形だって「多様」であっても良い)


(リムったらすごいね~)


リャナンさんとリムは私たちにお構いなし。


(だから、義理の父と言い張るハティと「血縁のない」リムも万事問題なし)


(結局、そこいくのね)


(当然)


リムは「ムフー」と鼻息を荒くする。


(でも、どうしよう)


何が?


(上手くいけばいいけれどさ、失敗だったらこれからどう接すればいいのかな?)


リャナンさんの言葉にちょっとだけ、ほんのちょっとだけ私は「悪い感情」が芽生えた。


――――上手くいかない方がいい。


そんな、「悪い気持ち」。


だって、スヴェンとハルを取り合いたくない。


そして隣を見る。


ルーダとも……誰とだって……




え?何?「嫉妬」って言った?


「恥ずかしながら、俺は『嫉妬』しちまったんだ」


もう一回言った。


「昨日からモヤモヤして、我慢できなくなっちまって……」


自分の胸を押さえるスヴェン。

苦しそうに僕に訴えかけてくる。


「う、うん。がまんはぁ、よくないよねぇ」


「そう、思うか」


「うんうん」


僕は頷く。


「なあ、ハル」


「何?」


「お前は俺の友達か?」


「そうだね」


「俺は、お前を大事に思っている」


……ええっと~


「だから、お前にはちゃんと俺の気持ちを伝えなきゃいけないと思ったんだ」


「だから、お前からも聞かせてほしいんだ」



「俺……その、ずっと『好き』だったんだ―――――」




(キターーーー!)


グッと身を乗り出す女の子チーム。


え?ほんとうに、本当に「告白」なの?


スヴェンが、「ハル」に。


私は膝が震えてきた。


嫌だ、なんか、ヤダ……


ルーダも不安そうに自分の手を握っている。


みんなで目の前にいるふたりを見守り続けた。



スヴェンが顔を真っ赤にして――――


僕を見て言った。


「ずっと、ずっと好きだったんだっ!」


だ、だれを?



「俺、エリーゼさんのことっ!」



………

……


うん。知ってる。

男の子はみんな。


「お前が、昨日エリーゼさんに『キス』されてっ、嫉妬しちまったんだ!」


「お前もエリーゼさんのこと好きだって知ってる」


スヴェンがまくしたてた。


「羨ましくて羨ましくてさっ、こう胸がモヤモヤしちまってよっ」


ああ……


「だから、せめて、せめて聞かせてくれよ」


ぐっと身を乗り出して近づく。


顔近い。顔が近いよぉぉぉっ!


「エリーゼさんの『キス』ってどんな感じだった?」


スヴェンが言った時だった。



『ダメえええええええええええ!』



叫び声が木霊した。




声に驚いてそちらを見る。


草むらで仁王立ちしているルーダと……コレット?


足元には驚いた顔をしているリャナンとリムアン。


コイツら、何をしているんだ?


「ダメだよっ兄貴っ!そんな、そんな朝っぱらからっ」


ルーダさん?何をおっしゃって……


「無理に迫るなんてっ、強引にするのは良くないですっ」


コレットさん?


「そういうのは、お互いの気持ちを確かめてからじゃないとっ」


「そうですそうです!まずは『交換日記』から始めるのが正しい交際です」


何の話ですか?


「手を繋いで公園でデートして、それからじゃないとっ」


「手順ってものがあるんです!」


いや、チョットナニイッテイルノカワカラナイナ……


「お前ら、何を言ってるんだ?」


スヴェンも驚いている。


「ハルと『ちゅー』したいなら……」


言いかけたところ、闖入者が―――――


「黙れぇぇぇっ『グス』どもがぁぁぁあ!」


ティアさまが木の上から叫んでいる。


「せっっかく、せっかく『リアル』で見られると思ったのにぃぃぃ」


「邪魔をしおってぇぇぇ!」


うえええええ。


「ここまできていたんだぞっ!こ・こ・までっ」


手のひらで顔の近さを表す。


いや、そんなに近くないってっ!


「私の『夢』が叶うところをっ貴様らぁ」


その「夢」は、夢のままでいさせてあげてください。


「ふ、ふふふふふふふ」


あれ?なんでコレット笑っているの?

って、ルーダも。


「ティアさま?」


「なんだ」


「こじらせるのは結構ですけれど、こんな言葉を知っていますか?」


絵面変わってる?

レジェンドヒーロー?


あまりの凄みに一瞬ではあるがティアさまもたじろいだ。


「人の恋路を邪魔する奴は『シュトゥーテ(牝馬)』だって蹴られてしまえって」


いや、なんかうまいこと言ってるけれど!


「なんだとっ!?」


あれ、ティアさま?なんでビビッて……


溜をつくったコレット。


そして叫ぶ。


「変な妄想ばっかりしてるって『ハティお兄ちゃん』に言いつけてやる!」



「やめろおおおおおおおおお」


ティアさまの悲鳴が響き渡った。


「ねえ、スヴェン」


「なんだ。ハル」


「僕たちは、ちゃんとライバルとして励もうね」


「そうだな」


僕たちは目の前のダメな人たちを目の前に誓い合った。



……ああ、そうだ。


ティアさま。たぶん、ハティさん、「知ってる」と思うよ。



ジャガイモ仲間の皆さんへ


今日もお疲れ様でした。

今日はどんな日でしたか?


新年度が始まって忙しかったり、ストレス溜まったりしていませんか?


そんな毎日のストレスをこの物語で「スン」としてもらえると嬉しいです。


さて、次回からは【新章】突入です。

やっとマクスウェル領奪還へ!

そして、「あの人」が満を持して登場!

もう、一筋縄ではいかないです…


ぜひご覧ください。


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